注意されると泣いてしまう落ち込んでしまう病気:過剰反応の原因とその対処法とは?

注意されると泣いてしまう 人格傾向・パーソナリティ

「少し注意されただけなのに、勝手に涙が出てしまう」「上司は普通に話していたはずなのに、頭が真っ白になって何も言えなくなった」「仕事中に泣いてしまったことが恥ずかしくて、次の日から出勤するのが怖い」

注意された場面で涙が出ると、注意された内容以上に、泣いてしまった自分を責めてしまうことがあります。社会人なのだから、これくらい受け止めなければならない。相手の言っていることも理解できるし、自分に改善すべき点があることも分かっている。それなのに、胸が詰まり、喉が固くなって、涙が止まらなくなるのです。

その場では何とか謝ることができても、帰宅してから上司の表情や言葉を何度も思い出し、「どうしてあんなことで泣いてしまったのだろう」と落ち込み続けることもあります。翌日になると、また同じ相手と顔を合わせるのが怖くなり、仕事へ向かう足が重くなってしまう場合もあるでしょう。

こうした反応には、失敗への恐怖や自己否定、他人からの評価への敏感さ、幼少期の叱責体験、慢性的なストレスなど、さまざまな背景が関係しています。特に、人の機嫌を気にしながら育ってきた場合には、相手の声や表情の変化に触れた瞬間、以前の人間関係で感じていた恐怖や恥ずかしさが呼び起こされることがあります。

この記事では、注意されると泣いてしまう心理や身体の反応を整理しながら、過去のトラウマとの関係、注意された後に落ち込みが続く理由、職場でできる対処法について解説します。

注意されると泣いてしまうのは病気なのか

大人になってからも注意されると涙が出る、怒られると頭が真っ白になる、少し指摘されただけで何日も落ち込む。こうした状態が続くと、自分には何か精神的な病気があるのではないかと心配になることがあります。

注意されたときに涙が出ること自体は、特定の精神疾患を意味するものではありません。人は悲しみだけでなく、強い緊張や悔しさ、恥ずかしさ、怒りが重なったときにも涙を流します。相手の前では落ち着いていたいと思っていても、感情が一度に高まると、思うように抑えられなくなる場合があります。

ただし、注意されるたびに強い恐怖を感じたり、出勤できなくなるほど落ち込んだりする場合には、心身の状態を詳しく見ていく必要があります。例えば、普段から人の評価が怖く、失敗することを極端に恐れている場合には、社交不安症などが関係していることがあります。また、職場のストレスが続き、睡眠や食欲にも影響が出ている場合には、適応障害(適応反応症)やうつ状態が重なっている可能性も考えられます。

一方で、精神疾患の診断には至らなくても、過去の傷つきや長期間の緊張によって、人から注意される場面で強い身体反応が現れることがあります。涙の有無だけで判断するより、注意されたときに何を感じ、身体がどのように反応し、その後の生活にどれほど影響しているのかを確かめることが大切です。

注意の内容よりも、「責められた」という感覚が強くなる

職場での注意には、仕事を進めるための修正や確認という意味があります。書類の数字を直す、作業の手順を見直す、提出期限を確認するなど、必要な指摘が交わされる場面は日常的にあります。

ところが、過去に失敗を厳しく責められた経験があると、こうした指摘が単なる業務上の修正として届きにくくなることがあります。

例えば、上司から「次は提出前にもう一度確認してください」と言われたとします。言葉そのものは仕事の進め方についての指摘ですが、本人の内側では「仕事ができないと思われた」「もう信用してもらえない」「迷惑をかけてしまった」という感覚が一度に広がることがあります。

すると、何を修正すればよいのかを考える前に、自分が相手からどう見られているのかが気になり始めます。相手の眉間のしわや声の低さ、話し終わったあとの沈黙まで気になり、ちょっとした表情の変化から、自分に対する失望や怒りを読み取ろうとするのです。

こうした状態には、他人から拒絶されたり、否定的に評価されたりすることへの敏感さが関係している場合があります。心理学では「拒絶過敏性」と呼ばれ、幼少期の不適切な養育経験との関連も指摘されています。

特に、親の期待に応えられなかったときに冷たくされたり、失敗するたびに厳しく責められたりしていると、人から注意されることと、自分が受け入れてもらえなくなることが結びつきやすくなります。

