解離

解離は、トラウマのショックに対するこころの防衛として働きますが、明確なトラウマがない人でも、解離症状は現れます。例えば、感覚過敏な人や体が弱い人は、解離しやすいです。また、トラウマというのは、胎児期や乳児期の頃でも受けるので、まだ記憶のないときに、トラウマを受けている可能性があります。解離症状は、虐待などトラウマ(心的外傷)で傷ついている人の心と体を理解する鍵概念であると思います。

外傷体験により

人は外傷的な出来事に曝されて、大きな精神的・肉体的ショックを受けたとき、子供のように体格が小さく、戦っても敵わない相手には、恐怖や痛みに耐えるしかなくなり、凍りついて動けなくなり、死んだふりや虚脱するなど不動状態になります。凍りつきは、周りを注意深く観察しながらも、筋肉が硬直して、手足の感覚が分からなくなり、恐怖で動くことも、叫ぶこともできなくなります。死んだふりは、体を縮めて丸まり、動かないで敵が去るのを待ちます。虚脱は、筋肉が崩壊して、急激な血管拡張から、心臓の鼓動が落ち、心拍数や血圧が低下し、血の気がサーーと引いて、意識が朦朧として、打ちのめされた状態になります。人によっては、頭の中が真っ白になり、意識が遠のいて気を失います。そして、その記憶は、断片的にしか思い出せなくなります。

人は、何度も脅かされる環境にいると、抵抗ができなくなり、動けなくなります。常に体が凍りついて、感情や感覚が消えたり、過覚醒や解離、離人、死んだふりといった防衛を取ります。しかし、その防衛も打ち破られると、精神が崩壊していきます。それでも生きているので、自分が自分で無くなり、ずっと夢の中にいるような感じで、生きている感覚が分からなくなります。

解離とは

解離というのは、脅威に曝された人が、恐怖に怯えるしかなく、強いショックを受けたときの凍りつきや不動状態のときに生じて、痛みや恐怖を鎮静させる効果があり、生き残りのための防衛反応になります。注意点としては、解離は、誰にでも普通にある正常な範囲のものもありますが、ここでは、解離を主として著しい苦痛の無意識的防衛として考えています。

脅威の対象から、何度も脅かされることが繰り返されると、体が動かなくなります。体が動かないのに、さらに脅かされると、人間の体は、首の神経や血液、リンパの流れが遮断されたようになり、そこを境にバラバラになる恐怖が襲います。息の根を止められそうになると、頭と首にショックを受けて、その部分が縮み上がり、顔全体は圧迫感を感じ、赤みをおび、汗が出て、眼は見開くような感じで充血します。首の圧迫感や胸の痛みで、呼吸は止まり、脳への血液の流れが止められそうな恐怖で気を失いそうになります。交感神経がシャットダウンすると、心臓が落ちて、心拍数や血圧は下がり、脳が虚血状態に陥り、血の気がサーーと引いて、意識が遠のき、その場に崩れ落ちます。解離は、身体に強い負担がかかる場面において、その痛みや恐怖、破局的な体験を切り離すことにより、心を守って、生存の可能性を高めます。そして、生活全般が困難な状況にあっても、感覚や感情を切り離すことで、うまく立ち回ることが可能になり、的確な行動を取ります。解離している人は、身体感覚を欠如させながら、あたかも正常かのように見せて、正常な生活を続けます。

解離症状・解離性障害の原因

解離症状は、解離性障害だけでなく、他の障害や身体疾患でも生じます。解離症状のスタートは、体が外の気配に対して怯えています。体に不安が出てきて、さらに外の気配や対人関係に過敏になり、人から傷つけられるという恐怖が体を内側から絞めつけていきます。過去の嫌な感覚に巻き込まれると、息苦しくなり、どんよりした感覚のなか、息がしづらく、視界がぼやけて、過呼吸やパニックなどの混乱状態に陥り、体が震えます。そして、警戒し続けるサバイバルな人生になり、体が凍りついて、頭の中で思考しているか、身体感覚がぼやけて、頭の中もぼやけて、物事がはっきりしなくて、解離や離人、虚脱していきます。

