HSP

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は、アメリカの心理学者アーロン博士が提唱したものです。HSPは、生得的な特性として、高度な感覚処理を持ち、人一倍敏感な人のことです。別の言い方では、繊細な人、過敏すぎる人であるということです。発達障害と診断されている方のなかには、HSPの特性を持って生きづらくなっている方も多いでしょう。

HSP

HSPの4つの特徴

HSPの人は、些細な音、光、匂い、人の気配、出来事などに強く反応してしまい、それによって日常生活が生きづらくなってしまう人を指します。HSPには大きく分けて4つの特徴があると言われています。こうした特徴は、一般の方にもありますが、HSPの方はこの4つが全部当てはまり、かつ強いところが特徴です。

1.深く処理する…感覚的な刺激を深く受け取り、考え方が複雑で、深く考えてから行動します。

2.過剰に刺激を受けやすい(過度な興奮)…脳のフィルターが弱く、全ての刺激を受け取り、過剰な情報を処理しなければならないので、刺激に敏感で疲れやすいです。

3。感情反応が強く、共感力が高い…人の考えや気持ちに振り回されやすく、強く共感してしまい、相手に入り込んでしまうところがあります。そのため、相手に依存して、期待して、その期待を裏切られて、落ち込んでしまうことが多く、人間関係に失敗してしまうことがあります。

4.些細な刺激に対する感受性…あらゆる感覚がするどく、通常では知覚できないような刺激まで受け取ってしまいます。そのため、音や光、匂い、振動、人の気配、表情、感情を受け取りすぎて、苦痛に感じていることがあります。

HSPを生物学的にみると

敏感に察知する能力は、生物としてみたら危機管理能力が高く、危険な状況に曝された時の対処能力が高く、頭の中の情報処理の仕方が複雑です。別の言い方では、体は過緊張で、内臓や筋肉は危機を感じて、目や耳は見慣れないものに対して注意深く観察し、脳はあらゆる場所で脅威がないかどうかをアセスメントしており、相手に共感を示すことも生き残るための戦略になります。

HSPとHSS型

HSPと呼ばれる人一倍敏感な人々の中には、外向的なタイプHSS型HSPが3割を占めます。HSPは、体を過度に緊張させて、環境の中の見慣れないものに対して注意深く観察し、じっと動かずに、頭の中で考えています。内気で慎重な傾向があります。一方、HSS型は、環境の中で立ち止まったり、じっとしていることが苦手で、多動なタイプです。好奇心旺盛で、外に出たい、刺激が欲しいと、傷つきやすいメンタルを持ちながらも、強くいなければと思います。

HSPの人たちは

敏感になる人は、成長の段階で環境が要因となっている可能性もありますが、そもそも生まれつき体が弱くて、普通の生活を送っていても、体が痛かったり、苦しかったり、寒かったり、痒かったりします。心の状態がすぐ体に現れ、普通の健全な体であれば何も感じないことでも、ちょっとした外部の刺激に反応してしまうような体であることが原因であることが多いです。また、その身体内部の感覚を感じ取ってしまうところがあります。彼らは、危険を察知して、生き残るために、人間関係(親子関係・友人関係など)は常に相手に合わせて行動するような「共感ベース」になっていきます。敏感すぎる体質の人は、人の顔色や人の反応を気にするために、相手に合わせて共感しようとすることが得意ですが、一方で、HSPでない人たちとは感性が違うので、本当の意味で相手のことを理解しているわけでありません。どちらかというと、周りに合わせようと無理をして生きづらくなったり、人と話がかみ合わなくて、自分の感じ方や考え方が違うことに苦しみます。

HSPの人は、世間一般の人よりも、感じ方や考え方が深く、過剰な情報処理努力をして、物事を考え込んでしまいます。人の表情にも敏感で、人の気持ちを考えてすぎてしまいます。また、それだけ、神経が張りつめているために、音や光、匂い、人混み、その場の雰囲気などあらゆるものに敏感で、感じることに疲れて、不快な状況に陥り、ストレスをため込みやすいです。人との関わる場面において、気を抜けないので、いつか感情が爆発して、関係を断ち切ることを繰り返します。また、人と会うとすぐ疲れて、人が大勢いる場面が苦手で、生きることがとてもしんどくなり、学校や職場に通えなくなったり、うつ病や解離性障害、慢性疾患になったりすることもあります。

