回避性パーソナリティ障害のチェックリストと向いている仕事、原因

回避性パーソナリティ障害(APD)とは、他者の拒絶や批判に対する感受性が鋭く、人間関係に関係する恐怖や不安を持ち、極度の内気な性格のため、社会的な状況や他人と接することからの回避と撤退の長期的なパターンを特徴とする精神障害です。この症状を持つ人は、他者の拒絶や批判に対する永続的な恐れを持っており、人間関係の形成と維持が困難で、自尊心が欠如し、社会的状況の中で自分の本音や本当の感情の表現することが難しい可能性があります。

回避性パーソナリティ障害とは

回避性になる原因は

回避性パーソナリティ障害の原因は複数ありますが、環境的要因や遺伝的要因が複雑に絡み合っているように思います。環境としては、長期に渡り、生活全般において有害なストレスを受けていたり、親子関係の問題を抱えたりすることで、身体や脳の神経発達が阻害されたり、体内のバランスの崩れたりして、行動の変化や認知の歪み、感情のコントロールの難しさから、社会的な要求に応えられなくなる可能性があります。また、遺伝的な特徴が行動に影響を及ぼす可能性があります。

一般には、不適切な親の関わりから、本音や気持ちを表現できないような環境で育ってきた人や、自己肯定感が低い人が、回避性パーソナリティ障害を発症する可能性が高いと言われます。また、慢性ストレスやトラウマなどの要因も回避性パーソナリティ障害を引き起こします。

トラウマ的な要因

回避性パーソナリティ障害の人は、トラウマを経験していることが多く、社会的関わりのシステムが機能低下し、無意識下では危険や生命の危機を感じています。脅威に曝されたときは、交感神経と背側迷走神経が高度に活性化して、凍りついてしまうため、思うように体が動かなくなってしまうことをとても恐れています。

そのため、普段から逃げ場のない状況に追い込まれないように、頭の中でアセスメントして、脅威を回避することが生存戦略になります。彼らは、人間の存在が脅威になっていて、闘うか逃げるか反応が出た時は、逃げる方の行動を選択することが多くなります。しかし、社会的な交流から逃げれば逃げるほど、次に社会的な交流を持とうとしても、恐怖の方が大きくなり、新しい関係性を築くことが難しくなっています。

症状のチェックリスト

1. 傷つきやすくて、疲れてしまって、本当は誰とも関係を持ちたくなく、人間関係を回避したい。
2. 他人からどう思われるかを過剰に意識して、他人からの評価に対して自信を失いやすく、自分を受け入れられない。
3. 自分自身の価値や能力に疑問を抱き、自分の行動を批判する傾向がある。
4. コミュニケーションの場面において、緊張しすぎて、複雑な内容を理解したりすることが難しい。
5. 社会的な場面に出ることが不安で、すぐ過緊張になってしまい、自分を守るために距離を置く。
6. 他人から批判されたり拒絶されたりすることに敏感で、気分が落ち込んだり、見境なく怒ってしまうことへの恐怖がある。
7. トラウマの影響から、神経発達が阻害されて、 身体が脆弱であり、抑うつや不安、無力な状態に陥りやすい。
8. 逃げ道のない状況に追い込まれたり、身動きが取れなくなることが怖くて、物事を回避する。
9. 外の世界が危険と感じて、恐怖心から行動ができず、孤独な活動を好む。
10. 自分のアイデアを思い浮かべることが難しかったり、考えや感情を表現することが苦手です。
11. 好かれることが確実でない限り、人とは関わりたくない。
12. 自分のことを他人に知られたり、近くにいたりすることに躊躇を示す。

無力感、劣等感

回避性パーソナリティ障害を持つ人は、社交の場において、しばしば居心地が悪いという感覚を持つことがよくあります。彼らは、社交の場でのコミュニケーションに対する不安感や違和感を覚え、自分自身がその場に合わない人間であるという感覚を抱くことがあります。このような状況下で、彼らは社会的に無力感を感じ、自己劣等感に苛まれることが多いです

