カサンドラ症候群とは症状を分かりやすく説明する

カサンドラ症候群(Cassandra Syndrome)とは、人が否定的な出来事や結果を正確に予測するが、その警告が無視または拒否される現象を指します。これは、ギリシャ神話に登場するトロイアの王女カサンドラが、預言を誰にも信じてもらえず苦悩したことから名付けられました。この症状は、特定の相手との関係性によって起こり、カサンドラ状態の人は欲求不満や無力感を浮き彫りにします。

カサンドラ症候群とは

カサンドラ症候群になりやすい人は、家族にアスペルガー症候群の特徴を持つ人がいて、自己中心的な考え方が根強いという背景があります。このような人は、発達障害を持つ配偶者や親、子どもからの不適切な言葉や行動、振る舞いによって、ストレスや負担を感じ、話す余地がなくなってしまうことがあります。このような状況は、身体的・心理的に慢性的な凍りつきや虚脱の状態を引き起こし、カサンドラ症候群を引き起こすことがあります。

カサンドラ症候群に陥った人々は、家族との意思疎通に悩んでいます。特にパートナーが理解を示さないということがとても腹を立てます。彼らは相手の気持ちを読んでもらおうと必死に努力しますが、理解されないという結果に悲しみ、失望します。また、パートナーからの暴力的な行動や脅しに曝され、恐ろしく感じます。パートナーが近づいてくると、体が反応して身体的にも心理的にも恐怖を感じます。心臓が急速に鼓動し、呼吸が荒くなり、全身がこわばり、拒絶反応を発することもあります。

家庭の中で逃げ場が無く、脅迫や虐待が繰り返されることは、精神や身体に大きな影響を与えます。無力感と恐怖、怒りが増すことで、それがいつか限界を迎え、緊張の糸が切れてしまいます。このような状況に陥り、虚脱している様子を気に留めないパートナーに対して絶望します。さらに、カサンドラ症候群に陥った状態が続いていると、身動きが取れなくなり、不明な身体的な症状が現れることもあります。このような状況では、子どもの場合は自律神経失調症、成人の女性には更年期障害といった病気に陥り、身体と心の健康を害することもあります。

カサンドラになるトラウマ的要因

子供の頃のトラウマは、その人の心の奥深くに根付いており、成長しても消えることはありません。このような背景を持つ人は、周囲の出来事や人々の行動に対して過度に敏感になることが多いです。不快な出来事や状況に出くわすと、本能的に「戦う」「逃げる」「凍りつく」の三つの反応のいずれかを示すことがあります。この反応は、過去のトラウマによる防衛機制としての側面が強く、不安や動悸、焦燥感、苛立ちなどの感情や身体的な反応を伴います。

例として、機能不全家庭で育った女性が、共感の少ない夫と結婚すると、再びそのような家庭環境に陥ることが考えられます。この状況は、彼女の子供時代のトラウマを再燃させる可能性があり、その結果、経済的な束縛や子育ての負担を理由に夫との関係から逃れることが難しくなります。身体的・精神的な負担が増大し、これが自律神経やホルモンバランスの乱れとなり、さらなる健康問題を引き起こすことがあります。

このような状況を「カサンドラ妻」として捉えると、彼女は子供の頃のトラウマを背負いながら成長し、結婚という新しい人生のステージで再びそのトラウマと向き合うこととなります。一部のカサンドラ妻は、ADHDや衝動性のような特性を持つ可能性も考えられ、それが結婚生活の中での対人関係のトラブルを生む要因となることも考えられます。夫の期待外れの行動や態度に失望し、カサンドラ症候群という精神的な状態に陥ってしまうのです。このように、彼女たちの心の中には、複雑な背景や様々な感情が渦巻いていることが伺えます。

カサンドラ状態にある妻

カサンドラ状態の妻は、苦しい時には常にそばに理解してくれる人がいてくれることを願っています。話を聞いてくれ、共感してくれる人を探し求めますが、夫は発達障害と思われるため、会話が成り立たず、苦しみを抱えたまま、体調を崩してしまうことがあります。夫は無関心に見え、妻に思いやりや配慮を示すことができません。また、夫のコミュニケーション能力の不足により、夫婦関係に心地よさが欠けています。妻は夫に期待しても裏切られ、孤独に悲しみ、不安や苦痛、ストレスに対峙しなければなりませんでした。

夫がモラハラしたり、怒りっぽかったり、無視したり、機嫌を損ねたりして、険悪な夫婦関係が続くと、カサンドラ状態の妻にとって負担が大きくなります。また、夫が転職を繰り返したり、病気で無職になったり、ギャンブルで借金を作ったりする場合もあり、妻には大きな負担がかかります。さらに、カサンドラ状態の妻は、子育てにも努めながら、偽りの夫婦生活を続け、我慢を重ねます。もし子どもに発達障害がある場合には、子育てがさらに困難になり、妻にとっては手に負えなくなることもあります。

