トラウマ後に発達する能力

トラウマを負った人のセルフ(ユング派の自己)は、生き残るために布置されて、その人の個性や創造性を奪う面があります。また、慢性的なトラウマの影響から、自律神経系が調整不全に陥り、身体的な不調が現れます。その一方、トラウマの影響から、生き残るために特殊な能力を持つようになる人がいるので、そのような人の特徴について見ていきます。

外傷後成長

心的外傷後成長する人の特徴12項目

発達早期にトラウマを受けながらも、有名な大学に行き、仕事でキャリアを積み、優れた科学者や芸術家になって、成功している人もいます。彼らは、敏感であり、自律神経系の調整不全や免疫システムが過剰であったりして、感情的、身体的トラウマに苦しんでいます。しかし、その苦しみを反動にして、ワクワクする好奇心に変えてしまい、外の世界を探求しています。また、つらい状況にある人ほど、心は空想の世界に逃げて、そこで豊かな想像力や芸術的な感性が鋭くなるため、文章や絵画、演劇、研究の分野が得意になり、活躍している人もいます。

彼らの長所は、感受性が豊か、人を惹きつける魅力がある、文才である、絵が上手、味つけが上手い、音感がある、感動しやすい、努力家、小さな幸せに気づける、無垢な部分があるなどです。ここでは、心的外傷後に成長する人の特徴について述べていきます。

トラウマによる神経発達

早い段階にトラウマを負って、体がトラウマティックな状態に固定されてしまった人は、脳に危険信号を送り、特殊な形で神経が発達していきます。彼らは、差し迫った危機に対する防衛反応が過剰に働き、過覚醒(PTSD)や低覚醒(解離)の間を行き来して、通常の覚醒状態の人と比べたら、特殊な能力を持ちます。また、子どもの頃から、どうやったら生き残れるかを考えて、過剰に警戒し、観察力を養い、冷静に判断して、特に人間関係に気を使いながら、困難な状況を生き抜いてきました。

発達早期のトラウマと記憶力

人は危機感を覚えた時から、人の記憶が始まると言われています。発達早期にトラウマを受けた子は、乳幼児期の頃から記憶があり、その頃から、既に親のことを分析して、並外れた記憶力を持つことがあります。赤ん坊の頃から、危険な目に遭ったり、不当に叱られたりして、感情の振れ幅が大きい体験は記憶として残り、細かいことまで鮮明に覚えていきます。そして、親のことをよく観察してきた子は、視覚記憶が半端なく良く、目で見たものを頭の中で長期に渡って記憶することができます。このような子どもは、育ちが早く、あまりにも早く自立して、親と役割が逆転してしまう場合があります。

解離による過集中

小児期の頃から、逆境体験の連続で、その困難な状況でも生き延びるために、自分の感情や感覚を切り分けて、解離という防衛戦略を使います。解離を使い、体を凍りつかせると、痛みや恐怖を感じずに済みます。また、体を凍りつかせて、息を止めると、まばたきが減り、目の前のことへの集中力が高まり、頭が回転して、自分の内側から言葉や思考、イメージが浮かんできて、あり得ないくらいの力を発揮します。さらに、周りの気配を消すことで、一つのこと(絵、音楽、詩、本、勉強、仕事、自然、宇宙、空想、想像)に長時間没頭(過集中)できます。極限状態では、ゾーンに入り、この世界がスローモーションになります。

過酷な経験を積んでいくことで

過酷な環境を生き延びてきた経験から、危険なことを平然と出来たり、非合理的な部分を切り離して、人間らしさがなく、自身がコンピュータのようで、精巧に作られたプログラム通りに動く人もいます。彼らは、積んできた経験が違い、思考の仕方や感じ方が独特になります。

感覚過敏で目に見えないものまで感じる

過覚醒のときは、神経がいきり立って、良いことも悪いことも感じすぎて、感覚が鋭くなり、目に見えてないものまで見えたり、聞こえたり、感じたりします。いつも不意を突かれないように、見慣れないものに注意が向き、色んな情報が頭に入ってきたり、色んな情報を拾おうとして、聞き耳を立て、目をこらします。また、体が凍りついたり、離人化していく過程で、芸術的感性が高まり、感動しやすくなります。

