境界性パーソナリティ障害の女性恋愛の特徴をチェック

境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder、BPD)は、人間関係の不安定さと激しい変動、安定しない自己像、衝動的な行動、自殺の危険性、自傷行為、急激な気分の変化、持続する空虚感、感情の調節上の問題、妄想、孤独、心配、嫉妬、見捨てられることへの過敏を特徴とする疾患です。

境界性パーソナリティ障害の原因

境界性パーソナリティ障害が診断された場合、その多くは複雑なトラウマの経験を持っています。これらのトラウマには、虐待、ネグレクト、機能不全な家庭、性暴力被害、学校のいじめなどが含まれます。また、発達障害を抱えたり、母親との深刻なトラウマを抱えた関係を有することもあります。これらのことから、自己像や感情の調整において不安定な状態を抱えることが多いです。人々に対する基本的な信頼感が育っておらず、不信感に駆られ、周りを注意深く観察する傾向があります。

境界性パーソナリティ障害は、女性がより多く罹患することが多いとされています。この障害は、複雑性PTSD、双極性障害、発達障害、統合失調症、解離性障害、解離性同一性障害などと同様の症状と重なることもあります。一部の意見では、40代以降になると順応して落ち着きを取り戻すことがあると言われていますが、他の意見では、長年トラウマを無視してきたため、うつ病や慢性疲れや慢性疼痛など、原因不明の身体症状が強くなるということもあります。

境界性パーソナリティ障害の子ども時代

児童虐待のサバイバーは、自分の家の雰囲気に抑圧されていたことに気付くことがよくあります。彼らは無力な状態で生活し、両親の喧嘩や議論の声と叫び声を恐れて身をかがめています。家庭では、彼らは両親の権力のダイナミクスに従属し、自分自身を凍りつかせるか、死んだふりよって不当な扱いに対応します。彼らは自分の身に脅威を感じると、サバイバルモードに入り、音、声、言葉、匂いなどのすべての刺激に過敏に反応するようになります。彼らは常に両親に目を光らせ、耳を澄まし、対処できない状況を避けるために警戒心を高めた状態で生活しています。この絶え間ない不安の状態は彼らの生き方になり、最小の見落としでさえ潜在的な生命を脅かす出来事として認識しています。

良い子として育つ

悲惨な家庭環境で育つ子どもは、生き延びるために、自分自身を親の主張に合わせ、親の気分を取り入れ、共感を示し、行動の順序を考えるようになります。親が怖いから、怒らせないようになだめ、本来の感情や感覚を最大限に抑制し、誉めてもらおうと努力します。このような環境では、身勝手な親に抵抗するよりも、家族のために自分自身を犠牲にして頑張ることが望ましいとされています。

子どもは自己主張をすることなく周りに合わせて生きてきましたが、思春期になると、心身に限界が現れ、神経発達が妨げられ、失感情やうつ、摂食障害、強迫性障害などが生じ、情動調整が困難になります。その結果、家族や周りからは問題児として扱われます。子どもは家族を大切に思ってはいましたが、自分自身が大切にされなかったことに気づき、人生の目標を見失い、方向性が変わってしまいます。このような家族関係の歪みを背負いながら、小さい頃から身代わり役、世話役、良い子の役割を受け負ってきましたが、このような状況では精神が崩壊してしまいます。

母子関係のトラウマ

母親は、外面には良い人でいるが、家庭内では父親との関係が不満で、フラストレーションを溜め込んでいます。また、子どもとの相性も良くなく、恐怖を感じたり、突然の怒りの振る舞いもあります。母親が豹変して罵倒すると、子どもは嵐が過ぎ去るのを辛抱強く待つことになります。母親は父親への強い不満を抱えており、子どもはその愚痴を聞かされることになっています。

父親が最悪な場合

父親からの虐待やDVが酷く、怒鳴り散らしている場合、子どもは何もできず、無力な状態になってしまいます。母親に助けを求めたいとは思いますが、他人の負担になりたくないという思いから、言葉にすることができず、本音や本当の感情を隠してしまうことがあります。

境界性パーソナリティ障害のチェック項目

境界性パーソナリティ障害のチェック項目には以下のようなものがあります。

  1. 感情や気分の起伏が激しい。
  2. 身体的、精神的な苦痛に対して反応が過剰。
  3. 自己イメージや自己感覚が不安定。
  4. 他人との関係が激しく不安定で、理想化と過小評価の両極端になる。
  5. 見捨てられる強い恐怖や孤独感を感じる。
  6. 怒りや憎しみなど抑えられず感情のコントロールが難しい。
  7. 自傷行為や自殺的な傾向がある。
  8. 安全ではない性行為や過食、危険運転、薬物など危険な行動を取る。
  9. 妥当性や義務感を強く感じる。
  10. 慢性的な空虚感や投げやりな態度、退屈しのぎ。
  11. 一過性の妄想的な観念もしくは重症の解離症状

