愛着スタイルのセルフチェック20項目|不安型・回避型・恐れ回避型の特徴と親密さが苦しくなる理由

愛着スタイルのセルフチェック セルフチェック

人と心を通わせたいのに、近づくほど息苦しくなる。相手が少しよそよそしくなるだけで胸の奥がざわつき、返事が来るまで落ち着かない。優しくされれば嬉しいはずなのに、親しくなるにつれて警戒心が強まり、突然、距離を取りたくなる。

恋愛では相手を求めすぎて苦しくなり、友人関係では本音を隠して疲れ切ってしまう。誰かに頼りたい気持ちはあるのに、いざ助けてもらおうとすると、自分の弱さを知られることが怖くなる。

こうした矛盾した反応には、愛着スタイル(アタッチメント)が関係していることがある。

愛着スタイルとは、親密な関係のなかで安心を求めたり、拒絶から自分を守ったりするときに現れる、感情や行動の傾向を指す。

幼少期に安心できる養育者との関係を経験してきたかどうかは、その後の愛着形成に影響する。ただし、成人期の愛着は幼少期だけで決まるものではなく、成長後の恋愛、友人関係、喪失体験、トラウマ、安全な人間関係などによっても変化していく。

大切なのは、自分が人を求めるときに何を恐れ、距離を置こうとするときに何から身を守っているのかを理解することである。

愛着の問題は、単純に「人が好きか、嫌いか」では説明できない。

愛されたいのに、愛されることが怖い。ひとりでいたいのに、離れられると見捨てられたように感じる。そのような親密さの痛みと渇望が、同じ人のなかで共存することがある。

Table of Contents

愛着スタイルとは?大人の人間関係に現れる4つの傾向

成人の愛着スタイルは、大きく4つのパターンで説明されることがある。

安定型(安全型)は、相手との親密さを受け入れながら、自分の意思や生活も保ちやすい傾向である。意見の違いや一時的な距離が生まれても、関係全体をすぐに危険なものと捉えずにいられる。

不安型は、相手とのつながりを強く求める一方で、拒絶や見捨てられることへの恐怖が生まれやすい。相手の反応を繰り返し確認し、関係が不安定になると強い不安を感じることがある。

回避型は、人と親しくなるにつれて、自分の自由や心理的な領域が侵害されることを警戒しやすい。感情を見せたり、他人に頼ったりすることに抵抗があり、距離を置くことで安心しようとする。

恐れ回避型は、親密さを求める気持ちと、親密さを恐れる気持ちが同時に強くなりやすい。近づきたいのに怖く、離れると寂しくなるという葛藤が生じる。

なお、子どもの愛着研究で用いられる「無秩序型」と、成人の自己報告研究で扱われる「恐れ回避型」は、関連する部分はあっても同一の分類ではない。また、いずれの愛着スタイルも、それだけで複雑性PTSDや解離性障害を意味するものではない。

成人の愛着研究では、とくに「愛着不安」と「愛着回避」という二つの次元が重視されている。

愛着不安は、相手から拒絶されたり、見捨てられたりすることへの恐怖を表す。愛着回避は、親密になることや他者に依存することへの抵抗を表す。

この二つの強さによって、人との距離の取り方が変わってくる。

基本的な理論と子ども・大人の愛着の違いについては、愛着障害とは何か|4つの愛着タイプと大人・子どもに現れる特徴でも詳しく説明している。

愛着スタイル・セルフチェック(20項目)

