解離は、トラウマのショックに対するこころの防衛として働きますが、明確なトラウマがない人でも、解離症状は現れます。例えば、発達障害の感覚過敏がある人やHSPの人、体が弱い人は、解離しやすいです。また、トラウマというのは、胎児期や乳児期の頃でも受けるので、まだ記憶のないときに、トラウマを受けている可能性があります。解離症状は、現実感や自己認識、記憶、身体感覚などに関連する精神的な病を指します。例えば、記憶喪失、身体的存在感の喪失、自分自身が身体から離れている感覚などあります。解離は、虐待などトラウマ(心的外傷)で傷ついている人の心と体を理解する鍵概念であると考えられています。
解離とは分かりやすく説明する
解離は、トラウマの経験者だけでなく、多くの人々や動物にまたがる一般的な現象です。これは、トラウマ的な経験によって引き起こされたり、逆境的な体験、身体的な病気、自然災害、事故によって引き起こされる場合もありますが、重要なのは、過剰な刺激によって人が誰であろうと、解離の経験はよく起こります。
解離とは、危機的な状況において身動きが取れないときやトラウマ体験、過剰なストレス、過剰な刺激に頭がいっぱいになり、処理できないときに自然と起こる感覚遮断や現実から遠ざかる現象です。これは、脳に搭載された防御メカニズムの一部として知られており、過剰なものから脳を保護するために、ブレーカーのように作用します。
別の言い方では、解離とは、ストレスやトラウマから解放するために、感覚遮断を行い、生々しい刺激から遠ざかろうとする無意識の反応です。長期にわたって脅かされる経験が続いた場合は、解離は持続する可能性があります。このような状況では、常に感覚が切り離された状態が続き、身体的、精神的な問題が生じる可能性があります。
外傷体験とは
外傷的な体験に曝され、大きな精神的・肉体的ショックを受けた場合、恐怖や痛みに耐えることしかなくなり、身体が小さくなって動けなくなったり、凍りつきや虚脱の不動状態に陥ることがあります。凍りつき状態では、周りを観察していても筋肉が硬直し、動けなくなって、恐怖で声を上げたり、動こうとすることもできなくなってしまいます。また、体を小さく丸めて、敵が去っていくのを動かないまま待つこともあります。虚脱状態は、血管が拡張して、心臓の鼓動が弱まり、意識が朦朧となり、意識を失うこともあります。このときの記憶は、断片的にしか覚えていないかもしれません。
人々は、頻繁に脅かされる状況に陥ることで、抵抗しなくなり、筋肉は固まって動きが取れなくなっていき、そのような反応が必要ない場面でも、同様の反応をしてしまうようになります。このような状況では、喉が窒息するような感覚や、体の痛みや疲れとともに不安が高まります。こうした感情によって、人々は身体を小さく丸めてやり過ごし、内なる世界に逃げ込むようになります。また、身体は凍りつき、感覚や感情が失われ、過覚醒や解離、離人、死んだふり、人間性の喪失などの防衛反応が起こりますが、これらの防衛も打ち破られると、精神崩壊が起こります。しかし、人々はまだ生きているため、自分自身と繋がりを失い、現実と自分自身を意識できなくなり、身体を防衛的な部分に明け渡して、まるで夢の中にいるような世界に飛んで、生きていることさえ感じられないような状態に陥ります。
トラウマ体験時の解離
トラウマ体験時に起きる解離は、脅威に曝された人が恐怖に怯え、強いショックを受けたときに生じる不動状態のときに生じます。解離は、痛みや恐怖を鎮静させる効果があり、生き残るために自動的に生じる生物学的な防衛反応です。ただし、解離は正常な範囲にあるものもありますが、ここでは著しい苦痛の無意識的防衛と考えられています。
すぐに凍りつく人は、脅威に曝されたときに、心臓がバクバクしながらも、身体が動かなくなります。このような状況でさらに脅かされると、人の体は、首部の神経や血液、リンパの流れが遮断されたような状態に陥り、そこからバラバラになるような恐怖が襲います。息の根を止められそうなところになると、頭と首にショックを受け、顔全体が圧迫感を感じ、赤みを帯び、汗が出て、眼は見開かれ、充血します。首部の圧迫感や胸の痛みで呼吸が止まり、脳に血液の流れが止まりそうな恐怖で気を失いそうになります。交感神経がシャットダウンすると、心臓が落ちて、心拍数や血圧は下がり、脳が虚血状態に陥り、血の気が引いて、意識が遠のき、その場に崩れ落ちます。
