凍りつき(凍結反応)のストレス|解離・背側迷走神経

凍りつきという概念は、人間がトラウマに対応するための防衛反応の一つを指します。この状態は、脅威に対する一般的な反応としてよく知られる「闘争」や「逃走」が適応できない状況下で現れます。つまり、個体が脅威から逃げることが物理的に不可能であったり、反抗や抵抗が無意味または危険であると認識した場合にこの反応が起きます。

近年の研究により、この凍りつき反応がより広く認識され、その理解と応用が進んでいます。人間が危機状況に直面したときには、身体は自然と凍りついて、緊張性の不動状態に入る可能性があります。それは麻痺したような感覚で、狭い注意の焦点を特徴とし、息を殺して、動くことができず、反応が鈍くなることを意味します。

特に、幼少期のトラウマに対する反応として、この凍りつきはよく見られます。子供たちは、心身ともに成長途中であるため、脅威に直面した時、闘争または逃走する力が不足している場合が多いのです。その結果、彼らの身体は、危険から自己を守るための適応策として、凍りつき反応を引き起こすことがあります。これは足がすくむという形で具現化されることが多く、子供がその場から動けなくなることを指します。この反応は、子供がトラウマの瞬間を無事に乗り越えるための、生存本能からくる防衛反応の一つと言えます。

愛着と自己防衛の間で引き裂かれる「凍りつき状態」

養育者が自分を脅かす存在となる場合、子供は非常に困難な状況に直面します。この場合、子供は二つの相反する反応を引き起こします。一方では、生まれつきの本能として、子供は安全と愛を求めて養育者に接近しようとします。この反応は「愛着システム」と呼ばれ、子供が自己の安全とサバイバルを確保するためのものです。一方で、同時に子供は養育者からの危険を感じ、闘争または逃走の反応を引き起こします。これは「過覚醒システム」と呼ばれ、直接的な脅威から身を守るための本能的な反応です。

ここで、問題が生じます。子供は養育者に近づきたいという本能と、同時に養育者から遠ざかりたいという本能との間で引き裂かれます。これら二つのシステムは、通常は相互に補完的に機能しますが、この状況では競合するため、子供は身動きが取れなくなります。この混乱と競合が「凍りつき状態」につながります。つまり、子供は身体的にも精神的にも麻痺状態になり、行動を起こすことができなくなるのです。

この凍りつき状態は、子供が自己を保護し、脅威のある状況に適応するための生存戦略です。しかし、それはまた長期的な精神的、身体的ストレスを引き起こし、適応障害や他の心理的問題を引き起こす可能性もあります。したがって、このような状況を経験する子供たちは、適切な支援と治療が必要となります。

体と心が凍りつく反応:複雑なトラウマの心身の影響

人々が複雑なトラウマを抱えている場合、凍りつきの反応が見られることがあります。この反応は、さまざまな身体的および精神的な症状を伴うことが特徴です。

まず、精神的な面では、過剰な警戒心が目立ちます。これは、一定の恐怖や不安があるために、自己を守るための常時の警戒を意味します。彼らは周囲の環境や人々に対して過度に緊張し、脅威がどこからでも生じうるという感覚を抱くことがあります。

身体的な症状としては、呼吸が浅く速くなることがあります。これはストレス反応の一部であり、身体が脅威に対処する準備として酸素を急速に供給しようとする結果です。これに伴い、心拍数の増加もよく見られます。これは、体が高まったストレスや不安に対応しようとしている証拠です。

また、過緊張や筋肉の硬直もよく見られる症状です。これらは身体が危険に対応するために引き起こされる反応で、準備動作の一環とも言えます。しかし、この状態が長期化すると、身体にはさまざまな問題が生じる可能性があります。

さらに、体内のエネルギーが滞るという現象も起こります。これは、身体が何らかの危険を感知し、ストレス反応を起こしているにもかかわらず、何らかの理由で「戦う」または「逃げる」反応を中断せざるを得ない状況が発生した場合に起こります。このエネルギーの不適切な循環は、身体の全体的な機能に影響を及ぼし、持続的な疲労感や活力の喪失を引き起こす可能性があります。

以上のように、複雑なトラウマを抱える人々が示す凍りつきの反応は、その人の心身の健康に大きな影響を及ぼします。そのため、トラウマからの回復と健康の維持のためには、この状態を理解し、適切なサポートと治療が必要となります。