カサンドラ状態に陥ると、日々夫に対する不安や怒り、あきらめが増し、心と体を蝕み、本来の生命力が失われていきます。長期間にわたって、夫を憎んだり、怒ったり、怯えたりする生活が続くと、痛みや疲れが増して、現実を正常に認識できなくなり、過剰な反応によって身体が固まって動けなくなります。無意識下では生命の危機を感じ、動けなくなってしまい、うつが悪化して、人をカサンドラ状態に陥らせます。

カサンドラ状態に陥ると、家の中が地獄のように感じられ、外に逃げたくなる衝動に駆られます。しかし、外に逃げる場所がないと、胸や頭が痛くなり、動悸や不安感が強まり、体が動かなくなることがあります。その結果、自分の人生から逃げることができず、誰かに助けを求めても助けてくれず、孤立感に苛まれることがあります。また、この状態にあることを周囲の人に伝えても理解してもらえず、孤独感や苦悩を感じることがあります。

カサンドラ症候群を患いやすい時期は

カサンドラ症候群は、一方のパートナーの心の声や感情が他方のパートナーに十分に伝わらないことで生じる精神的なストレスを指します。多くの場合、夫婦間のコミュニケーションの不足や、理解しあう努力の欠如から生まれるこの症状は、夫婦関係における重大な問題の一つとされています。

特に、子供が生まれる前後は、多くのカップルにとって大きな転機となります。子供の育児や教育方法、価値観など、多岐にわたる問題に直面し、それぞれの考え方の違いが鮮明になることがあります。これにより、相手の理解が求められる一方で、深刻な対立や摩擦が生じることがあります。特に、既にコミュニケーションの障壁が存在する場合、切迫した状況に追い込まれてしまうことがあるのです。

一方、子供が大学進学などで家を出て、再び二人きりの時間が増える「空巣期」も、カサンドラ症候群が顕在化するタイミングとして挙げられます。子育ての役割から解放されたことで、再びパートナーとの関係性を見つめ直す機会が増えるものの、その期間中に蓄積した不満や誤解が明らかになり、会話がかみ合わなくなることがあります。

このような状況の中で、カサンドラ症候群に陥る妻たちは、夫との関係に疲弊感を持つことがあります。その背景には、期待や願望が相手に伝わらないことに起因する深い孤独感や、自分の意見や感情が無視されることに対する無力感が存在しているのです。

カサンドラ症候群のチェック項目

カサンドラ症候群のチェック項目には、以下のようなものがあります。

  1. 過去に起きた被害体験や不適切な対応によって、家族(主にパートナー)に対して信頼性に疑問を抱く。
  2. 今後も被害を受けることを恐れ、不安を感じる。
  3. 他者に対して消極的、懐疑的、疑い深い。
  4. 回避行動をとって、被害を未然に防ぐために、自己保護をする。
  5. 他者に対して不信感を抱き、自己を守るために、人間関係を避ける。
  6. 自己を責めるような感情や自己否定的な思考を持つ。
  7. トラウマやストレスによって、睡眠障害や食欲障害、パニック障害など原因不明の身体症状が現れる。
  8. 自己のパワーやコントロールを失ったと感じ、身動きが取れなくなっている。
  9. 家の中にいると、落ち着かなくなり、焦燥感に駆られる。

カサンドラ症候群が重症化すると

カサンドラ状態になると、人は身体的、精神的に極端なストレスを感じるようになります。自律神経のバランスが崩れることで、心拍数や呼吸、消化活動にも変化が生じ、これが頭痛や腹痛、生理痛などの具体的な症状として現れることが多いです。ホルモンの乱れもこれに影響しており、めまいや吐き気といった症状も伴うことが考えられます。

このような身体的な変化とともに、カサンドラ状態の人は極度のストレスや疲労感を感じるため、家庭内での些細な刺激にも過敏に反応してしまいます。例えば、家族の足音やテレビの音、ささやかな会話の声にも、耳障りに感じたり、不快に思ったりすることが増えるでしょう。このため、日常のコミュニケーションが困難になり、夫婦間でのトラブルや子育てに関する摩擦が増える可能性が高まります。

そして、この状態が長引くと、身体と心はさらに厳しい状態に追い込まれます。エネルギーの枯渇や心の疲弊が進行する中で、自分の存在価値や生きる意味を疑問に感じることが増えるかもしれません。食欲不振、無気力、希望を見失うという症状は、重度のうつ病に繋がる危険性もあり、最悪の場合、自殺を考えるようになることも考えられます。

長期にわたる家庭内のストレスは、身体にも深刻な影響を及ぼします。常に緊張状態にあることで免疫力が低下し、がんや心臓病、肺疾患などの生活習慣病のリスクが高まる可能性が考えられます。さらに、神経系に影響を及ぼす疾患や代謝機能の障害も生じるリスクが高まります。

