解離性障害

解離性障害は、自分が自分であるという感覚が失われている状態を指し、まるで空想の繭の中に自分自身を包み込んで、外界の刺激から自分の身を守ります。しかし、その影響により、現実感が無かったり、ある時期の記憶が全く思い出せなかったり、いつの間にか自分の知らない場所にいたり、もう一人の私が喋ったり行動したりするのをただ眺めているなど、生活面での様々な支障をきたしている状態です。解離性障害が重篤になると、慢性的なトラウマ状態になり、凍りつきや虚脱の間を行き来し、ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」に書かれた強制収容所に囚われた人の心と体になっていきます。

解離性障害

解離性障害の特徴-17項目

解離性障害の人は、ベースに発達障害の傾向を持っている人もいますが、どこかで恐ろしい外傷体験に曝され、慢性的に外傷を受けています。彼らのほとんどは、幼少期や児童期の頃から強い精神的ストレスを受けてきました。彼らは、潜在的な脅威に備えた生き方をしており、内臓や筋肉は危機や崩壊への不安が強く、脳に危険信号が送られ、頭の中で過剰な情報処理を行い、ネガティブな情報を選択しがちです。

病的な解離は、今まで脅かされることが繰り返されてきたため、身体の感覚を麻痺させて、心を守っています。普段から、環境の次の変化に絶えず体は緊張していて、凍りつき/死んだふり、虚脱の防衛パターンの間を行き来しています。疲労やストレスが高まると、感覚が麻痺して、ぼーっとなり、集中力の低下やもの凄い眠気など、自分を守るために何も感じなくなります。脅威が去っても、体が凍りついたり、死んだふりをしたままの状態が続いて、楽しい、嬉しいなどの感情が分からないとか、生きている実感が乏しくなるなど症状が出ますが、その背後には複雑な感情を抱えています。

トラウマの影響により、自律神経系の調整がうまく働かず、周りの気配に緊張して、交感神経が活性化しているときは、この世界に存在して、刺激に圧倒されたり、感覚に溢れています。一方、交感神経がシャットダウンすると、筋肉が極度に弛緩し、この世界から離れて、刺激が遮断されたり、感覚が鈍麻します。そして、意識がぼーっとして、夢と現実が曖昧になり、現実感が無くなります。

自己感覚の喪失

自分の体が自分のものではなく、感覚が麻痺していて、何も思わなくなり、自分のことがよく分からなくなっていきます。自分の感情や言葉が自分のものに感じられなくなり、空っぽな自分になって、世の中の事象を自分の経験として取り込むことができず、何も自分の経験として積み重なりません。酷くなると、何もやる気が起きなくて、生きているのか死んでいるのかも分からない状態に陥り、生きている実感がなく、虚しいです。

身体性の喪失

心と体が統合されておらず、自分の体や物に触っても、触った感じがしなくて、自分が人形みたいです。足が地面についている感じがなく、フワフワして、歩くのが不安定です。これは、身体の中が空洞で、皮膚や筋肉、内臓、関節、腱などの感覚が分からないことで生じます。

気配過敏

誰もいない場所に人の気配を感じたり、目に見えないものまでが見えていたりします。警戒心の高さから、後ろに誰かいそうな気配を感じ、誰かに見られている気がしたり、黒っぽい影が見えたりします。また、聴覚が過敏になって音に怯えたり、光がとても眩しかったり、匂いに耐えれなかったり、夕方から夜にかけて気配が変わることに恐怖を感じたりします。

対人恐怖

人間が脅威になっていて、人が大勢いる場面が怖かったり、不特定多数の人がいる電車に乗ることが怖かったり、背後に来られるのが怖かったり、人の視線や声、感情が怖いと感じます。他者にしがみつくことがあまりなく、一人の世界を好みます。

離人感

ストレスが強い場面では、体から魂が抜け出して、自分を見下ろして、生活している自分の姿を見ます。自分が体から切り離されて、自動的に動かされているような感覚を持ち、存在がぼんやりしていきます。

現実感喪失

外の世界から自分が隔てられているようで、今ここにいるという現実感が薄く、夢か現実か分からなくなります。夢の中が現実のようで、起きていても夢の中にいるように感じます。現実感が無くなると、感覚が麻痺するため、自分の手首を切ることで、現実感を確かめる人もいます。