恋人や親しい友人など、大切な相手との関係を思い浮かべてください。最近の自分にどの程度当てはまるか、各項目を0〜5点で選びます。

  • 0 まったく
  • 1 ほとんど
  • 2 あまり
  • 3 ときどき
  • 4 よく
  • 5 非常によく

4つのまとまりに分かれています。20問すべてに答えると、合計点と分野別の傾向を確認できます。

回答済み 0 / 20
A

不安型の傾向

相手とのつながりを失うことへの不安
未回答
B

回避型の傾向

親密さや依存への抵抗
未回答
C

接近と回避の葛藤

近づきたい気持ちと、身を守りたい気持ち
未回答
D

安定した愛着に近い反応

親密さの中で自分らしさを保てる感覚
未回答

各質問の右側から点数を選んでください。

高得点だからといって性格や将来の人間関係が決まるわけではありません。愛着の感じ方は、相手との関係や現在のストレス、安全な経験によって変化します。

点数の読み方について

愛着スタイルのセルフチェックでは、親密な関係のなかで、どのような不安が生まれやすいのか、また、どのような方法で自分を守ろうとしているのかを確認できる。

20項目の合計は100点満点となり、点数が高いほど、人との関係で不安や警戒、心理的な負担を感じやすい傾向が表れる。

合計点から分かること

合計点愛着の傾向
0〜30点比較的安定して人と関わりやすく、親密さへの不安や抵抗が少ない傾向
31〜65点相手の反応に不安を感じたり、親密になると距離を取りたくなったりする傾向
66〜100点人を求める気持ちと警戒心が重なり、親密な関係で強い負担を感じやすい傾向

合計点は、A+B+C+(25-D)で計算される。これらの区分は、自分の状態を振り返るための目安であり、心理検査として検証された診断基準ではない。

ただし、同じ合計点でも、苦しさの現れ方は人によって異なる。そこで重要になるのが、AからDまでの4つの結果である。

4つの結果から分かる愛着タイプ

得点が目立つ項目人間関係で現れやすい反応関連する愛着傾向
A:不安型嫌われることが怖く、相手の愛情を何度も確かめたくなる不安型
B:回避型親しくなるほど息苦しくなり、自分から距離を置きたくなる回避型
C:接近と回避の葛藤近づきたいのに怖くなり、離れると寂しくなる恐れ回避型に関連する反応
D:安定した反応親密さを受け入れながら、自分の意思や生活も保てる安定型に関連する反応

A・B・Cは、点数が高いほど、その傾向が現れやすいことを示している。一方、Dは点数が高いほど、安心して人と関わる感覚が保たれていることを意味する。

成人の愛着研究では、とくにAの「愛着不安」とBの「愛着回避」の組み合わせが重視されている。

相手を失うことへの不安が強く、親密さそのものには抵抗が少ない場合には、不安型に近い反応が現れやすい。反対に、見捨てられる不安は比較的少なくても、人に頼ることや親密になることに強い抵抗があれば、回避型に近い傾向が考えられる。

そして、相手を失いたくない気持ちと、近づかれることへの恐怖がともに強い場合には、恐れ回避型に近い葛藤が生まれやすい。

安定した愛着に近い人は、親密さを求めることも、一人の時間を持つことも、比較的自然に選ぶことができる。相手と意見が違っても、関係全体が壊れるとは感じにくく、自分の気持ちを保ちながら関わり続けられる。

なお、このセルフチェックは自己理解のための独自項目であり、点数だけで愛着タイプを確定したり、愛着障害や複雑性PTSDなどを診断したりするものではない。

大切なのは、自分が人を求めるときに何を恐れ、距離を置くときに何から身を守ろうとしているのかを理解することである。

不安型の愛着――つながりを失うことへの恐怖

恋人からの返信がいつもより遅い。昨日までは優しく話していた相手が、今日はどこか素っ気ない。その小さな変化をきっかけに不安が膨らみ、何度もスマートフォンを確認したり、過去の会話を思い返したりする。

不安型の愛着傾向が強い人にとって、相手とのつながりが不安定になることは、強い苦痛を伴う場合がある。

相手の愛情を確かめたくなり、「私のことを好き?」「何か怒っている?」と繰り返し尋ねてしまう。安心できる言葉をもらうと一時的に落ち着くものの、時間が経つと再び不安になり、関係が本当に続いているのかを確かめたくなる。

こうした反応には、幼少期に安心できる関係が一定しなかった経験が関わっていることがある。

親が優しく接してくれる日もあれば、突然冷たくなる日もある。甘えたいときに受け入れてもらえるかどうか分からず、親の機嫌を読みながら近づかなければならなかった。

そのような環境では、子どもは相手とのつながりを失わないために、表情や声の変化に敏感になりやすい。

大人になってからも、親しい相手の反応が自分の安心を左右するため、関係を大切にするほど、失うことへの恐怖も強くなっていく。

さらに、嫌われることを避けるために自分の意見を抑えたり、相手の要求を断れなくなったりする場合もある。

本当は安心して愛されたいのに、相手の気持ちを確認し続けなければ落ち着けない。相手との関係を守ろうとする努力が、自分自身を消耗させる原因にもなってしまうのである。

こうした不安を和らげるためには、相手から安心できる言葉をもらうことに加え、連絡が取れない時間や意見が違う場面でも、自分の生活や感情を保てるようになることが大切になる。

