過緊張の人はなぜ休めないのか|力を抜けない心理と身体の仕組み

過緊張の人は、
体力がないわけではありません。
意思が弱いわけでも、性格が神経質なわけでもありません。

過緊張の人は、
**「安全が外側に保証されていない世界を生き延びてきた神経系」**を持っています。

安心できる環境や、
危険を引き受けてくれる大人、
緩んでも守られる関係が、
十分に存在しなかった世界。

そのなかで神経系は、
「自分が張り続けなければ、生き延びられない」
という役割を引き受けてきました。

一見すると集中しているように見えても、
内側では、
注意・姿勢・感情・対人感覚のすべてに力が入り続けています。

その結果、
エネルギー消費は大きくなり、
「何もしていないのに疲れる」
「休んでも抜けない」
という状態が慢性化します。

覚醒水準が下がらないまま生きてきた身体の履歴です。


緩んだ瞬間に危険が起きていた身体の記憶

過緊張の人は、幼少期から
次のような体験を繰り返してきた場合が少なくありません。

  • 緩んだ瞬間に、何かが起きる
  • 気を抜くと責められる
  • 境界を越えて侵入される
  • 壊される、否定される 

こうした体験のなかで、
神経系は自然に学習します。

「備えていれば、被害は最小限で済む」
「緊張していれば、取り返しのつかないことは避けられる」

その結果、
「常に備えている状態こそが安全」
という感覚が、身体の基準になります。

これは異常反応ではありません。
防衛であり、適応であり、生存戦略です。

過覚醒(ハイパーアラウザル)とは
https://trauma-free.com/hyperarousal/


発達早期に固定された身体の硬直パターン

過緊張の人は、
発達のごく早い段階から、身体が硬直してしまった人でもあります。

本来であれば、
感じる
揺れる
委ねる

といった生命エネルギーは、
関係のなかで循環し、回復へ向かうはずでした。

しかし過緊張の人の場合、
それらのエネルギーは
**「管理」と「抑制」**に使われてきました。

感じる前に止める。
動く前に固める。
委ねる前に構える。

その身体の使い方が、
いまも無意識のレベルで続いています。


本能や欲求を止めて生き延びてきた背景

過緊張の人は、
「本能」や「欲求」を生きる存在とは逆に、
生き延びるために、本能や欲求を眠らせた人とも言えます。

休むこと。
遊ぶこと。
無防備でいること。

それらが、
危険や罰、侵入と結びついていた歴史があります。

だから、
何もしない時間が落ち着かない。
楽しもうとすると、どこかで緊張が走る。

トラウマが身体に残る仕組み
https://trauma-free.com/trauma-back-tension/


「支えられる経験」が形成されなかった影響

過緊張の人は、
「誰かに支えてもらう体験」が十分に形成されないまま、
自力で世界に適応し続けてきた人です。

その結果、身体は
「自分で支え続ける」以外の方法を知りません。

頼る前に踏ん張る。
甘える前に緊張する。

それは性格ではなく、
条件反射としての生存反応です。


苦しさを感じきる前に身体が固まる仕組み

過緊張の人は、
苦しさを感じても、
それを感じきる前に、さらに緊張を重ねてしまいます。

感じることは、
一瞬でも無防備になることを意味していたからです。

そのため、
感じるより先に、持ちこたえる。
崩れるより先に、固める。

感情を感じられなくなる理由
https://trauma-free.com/paralysis/


「今ここ」に戻れない神経系の参照点

過緊張の人は、
頭では「今は安全」と分かっていても、
身体がそれを受け取れないことが少なくありません。

神経系が参照している基準が、
「今」ではなく、
過去に最も危険だった状態に固定されているからです。

声のトーン。
視線。
沈黙。

それだけで身体は反射的に備えます。
これは記憶ではなく、身体反応です。


安心が学習されなかった理由

過緊張の人は、
安心の仕方を知らないのではありません。

安心を練習する機会がなかったのです。

崩れても守られる。
弱っても関係が続く。

そうした前提がなかった環境では、
安心は学習されません。

これは意識の問題ではなく、
条件づけられた神経系の反応です。


常時作動する内的防衛システム

過緊張の人は、
自己を守るための内的防衛システムが、常に作動しています。

  • 緩み=危険
  • 休息=侵入
  • 委ねる=消失

そのため、休もうとすると不安になる。
何もしないと、落ち着かなくなる。

それは甘えではありません。
防衛が解除されていないだけです。


偽りの安定としての常時覚醒

過緊張の人は、
「安心して崩れても回復できる環境」を持てなかった結果、
**偽りの安定(常時覚醒)**の中で自己を保ってきました。

一人で張り続ける世界から、
誰かと一緒に緩む世界へ。

その移行に必要なのは、努力ではありません。

安全感と回復の関係
https://trauma-free.com/trauma/relationship/


回復に必要なのは努力ではなく体験の更新

だから、過緊張の人に必要なのは、
頑張りを手放す覚悟ではありません。

必要なのは、
安全な条件のもとで、ほんの一段階だけ負荷を下げる体験です。

  • 姿勢を完全に正さなくていい時間
  • 感情を整理しなくていい沈黙
  • 役に立たなくても関係が続く体験

それらの小さな現実が、
神経系に
「緩んでも壊れなかった」
という新しい記憶を残していきます。


結論|身体が選び続けてきた、生存のやり方

過緊張の人は、
長いあいだ、世界に備える役割を引き受けてきました。

誰よりも早く気づき、
誰よりも強く身構え、
誰よりも先に危険を引き受ける。

それは性格でも癖でもなく、
そうしなければ保てなかった関係と環境の中で、
身体が選び続けてきた生存のやり方です。

緩めなかったのではありません。
緩めれば、何かが壊れると知っていた。
だから、力を抜かずにいられなかった。

回復とは、
その生存を否定したり、
「間違っていた」と修正することではありません。

いま必要なのは、
別の可能性があることを、
言葉ではなく体験として
神経系が知り直していくことです。

備えなくても続く関係がある。
力を入れなくても壊れない時間がある。
動かなくても責められない場所がある。

その積み重ねの中で、
神経系は少しずつ学び直していきます。

「ずっと全力でいなくても、生きていける」
という、次の生存の形を。

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【執筆者 / 監修者】

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)

【保有資格】

  • 公認心理師(国家資格)
  • 臨床心理学修士(甲子園大学大学院)

【臨床経験】

  • カウンセリング歴:10年/臨床経験:10年
  • 児童養護施設でのボランティア
  • 情緒障害児短期治療施設での生活支援
  • 精神科クリニック・医療機関での心理検査および治療介入
  • 複雑性トラウマ、解離、PTSD、愛着障害、発達障害との併存症の臨床
  • 家族システム・対人関係・境界線の問題の心理支援
  • 身体症状(フリーズ・過覚醒・離人感・身体化)の心理介入

【専門領域】

  • 複雑性トラウマのメカニズム
  • 解離と自律神経・身体反応
  • 愛着スタイルと対人パターン
  • 慢性ストレスによる脳・心身反応
  • トラウマ後のセルフケアと回復過程
  • 境界線と心理的支配の構造