解離は、人体に負担がかかり過ぎた状況で、心を守るために、身体の痛みや恐怖、破滅的な体験を切り離すことです。また、防衛的な人格部分に切り替わって、うまく立ち回ることが可能になるため、生存率を向上させます。これによって、解離することで、生活が困難な状況でも感覚や感情を切り離して、的確な行動を取ることができます。解離している人は、現実世界の生々しい刺激から身を守るために変性意識状態に入り、自己陶酔感に浸りますが、体の中には別の人がいてあたかも正常かのように見せて、正常な生活を続けます。
解離症状・解離性障害の原因
解離症状は、個人の精神的な障害に限らず、他の疾患や身体的な障害からも生じます。解離症状の始まりは孤独な状態において、信頼できる場所もなく、外界からの刺激に対して不安が高まり、心と体が恐怖に駆られるというものです。不安が引き起こされると、外界や人との関係に敏感になり、人から傷つけられる恐怖が体内を圧迫します。過去に抱える悪い経験や感情が現れたとき、息が詰まり、空気を吸い込むことが困難になり、視界が曇って、過呼吸やパニックなどの混乱状態に陥ることがあります。これによって、常に警戒を保って生きていくことが必要になり、心が動かなくなり、体が凍りつき、表情が暗くなり、発言が減ります。頭の中がぼやけていて、物事がはっきりとしない状況で、解離や孤立、空虚感が強くなっていくことがあります。
解離性障害になりやすい要因としては、以下のようなことが挙げられます。
体が弱くて病気がちな子供
低出生体重や早産によってリスクが高まること、発達障害(例えば自閉症やADHD)、呼吸器疾患(喘息)、アレルギー体質、アトピー性皮膚炎、鼻炎、高熱、自家中毒、過敏性腸症候群など、身体的な脆弱性を有することが考えられています。これらは、身体的な弱さから生じるストレスや不安を背景として解離性障害の発症に関連している可能性があります。
生活全般がストレスと緊張状態にある子供
子ども期に児童虐待や家庭内暴力(DV)に遭遇した経験、機能不全な家族環境、親との死別や親の病気、学校内のいじめや兄弟間のトラブル、施設育ちなど、複雑なストレスを受ける経験が多いことが多いことが見られます。これらのような経験は、子ども期に心的な負担を引き起こし、解離性障害の発症に寄与する可能性があります。
発達早期にトラウマを負っている子供
幼少期に事故や事件などの恐ろしい体験に巻き込まれ、または、医療トラウマや子宮内の環境など、自分自身が無力な状況に置かれた経験があることが多いことが見られます。これらのような経験は、子ども期に心的な負担を引き起こし、解離性障害の発症に寄与する可能性があります。
レイプなどの犯罪被害者
女性の方が多いとされており、暴力的な犯罪に被害に遭ったり、抵抗することができなかった体験をしたことがある方が多いということが見られます。これらのようなトラウマ的な体験は、心理的な影響を及ぼし、解離性障害の発症に寄与する可能性があります。
過敏症・敏感さ
トラウマの病歴を持つ人々は、安全な避難所を欠いており、脅威的な環境にいる可能性があり、音、光、匂い、人の存在、表情、感情などの外部刺激に非常に敏感になります。さらなる否定的な相互作用を避けるために、彼らは圧倒的な情報を処理し、感情的安定性を維持するために慎重に行動し、感覚入力を注意深く調整するために過度の認知努力をする可能性があります。
凍りつきと原因不明の身体症状
繰り返される脅威の影響により、常に過剰な警戒が必要になります。このような状況では、身体が緊張し、不安になり、慢性的に凍りついた状態にロックされます。これにより、無意識のうちに緊張し続けるようになり、エネルギーが尽きると、活動性や覚醒のレベルが低下します。このような状況は、免疫系、自律神経系、ホルモン系に影響を与え、原因不明の身体症状を引き起こすこともあります。
現代病
現代の生活において、スマートフォンやコンピューターなどのデジタルツールを通じて、バーチャルな世界に多くの時間を費やすことが多くなっています。実際の経験や感覚を通じて物事を経験することが減っているため、身体性が劣化し、自己感が喪失している人が増えています。また、現代社会が複雑化しており、単純なものではなくなっていることも解離性障害を引き起こす可能性があります。