そのため、大人になってから仕事上の小さな指摘を受けても、相手との関係そのものが壊れてしまうような不安を感じることがあります。涙が出る背景には、注意されたことへの悲しさだけでなく、相手に嫌われたくない、見放されたくないという切実な気持ちが隠れている場合もあるのです。

関連する解説:些細な言葉で傷つく理由|言葉に敏感な人の心とトラウマ反応

怒られると頭が真っ白になり、涙が出る身体の反応

注意された瞬間に涙が出るとき、本人は自分でも何が起きたのか分からず、戸惑うことがあります。泣こうと思ったわけでも、相手を困らせようとしたわけでもなく、気づいたときには胸が苦しくなり、声が震えているのです。

人は強い緊張や恐怖を感じると、身体がすばやく反応します。心拍が速くなったり、呼吸が浅くなったりする一方で、身体が固まり、思うように動けなくなる場合もあります。

特に、相手の前から離れられない、言い返すことも難しい、きちんと受け答えしなければならないといった条件が重なると、緊張がさらに強まりやすくなります。

注意されたときには、次のような身体反応が現れることがあります。

  • 胸や喉の反応: 胸が締めつけられ、息苦しくなったり、喉が詰まって声を出しにくくなったりする。
  • 身体のこわばり: 肩や背中、顎に力が入り、手足が震えたり冷たくなったりする。
  • 思考の停止: 頭が真っ白になり、相手の説明が十分に入ってこなくなる。
  • 涙や感情の変化: 悲しいのか悔しいのか分からないまま涙があふれ、後になって怒りや疲労が強くなる。

こうした状態を理解するうえで参考になるのが、危険を感じたときに身体の動きが抑えられる「フリーズ反応」です。

例えば、上司に呼ばれて会議室に入り、少し厳しい口調で話しかけられたとします。最初は内容を理解しようとしていても、相手の表情が険しくなるにつれて肩や背中に力が入り、喉が詰まってきます。何か説明しようとしても言葉がまとまらず、沈黙が続くうちに涙が出てしまうことがあります。

強い緊張によって身体が固まる反応は、人が脅威に直面したときの防御反応とも関係しています。ただし、職場で頭が真っ白になる原因は一様ではなく、不安や疲労、過去の経験などが重なって生じる場合があります。

その場では涙をこらえることに精いっぱいで、注意された内容を十分に覚えていないこともあるでしょう。相手がいなくなってから、「あのとき、こう説明すればよかった」「本当はあんな言い方をされたくなかった」と悔しさが湧いてくる場合もあります。

身体が強く緊張している間は、自分の感情を十分に感じ取る余裕が少なくなり、落ち着いてから初めて傷ついていたことに気づく場合があるのです。

関連する解説:複雑性PTSDの凍結とは何か──社交性の裏で起きている「関係内フリーズ」

真面目で完璧主義な人ほど、注意を深く受け取りやすい

仕事を丁寧に進め、周囲に迷惑をかけないように努力していると、注意されたときの衝撃が大きくなることがあります。自分では十分に確認したつもりだったのにミスが見つかると、それまでの努力まで無駄になったように感じてしまうのです。

特に完璧主義が強い場合には、仕事の出来栄えと自分自身の価値が結びつきやすくなります。失敗したことが恥ずかしいだけでなく、失敗するような自分であることが許せなくなり、必要以上に自分を責めるようになることがあります。

例えば、上司から報告書の一か所を修正するように言われたとします。必要なのは、その部分を確認して直すことですが、本人の頭の中では「こんな簡単なこともできない」「また迷惑をかけた」「きっと仕事ができないと思われている」という考えが広がっていきます。

こうした自己評価の厳しさには、子どもの頃から結果を出すことで褒められたり、失敗したときに強く叱られたりした経験が影響している場合もあります。頑張っている自分には価値があるけれど、失敗した自分には価値がないという感覚が、いつの間にか身についているのかもしれません。

また、真面目で責任感が強い人の中には、注意された後も、その失敗を取り返そうとして必要以上に仕事を抱え込むことがあります。周囲に迷惑をかけないように何度も確認し、残業してまで完璧に仕上げようとするため、疲労が蓄積していきます。

