HSPのセルフチェック|どんな症状か大人の特徴

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は、アメリカの心理学者アーロン博士が提唱したものです。HSPは、自分の環境や周囲の人々に対する敏感さが高い個人を表すために使用される用語です。この敏感さの増加は、感情的な反応性の高まり、共感の増加、孤独への強い必要性など、さまざまな形で現れる可能性があります。HSPは人口の約15〜20%を占めると考えられています。

HSPの4つの特徴

HSPをもつという言葉は、敏感な反応をもつ人を指します。このタイプの人は、周囲の環境に強い影響を受けやすく、音、光、匂い、人の気配、出来事など、些細な刺激に強い反応をすることがあります。このような敏感な反応により、日常生活が困難になってしまうこともあります。

HSPには大きく分けて4つの特徴があるとされています。これらの特徴は、一般の人にも存在するものですが、HSPの人たちはこれらの4つの特徴が強いところで全て当てはまり、より強い程度で発現するという特徴があります。

深く処理する

外部の刺激を深く受け取り、慎重に考えながら処理するという特徴を持っています。彼らは、感覚的な刺激や複雑な情報に対して、より深いレベルでの反応をすることがあります。このため、彼らは単純な物事でも複雑な考察をし、より多角的な見方をすることがあります。また、他の人に比べて、より時間をかけて物事を処理することが多いという特徴もあります。彼らのこのような特性は、彼らにとって良いことも悪いこともありますが、彼ら自身の性格や価値観とリンクしています。

過剰に刺激を受けやすい(過度な興奮)

刺激に対して特に敏感であり、過剰な刺激を受けやすい傾向があります。このため、一般的な人よりも感覚的な刺激(音、光、匂いなど)が強く、強い刺激によって過度な興奮や不安を感じることがあります。この弱いフィルターは、大量の情報を一度に受け取って処理することを要求されるため、疲れやストレスを引き起こすことがあります。しかし、この敏感な特性は、美的なものや音楽などの素晴らしい体験をもたらすこともあります。

感情反応が強く、共感力が高い

彼らは他人の気持ちに敏感で、相手の気持ちに入り込んで感情を共有することができます。このことから、共感力が高いという特徴もあります。このような性格は、人間関係において深いつながりを作ることができますが、同時に、相手の気持ちに依存してしまい、期待に応えられなかったときに落ち込んでしまうこともあります。感情に敏感な性格は、生きづらさも伴いますが、同時に、人間関係において繊細な気配りができるという長所もあります。

些細な刺激に対する感受性

些細な刺激に対する感受性は、HSPの人が周囲の環境に敏感に反応することを指します。例えば、他の人が気づかないような微かな音、光、匂い、人の気配、出来事などすべてを敏感に感じ取り、強く反応することがあります。これは一般の人にもある特徴ですが、HSPの人は特にこれらの刺激に強い敏感性を持ち、周囲の環境に影響されやすいところが特徴です

HSPの生きづらさ

高感度の人々(HSP)は、感覚処理のレベルが高く、他の人と比較して非常に敏感です。言い換えれば、彼らは他の人と比較して、集団活動においてより繊細で過敏な特性を持ちます。彼らは情報を深く理解する傾向があり、他人の感情に非常に共感的であり、それが他の人とは一線を画しています。

HSPは、自分の環境や周囲の人々の感情や気持ちに敏感に反応する特徴を持っています。このような敏感な感受性が、HSPにとっては豊かな感情体験を生み出す一方で、感情的トラウマを引き起こす原因となります。

HSPは、感情的トラウマに悩まされることが多く、そのトラウマを大切な人に分かってもらえないことで、苦しみがさらに増します。また、他者から批判的な言葉を言われたり、他者の拒絶にあったりすると、二次的なトラウマを引き起こすことがあります。これらの経験は、HSPにとって苦しい人生になることが多いです。

HSPを生物学的にみると

敏感に察知する能力は、生物としてみたら危機管理能力を高めるものです。この能力は、危険な状況に遭遇した際に、迅速で正確な対応をするためのものです。このような敏感な察知能力は、内臓や筋肉が緊張し、目や耳は見慣れないものに対して注意深く観察し、脳が脅威をアセスメントすることで、体全体が危険な状況に対応するために調整されます。また、相手の感情や状況に対する共感や理解は、生き残るために重要な戦略にもなります。これらの機能は、人の中でも高い情報処理能力を持つ者に特に強く発揮されます。

