アダルトチルドレン(adult children)は、二つの意味があります。
アダルトチルドレン(ACOA)は、アルコール依存症の親を持つ成人のことを指します。これらの人々は、アルコール依存症の家庭環境に育ったため、不適切なコミュニケーションや行動のパターンを学び、特定の心理的問題を抱えることがあります。そして、成人になっても引き続き影響を及ぼし、他人に対して過剰にケアをする傾向がある可能性があります。
アダルトチルドレン(AC)という言葉は、日本でも流行り、心理学や社会学などの分野で使用されています。この現象は、過去のトラウマや不適切な育て方などが原因で発生することが考えられています。これらの人々が共通してみられるのは、自分の都合ではなく、親の機嫌や家の中の雰囲気を優先して行動しています。
機能不全家庭
機能不全家庭とは、1人以上のメンバーが家族全体の機能に影響を与える身体的または精神的障害を持っている家族を指します。例えば、親がうつ病やアルコール依存症などの精神的な問題を抱えている場合や、家族間に対立や暴力が起こる場合などがあります。これらの環境は、子どもたちにとってストレスや不安を引き起こし、成長に悪影響を与える可能性があります。
機能不全家庭の子どもたちは、社会的なスキルやコミュニケーション能力、自己肯定感などが低くなる可能性があります。また、うつ病やストレスに対する感受性が高くなり、自己責任感が強くなる傾向があることも知られています。
その結果、彼らは成人期への移行が困難になり、アイデンティティの確立や親密な他者と関係、自立に苦労する可能性があります。彼らはまた、責任を回避し、自尊心が低く、罪悪感や恥の感情に苦しんでいる傾向があります。
アダルトチルドレンの5つのタイプ
アダルトチルドレンは、警戒心が強く、この世界を危険だと思っています。体を緊張させながら、人の顔色を伺い、心の中では苦しいと感じているかもしれません。ここではアダルトチルドレンをいくつかのタイプに分けてみました。
ヒーロー(英雄)
ヒーローは、機能不全家庭または逆境体験の多い家庭環境で育ったにもかかわらず、家族の中で最も強い絆を持ち、家族全員を守り、家族全員が安心して生活できるようにするため、自分自身の感情やニーズを無視してしまう人のことを指します。家族の仲が冷めていても、必死に両親の関係が悪くならないように優等生でいて、両親の仲を取り持とうとします。家族が崩壊しないための重大な任務を遂行しており、親の期待に応え続けて、一時的に両親の関係が良くなったりするので、自分の感情を押し殺して、もっと頑張りすぎてしまいます。
ヒーロータイプの人は、戦う強さや回復力を備えており、自立の感覚を育み、自分の感情を管理することを学び、困難な状況を乗り切ろうとしています。また、自己犠牲的で、他者への共感と思いやりを発達させているかもしれません。
スケープゴート(いけにえ)
スケープゴートは、家族内の問題について頻繁に非難されたり責任を問われたりする人のことを指します。彼らは、家族の攻撃性や敵意、欲求不満などの負の部分を背負い込まされて、非難されます。家族は「この子さえいなければ…全てはうまくいくのに」という幻想を抱くことで、家族の崩壊を防いでいます。
スケープゴートになることは、関心を引くために好ましくない行動を取ったりして、精神的および感情的な幸福に大きな影響を与える可能性があります。彼らは、居場所を無くして、孤立し、誰からも支えられず、家族から誤解されていると感じるかもしれません。彼らはまた、たとえ彼らが過失を犯していなくても、罪悪感と非難の感情に苦しむかもしれません。
ロストワン(失われた子供、いない子)
ロストワンは、家族から切り離されたり疎遠になったりしていると感じている人のことを指します。彼らは、家族との関係に大きな亀裂や断絶を経験し、彼らとの帰属意識や繋がりをほとんどまたはまったく感じていない可能性があります。彼らはまた、彼らの家族が彼らが誰であるかについて彼らを理解または受け入れていないと感じるかもしれません。迷子になる理由は、家族の依存症やメンタルヘルスの問題、トラウマ的な出来事や葛藤、価値観やライフスタイルの選択の違いにより崩壊しているなど、さまざまです。
ロストワンは、家族の人間関係から自分を守るために距離をとり、目立たず静かで、非常に孤立した経験になる可能性があります。彼らは孤独感、拒絶感、無力感、希死念慮、見捨てられた気持ちに苦しんでいるかもしれません。彼らはまた、家族の外で健全な関係を築き、維持するのが難しいかもしれません。
ピエロ(道化師)