回避型の愛着――近づかれるほど息苦しくなる理由

最初は相手に好意を持っていたのに、関係が深まるにつれて、なぜか気持ちが重くなっていく。頻繁に連絡を求められたり、休日を一緒に過ごすことが当たり前になったりすると、自分の時間や自由が失われていくように感じる。

相手のことを大切に思っていても、一人になりたい気持ちが強くなる。

回避型の愛着傾向が強い人は、他者との心理的な距離を保つことで、自分の安心や自由を維持しようとすることがある。

誰かに頼ることに抵抗があり、自分の弱さや本音を見せることを避ける。悩みがあっても自分のなかで処理し、他者から心配されることさえ負担に感じる場合がある。

こうした関係の持ち方には、過去に助けを求めても応えてもらえなかった経験や、親密さが干渉や支配と結びついていた経験が関わっていることがある。

親に甘えようとしても拒絶される。自分の気持ちを伝えると否定される。何を考え、誰と会い、どのように過ごすのかまで、親から細かく干渉される。

そうした環境では、誰かに期待することを諦め、自分の感情を表現しないことで、傷つく機会を減らそうとする場合がある。

その結果、大人になってからも、他者と距離を保っているあいだは落ち着いていられるが、関係が深まるほど緊張や息苦しさが生まれることがある。

親密な相手から「もっと気持ちを話してほしい」と求められると、何を伝えればいいのか分からなくなり、相手の期待に応えられないことが負担になっていく。

一方で、距離を置いて安心を取り戻しても、心の奥には誰かとつながりたい気持ちが残っている場合もある。

回避型の人にとって重要なのは、無理に親密さを増やすことよりも、自分の領域を尊重されながら、安心して人と関われる経験を重ねることである。

また、回避型の愛着と、診断概念である回避性パーソナリティ障害は異なる。拒絶への恐怖や対人回避については、回避性パーソナリティ障害の特徴と心理でも詳しく取り上げている。

恐れ回避型――愛されたいのに、愛されることが怖い

誰かを好きになると、その人と深くつながりたい気持ちが生まれる。しかし、相手が自分を好きになり、実際に距離が縮まると、今度は親密さそのものが怖くなってしまう。

離れると寂しくなり、再び会いたくなる。それなのに、会って優しくされると、突然、関係を終わらせたくなることがある。

このような接近と回避の葛藤は、本人にとっても理解しにくい。

相手を大切に思っているはずなのに、些細な言葉に傷つき、急に冷たく接してしまう。別れたほうがいいと考えた直後に、見捨てられることへの恐怖が強くなり、相手を必死に引き止めたくなる。

自分の気持ちが短い時間で変わるため、何を望んでいるのか分からなくなっていく。

こうした反応には、安心を求める相手が、同時に恐怖や傷つきの原因でもあった経験が関係している場合がある。

親に甘えたいのに、近づけば怒られる。守ってほしいのに、助けを求めることが危険になる。優しくされたと思った直後に、突然傷つけられる。

そのような関係では、他者とのつながりを求める気持ちと、自分を守ろうとする働きが同時に強くなることがある。

大人になってからも、親密な関係のなかで似た葛藤が現れると、相手への愛情と警戒心が同時に生まれ、関係が不安定になりやすい。

ただし、相手が支配的だったり、境界線を尊重しなかったりする場合には、距離を取りたくなることが現実的な自己防衛である可能性もある。

自分の愛着傾向を考えるときには、過去の経験だけでなく、現在の人間関係が安全であるかどうかを確かめることも重要になる。

親密さの痛みと渇望は、どのように生まれるのか

人との関係で深く傷ついた経験があると、誰かとつながりたい気持ちと、再び傷つくことへの恐怖が同時に存在するようになることがある。

一人でいると寂しい。しかし、人と一緒にいると緊張する。誰かに理解されたいと思いながら、自分のことを深く知られるのは怖い。

親密さを求めるほど、過去の傷ついた経験に触れてしまうのである。

Pigeonら(2025)は、子ども時代に虐待やネグレクトなどを経験した若者23人への質的インタビューを通して、友人関係や恋愛関係にどのような困難が生まれるのかを調べた。