疲れが強くなると、普段なら受け止められる指摘にも敏感になり、さらに落ち込みやすくなるという悪循環が生じることがあります。

注意されたときの反応を和らげるためには、自分がどこまで責任を負おうとしているのか、どのような失敗を許せないと感じているのかを振り返ることも大切です。

幼少期の叱責やトラウマが、現在の注意と重なるとき

子どもの頃、親や教師から強く叱られる経験が続いていると、他人の怒りや不機嫌に敏感になることがあります。

例えば、家庭で親の機嫌が悪くなると、何を言っても責められる。テストで間違えると長時間説教される。泣くとさらに怒られるため、必死に涙をこらえて謝る。そうした経験が続くと、子どもは失敗を修正すること以上に、相手を怒らせないことへ意識を向けるようになります。

家の中では親の足音や声の調子を聞き分け、今日は機嫌がよいのか、話しかけても大丈夫なのかを確かめながら過ごすようになるかもしれません。表情や沈黙の意味を先回りして考えることが、家庭の中で自分を守る方法になっていくのです。

大人になって職場へ出ても、こうした警戒が残っている場合があります。上司の声が少し低くなっただけで胸が苦しくなり、相手が黙った瞬間に、自分が何か悪いことをしたのではないかと焦り始めます。

仕事の内容について注意されているのに、身体は昔のように身構え、逃げ場がなくなった感覚に襲われることもあります。

例えば、子どもの頃に父親から厳しく怒鳴られていた女性が、職場で上司に注意されたとき、急に涙が出てしまうことがあります。上司は仕事上の指摘をしているだけでも、本人の内側では昔の恐怖に似た感覚が広がり、頭が真っ白になってしまうのです。

その場を離れてから、どうしてあれほど怖かったのかと考えてみると、父親に怒られていたときと同じような胸の苦しさや無力感があったことに気づく場合があります。

また、親の怒りを鎮める役割を担っていた場合には、大人になってからも相手の不機嫌に強い責任を感じることがあります。上司が怒っていると、自分が早く謝って機嫌を直してもらわなければならないと感じ、本来は伝えたいことがあっても、相手の反応を優先してしまうのです。

こうした状態では、現在の注意と、過去の人間関係で経験した恐怖や恥ずかしさが重なっている可能性があります。どのような場面で身体が反応し、何を最も怖いと感じているのかを理解することが、回復への手がかりになります。

感受性の高さと、疲れ切った状態が重なるとき

人の表情や声色、場の雰囲気の変化を細かく感じ取ることも、注意されたときの反応に関係する場合があります。

普段から周囲の機嫌を気にしていると、相手が少し黙っただけで「何か悪いことをしただろうか」と考えたり、声の調子が変わっただけで緊張したりすることがあります。上司から呼ばれた時点で身構えてしまい、実際に注意を受ける頃には、すでに疲れていることもあるでしょう。

こうした敏感さは、持って生まれた気質だけでなく、これまでの生活環境や人間関係の中で強まってきた可能性もあります。相手の機嫌を損ねないように言葉を選び、自分がどう見られているかを気にしながら過ごす時間が長いほど、心身が休まる機会は少なくなります。

特に睡眠不足や過労が重なると、感情を落ち着ける余裕も少なくなります。普段なら受け止められる注意でも、疲れ切った状態では涙が出たり、その後の気持ちの切り替えが難しくなったりします。

注意されると泣きやすくなったと感じる場合には、最近の睡眠や疲労、職場での緊張、人間関係の負担についても振り返ってみることが大切です。

注意された後、何日も落ち込んでしまうのはなぜか

注意された瞬間の涙は比較的短い時間で落ち着いても、その後の落ち込みが長く続くことがあります。

帰宅してからも相手の言葉や表情が頭から離れず、会話を何度も思い返してしまう。食事をしていても、入浴していても、ふとした瞬間に注意された場面が浮かび、そのたびに胸が苦しくなることがあります。

「あのとき、もっと上手に説明できたはずなのに」「どうして泣いてしまったのだろう」「周囲の人にも見られていた」「明日はどんな顔をして出勤すればいいのだろう」

こうした考えが繰り返されると、注意された場面が終わってからも、気持ちはその出来事に引き戻され続けます。

心理学では、つらい出来事や自分の失敗について繰り返し考え続けることを「反すう思考」と呼びます。何度も振り返るうちに、最初は「仕事でミスをした」という出来事だったものが、「自分は仕事ができない」「人から嫌われる」「これからも失敗し続ける」という広い自己否定へ発展していくことがあります。

また、注意されたときに感じた悔しさや怒りを表現できず、自分に向けてしまう場合もあります。

本当は人前で注意されたことが恥ずかしかった。相手の言い方が怖かった。事情を説明したかったのに、最後まで話を聞いてもらえなかった。そうした気持ちを抱えていても、相手に反論することが難しいと、自分が悪かったという考えだけが残りやすくなります。