HSPとHSS型

HSPとも呼ばれる高感度の個人の約30%は、外向性HSSタイプのHSPに分類されます。HSPは、自分の環境に非常に敏感である傾向があり、周囲のなじみのない物体を非常に注意深く観察する傾向がありますが、じっとしていて深く考える傾向があります。彼らは内向的で用心深い傾向があります。一方、HSSタイプのHSPは、立ち止まっていることや、環境の中でじっとしていることに不快感を覚える傾向があります。彼らは非常にエネルギッシュで好奇心が強く、刺激を望んでいますが、精神状態が傷つきやすいにもかかわらず、それでも強くなろうと努力しています。

HSPの人たちは

敏感な人は、環境によって形成されることもありますが、生まれつき身体に弱いところがあることが原因で、通常の生活状況でも痛み、苦痛、寒さ、痒みなどを感じやすい傾向があります。彼らは、小さな外界の刺激にも敏感に反応して、身体内部の状態がすぐに体に表れることが多いです。また、身体内部の感覚や感情を敏感に感じ取ることもあります。

彼らは危険を敏感に察知し、生存のために必死になることがあります。人間関係は、常に相手に合わせて「共感ベース」になっています。敏感な体質の人は、相手の顔色や反応に敏感で、相手に合わせて共感することが得意ですが、非敏感な人たちとは感性が異なるため、本当の意味で相手を理解することは難しい場合があります。彼らは周りに合わせようとして、生きづらくなったり、人とのコミュニケーションがうまくいかない場合があり、自分の感じ方や考え方が異なることに苦しむことがあります。

HSPの人たちは、一般の人よりも、感じ方や考え方が深く、物事を深く考えすぎたり、過剰な情報処理を行ったりします。また、人の表情や言葉に敏感で、小さなことにも真剣に反応し、人の気持ちを考えすぎます。神経が張りつめているため、音、光、匂い、人混み、場の雰囲気などに敏感であり、感じることによって疲れやストレスを感じやすいです。このため、公共交通機関や人混みの場所を避けたり、周りの人の言動に敏感に反応することもあります。周りの人たちが楽しんでいるなかでも、気まずさや居心地の悪さを感じ、仲間と同じように楽しめないと感じやすいです。さらに、人と会うことですぐに疲れてしまい、人が多い場面が苦手であることもあり、生活が困難になったり、うつ病や精神的な障害になることもあります。

HSPのセルフチェック

1.周りの音や光、匂いなどに敏感です。

2.人の目が気になり、過剰に空気を読みます。

3.他人の痛みに敏感で、自分のことのように感じてしまいます。

4.他人に共感したり、相手の行動を理解することが得意です。

5.過剰な刺激にさらされることが苦手なため、人口密度の高い都市型生活とか情報社会に疲れて、人の多いところが苦手で、少人数を好みます。

6.過剰な刺激に圧倒されると、周りで起きていることを切り離して、意識がぼーっとしたり、頭の中の空想に耽ったり、現実逃避することが得意になって、解離的な防衛を使います。

7.刺激に弱いという特性から、色味が少なく、無駄がなく、清潔感があって、シンプルなものが好きです。

8.自意識が過剰で、悩みごとが多く、人から批判されたり拒絶されたり、恥をかいたりすることを恐れています。

9.学校や職場のなかで、緊張やストレスが多くなると、原因不明の身体症状が現れます。

HSCの親子関係

高感度な子ども(HSC)は、他の子どもたちと比較して感度が高い子どものことです。これらの子どもたちは、繊細で非常に知覚的な性質が特徴です。このような過度の感受性は、情報や感情を処理することを困難にする可能性があり、小さなことでも圧倒されるほど感情や思考を内面化することがよくあります。

家では、HSCの子どもたちは両親の気分や感情に熱心に同調しており、しばしば彼らからの愛情と注意を求めています。両親が困難な時期を経験している場合、これらの子供たちはそれをすぐに感じ、両親の愚痴の聞き役になることがあります。HSCの子どもたちは両親を高く評価しており、家事を手伝うなど、両親を幸せにするために行動していることがよくあります。しかし、これは彼らが年をとるにつれて健康と幸福に打撃を与える可能性があります。