過覚醒の躁状態

トラウマがある人は、過覚醒(躁状態)と低覚醒(うつ状態)の間を行き来します。躁状態のときは、勢いのままいって失敗し、恥をかいたり、恐怖を感じたりして落ち込みます。しかし、落ち込んだ状態から自分を元に戻すためのエネルギーをフルに使い、社会活動をする人もいます。覚醒が亢進する躁に転ずると、もの凄くポジティブになり、エネルギーが満ち溢れて、活発な思考や行動をして、何でもうまくいきそうな気分になります。

演技力やコミュニケーション能力

酷い家庭で育った人は、生き残るために、親の機嫌を取ったり、親の望む良い子になることが必要です。普段から、鋭い観察力を使いながら、自分の尊敬する人やアニメのキャラクターなどになりきって、その世界観に浸り、自分のスキルを磨いています。このように生き残る術を身につけており、口達者で、演技上手、作り話をすらすら言えて、相手を喜ばすことが得意になり、迫真の演技をします。コミュニケーションの中では、過剰に同調することが自然に身につき、相手との間を読み取ったり、相手の気持ちを読もうと、二手、三手先まで読んで、分析します。

何でも全力でやり切る

生きるか死ぬかのような状態で生きてきた人は、不必要な感情や感覚を麻痺させて、どんなときも命懸けで、冗談が通じなく、渾身の力を込めて戦います。物事を合理的に考えて、上昇しようとする意欲が高い人もいます。一方、一つでもミスをすると、恐ろしいことが起きると思っており、いつ何時、内部崩壊を起こしかねないようなメンタルを持っている場合があります。彼らは、完璧主義で、到達が難しいことにチャレンジしており、ミスができないから、物事が動かず、思い悩んでしまいます。

好奇心が生きる糧に

トラウマの影響により、他人の目を必要以上に気にして、警戒している状態にあります。その一方、人からどう思われているかを気にしなければ、外の世界に好奇心を見い出すことができる状態に転じます。自分の心地良さを追求するなかで、好奇心に突き動かされる生き方ができれば、自分の栄養となり、生きる糧になります。

内的世界が発展する

複雑なトラウマがある人は、内的世界が分裂しているため、自分の内的世界への深い関与が可能になり、美しさに価値を置きます。彼らは、内的世界の人物から知恵を授かり、精神性の高い生活を送ることができます。また、身体感覚が麻痺して、重力を失うことで、物理的な拘束が取れて、現実との境目が分からなくなるほど、空想の世界に深く浸り、芸術や文学、想像、他者、宇宙と一体になれる人もいます。

俯瞰して物事を見る

身体性を切り離すことで、危険な状況でも淡々とこなすことができて、何事も卒なくこなし、隙間をなくし、完璧にできる人もいます。また、身体から離れて、上空から生活している自分を見下ろすような眼差しの視点を獲得し、この世界を俯瞰して見れるようになり、いくつかの視点を同時に持ちながら生きていくことができます。

知性化

トラウマの影響により、自分の感情に混乱し、自分の感情を見失っていくと 自分の身体を感じられなくなっていきますが、一方で、頭の中で過剰な情報処理をして生きていくようになります。そして、知性で物事を理解し、行動し、知性化によって、自分を武装して身を守ります。脳がフリーズしなければ、言語能力が高く、論理的な思考をして、知識や理解が深くなります。

慢性化したトラウマの悪影響

トラウマを負って、特殊な能力を得たとは引き換えには、生き抜こうとする防衛行動に疲れてしまいます。トラウマが慢性化してしまうと、自律神経系の調整がうまくいかなくなり、体が弱く、原因不明の身体症状が現れます。特に、週5回働く日本の労働環境では、酷使され続けて、寿命を縮めてしまうか、途中に燃え尽きてしまうかもしれません。また、トラウマというのは、人間関係を抑制させたり、この現実世界を生き生きと感じることを奪います。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-05-20
論考 井上陽平

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