漠然とした不安が続く原因とは?理由のない不安とトラウマの関係・対処法

漠然とした不安 トラウマ反応・身体症状

仕事も終わり、家に帰ってようやく落ち着けるはずなのに、胸のあたりがざわざわしている。何か心配事があるのかと考えてみても、はっきりした理由が見つからない。それなのに、何か悪いことが起こりそうな気がして、じっとしていられない。

ソファに座っていても落ち着かず、スマートフォンを何度も確認する。誰かから連絡が来ると一瞬身構え、何も届いていなければ、今度は何か大切なことを見落としているような不安が生じる。眠ろうとすると急に心臓の鼓動が気になり、明日のことや過去の失敗が次々と頭に浮かんでくる。

こうした漠然とした不安は、具体的な問題が解決すれば消える心配とは、少し性質が異なります。

仕事や家庭に大きな問題がなくても、身体の内側では緊張が続いている。頭では「今は大丈夫」と分かっているのに、胸が落ち着かず、何かに備えていなければならないように感じることがあります。

不安の理由を探そうとしても見つからず、考えれば考えるほど、かえって不安が大きくなってしまうこともあります。

漠然とした不安が続く背景には、慢性的なストレスや睡眠不足、不安症などに加えて、過去のトラウマによって身についた警戒や、身体の緊張が関わっている場合があります。

特に、幼い頃から親の機嫌を読み、いつ怒られるか分からない生活を続けてきた人は、危険が起きてから対応するのではなく、危険が起きる前に察知しようとする習慣を身につけることがあります。

そのような経験が重なると、安心できる環境へ移った後も、何か悪いことが起きる可能性を探し続ける場合があります。

目の前には危険が見当たらないのに、身体の緊張だけが収まらない。その感覚が、「理由は分からないけれど、ずっと不安」という状態につながることがあるのです。

漠然とした不安が続くのはなぜ?考えられる原因と症状

漠然とした不安とは、何に対して不安を感じているのかを明確に説明できないまま、緊張や恐怖、落ち着かなさが続く状態を指します。

何かを心配しているような感覚はあるのに、その対象がはっきりしない。問題が起きているわけでもないのに、今の状況を安心して受け止められない。

そのため、本人は不安の原因を探そうとします。

仕事で何か失敗したのではないか。誰かを怒らせてしまったのではないか。体調に異変があるのではないか。これから何か悪いことが起きるのではないか。

そうして一つずつ可能性を考えても、安心できる答えが見つからない場合があります。

漠然とした不安は、さまざまな形で現れます。

  • 理由が分からないまま、胸がざわざわする
  • 何か悪いことが起こりそうな予感が消えない
  • 身体がそわそわして、じっとしていられない
  • 動悸や息苦しさ、胃の不快感、手の震えが生じる
  • 小さな物音や人の声に驚きやすくなる
  • 何度も確認したり、先の予定を考え続けたりする
  • 夜になると不安が強まり、なかなか眠れない
  • 身体は疲れているのに、気持ちが休まらない

こうした症状には、睡眠不足、慢性的なストレス、不安症、うつ病、薬やカフェインの影響、身体疾患など、さまざまな要因が関係することがあります。

米国国立精神衛生研究所(NIMH)は、全般不安症(全般性不安障害)では、日常生活のさまざまなことについて過度に心配し、その心配をコントロールすることが難しくなると説明しています。落ち着かなさ、疲労、集中困難、筋肉の緊張、睡眠の問題なども現れます。

全般不安症では、少なくとも6か月にわたり、多くの日に過度な不安や心配が続くことなどが診断上の重要な要素となります。ただし、漠然とした不安があるからといって、必ずこの病気に当てはまるわけではありません。

また、PTSDや複雑性PTSDに伴う過覚醒、不安や恐怖の条件づけなどが、似た状態を生み出している場合もあります。

大切なのは、不安という感情だけを見るのではなく、不安が始まる前に何が起きていたのか、どのような身体反応が伴っているのか、どれほど長く続いているのかを整理することです。