特に、人に迷惑をかけることや相手を不快にさせることを強く恐れている場合には、自分の怒りや不満を感じることにも抵抗が生じます。その結果、悔しさや傷つきを整理できないまま、何日も落ち込み続けることがあります。

注意された後の苦しさを理解するためには、仕事で起きたことだけでなく、その場で言えなかった気持ちや、自分に向けている厳しい言葉にも目を向けることが大切です。

注意されたときに涙が出そうになったら、どう対処するか

職場や学校で涙が込み上げてきたときには、まず身体の緊張を少しでも和らげ、相手の話を受け取れる状態を整えることが大切です。

涙を止めようと意識しすぎると、かえって呼吸が浅くなったり、身体に力が入ったりすることがあります。その場ですべてを説明しようとせず、必要な内容を確認し、後から落ち着いて対応する方法もあります。

① 視線を少し外し、身体の緊張を緩める

相手の顔を見続けることが負担になっている場合には、手元の資料やメモへ視線を落としてみます。足の裏を床につけ、肩や顎に入っている力を少し緩めるだけでも、緊張した状態から注意を移すきっかけになります。

呼吸が浅くなっているときには、大きく息を吸おうと頑張るより、自分が楽に感じる速さで呼吸を続けます。身体の感覚に意識を向けることで不安が強まる場合には、目の前の机や窓など、周囲の環境に目を向ける方法でも構いません。

② 返事が難しいときは、短く伝える

頭が真っ白になっているときには、相手の説明を聞きながら自分の考えをまとめることが難しくなります。すぐに適切な言葉を探そうとすると、さらに焦ってしまう場合があります。

そのようなときには、「分かりました。内容を確認して修正します」「一度整理してから、改めて確認させてください」と短く伝える方法があります。

涙が出そうで話し続けることが難しい場合には、「少し落ち着いてからお話ししてもよろしいでしょうか」と伝え、その場を離れることも一つの方法です。必要な内容をメモし、後から確認できるようにしておくと、少し落ち着いて対応しやすくなります。

③ 涙が出た後は、静かな場所で少し休む

可能であれば、トイレや休憩スペースなど、落ち着ける場所へ移動して数分間過ごします。水を飲んだり、窓の外を眺めたりしながら、少しずつ身体の緊張が下がるのを待ちます。

泣いた直後は、「もう信用されない」「明日から職場に行けない」といった考えが浮かびやすくなります。そうしたときには、今後の仕事や人間関係について大きな結論を出す前に、まず身体を休ませることを優先します。

落ち着いてから注意された内容を確認し、必要な修正を進めていけば十分な場合もあります。

注意された後の落ち込みを長引かせないために

注意された後は、何が起きたのかを整理することと、自分がどのように傷ついたのかを理解することの両方が大切です。

例えば、上司から報告書の修正を求められた場合、実際に指摘されたのは書類の内容です。しかし、本人の内側では「能力がないと思われた」「嫌われたかもしれない」という不安が広がっていることがあります。

そこで、少し落ち着いてから、次の三つを分けてみます。

  1. 実際に起きたこと: 上司から何を指摘され、どのような修正を求められたのか。
  2. 自分が感じたこと: 怖さ、恥ずかしさ、悔しさ、悲しみなど、どのような気持ちが強かったのか。
  3. これから必要なこと: 仕事として何を修正し、誰に確認する必要があるのか。

こうして振り返ると、仕事上の問題と、自分自身への厳しい評価が混ざっていたことに気づく場合があります。

また、注意された後に何度も考え込んでしまうときには、何を確認できればその問題を終えられるのか、具体的に決めておくことも役立ちます。

報告書を修正した。上司に確認した。次回の手順を決めた。そこまで進んだのであれば、仕事上の対応はいったん終わっています。それ以上、自分の能力や人格について延々と考え続けると、心身が休まる時間を失ってしまいます。

もちろん、相手の言い方がきつかったり、納得できないことがあったりする場合には、その気持ちも大切にする必要があります。自分がどこで傷ついたのかを理解し、必要であれば後から落ち着いて意見を伝えることも、自分を守るための行動になります。