解離性障害
原因不明の身体症状から不安が始まります。不安からは、過呼吸やパニックを引き起こし、外界からの気配に過敏になり、人から傷つくことへの恐怖が強まります。こうして、自己の統制感が欠落し、典型的な解離症状が現れます。現実感喪失、離人感、身体感覚や運動の麻痺、注意や集中の問題、強迫症状、被害妄想、解離性健忘、感情鈍麻、意欲の低下、絶望や無力感、希死念慮、自傷行為、行動の自動化、別人格化、アイデンティティの混乱などが含まれます。
解離性障害のある人は、虐待、ネグレクト、いじめに苦しむことが多く、日常生活に大きな困難をもたらし、物事を忘れてしまう可能性があります。離人症と現実感喪失症の感覚は、彼らが自分の体や世界自体から切り離されていると感じさせる可能性があります。離人症では、突然重力の感覚を失い、まるで自分の人生を外から観察しているかのように、自分の体から切り離されていると感じるかもしれません。現実感喪失症では、彼らは世界自体からの疎外感を感じるかもしれません。解離性健忘症は、時間の知覚の切断を引き起こし、通常の忘却で通常失われない重要な個人情報を思い出すことができなくなります。
解離性障害の人々は、自分自身の感情や感覚が凍りついて、切り離され、抜け殻のような存在になっていくことがあります。このような辛い日々を送ることで、生きている感覚が失われ、現実と夢の区別がつかなくなり、何をしていたかすら覚えていないという状況に陥ることもあります。
この病的な解離は、脳と身体を繋ぐ神経回路が妨げられることによって、自己の意識や認識過程に異常が生じます。これにより、自分自身が自分であることを知らなくなったり、周囲の世界から切り離されているような感覚を持ったりすることもあります。このため、自己同一性や身体、時間、感情、思考などが断片化していることもあります。
生活が脅威の対象に囲まれた状態が長期的に続くと、体は緊張しすぎて凍りついた状態に陥ります。これによって、ストレスと戦いながらエネルギーを消耗することになり、エネルギーを最小限に抑えた状態で生活を送ることになります。その結果、眠ったような低い覚醒状態に陥ります。解離とは、生活全般からの激しいストレスや緊張から自分の心を守るために使われるものです。これにより、極限の状況下でも生活を続けさせることができます。しかし、実際にはこのような解離によって体に大きな負担がかかっているので、長期的な学校生活や社会生活を続けていくうちに、心や体が蝕まれ、原因不明の身体症状に陥り、弊害の方が大きくなる可能性があります。
解離性同一性障害
「解離性同一性障害」とは、以前は「多重人格障害」と呼ばれていた精神障害です。この病気は、複数の人格が同一人物の中に存在し、日常生活に応じて交代することで現れます。主人格が日常生活を担当していますが、子どもの人格や戦いの人格、逃げたい人格、無力な人格などが、隠れています。主人格がトラブルに陥ったとき、別の人格が現れて対応することもあります。一方、主人格は常に警戒していて、心が凍りつき、異常な状態のなかで、物忘れが激しいという症状があります。また、普段は思い出せる出来事やトラウマ的な出来事、ストレスの原因となる出来事なども、思い出すことができないことがあります。困難な状況が続くことで、一つの主人格から交代する人格が分かれていくことがあり、最終的には「解離性同一性障害」となります。
体を明け渡すという防衛
解離症状は、個人差があり、その深刻さには差がありますが、影響を受けた人々は、身体の中に空洞が感じられ、自分が存在するという認識が薄いこと、自己意識の喪失に対する恐怖を抱えます。夢と現実の境界が曖昧になり、自分自身を保持することができなくなり、混乱と絶望的な状況に陥った場合もあります。このような場合、自分自身を他の人格に明け渡し、自分自身が住んでいる場所から別の人格が生活する場所を見守ることもあります。また、自分自身を物理的な身体から分離し、夢の世界に逃げ込むこともあり、脱力感に浸りながら、異次元の世界に没入することもあります。周囲の人々は、他の人格が本来の人格であると考えているため、本来の人格が異次元の世界にいることや、狂気の中にいることを知ることはありません。