人間関係のトラブル

境界性パーソナリティ障害を持つ人は、しばしば異性関係や職場の人間関係において緊密な関係を形成し、対立を引き起こし、自傷行為または自殺すると騒ぐことがあります。彼らの日常生活はしばしばトラウマ的な経験から生じるトリガーに悩まされ、彼らは頻繁にエピソードを起こし、感情を調整するのに苦労しています。この不安定さは、過食、過度の買い物や薬物乱用、さらには家庭内暴力などの衝動的な行動につながる可能性があります。

一人になると、彼らは空虚さに直面し、孤独、悲しみ、落ち着きのなさの感情に支配されます。この空白を埋めるために、彼らはつながりを求めて努力し、過度の飲酒、友人への絶え間ない電話や電子メールなどの行動に従事します。しかし、本物の思いやりのある友情がないため、これらの行動は孤立感を増幅させるだけです。さらに、自分の行動が他人に迷惑がられて注意を受ける場合には、彼らは過度に反応し、相手を激しく罵ったり、怒鳴り散らすなどの行動を行ったりします。

感情の起伏が激しい

境界性パーソナリティ障害を持つ人は、過去のトラウマの痕跡を持ち、小さなことでも深く傷つき、うつ病に陥るほど感受性が高まります。彼らの感情は激しく変動し、彼らの気分はジェットコースターのように急上昇し、急降下します。ある瞬間、彼らは笑っているかもしれませんが、身体的状態の悪さと、脳の誤認知により、一瞬で怒ったり無表情になったりします。これらの個人は感情を調整するのに苦労し、しばしば激しい怒り、うつ病、不安、および放棄の恐れを経験します。彼らの気分は不安定で、彼ら自身の不安感に対処することは困難です。

理想化と脱価値化

境界性パーソナリティ障害を持つ人は、非常に苦痛で困難な日常生活に耐えます。その結果、彼らは、自分を必要としたり、自分を大切に思ったりしてくれる人々を理想化し、彼らを貴重なものとして扱います。しかし、理想化された人が、自分を必要としないとか、自分の思ったような返事をしてくれないとき、彼らは惨めで、恥ずかしいと感じます。これらの否定的な感情は不快感につながり、彼らの心はざわつきます。その後、彼らは以前に理想化された人の切り下げを進め、さらなる失望と心痛につながります。

見捨てられる不安

境界性パーソナリティ障害の人は、大切な人からの拒絶や見捨てられることを恐れています。一人でいることが辛くて心細くて、どうしていいか分からなくなり、孤独と不安に襲われます。彼らの心の中は、真っ暗な世界に一人で留まっているような孤独感と寂しさがあり、誰にも頼ることができません。この不安から、彼らは一人でいる不安な状況に耐えられず、過去のトラウマ(例えば、養育者との分離不安)に襲われてしまい、混乱と絶望に陥ります。

境界性パーソナリティ障害の人は、恋愛関係に非常に敏感であり、潜在的な脅威や拒絶に反応してしまいます。彼らは見捨てられることを回避するために、周囲の人々の気分を察知し、自分の感情を後回しにして、必死にしがみつくことがあります。彼らはいつも大切な人の隣にいたいと思い、マメに連絡がほしくて、依存した生き方になっています。これはしばしば、安定した自己意識を維持するために他人に依存することにつながります。また、彼らは自分の無価値観に悩み、不安定な自己像を抱えており、他者に依存することで自分自身を安定させようとする傾向があります。

恋人の異性関係に対して、脅威を感じやすく、危険のスイッチが入ると、楽しめなくなり、頭の中はそのことばかりで落ち着かなくなり、この世界が変わってしまいます。そのため、彼らは嫉妬や束縛、恐怖、怒りなどの感情に苦しみ、自分の行動をコントロールできなくなることがあります。そして、相手を罵ったり、関係を断ち切ったり、怒りをぶつけたり、自傷行為や自殺のジェスチャーなどの破壊的な行動をとる可能性があります。このような感情の爆発後には、彼らに罪悪感と自己批判的な気持ちが残り、継続的な苦痛を引き起こす可能性があります。強烈で周期的な行動パターンに陥ることで、個人や関係にとって大きなダメージを与える可能性があります。

試し行動

無価値感と放棄の恐れに悩まされている境界性パーソナリティ障害を持つ人は、パートナーの愛情の信憑性を確認するために行動をテストします。彼らは愛の妥当性を検証しようとして、相手の限界まで試します。しかし、これらのテストは、相手の愛情の誠実さに絶えず疑問を投げかけ、疑うため、自分自身と愛する人の両方に繰り返し感情的な害をもたらします。この絶え間ない安心の必要性は、損傷した関係と、自傷的な痛みと失望のサイクルにつながります。

