複雑性PTSDの方への接し方

複雑なトラウマ(複雑性PTSD)を経験している人は、今まで脅かされることが繰り返されてきたために、本来危険でない場面でも、無意識下で危険や生命の危機として誤って知覚してしまいます。人は、危険を感じると、交感神経(アクセル)や背側迷走神経(ブレーキ)が高度に活性化し、過緊張や過覚醒状態になります。

複雑なトラウマを経験している人が、長期に渡り、生活全般のストレスと緊張が強いと、些細なことでも過剰に反応し、感覚過負荷になり、闘争・逃走反応や凍りつき、死んだふりの状態に陥っています。この状態から回復するには、この世界を安全だと判断し、社会と関わるシステムを育てる必要があります。また、安全である感じや落ち着いた状態で過ごせるように環境を整えることが重要になります。

基本的な交流の仕方

複雑なトラウマを経験している人への接し方としては、ゆったりとした落ち着いた姿勢でいることを心がけ、表情豊かで、抑揚のついた声をして、情緒的に交流できるほうがいいです。そして、トラウマを持つ人の話に耳を傾けて、心に寄り添い、理解を深めていきながら、安心して穏やかな気持ちで交流をしてもらえるような雰囲気作りをして、心臓を落ち着かせるように働きかける必要があります。トラウマを持つ人を不安な気持ちにさせないように、余計な一言や嫌味な言葉、見放したような言葉を言わないようにしましょう。また、心臓を脅かすような強い口調を使わないように気をつけましょう。さらに、大きな音に対して、心臓が驚く場合もあり、音を出すことに注意をしましょう。

トラウマを理解したうえで関わる

複雑なトラウマを経験している人は、嫌悪刺激や不快な状況において、無意識下で危険に感じて、交感神経や背側迷走神経が過活動になり、闘ったり逃げたりする反応や、凍りついたり死んだふりする反応が出てしまいます。また、脅威に対して、警戒心が過剰になり、体は常に力が入って、頭の中では思考が回転し、もの凄く疲れてしまいます。トラウマを持つ人が、嫌悪刺激や不快な状況に曝されてしまうと、無意識のうちに生き残りをかけた反応が出てしまい、感情が溢れてきて、とても辛くなることを理解しましょう。トラウマがある人は、これまでの危機的な経験が身体に刻み込まれており、とても危険を感じやすい状態になっています。そのため、不快な状況から身を守るように、常に目を凝らして、耳を澄まして警戒するため、気配過敏や聴覚過敏になることが多いです。

様々な場所、音の種類も無数にあるので、どのような場所や音を苦手と感じて、過剰に反応するのかは人により異なります。例えば、人混みの中、エレベーターの狭い空間、背後に人がいることなど、もし誰かに襲われたらどうしようと恐怖心が強まって、心臓がバクバクしたり、息が止まったり、体が震えたりします。また、人の声の大きさ、くちゃくちゃ食べる音、子どもの癇癪、犬の吠える声、工事の音、扉を閉めるときの大きな音などを聞くと、神経が苛立ったり、驚愕反応を起こしたりして、苦手になる場合があります。トラウマを持つ人に関わる人は、トラウマの理解や知識を深めてうえで、本人の苦手なことを把握し、上手に回避するようにしましょう。上手く回避できない場合は、体調が悪くなり、落ち込んだり、イライラしたりして、トラブルに発展しやすくなります。

無理に頑張らずに自然体でいる

複雑なトラウマを経験している人は、一緒にいても穏やかにゆっくり過ごせて、心底では自分を助けてくれる人を探しています。トラウマを持つ人への接し方としては、トラウマがある人を助けようとしたり、要求に従ったり、一生懸命に問題解決するために動いたりしていると、接している人自身のエネルギーが消耗してしまいます。自分が疲れすぎないように相手に対して、できることはしてあげてもいいですが、できないことはしないようにしましょう。

トラウマを持つ人に接する人は、その人の問題解決をしたり、成長を促したりするよりも、何もしないで、自然体でいるようにするか、自分の心身を最高の状態に持っていくことにエネルギーを注ぎましょう。自然体や心身を最高の状態に持っていくには、瞑想やヨガ、ソマティックエクスペリエンス、カウンセリング、リラクセーション、マインドフルネス、アート、ダンス、音楽療法などあります。

コミュニケーションの取り方①

複雑なトラウマを経験している人は、自分を理解してもらえないことに思い悩み、自分の気持ちに蓋をしてしまっている人もいます。相手から自分を気にかけてもらえたり、心配してもらえるなど、優しく接してもらえると心を開こうとしますが、相手の接し方によっては、再び心を閉ざしてしまうこともあります。