二重の自己

解離性障害の人は、虐待に遭ったり、学校でいじめられたり、性暴力被害に遭ったり、自分の居場所が無かったりして、生きていくことがとても辛いから、もう一人の私を作り出して、自分は離れた場所から見ています。自分の中に別の他者がいて、眼差しの視点の私と、存在者としての私と二つに分かれて、その間を行き来します。眼差しの視点の私でいるときは、一歩引いた視点から生活している自分を眺め、あれこれ考えています。

体の明け渡し

人によって解離症状は様々ですが、その時その時、自分の体を明け渡して、もう一人の私が生活しているのを離れたところから見ている人もいます。家族を含めた周りの人は、役割を演じているもう一人の私を、私だと思いますが、本来の私が自分が自分で無くなりそうな不安と戦っていることを知る由もありません。

解離性健忘

解離性障害の人は、記憶喪失が起きたりします。解離性健忘では、一定期間の記憶がなく、例えば、日常生活の記憶がなく、数分前にした行動を忘れます。気がついたら別の場所にいるとか、気がついたら時間だけが過ぎていたとか、何をしていたかも分からないけど、体が疲れていたりします。

時間感覚の障害

嫌なことを思い出すと、フラッシュバックして、過去に戻ったような感覚に陥り、時間感覚がおかしくなって、嫌な感覚にとりつかれます。

幻聴が聞こえる

自分の言葉が自分のものでなくなり、思考が勝手にグルグルしたり、勝手に喋り始めたり、別の声が頭の中で話すようになります。この声は、防衛的なパーツが話しています。

体感異常

我慢することが多く、体を凍りつかせてきたので、闘争か逃走の莫大なエネルギーを抱えています。何か嫌悪する刺激に対して、頭や内臓の異物感や、手足を虫が這うような不快感など体感異常が表れて、落ち着かないとか、居ても立っても居られないイライラになります。

原因不明の身体症状

緊張が続くと、どこかで筋肉が極度に弛緩して、血液が全身にいかず、茫然とした状態になります。このときは、まばたきもなく、口が開いて、ぼーっとして、体が動かなくなります。凍りつきや虚脱の状態になりながらも、心と体に無理をさせていると、自律神経系や免疫系の調整不全から、喘息や頭痛、腹痛、生理痛、めまい、吐き気、不快感、疼痛、発熱、過呼吸、パニックになるなど、体調不良になります。

身体機能が制限される

体が凍りついたり、虚脱することで、機能に制限がかかり、声が出ずに突然話せなくなるとか、歩けなくなる、聞こえなくなる、視野が狭くなる、視界がどんよりする、立ち尽くす、白目を向いて倒れそうになるなどが起きます。

死んだふりをして生きる

脅威に備えた人生になり、人目につかないように、隅っこのほうに隠れて、周りの人たちを冷静に観察しています。

過剰な同調性

解離性障害の人は、同調傾向があり、自分の中にいろいろな自分がいて、相手の望む自分になって、すっと自分が入れ替わってしまう癖があります。自分の思った通りに自分を出せず、その時その時の役割を演じるため、猫をかぶる自分のことが嫌いだったりします。

空想に耽る

解離傾向を持つ人は、幼少期の頃から、空想上の友人がいたりします。空想の世界に深く浸り、豊かな想像力を使って、絵画や文章、音楽などの芸術分野で活躍される方がいます。その一方、解離が酷い場合には、脳が固まってしまって、想像することが出来なくなります。

解離性障害の治療

解離症状が重たい人ほど、自分の体が自分のものでは無かったり、体の反応が鈍くなっていたり、感覚が麻痺していたりします。解離性障害の治療には、ソマティックエクスペリエンスなどの体にアプローチする方法が有効になります。治療では、自分の体に着目して、体の震え、揺れ、チクチク、こしょばさなどを出して、生き生きとした気力を取り戻していきます。また、脅威となるものを打ち倒し、勝利を得るイメージを繰り返して、脅威に対抗できるだけの心身を作ります。

解離性障害の治療が進むと、頭と体が繋がり、目の前がクリアで、体の感覚が良くなり、落ち着いて過ごせるようになります。警戒心が解けて、固まっている時間が少なくなり、少しずつ人と関われるようになります。以前は、人の顔色しか見ていなかったけれど、自分に注意が向けられるようになり、物事に対しての動揺が減り、思い悩むことが少なくなります。また、動きたくない、何もしたくないと思っても、すぐに気持ちの切り替えができるようになったり、食欲に気づいて、ご飯が美味しくなったりします。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-05-10
論考 井上陽平

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