参加者たちの語りには、他者を信じたいという思いがありながら、拒絶への恐怖や恥、罪悪感が親密な関係を難しくする経験が描かれている。

自分を守るために距離を置く人もいれば、関係を失わないように相手へ強く依存する人もいる。しかし、そうした対処によって孤独や不信感が深まる場合もあった。

一方、安心できる友人や恋人との関係を経験することで、それまで繰り返してきた対人パターンに気づき、他者への信頼を少しずつ育て直していく過程も報告されている。

この研究が示唆しているのは、過去の関係で傷ついてきた人にとって、親密さが恐怖を伴うものであっても、その後の人間関係で新しい経験を積み重ねることができるという点である。

人と親しくなることへの不安には、自分の弱さを見せることへの抵抗や、相手に支配されることへの警戒が含まれている場合もある。

そのため、親密さの苦しさを理解するには、単に人を信じられるかどうかだけでなく、誰かと一緒にいるときに、自分自身の感覚や意思を保てているかにも目を向ける必要がある。

愛着と自律神経――なぜ身体が先に反応してしまうのか

相手の声が少し低くなった瞬間、胸が締めつけられる。返事が遅れただけで胃のあたりが重くなり、親密な場面になると喉が詰まって言葉が出なくなる。

頭では相手が怒っているとは限らないと理解していても、身体の緊張がなかなか収まらないことがある。

こうした反応には、過去の人間関係で経験した恐怖や緊張が関わっている場合がある。

幼少期、親の不機嫌や拒絶が強い恐怖につながっていた場合、子どもは相手の声や表情、沈黙の変化を敏感に察知するようになる。危険を避けるために周囲を注意深く観察し、自分の感情よりも相手の反応を優先する。

こうした経験が重なると、大人になってからも、似た状況で身体が強い警戒を示すことがある。

愛着不安が強い人は、相手のわずかな変化に反応し、つながりを確保しようとする。回避が強い人は、誰かが近づくことで緊張が高まり、距離を置くことで落ち着きを取り戻そうとする場合がある。

接近と回避の葛藤が強い場合には、相手を求める気持ちと警戒する反応が重なり、身体がこわばったり、突然感情が分からなくなったりすることもある。

強いストレスのなかでは、頭が真っ白になったり、自分の感覚が遠のいたりする解離的な反応が生じる場合もある。ただし、これらの反応がすべて愛着の問題によって起きているわけではなく、現在のストレスや健康状態なども関わっている。

このような解離性障害や現実感が遠のく反応について理解することも、親密な関係のなかで身体が強い緊張を示す理由を考える手がかりになる。

愛着の問題を理解するうえで重要なのは、自分が何を考えているのかだけでなく、どのような場面で身体が緊張し、どのような相手や環境では落ち着けるのかを知ることである。

愛着スタイルは変わる――安全な関係がもたらすもの

幼少期に形成された愛着の傾向は、大人になってからも人間関係に影響することがある。しかし、その後に経験する恋愛や友人関係、安心できる他者とのつながりによって、人との関わり方が変化する可能性もある。