体が弱くて病気がちな子供

低出生体重や早産でリスクが高い、発達障害(自閉症、ADHD)、喘息、アレルギー体質、アトピー、鼻炎、高熱、自家中毒、過敏性腸症候群など、身体的な脆弱性を持っている。

生活全般がストレスと緊張状態にある子供

児童虐待やDV、機能不全家庭、親と死別、親の病気、学校・兄弟のいじめ、施設育ちなどに多く見られます。

発達早期にトラウマを負っている子供

幼少期に、事件に巻き込まれたり、事故に遭ったりして死ぬような体験、医療トラウマ、子宮内の環境などです。

レイプなどの犯罪被害者

レイプなどの犯罪被害に遭い、抵抗できない体験をした人に多く見られます。

過敏症

体の中にトラウマを抱えている人が、気の休まる場所がなく、脅かされる環境の中にいると、外の気配に意識が向いて、音や光、匂い、人の気配、表情、感情などに過敏になります。そして、周囲との関係が最悪な方にいかないようにするため、頭の中で過剰な情報処理努力をして、適度に感覚を遮断させながら、慎重に行動します。

凍りつきと原因不明の身体症状

脅かされることが繰り返されると、次また同じことが起きると思って、常に過剰警戒になり、体が縮まった状態にロックされて、慢性的に凍りつき状態になります。凍りついた状態では、無意識のうちに緊張し続けるようになり、喉はつっかえ、息苦しくて、低酸素状態で、血圧や体温も下がっていきます。覚醒のレベルは下がって、現実感が無くなり、活動性は低下して、自律神経系、ホルモン系、免疫系に影響が出て、原因不明の身体症状に苦しみます。

現代病

現代人は、スマホやパソコンで動画を見たり、テレビを見たり、音楽を聴いたり、バーチャルな世界に浸りきっています。実際の世界で身体の感覚を通じて物事を経験したり、感じたりすることが減っているため、身体感覚が欠如し、自己感が喪失している人が増えています。

解離性障害

原因不明の身体症状の不安から始まり、過呼吸やパニックで混乱して、外の気配にも過敏になり、人から傷つけられるという恐怖が襲い、自己の統制感が欠けた状態になります。そして、典型的な解離症状を示すようになり、現実感喪失、離人感、身体感覚・運動の麻痺、注意・集中の問題、強迫症状、被害妄想、解離性健忘、感情鈍麻、意欲の低下、絶望や無力感、希死念慮、自傷行為、行動の自動化、別人格化、アイデンティティが混乱します。

解離性障害の人は、虐待などがあり、本当に大変で、日常生活を営むために、物事を忘れていきます。離人感・現実感喪失症は、身体または精神から自分が切り離されたような感覚があります。離人感では、突然自分の身体から重力を失って、身体から切り離され、自分の生活を外から観察しているように感じます。現実感喪失症では、自分がこの世界そのものから切り離されたような疎外感を感じます。解離性健忘は、時間の流れが切り離され、通常の物忘れでは一般的に失われることのない重要な個人的情報を想起できなくなります。

解離性障害の人は、体が凍りついて、感情や感覚が切り離され、ただの抜け殻や人形みたいになっていきます。生きている感覚が分からなくなり、夢の世界に入り込んで、現実と夢との区別がつかなくなり、何をしていたかを覚えていません。病的な解離は、脳と身体を繋ぐ神経回路が遮られることで、自己意識や認識過程(すなわち、感覚、知覚、思考、記憶、言語、運動、判断、意図、時間など)に綻びが生じます。そして、自分が自分であるということが分からなくなったり、周囲の世界から切り離されているように感じたりします。そのため、自己同一性や身体、時間、感情、思考などが断片化します。

脅威に曝される生活が続くと、体はガチガチに凍りついた状態になり、ストレスと戦うためのエネルギーが消耗しきって、最小限のエネルギーで活動するようになり、半分眠ったような低覚醒状態に陥ります。解離は、生活全般のストレスや緊張が強い人が、その恐怖や苦痛から、自分の心を守るために使われて、極限の状況下でも生活を続けさせてくれるものです。しかし、実際には体に大きな負担がかかっているので、学校生活や社会生活を続けていくうちに、心や体が蝕まれ、原因不明の症状に陥り、弊害の方が大きくなります。