一方で、彼らは自分自身が内向的であることを自覚しており、自己認識に基づいて、社交の場で積極的に振る舞おうとはしません。しかし、彼らは社交シーンにおいて内気の態度や緊張感を見せることが避けられず、その結果、他者から批判や拒絶を受けていることが多くなります。このような状況下で彼らはますます孤立感や不安感を抱くことがあります。

恋愛できない

回避性パーソナリティ障害を持つ人は、恋愛への憧れや願望があるものの、その道を進むことに強い恐怖心を抱き、未だ起こっていない事態を懸念して尻込みしてしまいます。恋愛に進むことが怖いと感じる理由は、過去のトラウマや挫折、失敗の経験によるものであり、過去の傷や心の痛みから自分自身を守るために、恋愛に踏み出すことに躊躇してしまうことがあります。

彼らは誰かを愛し始め、愛されることを願うときや、異性と無防備になり、相手に求められる瞬間に、過去に抱えたトラウマや抑圧されていた感情が意識の表面に浮かび上がることがあります。その結果、感情に圧倒され、取り返しのつかない恐怖や不合理な衝動に襲われることで、身動きが取れなくなり、関係を続けること自体が苦痛に感じられてしまいます。

これにより、彼らは恋愛関係を維持することが困難になり、回避行動をとりたくなるのです。このような状況は、回避性パーソナリティ障害を抱える人々が、恋愛や人間関係の中で直面する深刻な課題となります。

向いている仕事は

回避性パーソナリティ障害を持つ人に向いている仕事は、独力で成果を達成でき、対人関係が少ない職種が理想的とされます。こうした職種では、彼らの強みを活かしつつ、ストレスや不安を最小限に抑えることが可能です。

例えば、コンピューターやソフトウェアのプログラミングや分析の分野では、個々のスキルを活かし、独立して作業が行えます。また、研究者、ライターやデザイナーのような職業も、創造性や緻密な思考が求められる一方で、人間関係の煩わしさが少なく、回避性パーソナリティ障害を持つ人に適しています。

さらに、情報処理や文書作成、会計のような仕事も、個人で取り組むことができ、プロジェクトが完了するまで他の人間との接触を避けることが可能です。これらの職種では、回避性パーソナリティ障害を持つ人が、自分のペースで働き、能力を発揮することができるでしょう。

回避性パーソナリティ障害とHSPの違い

回避性パーソナリティ障害とHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の違いについて、 回避性パーソナリティ障害は、人との関係を避ける傾向を持つ人格障害です。これは、他の人と関わることを恐れているために、社交的な参加を拒み、他の人との距離を保つようになるというものです。HSPは、集団活動において他の人よりも敏感であるという特徴を持ちます。これは、情報を深く理解し、他人の感情に対して敏感に反応するような特徴を持ちます。HSPは、一般的には、抑うつ症状や不安症状を引き起こす可能性があると考えられています。

治療や回復に必要なこと

回避性パーソナリティ障害の治療では、他者から拒絶や批判の恐れに対処することを学び、より健康的な関係を築き、自尊心を向上させ、日常生活の中で安心することが重要になります。治療の方法は人によって異なりますが、一般的には、心理療法(トラウマケアや認知行動療法、精神力動療法)やカウンセリングを用いて、対人関係の問題や安心できる体験を増やして、回避行動を減らすことをを目指すことが重要です。

回避性パーソナリティ障害の人は、繊細な神経を持ち、些細なことで生理活動が活発になります。身体的、感情的な反応に対して、正しい理解を持ち、必要なサポートを受けることが重要です。彼らは、不安や警戒心が強く、自己肯定感が低いために、自分自身を受け入れるようになることが重要です。自分の行動を評価し、自分の失敗も受け入れ、自分の成功を認めることも大切です。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-01-24
論考 井上陽平