解離している子どもたち
解離している子どもたちは、自分が解離していることに気づいていない場合が多く、トラウマに気づいていない代わりに身体がトラウマを覚えているため、原因不明の身体症状が現れることがあります。彼らは、苦しみや痛みを簡単に切り離し、現実から遠ざかって空想に耽ることが多くなります。また、別の人格に交代することができる人もいて、自己状態を行き来しているときには、記憶が欠落することがあります。特に学校生活の集団場面に馴染めず、すぐ生命の危機を感じるため、引きこもりや不登校になって、社会交流システムがうまく働きません。解離している子どもたちは、自分が何を感じているか分からなくなり、人に合わせる生き方しかできなくなります。
解離症状の人が日常生活を送る中で
障害となる解離症状を持つ人にとって、彼らの日常の存在のあらゆる瞬間は、トラウマのトリガーになっている可能性があります。外の世界では、トリガーを引かないようにして、彼らは過剰に警戒し、神経を張り詰めて、体は過緊張状態で、聞き耳を立てながら、次の攻撃に絶えず備えているかもしれません。一方、家に帰ると、倦怠感が始まり、エネルギーが切れしまったかのように動けなくなります。彼らは麻痺し、無力になり、すべてが失われていきます。日常生活で、脅威の対象と共にいなければならない場合は、息を潜めて、人目につかないように隠れながら、冷静に観察して、その対象が去るのを待つか、すぐに対応できるように身構えています。そして、脅威に直面すると、背側迷走神経が体を制御するため、身体機能が阻害され、力は奪われ、彼らは凍りつき、解離や死んだふり、服従します。
日常生活の中で脅かされることが果てしなく続くと、慢性的な不安、恐怖、倦怠感の状態につながる可能性があり、もっとも単純なタスクでさえ克服できなくなります。休むことなく、眠れない日々が続くと、体がおかしくなり、顔の表面がぴくぴくと引きつったり、心臓付近が鷲づかみされるような痛みを発したりします。また、喉がつっかえて、呼吸がしづらく、寒気や気持ち悪さ、血の気が引くなどして、嫌な眠気に襲われたりします。心もトラウマに屈し、恐怖に足がすくんで、機能しなくなると、息を切らし、気分が悪くなり、吐き気を催すかもしれません。
解離・離人症の瞬間に、心は肉体的な自己から解放され、痛みと苦悩からの避難を求めます。本当は傷ついているはずなのに、その苦痛を感じたくないので、意識的に痛みの部分を捩じらせて、心は苦痛を伴う肉体から離れていきます。心が肉体から離れると、頭の中だけの生活になり、感覚や感情が鈍くなって、現実自体が遠い夢のように見えてきます。突然のショックによって引き起こされることで、彼らは周囲の世界との接触を失うため、その場に立ち尽くすか、眠くなるか、ぼんやりと混乱します。酷い状態になると、意識が朦朧として、放心状態になり、気を失うこともあります。
心身は疲労の危機に瀕し、肉体的および精神的な蓄えが枯渇すると、人生自体が輝きを失い、シュールな夢の世界で切断され、ぼんやりと失われていくように感じます。彼らはもはや喜びや幸福を感じることができず、彼らの考えは混乱し、記憶は薄れ、そして現在の瞬間を把握できなくなり、まるで夢の中の世界で生きてるように感じたりすることがあります。そして、酷くなると、今までの経験も思い出せず、数分前のこと、数時間前のこと、昨日起きたことも覚えられない異常事態が起きます。
この空虚さと混乱の異常事態では、心は失われ、自分が自分で無い状態になり、誰かいないと自分を成り立たせることが出来なくなります。彼らを支えるには他の人に依存するしかなく、一人になると落ち着かなくなり、どうすれば良いのか分からず、目的のないままになります。彼らはもはや人間らしさを失い、中身が空っぽで、個性や性格も無くなれば、役割をこなすだけの人間になります。彼らの状態が悪化するにつれて、家の中に引きこもり、無気力になり、体力が失われていきます。自分の基本的なニーズを気にすることさえできなくなり、風呂に入れず、ベッドからも起き上がれなくなり、絶望に飲み込まれます。
解離症状の人の主観的世界