誰かに頼っても責められない。自分の意見を伝えても否定されない。相手と意見が違っても、関係そのものが壊れるわけではない。

こうした経験が積み重なると、親密さに対する不安や警戒心が少しずつ和らぐ場合がある。

Alyceら(2025)は、子ども時代に性的虐待を経験した成人17人への質的インタビューを通して、他者への信頼がどのように形成されるのかを調べた。

そこでは、人を信じようとする本人の努力だけでなく、相手が実際に信頼できる行動を取っていることの重要性が示されている。

約束を守ること、相手の意思を尊重すること、嫌だと言われたときに無理に踏み込まないこと。こうした具体的な経験によって、人は他者との関係に安心を見いだしていく。

愛着不安が強い人にとっては、相手の反応を何度も確認しなくても関係が続いているという経験が大切になる。

回避が強い人にとっては、自分の領域や自由を尊重されながら、親密さを経験できることが安心につながる。

接近と回避の葛藤が強い人にとっては、近づくことも離れることも自分で選べる関係が、重要な意味を持つ。

そのような関係では、相手に合わせ続けたり、拒絶を恐れて自分の感情を抑え込んだりする必要が少なくなっていく。

また、人との関係で安心できる経験が増えると、自分自身への信頼も育っていくことがある。

疲れているときには休みたいと伝えられる。相手と意見が違っても、自分の考えを持ち続けられる。誰かに好かれているかどうかだけで、自分の価値を判断しなくなる。

他者を信頼することと、自分自身の感覚を信頼することは、互いに支え合いながら育っていくのである。

今できる5つの身体ワーク

親密な関係で不安や警戒心が強くなると、頭では落ち着こうとしていても、身体の緊張が続くことがある。

そのようなときには、無理に考え方を変えようとするよりも、今いる場所や身体の状態を確かめ、少しずつ落ち着きを取り戻す方法が役立つ場合がある。

以下のワークは、それぞれ30秒から1分程度を目安に、自分が心地よい範囲で行う。

① オリエンティング――視線から周囲の環境を確かめる

座ったまま、ゆっくりと部屋のなかを見渡す。窓や家具、植物、柔らかい色の物など、自然に目に入るものを三つほど見つけてみる。

相手の表情や反応ばかりが気になっているときには、注意がその相手に集中していることがある。

周囲の景色を眺めることで、現在の環境にも意識を向けられるようにする。安心できる物を探してもよいし、ただ目の前に何があるのかを確認するだけでもよい。

② ゆっくり息を吐く――呼吸の緊張を和らげる

鼻から自然に息を吸い、吸うときよりも少し長めに、ゆっくり吐いてみる。

たとえば、3〜4秒程度で吸い、4〜6秒程度で吐く。秒数を正確に守ることよりも、苦しくならずに続けられることを優先する。

緊張しているときには、呼吸が浅く速くなっていることがある。呼吸の速さを少し落とすことで、身体の緊張が和らぐ場合もある。

息苦しさやめまいが生じる場合には、無理に続けず、普段の呼吸へ戻す。

③ ハミング――声と振動を感じる

小さく鼻歌を歌ったり、「んー」と軽く声を出したりしてみる。

喉や胸に伝わる振動を感じながら、無理のない長さで続ける。

人との会話で緊張していると、喉や胸のあたりが固まり、声を出しにくくなることがある。ハミングは、呼吸と発声に注意を向けながら、自分の身体の状態を確かめるための方法のひとつである。