繊細で敏感すぎる人の特徴

①周りの音や光、匂いなどに敏感です。
②人の目が気になり、過剰に空気を読みます。
③他人の痛みに敏感で、自分のことのように感じてしまいます。
④他人に共感したり、相手の行動を理解することが得意です。
⑤過剰な刺激にさらされることが苦手なため、人口密度の高い都市型生活とか情報社会に疲れて、人の多いところが苦手で、少人数を好みます。
⑥過剰な刺激に圧倒されると、周りで起きていることを切り離して、意識がぼーっとしたり、頭の中の空想に耽ったり、現実逃避することが得意になって、解離的な防衛を使います。
⑦刺激に弱いという特性から、色味が少なく、無駄がなく、清潔感があって、シンプルなものが好きです。
⑧自意識が過剰で、悩みごとが多く、恥をかくことを恐れています。
⑨学校や職場のなかで、緊張やストレスが多くなると、原因不明の身体症状が現れます。

HSCの親子関係

HSCは、子どものHSPであり、人一倍敏感な子供のことです。彼らは、人一倍敏感な気質を持っています。敏感すぎる子供は、普通の感受性なら受け流せることが、受け流すことができず、親のことまで抱え込みやすいです。家の中では、親の顔色を伺いながら、愛情をもらおうとか、関心をもらおうとしています。両親の仲が悪いと、可哀想なほうに共感して、愚痴の聞き役になったり、喜ばせたりします。親や家族が大切なので、家事手伝いをして頑張ってきましたが、大人になると体調の悪さや疲れになります。また、自分が親を大切に思っているぶん、自分は大切にされてなかったことに気づくと、親子関係が良くないものになります。

HSPを批判的に考えると

一般的には「生まれつき5人に1人は、HSPの一倍敏感過ぎる人」と言われていますが、それで片づけてよいのか疑問に思います。生まれつき敏感かどうかなんて分からないものだし、どうやって判断するかは難しいところです。敏感かどうかは周りとの関わり(環境)によってなっていきます。

例えば、日本人は、自分の思ったことをせず、周りに合わせるところがありますが、そういう社会に生まれ育つことで敏感になっていくと思われます。幼少期の頃から、親が子供に対して、日常的に注意をします。「そういう食べ方をしていたら恥ずかしいでしょう。」「幼稚園でそういう態度を取ってたら恥ずかしいでしょう。」そういう言葉を、日常的に繰り返して親が子どもに注意するために、小さい子供の心と体に恥の概念が刻み込まれていって、敏感になっていきます。そして、大きくなってもそれが残っていきます。

子供の頃にいじめられた人は、「とろい人」とか「変わっている人」として、変な目で見られるようになります。いじめられた経験から、自分が変なのかなと人からの評価を思い出し、堂々とできずに、引っ込み思案になって、敏感になっていきます。他人に言われたことが、自分への評価として刻まれていきます。

あと、生まれ持った特性というのも、親の遺伝的要因以外にも、お母さんの胎内にいた時の環境や化学物質の暴露により、胎児期に愛着トラウマを負っているかもしれません。また、出産の誕生時トラウマ、早産児、低出生体重児、医療トラウマ、発達早期のトラウマにより、環境の変化に対して、緊張や警戒が強すぎる敏感な子として育っているかもしれません。

現代人の体やトラウマ的に考えると

HSPは現代人の身体に特有な現象かもしれません。現代人は、50、60年前の人と比べて、平熱が36.8℃から36.1℃に低下しています。平熱が下がると、自律神経やホルモンのバランス、免疫などにも影響が出るといわれています。そのために、心身は弱くなり、あらゆる刺激に敏感になる可能性があります。

子供の頃からの受験勉強や過酷な労働環境のなかで、昔の人と比べると、のびのびすることができなくなり、過度なストレスや動かない生活により、体が過緊張や凍りつき状態になり、手足が冷えています。

パソコンやスマホを見てばかりの生活や動かない生活が、現代人の身体性を失わせて、弱い体にします。体が弱るほど、些細なことに敏感になっていきます。トラウマ体質の人は、普段から過緊張状態で過ごしており、不快な場面では、過覚醒や凍りつきになります。子供の頃から、安心感が育っておらず、危機管理能力が高くなり、神経は張りつめて、頭の中で脅威があるかないかをアセスメントします。

敏感でトラウマ体質の人は、人の気配や音、光、匂いなどに過敏になり、違和感を察知して、体の反応が現れます。彼らは、周りの空気が良いと、心地良くなれて、居心地が良いです。一方、嫌な空気にすぐ気づいて疲れてしまいます。体が弱いからこそ、周りの刺激や圧力を繊細に感じ取って、それに耐えることが難しい状況にあるといえます。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-01-28
論考 井上陽平

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