心は安全だと分かっているのに、身体が不安になる理由

トラウマを経験すると、過去の出来事が終わった後も、それに関連する刺激に敏感になる場合があります。

例えば、子どもの頃に親から激しく怒鳴られていた人は、大人になってからも、誰かの声が少し強くなった瞬間に身体が緊張することがあります。

頭では、目の前の相手が親とは違うことも、今すぐ危険が起こるわけではないことも理解しています。

それでも、胸が締めつけられたり、心臓が速く打ったり、喉が固くなって言葉が出なくなったりすることがあります。

身体がその状況を、過去の恐怖と結びついた刺激として受け取っている可能性があるのです。

人は危険に直面すると、心拍や呼吸、筋肉の緊張、注意の向きなどを変化させ、危険へ対処しようとします。

闘う、逃げる、身体を固くして動きを止めるといった反応は、脅威に対する防御反応として生じることがあります。

危険が去れば、多くの場合、そうした反応は時間とともに落ち着いていきます。

しかし、強い恐怖を経験したり、逃げ場のない環境で長期間過ごしたりすると、危険を思わせる刺激への警戒が持続しやすくなることがあります。

身体が緊張する。本人は、その緊張を感じて「何かがおかしい」と思う。そこで周囲の危険を探し始め、さらに不安が強まる。

このように、身体の反応が不安な考えを呼び、その考えが身体の緊張を強める循環が起こる場合があります。

トラウマとは何か|原因・症状・種類・回復までを専門家が解説では、過去の傷つきが、現在の感情や身体反応、人間関係へどのように影響するのかを詳しく扱っています。

トラウマによる過覚醒|身体が危険を探し続けるとき

過覚醒とは、心身の警戒や興奮が高まり、周囲の刺激へ敏感に反応しやすくなる状態です。

PTSDでは、過度な警戒、驚きやすさ、睡眠の問題、イライラ、集中困難などが症状として現れることがあります。

過覚醒が強いときには、何も起きていない時間にも、身体が次の刺激へ備えているように感じられる場合があります。

例えば、家で一人で過ごしていても、廊下の足音やドアの開閉音が気になる。誰かが近づいてくる気配を感じると、無意識に身体へ力が入る。

職場では、上司のため息や声の調子に敏感になり、今にも何かを指摘されるのではないかと身構えてしまう。

そのような状態が長く続くと、意識の多くが周囲の変化を確認することへ向かい、目の前の作業に集中しにくくなることがあります。

読書をしていても内容が頭に入ってこない。人と話していても、相手がどのような表情をしているかが気になり、会話を十分に楽しめない。

疲れて家に帰っても、周囲への警戒が続き、身体が休息へ入りにくくなることがあります。

Olstadら(2023)は、発達期にトラウマを経験した14〜18歳の若者8人へインタビューを行い、日常生活でどのような困難を感じているのかを調べました。

参加者たちは、家庭や学校で安心できない感覚に加え、不眠や身体の緊張、胃の痛み、落ち着かなさなどについて語っています。

なかには、家庭での暴力を経験したことから、眠っている間に何か起きるのではないかと恐れ、十分に眠れなかった若者もいました。

こうした語りからは、不安が本人の頭の中にある心配事だけでなく、眠ること、人と会うこと、家にいることなど、日常のさまざまな場面と結びついている様子が分かります。

この研究は少人数の若者を対象としたものであり、漠然とした不安を抱える人全体に同じことが当てはまるわけではありません。

それでも、過去の恐怖が現在の身体感覚や生活の中にどのような形で残るのかを理解するうえで、重要な手がかりになります。

過覚醒とは|PTSDで身体が先に緊張へ切り替わる反応では、警戒が続くことで起こる睡眠や集中力、感情の変化を詳しく解説しています。

何も起きていないのに不安になる|機能不全家庭で身についた警戒

幼い頃から家庭の中で安心できなかった人は、何も起きていない時間にも、次の出来事へ備えようとすることがあります。

親が帰宅する前から、今日は機嫌がよいのか悪いのかを考える。足音が近づくと、怒っているのではないかと身構える。食卓で急に沈黙が生まれると、何か問題が起きる前触れのように感じる。