カサンドラ状態にさせる夫

夫が発達障害やトラウマを抱える場合、その背後には多様な理由や背景が存在することが考えられます。これらの状態は、夫が妻に対して感謝や愛情を示すことを難しくする要因の一つであり、共感力の欠如もそれに伴って現れることがあります。夫は自身の内面の葛藤や過去の経験から、他人との関わりを避けたいと感じることがあるでしょう。このような状態の背後には、夫が子供の頃に経験した学びのプレッシャーや、大人としての過度な仕事の負担、日本の労働文化や社会の期待など、多様な要因が影響している可能性があります。

多くの日本の男性は、家庭と仕事の間で綱引きのような日常を送っています。伝統的な価値観や職場の文化が、男性に対して働くことを最優先とする圧力を与えていることも無視できません。結果として、夫は家庭に対して時間や気持ちを向ける余裕がなくなり、結果的には妻との間に溝が生まれることが多くなります。

特に、発達障害やトラウマを抱える夫が、経済的な不安定さや仕事のプレッシャーにさらされると、その影響は倍増するでしょう。外面の良さと家庭内での違いは、家族にとって大きなストレスとなり、特に妻には理解しがたい状況となることが考えられます。

このような状況下で、妻は感じる不安や孤独感、そして「カサンドラ状態」と呼ばれる心の病を抱えることが多いです。夫が仕事や他のことに夢中になっている間、妻は家庭内での不調和や夫とのコミュニケーションの断絶、そしてその結果としての身体的、心理的な苦痛を経験することが多くなるのです。

カサンドラだと訴える妻の問題

カサンドラ症候群の妻は、夫が無口で自分の気持ちを察してもらえないことやコミュニケーション能力が不足していることを、すべて発達障害のせいにする傾向があります。その結果、夫婦間のパートナーシップがうまくいかなかった場合には、自分が悪いのではなく相手が悪いという考えに至ることがあります。

しかし、カサンドラ症候群の問題は、夫が発達障害を持っていることや夫に気持ちを察してもらえないことなどの問題だけではなく、カサンドラ妻が子どもの頃から過酷な環境で育った可能性があることも考えられます。彼女が自分の親との関係でトラウマを負ったり、愛着障害を抱えていたりすることもあります。

カサンドラ症候群を抱える人は、子どもの頃から親の期待や要求に応えるために、家族や友人のために献身的に行動する傾向があり、自分自身を犠牲にすることもあります。しかし、家族が自分と同じように家族のことを大切に思っているとは限らず、その違いに失望してしまうことがあります。結婚も同様で、自分にとって理想的な人と思って選んだ相手が、自分を理解してくれなかったり、価値観が異なっていたりすることがあり、その態度に愕然とします。

カサンドラ症候群に陥りやすい性格には、真面目で几帳面、責任感や罪悪感が強く、人に迷惑をかけたくないという信念を持つ人が多いです。また、カサンドラ症候群の人は、もともと発達障害の傾向がある場合があり、夫婦関係で相手を理解できないことがあります。さらに、カサンドラ症候群の人は、良い面を見つけることができず、自分の傾向によって相手の良い面を見逃してしまうことがあります。

カサンドラ状態から抜け出すには

「カサンドラ状態」とは、パートナーや家族からの否認や無視、理解不足により、自らの感情や実態が認識されない状態を指します。これにより、多くの女性は精神的なストレスや孤立感を抱え込むこととなります。その中で、カサンドラ状態にある妻が経済的に自立することは、彼女の自尊心や自立心を取り戻すための第一歩とも言えます。経済的自立は、夫や家族からの依存を減少させ、自分の意思で生活を選択できる力を手に入れることを意味します。

しかし、カサンドラ状態を乗り越えるには、単なる経済的自立だけでは不十分です。状況や関係性を客観的に分析し、自分自身を守るための戦略を練る必要があります。それは、問題の原因を突き止め、対処する「戦う」行動であったり、環境を変えて新しい人生を築く「逃げる」選択であったりすることもあるでしょう。

また、夫や家族との関係の中での認識のズレや誤解は、カサンドラ状態を引き起こす一因となります。時には、夫が自分の理解不足や行動を反省し、二人で対話を重ねることで関係性が改善されることもあります。このような場合、夫の良い面や夫婦の新しい関係性を築くことが、カサンドラ状態からの脱却への道となることも考えられます。

カサンドラ症候群によって生じる身体的な不調は、心身の繋がりを示すものと言えます。心のストレスや不安が、身体の症状として表れることは少なくありません。リラックスした時間の確保や、ストレッチ、マッサージなどの体をケアする方法は、身体的な症状を緩和させるだけでなく、心の安定にも繋がります。日々の生活の中で、自分自身と向き合い、心の中の鎧を少しずつ脱ぎ捨てることが、真の自分を取り戻す鍵となるでしょう。

当相談室では、カサンドラ症候群に関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。予約は以下のボタンからお進みいただけます。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-01-27
論考 井上陽平

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