健康な人は、心と体が合致して、自分の性格や考えがあり、明確な個性を持ち、過去の情景を思い出すことができます。障害となる解離症状がある人々は、過去と現在の自己の間の断絶に苦しんでおり、子ども時代の大きな出来事を、本人が覚えていないことが多いです。日常生活の中では、恐怖や苦痛が高まると、解離モードに自然にシフトしていきます。そして、心と体が一致しなくて、自分の気持ちが分からなくなり、深く考えることもできなくなって、この世界の彩りが失われたり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。
障害となる解離症状がある人は、自分が自分でなくなるという自己存在の不安(絶滅の不安)が基盤にあり、外の世界に対して実感が湧きにくく、見え方も変化して、夢の中で生きている時間と、自分の記憶のない間も何が起きるかわからない恐怖があります。体が凍りついて、自分が年齢を重ねていくという実感も失われて、自分のことが理解できなくなり、大人を演じるようになります。
彼らの見た目は健常者ですが、内心は不安と不確実性に苦しめられ。恐怖と麻痺の世界で閉じ込められています。それらの症状の複雑さは人によって大きく異なりますが、わずかな刺激でさえ誇張された反応を引き起こすかもしれません。自分の周りにいる人に対しては、被害妄想を持ちやすく、自分の悪口を言われているとか、常に噂をされているとか、いつ暴言を吐いてくるかとか、人の目が気になりすぎて、いつも怯えています。人と関わる場面では、緊張が強まりすぎて、どう対処するべきかと悩みます。
不確実性に包まれた世界に住んでいると、解離のヴェールは視界を狭め、体の動きや頭の働きを制限し、周囲の人々のように機能できなくなります。例えば、皆と同じことをしようとしても、頭がフリーズしたり、体が動かなくなったり、自動的に制限がかかってしまいます。この時は、何もしたくない気分で、面倒なことから逃れたいと感じています。そして、誰にも見つからず、静かな洞窟のような場所で心身を休めたいと願っています。また、体は海の中にいるようなどんよりした感覚があり、酸素が少なく、息苦しくて、現実感が薄れて、自分が向かいたい方向性が見えなくなっているかもしれません。
苦しさや辛い毎日が続くと、この世界の見え方が、鈍く灰色に見えたり、全てが色褪せて見えたりします。一方、もがき苦しむ状態から離れると、水の世界でプカプカと浮いて、形なく漂い、やわらかく溶けていき、甘美な世界の中で得も言われぬ幸福の一時を味わうかもしれません。また、頭はいつも青い空を見ており、鳥になって自由に大空を羽ばたくことを夢想していくと、体の中から力強さが湧いて、好奇心に切り替わることがあります。
日常生活のストレスが掛かる場面では、意識が遠のき、声が聞き取れなくなります。また、考えがまとまらなくて、不器用で作業がしづらくなります。緊張が強まる場面では、目の前が真っ白になり、声が出ない、何も考えられない、話がまとまらない、感覚も分からない、集中できない、注意散漫、よく物を落とすなどの症状が出ます。
恐怖に直面したときには、足がすくんだり、腰が抜けて動けなくなったり、体がこわばったり、手の感覚がなくて動かせなかったり、頭がフリーズして機能停止することまであります。また、恐怖が定着すると、息が止まって、全身が縮まり小さくなっていく収縮感、凍りついて固まる、心臓が痛む、意識が遠のいていく感覚、身体がバラバラになる感覚、腸がねじれていく感覚、身体の中は穴だらけで空洞な感覚、自分の手がゴムのように感じるなどの感覚を伴います。
普段から、何も感じられず、何も考えられないことに苦しみ、内から湧き起こる不合理な衝動を恐れ、病理的な世界に逃避する傾向があります。そして、解離した情動や光景のフラッシュバック、神経の痛みから身を守るために回避行動をとります。さらに、離人感による違和感を恐れたり、日常生活のありとあらゆる苦痛を和らげるために、生き生きとした気分になれることに対して、異常なまでにのめり込んでいくこともあります。例えば、危険な行動や自傷行為、薬物、アルコール、過食、買い物、旅行、ギャンブル、セックスなどの依存症になって、周りを巻き込むかもしれません。
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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-01-30
論考 井上陽平