相手の注意の仕方に問題がある場合もある

注意されると涙が出る理由を考えるときには、本人の感じ方だけでなく、相手がどのように注意しているのかも確認する必要があります。

仕事のミスを具体的に指摘し、修正方法を伝えることと、人前で怒鳴ったり、人格を否定したりすることでは、受ける心理的な負担が大きく異なります。

例えば、上司から「この数字を確認してください」と伝えられるのと、「こんなこともできないのか」「だからお前は駄目なんだ」と責められるのとでは、受け止める内容が変わってきます。特に、大勢の前で強く叱責されると、仕事の失敗に加えて、周囲からどう見られているのかという羞恥心が重なる場合があります。

厚生労働省の指針でも、人格を否定する言動や、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の前で繰り返される威圧的な叱責などは、職場のパワーハラスメントに該当すると考えられる例として示されています。

こうした状況が続いている場合には、注意された日時や内容、相手の言動を記録し、信頼できる上司や人事担当者、産業医、外部の相談窓口などへ相談することが考えられます。

過度な叱責や威圧が続いている環境では、本人の受け止め方だけを変えようとしても、安心して働くことは難しくなります。職場での関係や環境を調整することも、心身を守るために必要な対応です。

注意されると泣いてしまう状態を改善するための心理的なケア

注意されたときに涙が出る反応が続いている場合には、その場での対処だけでなく、普段からどのような緊張や不安を抱えているのかを整理することが大切です。

例えば、上司から注意されたときに頭が真っ白になる人は、実際に注意を受ける前から、相手の機嫌や評価を気にしている場合があります。仕事の報告をする前から身体が固くなり、失敗を指摘されないように何度も確認を繰り返すこともあるでしょう。

こうした状態では、注意された瞬間だけでなく、日常生活の中で緊張が続いている可能性があります。身体がこわばりやすい場面や、自分を厳しく責めるときの考え方、人との関係で感じる恐怖について理解していくことが、心理的なケアの一つになります。

身体が緊張する場面を理解する

注意されたときに頭が真っ白になるのであれば、その前にどのような身体の変化が起きているのかを振り返ります。

上司に呼ばれたときから胸が苦しくなるのか、相手の声が低くなった瞬間に肩が固まるのか、説明しようとしたときに喉が詰まるのか。こうした変化を整理すると、自分がどのような場面で緊張しやすいのかが見えてくる場合があります。

また、自分が安心できる場所や姿勢、落ち着きやすい人との距離などを確かめていくことも大切です。身体への注意が負担になる場合には、周囲の環境を整えることから始めるなど、自分に合った方法を選んでいきます。

失敗と自分自身の価値を分けていく

失敗するたびに自分を厳しく責めていると、仕事の修正よりも自己否定に多くの力を使うようになります。

一つのミスによって、それまでの努力や能力まで否定されたように感じる背景には、失敗したときに認めてもらえなかった経験や、常に周囲の期待に応えようとしてきた生活が関係している場合があります。

そのため、何かを注意されたときに、どこまでが仕事上の問題で、どこからが自分自身への厳しい評価になっているのかを理解することが大切です。

仕事では間違えることもありますし、修正が必要になることもあります。自分に改善できる部分があれば取り組みながら、失敗したことだけで自分の価値全体を判断する習慣を、少しずつ見直していきます。

過去の叱責体験と現在の人間関係を整理する

幼少期に強い叱責や心理的な傷つきを経験している場合には、当時の恐怖や無力感が、現在の人間関係にどのような影響を与えているのかを整理していくことがあります。

例えば、親の前では自分の意見を言うと怒られていた場合、大人になってからも上司や年上の人に説明することが怖くなることがあります。相手が不機嫌になると、早く謝って場を収めなければならないと感じ、自分の気持ちを後回しにしてしまう場合もあります。

心理的なケアでは、現在の相手が実際に何を言っているのか、その場で自分は何を感じているのかを確かめながら、過去の関係と現在の関係を少しずつ分けていきます。

また、相手の期待を優先しすぎる傾向がある場合には、自分の考えを伝えたり、分からないことを確認したりする経験を重ねていくことも大切です。人との関係の中で、自分の意見や感情を持っていても安心できることが、少しずつ分かってくる場合があります。

注意されると泣く・落ち込む症状が続くときは医療機関へ

注意された後に涙が出る、落ち込むといった反応があっても、日常生活に大きな支障がなく、時間の経過とともに落ち着いていく場合もあります。

一方で、以前より涙もろくなった、職場へ行くことが怖くなった、眠れない日が続いているなどの変化がある場合には、心身の不調が関係している可能性があります。

特に、注意された後に何日も気分が落ち込んで仕事に集中できない、出勤前から涙が出る、睡眠や食欲が乱れている、休日も気持ちが休まらないといった状態が続いている場合には、精神科や心療内科で相談することをおすすめします。