声を出すことが負担になる場合には、好きな音楽を聴いたり、落ち着く音に注意を向けたりする方法でもよい。

④ 境界線のジェスチャー――自分の領域を感じる

胸の前に手のひらを向け、自分と周囲との間に、少し空間があることを感じてみる。

手を軽く前に出したり、身体に近づけたりしながら、自分が心地よい距離を探していく。

親密な関係で相手の要求に合わせ続けていると、自分がどこまで近づきたいのか、どの程度の距離が必要なのか分からなくなることがある。

このワークでは、自分にも心理的な領域があり、相手との距離を選んでよいという感覚を確かめていく。

⑤ 触れないセルフタッチ――身体との距離を自分で決める

身体に触れられることや、自分で身体に触れることに抵抗がある場合には、手のひらを胸や腕から少し離したところに置いてみる。

手を近づけたり、遠ざけたりしながら、自分が心地よいと感じる距離を探す。

親密さへの恐怖が強い人にとっては、触れられることそのものが緊張につながる場合もある。

大切なのは、身体に触れることよりも、自分で距離を調整できるという感覚を確かめることである。

これらのワークは愛着スタイルを直接変える治療法ではないが、自分の緊張や警戒心に気づき、現在の状態を整える手がかりになることがある。

愛着を回復していく3つの段階――安全・自覚・表現

親密な関係で不安や恐怖が強いときには、いきなり本音をすべて話そうとしたり、苦手な関係に無理に踏み込んだりすると、かえって負担が増すことがある。

まずは、自分が安心できる条件を知り、そのなかで少しずつ人との関わり方を変えていくことが大切になる。

① 安全――自分を守れる環境を整える

誰と会うか、どの程度の頻度で連絡するか、どこまで自分の内面を話すかを、自分で選べるようにする。

一緒にいると緊張が強くなる相手とは距離を調整し、安心して過ごせる時間を確保する。

また、断ると怒り出す相手や、こちらの意思を尊重しない相手に対しては、その関係が本当に安全なのかを見極めることも重要になる。

愛着不安が強い人は、相手から離れることで見捨てられるような恐怖を感じることがある。回避が強い人は、近づくこと自体が負担になる場合もある。

どちらの場合も、自分の意思で距離を選べることが、安心して関係を築くための土台になる。

② 自覚――自分の反応が生まれる場面を知る

相手の返信が遅れたときに不安になるのか。親しくなると息苦しくなるのか。相手から好意を向けられたときに、どのような感情や身体反応が生じるのか。

こうした変化を、少しずつ観察していく。

不安の奥には、見捨てられることへの恐怖があるかもしれない。距離を取りたい気持ちの奥には、自分の領域を侵害されることへの警戒があるかもしれない。

誰かとつながりたいのに、近づくことが怖くなるときには、その両方の気持ちが何を求めているのかを考えてみる。

自分の反応がどのような場面で強くなるのかが分かってくると、それまで自動的に繰り返してきた行動にも、少しずつ違う選択肢が生まれる。

③ 表現――小さな本音から関係を変えていく

安心できる相手との間で、自分の気持ちや希望を少しずつ伝えていく。

「今日は疲れているから休みたい」「もう少しゆっくり関係を深めたい」「返事が遅れると不安になることがある」。

そうした言葉を伝えたとき、相手がどのように受け止めるのかを確かめる。

相手が理解しようとしてくれるなら、その経験が信頼を育てていく。一方で、気持ちを伝えるたびに責められたり、支配されたりする場合には、関係そのものを見直す必要もある。

これまで相手に合わせることで関係を維持してきた人にとって、自分の意思を表現することは、強い不安を伴う場合がある。

しかし、自分の気持ちを伝えても関係が続くという経験を積み重ねることで、他者とつながるために自分を犠牲にし続ける必要が少なくなっていく。

親密さは、どこまで相手に合わせられるかではなく、互いの違いを持ったまま関わり続けられるかによって育っていく。

愛着スタイルを知ることは、自分の守り方を知ること

人と親しくなることへの不安や恐怖には、それまで生きてきた関係の歴史が関わっていることがある。

愛されたいのに、見捨てられることが怖い。誰かに頼りたいのに、依存することが怖い。親密さを求めながらも、近づかれると逃げ出したくなる。

こうした反応は、自分が何を求め、何から身を守ろうとしてきたのかを理解する手がかりになる。

愛着スタイルを知ることは、自分を不安型や回避型といった名前で固定するためのものではない。

不安型に近い反応があっても、自分の気持ちを表現できる関係を育てていくことはできる。回避型に近い反応があっても、他者との距離を自分で選べるようになることで、親密さへの負担が和らぐ場合がある。

また、近づきたい気持ちと逃げたい気持ちがぶつかっている人も、その両方が何を守ろうとしているのかを理解することで、少しずつ関係の持ち方を変えられるようになる。

人との関係で必要なのは、常に近くにいることでも、ひとりで何でもできることでもない。

自分が安心できる距離を知り、相手の意思も尊重しながら、必要なときにつながり、離れたいときには距離を取れること。

愛着の回復とは、人とつながることへの渇望と、傷つくことへの恐怖のあいだで、自分自身を失わずにいられるようになることである。

その感覚が少しずつ育つと、誰かを大切にすることと、自分自身を大切にすることが、同じ関係のなかで両立するようになっていく。

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井上 陽平

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)。
トラウマ・解離・PTSD・愛着障害を専門とする心理カウンセラー。
児童養護施設、情緒障害児施設、精神科クリニックでの臨床経験を積み、
心身反応(フリーズ・過覚醒・離人感)への介入や、
複雑性トラウマ、対人関係、境界線の問題に重点的に取り組む。

研究テーマは「複雑性トラウマの身体反応」「解離と自己構造」「愛着スタイル」「虐待と対人関係のパターン」。現在は「こころのえ相談室」にてトラウマ専門のカウンセリングを提供。書籍の企画・執筆に関するご依頼も承っております。

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