人間の生存戦略と「凍りつく」の自己防衛反応

私たちが直接的な脅威に直面したとき、身体は自動的に一連の反応を起こし、自己防衛のためのメカニズムが作動します。これは、私たちの身を守るための生存戦略の一部であり、特に低周波帯の音に注意を向けて警戒することが必要です。

この周波数帯の音は、通常、危険な生物や状況から発生します。たとえば、大型の動物が接近したり、地震などの自然災害が発生したりしたときです。したがって、低周波帯の音を聞くと、私たちは即座に警戒状態に入ります。

このとき、我々は危険に対して耳を澄ませて警戒を続けます。耳を最大限に利用することで、可能な危険に対する理解を深め、自己防衛のための適切な行動を決定することが可能になります。

さらに、この危険に対応するため、筋肉が硬直します。これは「凍りつく」反応とも呼ばれ、身体全体を静止させることで捕食者からの視認を避ける役割を果たします。具体的には、動かないことや死んだふりをすることで、捕食者が自分を生物と認識しないようにするのです。

このように、私たちは脅威に直面したとき、直感的に一連の防衛メカニズムを発動します。これらの反応は生存戦略の一部であり、私たちが自身を守り、危険な状況から逃れるための重要な道具となります。

絶望の中での成長:「凍りつく」経験から

複雑なトラウマの影響は深刻で、それは特に身体的、精神的な反応として表面化します。恐怖に包まれた瞬間、体は自動的に凍りつき、不動状態に陥り、それは圧倒的な無力感と絶望をもたらします。その強烈さは、言葉によって捉えきれないほどのものです。

想像してみてください。あなたは立ち尽くし、恐怖によって全身が硬直します。身動き一つとれず、しかし、あなたの体は静止しているわけではありません。全身に微細な振動が走り、鳥肌が立つ感覚が広がります。それはまるで寒さに打ち震えるかのように、体全体がガタガタと震えます。それは制御不能の震えで、どうにかして止めようとする努力は全くの無駄に終わります。

そして筋肉は、反応するために緊張して収縮し、まるで鋼鉄のように硬直してしまいます。この収縮と硬直が続くと、身体の内側に痛みが広がります。それはまるで内部から炎が燃え上がるような、激しい痛みです。それは肉体の限界を超えて広がり、一瞬で全てを支配します。身体はこの不可避の痛みに耐えるために、最後の力を振り絞りながらも、少しずつ崩壊していきます。

その状況では、人間としての形や感覚を失い、心の行き着く果てが見えなくなります。行き場を無くした自分は、廃人のように亡骸と化し、全てを失ってしまいます。その過程で、心は機能喪失に陥り、自分の身体の状態さえも把握できなくなります。

この経験は、心身に激しいダメージを与え、言葉では伝えきれない苦痛を生み出します。しかし、そんな困難な状況にも立ち向かい、乗り越えることで、私たちはより強く成長し、前に進むことができます。

トラウマの影響:恐怖、苦痛、そして回復への道

複雑なトラウマの影響を受けると、恐怖に麻痺し、身動きが取れなくなる状況に陥ることがあります。その状況は、まるで心が機能を停止したかのような感覚で、言葉にならない感情を運びながら涙が溢れ出し、止まることがなくなります。体は完全に凍りつき、唯一可能なことは、目を閉じて現実から逃れることだけになります。

そのような状態が続くほど、生きていること自体が苦痛に感じるようになります。心に湧き上がる闇を抱えながら呼吸をすることは極めて困難で、毎度の呼吸が一苦労で、息苦しさを伴います。生きていることが耐えがたい苦しみに変わり、深呼吸することさえも、心の深くにある傷を明らかにするようになります。

目の前に広がる美しい景色があるとわかっていても、その光景は邪魔にしか思えません。かつての普通の日常が、今は完全に変わり果てて暗闇へと押し込み、その日常が怖くさえ感じます。

しかし、人々にはこの困難な時期を乗り越える力が備わっています。その苦しい過程を乗り越えることで、心の傷は徐々に癒され、新たな光が差し込むこともあります。これらの辛い瞬間に立ち向かい、困難を乗り越えることで、自己をより強く成長させ、前に進む力を見つけることができます。それは未来へと繋がる一歩を踏み出すための勇気と力を見つけ出す旅になります。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-06-18
論考 井上陽平

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