こうした状態には、うつ病、社交不安症、適応障害、PTSDなどが関係する場合があります。ただし、同じような症状でも背景は異なるため、症状の経過や生活状況を含めた評価が必要です。

仕事や学校で受けるストレスと抑うつの関係については、適応障害とうつ病の違い:移行のリスクと併発する可能性とは?でも解説しています。

注意されても、自分の価値まで否定されたように感じなくなるために

注意されると涙が出てしまう背景には、これまでの人間関係の中で、自分を守るために身につけてきた反応が関係している場合があります。

失敗すると強く責められた経験があると、間違えること自体が怖くなり、人の表情や声の変化にも敏感になります。周囲から認められるために努力を重ねてきた場合には、注意されることが、自分の価値を失うような出来事として感じられることもあります。

そのため、注意されたときの反応を変えていくには、涙を抑えることだけでなく、その涙の奥にある恐怖や恥ずかしさ、自己否定を理解することが大切になります。

仕事上の指摘を受けたときには、必要な内容を確認し、自分にできる修正を行う。相手の言い方に傷ついたときには、その気持ちにも目を向ける。失敗した日であっても、自分の能力や人格すべてを否定することなく、仕事が終われば休めるようになる。

そうした経験を重ねていくことで、注意を受ける場面でも少しずつ自分の気持ちを保ちやすくなっていきます。

目指したいのは、どれだけ厳しく注意されても何も感じなくなることではありません。相手の言葉を聞きながら、自分の気持ちも大切にできることです。修正すべきことには向き合い、傷ついたことには気づき、必要なときには自分の考えを伝えられるようになることが、対人関係の中での安心感につながっていきます。

当相談室でのカウンセリングについて

こころのえ相談室では、注意されると泣いてしまう、上司に怒られると頭が真っ白になる、人からの評価が気になって落ち込み続けるといったお悩みについてもご相談をお受けしています。

カウンセリングでは、どのような場面で身体が緊張するのか、涙が出る前にどのような感情が動いているのかを整理しながら、仕事や人間関係で抱えている負担について丁寧に見ていきます。

また、幼少期からの叱責体験や複雑なトラウマが関係している場合には、現在の心身の安定を大切にしながら、過去の経験と現在の反応とのつながりを少しずつ理解していきます。

人から注意されたときに涙が出ることだけでなく、その後も自分を責め続けてしまうことや、周囲の顔色を気にして疲れ切ってしまうことについても、一緒に整理していくことができます。

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参考文献

  1. Gao, S., Assink, M., Bi, C., & Chan, K. L.(2024). Child Maltreatment as a Risk Factor for Rejection Sensitivity: A Three-Level Meta-Analytic Review. Trauma, Violence, & Abuse, 25(1), 680–690.
  2. Roelofs, K.(2017). Freeze for action: Neurobiological mechanisms in animal and human freezing. Philosophical Transactions of the Royal Society B, 372(1718), 20160206.
  3. Callaghan, T., Greene, D., Shafran, R., Lunn, J., & Egan, S. J.(2024). The relationships between perfectionism and symptoms of depression, anxiety and obsessive-compulsive disorder in adults: A systematic review and meta-analysis. Cognitive Behaviour Therapy, 53(2), 121–132.
  4. Nolen-Hoeksema, S., Wisco, B. E., & Lyubomirsky, S.(2008). Rethinking Rumination. Perspectives on Psychological Science, 3(5), 400–424.
  5. 厚生労働省(2020). 職場におけるパワーハラスメントの防止のための指針.

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井上 陽平

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)。
トラウマ・解離・PTSD・愛着障害を専門とする心理カウンセラー。
児童養護施設、情緒障害児施設、精神科クリニックでの臨床経験を積み、
心身反応(フリーズ・過覚醒・離人感)への介入や、
複雑性トラウマ、対人関係、境界線の問題に重点的に取り組む。

研究テーマは「複雑性トラウマの身体反応」「解離と自己構造」「愛着スタイル」「虐待と対人関係のパターン」。現在は「こころのえ相談室」にてトラウマ専門のカウンセリングを提供。書籍の企画・執筆に関するご依頼も承っております。

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