解離性同一性障害

解離性同一性障害は、かつて多重人格障害と呼ばれていた精神障害です。複数の人格が同一人物の体の中にいて、日常生活の場面に応じて交代して現れてきます。主に主人格が日常生活を担当していて、子どもの人格がどこかに隠れており、他にも戦う人格や逃げる人格、無力な人格などがいます。主人格がピンチになると、臨戦態勢に取り、別の人格が上手く立ち回ろうとします。主人格は、慢性的に体が警戒し、凍りついており、異常な状態のなか、物忘れが激しいです。日々の出来事やトラウマになった出来事やストレスになる出来事など、通常ならすぐに思い出せることも思い出すことができません。

体を明け渡すという防衛

人により、解離症状の重たさは様々ですが、彼らは、身体の中に空洞があり、自分が実存しているという感覚が薄く、自己感の喪失という恐怖があります。そして、夢と現実の境目が無くなり、自分が自分でいられなくなって、狂気のまっただなかにいるかもしれません。そして、その時その時、自分の体をもう一人の私に明け渡して、本来の私は、もう一人の私が生活しているところを離れた場所から見ているかもしれません。また、本来の私は、脱身体化して、白昼夢に逃げ込み、向こう側の世界に浸っているかもしれません。家族を含めた周りの人は、役割を演じているもう一人の私を、私だと思っていくので、本来の私が、向こう側の世界に行ってたり、自分が自分で無くなりそうな狂気のまっただなかにいるなんて、知る由もありません。

解離症状の人が日常生活を送る中で

障害となる解離症状を持つ人は、日常生活のありとあらゆるものがトラウマのトリガーになっているかもしれません。外の世界では、トリガーを引かないようにして、警戒心を強め、神経が張りつめた状態が続き、体が慢性的に収縮しています。一方、家に帰ると、エネルギーが切れて、極度に弛緩した状態になり、動けなくなって、何も出来なくなるかもしれません。日常生活で、脅威の対象と共にいなければならない場合は、息を潜め、人目につかないように隠れながら、冷静に観察して、その対象が去るのを待つか、すぐに対応できるように身構えています。そして、脅威が近づいてくると、凍りつきや死んだふり、解離、虚脱化、服従して、背側迷走神経が過剰に働き、脳や体の機能が制限されます。

日常生活のなかで脅かされることが繰り返されると、不安や恐怖、怯えから動けなくなり、疲労が蓄積されていきます。眠れない日々が続くと、体がおかしくなって、顔の表面がぴくぴくと引きつったり、心臓付近が鷲づかみされるような痛みを発したりします。また、喉がつっかえて、呼吸がしづらく、寒気や気持ち悪さ、血の気が引くなどして、嫌な眠気に襲われたりします。トラウマのトリガーを引いてしまうと、恐怖に足がすくんで、手足に急に力が入らなくなり、動けなくなって、手足が震えます。

解離・離人症では、痛みの伴う体から切り離されたように感じています。本当は傷ついているはずなのに、その苦痛を感じたくないので、意識的に痛みの部分を捩じらせて、心は苦痛な体から離れています。心が体から離れると、頭に中だけの生活になり、感覚や感情が麻痺して、現実感が無くなります。ショックなことがあると、その場に立ち尽くすか、眠くなるか、意識がぼんやりするか、注意が散漫になります。酷い状態になると、意識が朦朧として、放心状態になり、気を失うこともあります。

心身とも限界に達すると、生き生きとした世界が枯渇し、エネルギー切れが起きて、生きる気力が出ません。さらに、生活全般が大変なため、体から離れて、頭を空っぽにして、ぼんやりしたり、現実離れした感覚になったり、まるで夢の中の世界で生きてるように感じたりすることがあります。また、喜びや幸せを感じることが出来なくなり、考えることも難しくなって、今までの経験も思い出せず、数分前のこと、数時間前のこと、昨日起きたことも覚えられない異常事態が起きます。