慢性的な空虚感

境界性パーソナリティ障害を持つ人は、彼らの存在の中心にある慢性的な空虚感に悩まされています。彼らが家の中で脅かされることが繰り返されたとき、彼らはさらなる痛みを避ける手段として彼らの怒りと欲求不満を隠すことを学びました。しかし、異常な環境で生活することは、異常な状態の正常化につながり、心に空白を残し、自分の感情や感覚を麻痺させて、人間の根源的なものが欠けていきます。時間が経つにつれて、彼らの自己認識は低下し、彼らは自分自身を失っているように感じます。彼らは自己感覚を失うことへの恐れから不安を経験し、外部の情報源からの検証を求めます。

感情の鈍麻

感覚が鈍くなると、エネルギーが衰え、人生は喜びを失い、感情は平板化します。これは、自分の本音や本当の感情を長い間抑圧し、その結果、世界との本当のつながりが欠如しているためです。また、自分が本当に誰であるか、今まで何をしてきたのか、そして自分が本当に生きていて存在しているのかどうかについての恐れにつながります。幸せな思い出がなければ、悲しくてつらいものだけが残り、ネガティブな経験だけで満たされた人生が残り、それが自分を縛り付けて、無気力になり、何にも興味がなくなります。

戦う人格

育まれた家庭から、親子関係に基づいた理想的な”良い子”という自分像を生活に取り入れます。周囲には大切な人々がいて、彼らへの愛着や喜びを抱いています。しかし、自分を脅かす刺激に向かっては、防衛的な反応が起こり、脅威を遠ざけようとする防衛が働きます。そのため、交感神経系に支配され、「良い子」ではない別の自分が表に出てきて、”良い子”自身が背後から自分を見守ります。一方、感情的な人格部分が身体を支配して、自分を守るために脅威と戦います。

恋愛関係など甘えが可能な相手にだけ、怒りを表現したりします。大事な人と言い争い、怒ってしまうときは、心臓がドキドキして、手が冷えて、肩がワナワナ震え、息が苦しくなります。酷いときは、フリーズして、頭が真っ白になり、相手の言葉が耳に入ってこなくて、行動をコントロールできなくなります。そして、怒りに飲まれて、交感神経系が乗っ取った状態になり、情動的な人格部分が暴れます。相手がその場から離れていこうとすると、必死にしがみつく行動を取ります。自分のことが受け入れてもらえず、もう終わりだという感情に支配されると、混乱して自暴自棄になり、投げやりな行動や自殺をほのめかす行動、自傷行為をするなど、包丁を持ち出したり、飛び降りしようとするので、警察沙汰になることがあります。大きなトラブルになったあと、本人はその記憶を覚えていないことがあります。

脅威を遠ざける防衛

脅かされることが繰り返されてきた人は、生き延びてきたパワーがあり、押さえつけられそうになると戦うか逃げるかします。また、脅威を遠ざけようとする防衛が働くために、攻撃される前に攻撃してしまいます。相手に支配されないように、相手の意識で押さえつけられないように、先読みして、先手をうち、過剰に反応します。相手が何かを言う前に自分が言って多弁になります。 

自傷行為や依存症

境界性パーソナリティ障害を抱える人は、ストレスや緊張がたまると、トラウマに関連するフラッシュバックやパニック発作などの症状が起こりやすくなります。これは、過去に経験したトラウマが、現在のストレスと結びついているためです。

このような状況に置かれると、境界性パーソナリティ障害の人は苦しくなり、逃げ出したくなることがあり、自傷行為や依存症に陥ることもあります。自傷行為は、ストレスから逃れようとして自分自身を傷つけることであり、切り傷をつくったり、火をつけたり、頭を打ったり、薬物を乱用したりするなど、様々な形で現れます。また、依存症に陥ることもあります。例えば、アルコール依存症、薬物依存症、摂食障害、セックス依存症、ギャンブル依存症などがあります。

白黒思考

境界性パーソナリティ障害の人々は、子どもの頃から親の愛情を求めて努力してきましたが、何度も拒否され、恐怖や元気のなさ、自己非難に苦しめられてきました。学校や社会でさまざまな圧力に立ち向かっていくうちに、心身が限界に近づいていきました。そこで、この世界のすべての人々を敵とみなし、自分が傷つかないようにするために、白か黒か、敵か味方か、0か100かの境界線を引いて対応するようになりました。