例えば、トラウマを持つ人に対して、一方的な声かけや質問を立て続けに行うと、その勢いに圧倒されて、その威圧感により疲弊してしまいます。過緊張状態で複数のことを抱える余裕がないため、話しかけられた内容の情報処理が追いつかなかったり、記憶から飛んでしまったりする時があり、何から答えて良いのか、全て答えられるか不安になり、自信をなくしてしまって、返事したり答えたりすることが苦しくなります。また、相手のペースにのみ込まれる状況に立たされると、この人は本当に自分の話を聞いてくれようとしているのかという疑念がわき、不信感を募らせてしまいます。そして、相手に一生懸命合わせようとしますが、自分が相手のペースに追いついていけないので、自分が置いていかれているような気持ちになり不安になり、相手に嫌悪感を抱いて、距離を置いてしまうことがあります。

コミュニケーションの取り方②

複雑なトラウマを経験している人は、外の気配に対して過敏になり、耳を澄まして情報処理が過剰になっているため、頭の中の情報が容量オーバーとなり溢れて事態を招き、新しい情報が入ってきても留めておく(記憶しておく)ことが困難な場合があります。そのため、人の話(情報)が複数混在すると、前の話(情報)が溢れ落ちるので記憶として残らないことになり、情報処理が難航し理解できなくなり、まとまりのない言葉を発してしまったり、相手の意図を理解しにくくなります。その結果、コミュニケーションの取り方にも影響して噛み合わない等の不器用なやりとりとなってしまう場合もあります。

トラウマを持っている人が、会話中に、理解できていない様子だったり、不安そうにしていたり、焦りや落ち着きのなさがみられた時には、いったん一息つくなどして、相手のペースに合わせて、ゆっくり会話をしてもらえたら安心につながります。また、相手の気持ちが落ち着くまで気長に待ってもらえると徐々に心にゆとりも出てきて思考が整理しやすくなります。

本当の自己を理解する

複雑なトラウマを経験している人は、親から虐待やネグレクトを受けている場合もあり、家族の中で苦痛を感じながら、我慢を重ねて耐え忍んだり、丁寧に関わるしかありませんでした。子どもの頃から、いい子でいるように自分を偽ってきたので、どこかで燃え尽きてしまい、自己調整能力が喪失して、感情のコントロールができないとか、認知の歪みとか、不適応な行動を取っている事があります。トラウマを持つ人としては、本当は落ち着いていたいし、冷静に適切な行動を取りたいと思っているのに、いくら努力を重ねても実際には上手く行かないことばかりで、どんどん自分が理想とする姿から遠ざかってしまうので、自己嫌悪感が増していき、悲しくて悔しい思いを抱いてしまいます。

トラウマを持つ人に関わる人は、感情のコントロールができず、認知が歪み、不適応な行動を取っているその姿を、その人だと思って関わると、複雑なトラウマを持っている人からすれば、私のことを全く分かっていないと感じて、怒りや悲しみになります。そのため、現在の不適応な行動は、子どもの頃から脅かされることが繰り返されてきたため、生き残る反応として、そうした言動が出ていると考えましょう。そして、トラウマを持つ人が子どもの頃から必死に頑張ってきた部分や、良い部分に着目して、トラウマの症状ではない本当の部分を理解していきましょう。

安全に過ごせる環境作り

複雑なトラウマを経験している人は、生き延びるために、常に気をつかいながら生活をしているので、警戒心を緩めることができず、頭の中では、絶え間なく警報が鳴りまくっています。また、脅威の渦中から抜け出せない感覚が続き、疲れ果てており、自律神経が大きく乱れて発作が起きたり、体調が悪くなったりするので、安心・安全な環境を求めています。そのため、トラウマを持つ人に関わる人は、発作が起きないように気配りをしたり、体調が悪くならないように、安全に過ごせる環境作りに協力しましょう。

健康に暮らすための工夫

複雑なトラウマを経験している人が、この世界に対して安心して生活しやすいように様々なことを工夫しましょう。例えば、気持ちが落ち着くような音楽を聴いたり、暖かく過ごせるように配慮したり、アロマの匂いを楽しんだりしましょう。トラウマを持つ人は、不安や心配が出てきやすいので、一緒にしっかり話し合いましょう。トラウマを持つ人が落ち込んでいるときは、一緒に海に行ったり、空を見上げたりしましょう。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-01-21
論考 井上陽平

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