この異常事態により、心が無くなり、自分が自分で無い状態になり、誰かいないと自分を保つことができなくて、一人になると落ち着かず、どうすれば良いのか分からなくなります。中身は空っぽで、個性や性格も無くなれば、役割をこなすだけの人間になります。酷くなると、家の中で引きこもるようになり、体力がなくなります。体の機能が段々と低下し、人生に絶望して、無気力になり、風呂にも入れず、寝たきりになる人もいます。

解離症状の人の主観的世界

健康な人は、心と体が合致して、自分の性格や考えがあって、過去の情景を思い出すことができます。障害となる解離症状がある人は、過去の自分と今の自分が繋がらなくなっており、子ども時代の大きな出来事を、本人が覚えていないことが多く、日常の中で恐怖やストレスが高まると、解離モードに自然にシフトしていきます。そして、心と体が一致しなくて、自分の気持ちが分からなくなり、深く考えることもできなくなって、この世界の彩りが失われたり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。

障害となる解離症状がある人は、自分が自分でなくなるという自己存在の不安(絶滅の不安)が基盤にあり、外の世界に対して実感が湧きにくく、見え方が変わり、夢の中で生きているような感じがして、自分の記憶のない間に何が起こるかわからない恐怖があります。体が凍りついて、自分が年齢を重ねていくという実感も失われて、自分のことが理解できなくなり、大人を演じるようになります。

彼らの見た目は健常者ですが、内心はとても怖がりで、ビクビクしており、恐怖と麻痺の世界で閉じ込められています。症状は複雑なので、人によって違いますが、周りにいる人に対して、被害妄想を持ちやすく、自分の悪口を言われているとか、いつ暴言を吐いてくるかとか、人の目を気にして、いつも怯えています。人と関わる場面では、緊張が強まりすぎて、どう対処するべきかと悩みます。

この世界が怖く、自分を覆うヴェールの中にいて、視野が狭くなり、皆と同じことをしようとしても、体がすぐに固まり、自動的に制限がかかります。体は海の中にいるようなどんよりした感覚があり、息苦しく、自分が向かいたい方向性が見えなくなっています。一方、苦しい状態から離れて、頭はいつも青い空を見ています。日常生活でしんどいことがあると、意識が遠のき、声が聞き取れなくなります。また、頭の働きが鈍くなり、不器用で作業がしづらくなります。緊張が強まる場面では、頭の中がフリーズして、声が出ない、何も考えられない、話がまとまらない、感覚も分からない、集中できない、注意散漫、よく物を落とすなどの症状が出ます。

恐怖に直面したときに、足がすくんだり、腰が抜けて動けなくなったり、体がこわばったり、手の感覚がなくて動かせなかったり、頭がフリーズして機能停止することまであります。また、息が止まって、全身が縮まり小さくなっていく感覚や、凍りついて固まる感覚、心臓が痛む感覚、意識が遠のいていく感覚、身体がバラバラになる感覚、腸がねじれていく感覚、身体の中は穴だらけで空洞な感覚、自分の手がゴムのように見えるなど、自分の身体ではないと感じています。

普段から、何も感じられず、何も考えられないことに苦しみ、内から湧き起こる不合理な衝動に恐怖して、病理的な世界に逃避する傾向があります。そして、解離した情動や光景のフラッシュバックや、神経の痛みから身を守るために回避行動をとります。さらに、生きる屍のような状態による苦痛を和らげて、生き生きとした気分になれることに対して、異常なまでにのめり込んでいくこともあります。危険な行動や自傷行為、薬物、アルコール、過食、買い物、ギャンブル、セックスなどの依存症になって、周りを巻き込むかもしれません。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-01-30
論考 井上陽平

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→解離性障害の特徴16項目
解離性障害は、自分が自分であるという感覚が失われている状態で、まるで空想の繭の中に自分自身を包み込んで、外界の刺激から自分の身を守ります。しかし、その影響により、現実感が無かったり、ある時期の記憶が全く思い出せなかったり、いつの間にか自分の知らない場所にいるなど、生活面での様々な支障をきたしている状態です。
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