場合によっては、HSCの子どもたちは両親に不健康な愛着を抱く可能性があり、それが成人期に成長するにつれて彼らの関係に問題を引き起こす可能性があります。子どもが親を大切に思っているぶん、自分は大切にされていないことに気づくと、親子関係が良くないものになり、悲しみと失望の感情につながる可能性があります。

HSPを批判的に考えると

HSPは、一般に、約5人に1人が高感度で生まれていると考えられていますが、この主張には疑問があります。「生まれながらに敏感」という概念は主観的なものであり、どうやって判断するかは難しいところです。人が持つ感受性の程度は、彼らの環境と経験によって形作られます。また、誰かが非常に敏感であるかどうかを正確に判断するのは難しい場合があります。

HSPの批判的な観点から、日本の社会文化は、自分の意見や考えを隠し、周囲に合わせるといった傾向があると言われています。このような社会環境下で生まれ育つことで、敏感な傾向が強くなると考えられます。

例えば、トラウマを抱えた親が家庭内で不穏な行動やヒステリックな振る舞いすることがあるとします。このような状況下では、子どもは親の表情や言葉、気配などに敏感に察知するようになり、最悪の事態が起こらないように注意することが必要となります。このように、トラウマを抱えた親の振る舞いによって、子どもは不安を感じ、自身のセンサーを高めて生きることを強いられるという状況が生じます。

また、日常的に親が幼い子どもに対して注意をすることで、「恥の概念」が子どもの心に刻み込まれます。例えば、「そういう食べ方をすると恥ずかしい」や「幼稚園でそういう態度をとると恥ずかしい」といった言葉を繰り返すことで、小さい子どもは恥の概念に強く影響を受けるようになり、敏感になっていきます。このような影響は、大人になっても残り続けます。

子供の頃にいじめられた人は、「とろい人」とか「変わっている人」として、変な目で見られるようになります。いじめられた経験から、自分が変なのかなと人からの評価を思い出し、堂々とできずに、引っ込み思案になって、時間の経過とともに敏感になる可能性があります。他人に言われたことが、自分への評価として刻まれていきます。

さらに、人の感受性は、子宮内の環境や化学物質への曝露など、親の遺伝的特性を超えた要因によっても影響を受ける可能性があります。さらに、出生時のトラウマ、早産、低出生体重、医学的トラウマ、および早期発達トラウマは、環境の変化に応じて過度に緊張して警戒し、過敏症につながるサバイバルモードで生活する可能性があります。

現代人の体やトラウマ的に考えると

HSPは、現代人に特有の現象かもしれません。現代人の体温は、50~60年前の人と比べて平熱が36.8℃から36.1℃に低下しています。この低下した体温は、自律神経やホルモンバランス、免疫などに影響を及ぼすと考えられています。そのため、心身は弱くなり、周囲の刺激に敏感になりやすくなります。

また、子供の頃からの受験勉強や過酷な労働環境などが原因で、以前よりものびのびと生活することが難しくなっています。これにより、過度なストレスや動かない生活によって、体が過緊張や凍りつき状態に陥り、手足が冷たくなることがあります。

現代人の生活には、パソコンやスマホを見ることが多く、動きの少ない生活が多い傾向があります。このような生活スタイルは、体を弱くさせ、敏感な体にします。特に、トラウマ体質の人々は、普段から過緊張状態にあり、不快な場面では過度の覚醒や凍りつき状態になります。これは、子供の頃から安心感が育っていないため、危機管理能力が高くなり、神経が張りつめられて、頭の中で脅威があるかないかをアセスメントします。

トラウマ体質の人は、周囲の刺激に敏感で、人の気配や音、光、匂いなどに過敏に反応します。これらの刺激によって、体の反応が現れます。彼らは、周囲の空気が良い場所では心地良く感じ、嫌な空気にすぐ気づいて疲れてしまいます。このような敏感な反応は、神経が繊細すぎて、周囲の刺激や圧力を強く感じ取り、それに耐えることが困難な状況にあることを示しています。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-01-28
論考 井上陽平