彼らは、その場のしのぎの優しさや愛情は入らないと感じています。普段から、曖昧なことや中途半端なことに耐えることが難しく、物事を白黒はっきりさせないと落ち着かなくなり、その場にじっとしていられなかったり、自分が自分でなくなる不安を感じたりします。また、相手を自分の敵か味方かにはっきり区別する傾向があるほか、失敗すると全てがダメになると思い、完璧でなければならないと感じることがあります。

心配性

小児期から逆境体験が多く、脅威に対処しなければならない状況に置かれた人々は、生存を高めるために必要な脳領域が発達します。複雑な社会において生き延びるため、最悪の事態を想定した生き方をすることがあり、想定外のことが起こっても影響を受けにくいように、様々なことを準備します。しかし、いつも不安を払拭できず、心配ばかりが増えて、先回りして行動してしまうことがあります。

痛みの体

体は凍りついたり、死んだふりをするなどの様々な状態の間を行ったり来たりしています。敏感すぎる場合もあれば、感覚が鈍感になる場合もあります。この状態は、興奮、警戒、退屈、倦怠感、イライラ、解離、麻痺、虚脱などに表れます。

身体的には、首が腫れていたり、胸や背中が痛かったり、喉が痛かったり、手足がキンキンに冷えたり、節々が痛かったりすることがあります。また、息が浅くなったり、心拍数が下がったり、体温が下がったりすることがあり、自律神経系や免疫系、内分泌系に問題が発生することもあります。

自他境界の曖昧さ

境界性パーソナリティ障害を抱える人たちは、警戒心が過剰であるため、刺激に敏感になりますが、自己感覚が希薄です。彼らは、危険を避けるために過度に用心深くなり、頭の中の警報が鳴りっぱなしで、多くの情報が頭の中に入ってきて、情報処理が難しくなることがあります。

また、現実の痛みから逃れるために、自分が何を感じているのかあまり分からず、周りの反応を見てどう感じるかを知るようになってしまいます。日常的に、周囲の状況や他者の感情などのエネルギーが絡み合って、相手の気持ちや思考が混ざってしまうことがあります。苦手な人が近くにいる場合、過剰に反応してしまい、自分自身の軸が失われ、自他の境界が曖昧になることがあります。

正義感

境界性パーソナリティ障害を抱える人々は、子ども時代から自分自身を脅かす身勝手な人々に囲まれ、尊厳を踏みにじられた経験をしてきました。このため、自分自身の尊厳を守るために、他人の尊厳を踏みにじったり、悪事を働いたりする人を悪者と見なし、その悪者をやっつけ、より良い道を探ろうとする傾向があります。その結果、悪者を打ち倒すことで、暗闇に包まれていた場所に光を取り戻そうとするのです。

しかしながら、社会や人間関係においては、完全な正義を求めていても、人間関係を維持することは困難です。人は、道徳的に優れた道を選択することができない場合もあるため、人間関係を持つ場合、友人や恋人といった関係で、悪い面に直面することを避けることは非常に困難です。正義感が強すぎて、人々の悪い行動に我慢できず、関係を即座に切ってしまうような人々は、人間関係を築くことが非常に困難になります。

異性関係

境界性パーソナリティ障害を抱える人が恋愛をする場合、気分のアップダウンが常につきまとうため、自分の感情や行動をコントロールすることが難しくなり、頻繁に過呼吸やパニック発作を起こすことがあります。日々が苦しく、相手にすがりつきたくなる傾向にありますが、自分のことを理解してもらえず、相手の言葉や態度に傷ついたり、揉め事や言い争いが多発するため、心身が疲弊し、関係が長続きしないことが多いです。

このような状況では、自分自身を否定したり、相手を責めたりすることで、人間関係をさらに悪化させてしまうことがあります。また、相手の人生を壊さないようにという配慮から、一緒にいるのが辛くなっても、愛情を求め続けることがあるということもあります。

普通の人が踏み入れない領域にも

トラウマの凍りつきや虚脱状態に陥っており、孤独感やイライラ、不安感に苛まれ、夜には眠れない状況にあります。朝は体調が優れず、鬱々とした気分になります。昼間に仕事をこなすことが困難であり、夜になると身体が動きやすくなるため、水商売で働く人が増える傾向にあります。

このような状態にある人たちは、寂しさや孤独感を耐え切れずに不安定になり、落ち着きを失ったり、じっとしていられない衝動に駆られることがあります。そうした人たちは、どうにでもなると思ったり、誰でもいいからと不特定多数の異性と関係を持ったりすることがあります。また、客観的に物事を見ることができず、自分が納得したり自尊心を満たすことができれば、一般的には踏み込まないような領域にまで進んでしまうことがあります。そのため、風俗業界で働くことからAV女優に転身する人もいます。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-02-27
論考 井上陽平