ピエロは、機能不全家庭または逆境体験の多い家庭環境で育っており、家族の中の緊張を和ませて、家族間の緊張を解消する役割をする人のことを指します。彼らは、親から愛されたいとか、家族の仲を取り持とうとして、芝居がかった大げさな身振り手振りをして、周りの人を笑わせたり、自分に注目を向けたりします。
ピエロは、機能不全家庭が育ち、複雑な心理的問題を抱える可能性があります。普段は、周りの人を顔色を見ながら、愛想もよく振る舞っていますが、心の中ではいつも苦しいと感じており、しかしそれを絶対表には出しません。
ケアテイカー(世話役)
ケアテイカーは、機能不全家庭または逆境体験の多い家庭環境で育ったにもかかわらず、家族というものをずっと大切にしていて、年下の兄弟の世話や苦労している親をサポートしており、家族の中で親のような役割をする人のことを指します。
ケアテイカーは、他人に対して過剰にケアをすることで、自分の問題と向き合うことを避けたり、自己の不安やストレスを軽減するために行うことが多いです。しかし、これは他人にとっても負担になり、自己を犠牲にすることになります。
アダルトチルドレンの生きづらさ
アダルトチルドレンは、親のことが原因でいつも家庭内がぎくしゃくして、良い雰囲気でないから、子どもに悪影響を及ぼします。子どもは、親の態度の豹変を恐れて、いつも親を不機嫌にさせないようにするために顔色を伺って、正解を探すようになり、親のご機嫌を取るとか、愚痴の聞き役になり、気を使いすぎて疲れます。そして、機能不全家庭で育つことが、体をサバイバルモードにしていくことになり、高感度になればなるほど、感情的トラウマを負って、大人になっても様々な場面で影響を受けるようになります。
また、機能不全家庭で育つ子どもは、親を早々に諦めることができたらいいのですが、子どもは親に依存しないと生活していけないために、簡単に親を切り離すことができません。アダルトチルドレンは、家族を理想化して、家族のために自己犠牲を払い、家族のために一生懸命頑張ります。しかし、その頑張りも認めてもらえず、家族を客観的に見れるような年齢になって、自分の親におかしなところに気づいたときに、今まで信じていたものが崩壊して、病気になります。
親から脅かされることが繰り返された子どもは、親に怒鳴られたときのことが目に焼きついて、石のように固まり、トラウマを植え付けらていきます。トラウマの影響下にある人は、差し迫った危機に対する防衛が過剰になり、最悪の事態を想定し、必要以上に用心深くになります。
複雑なトラウマを経験しながらも、機能不全家庭で育つ子どもは、誰がどこにいるかを張りつめた気持ちで過ごしながら、息を潜めて、足音を立てず、自分の存在を消し、自分の思うような行動が取れません。自分を脅かす対象に対して、耳を澄ませながら、その対象の気配、表情、足音、振る舞い、話す内容を注意深く観察しています。脅威の対象が自分に何かを要求してくると、体を凍りつかせながらも、その要求に応えるために体を動かします。家の中に自分を脅かしてくる親や兄弟がいる場合は、絶望や無力なトラウマの世界に閉じ込められます。
アダルトチルドレンは、家の中だけでなく、外の世界の気配を怖がったり、他人の目を気にしたりするようになり、人の態度や反応、表情に敏感になります。人の気配、言葉、感情、音や光、振動、匂いなどに過敏になります。対人恐怖、気配過敏、聴覚過敏、化学物質過敏症、わき見恐怖症になっていきます。
機能不全家庭で育つと、異常な環境に耐えることが当たり前になり、違和感に気づいたときには、心身が限界に至っていることがあります。いつも体に力が入って、神経が張りつめた状態が通常で、肩こりや頭痛が酷くなります。心も体も病に侵され、精神疾患や原因不明の身体症状などが悪化します。
アダルトチルドレンからの回復
機能不全家庭の子どもたちは、適切なサポートを受けることで、健やかな成長をすることができます。心理カウンセリングやグループ療法などで、ストレスや不安への耐性をつけて、社会的なスキルやコミュニケーション能力を向上させることができます。アダルトチルドレンの対する心理療法は、様々なタイプがあり、カウンセリングや家族療法、トラウマに焦点を当てた治療、グループ療法などがあります。これらの療法はアダルトチルドレンのが抱える問題を解決し、独立した生活を送るために必要なスキルを身につけることを目的としています。
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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-01-27
論考 井上陽平