そのような家庭では、危険は突然始まることがあります。

子どもは、危険が起きてから逃げることが難しいため、起きる前の小さな変化を読み取ろうとします。

声の大きさ、扉の閉め方、食器を置く音、親の表情、家の中の沈黙。

これらの情報を細かく確認し、相手を怒らせないように行動することが、自分を守るための方法になる場合があります。

大人になってからも、その習慣が人間関係の中に残ることがあります。

職場で誰かが少し不機嫌そうにしていると、自分が何か悪いことをしたのではないかと思う。恋人の返信が遅れると、気持ちが離れてしまったように感じる。誰かが黙っていると、怒らせたのではないかと考え続ける。

本人は「なぜこんなに不安なのか」と感じていても、過去には、相手の変化へ注意を向けることが生活上の安全と結びついていたのかもしれません。

このような警戒は、長い間の対人経験によって形成された反応として理解できる場合があります。

ただし、すべての漠然とした不安が機能不全家庭に由来するわけではありません。また、現在も暴力や支配などの危険が続いている場合には、警戒すること自体に現実的な理由があります。そのときには、まず安全な環境を確保することが重要です。

トラウマの記憶を思い出さなくても、身体が反応することがある

トラウマに関連する不安は、過去の出来事をはっきり思い出しているときだけ起こるわけではありません。

特定の匂いや声、視線、部屋の雰囲気などが、過去の出来事と結びついている場合には、本人がその関連に気づく前から緊張が生じることがあります。

例えば、職場で誰かが少し強い口調で話したとします。

その場では平静に対応できていても、身体には緊張が生じている場合があります。

会話が終わってから急に胸が苦しくなる。手が震える。胃が落ち着かない。帰宅後も身体がそわそわし、何か悪いことが起きそうな感覚が続く。

本人は、その日の出来事を重大な問題だとは思っていないかもしれません。

けれど、過去の恐怖と似た刺激に触れたことで、身体の警戒が高まった可能性があります。

Wongら(2011)は、身体的な外傷を経験し、PTSDを抱えていた成人23人へインタビューを行い、本人が自分の症状をどのように理解しているかを調べました。

興味深いことに、参加者の中には、イライラや興奮しやすさ、過去の出来事を繰り返し思い出すことなどを経験していながら、それをPTSDの症状として認識していない人がいました。

自分の状態を身体の病気によるものと考えたり、普段の生活環境に対する自然な反応だと捉えたりしていたのです。

この研究が示しているのは、トラウマの影響を受けている本人が、必ずしもその症状をトラウマと結びつけて理解しているとは限らないということです。

理由の分からない身体の緊張や不安が続くときには、過去の経験との関連を考えることが、理解の助けになる場合があります。

一方で、動悸や胸の圧迫感、めまいなどには身体疾患が関わることもあるため、最初からすべてをトラウマ反応と判断することは避ける必要があります。

闘うことも逃げることもできなかった経験と、身体の凍りつき

危険に直面したとき、人は身を守るためにさまざまな反応を示します。

相手へ抵抗する。危険な場所から逃げる。身を固くして動きを止める。

どの反応が生じるかは、危険の性質や本人の状態、その場の条件によって異なります。

例えば、子どもが親から激しく怒鳴られている場面では、言い返すことも家から逃げることも難しい場合があります。

相手を刺激すれば、さらに怒られるかもしれない。泣けば責められるかもしれない。助けを求めても、誰も来てくれないかもしれない。

そのような状況では、声を出さず、身体を固くして、相手の怒りが収まるのを待つことがあります。

この凍りつきに似た反応が、成人後の対人場面で生じる場合もあります。

職場で強く責められると、頭が真っ白になり、何も言い返せなくなる。相手の要求が不当だと分かっていても、その場では身体が固まり、言葉が出てこない。

そして、会話が終わってから強い怒りや不安が現れることがあります。

本人は、なぜその場で自分を守れなかったのかと考え、自分を責めてしまう場合があります。

しかし、強い恐怖の中では、考えることや言葉を組み立てることが難しくなる場合があります。

また、身体の凍りつきや解離症状が生じる場合もあり、危険への反応は必ずしも本人の意思通りに動くとは限りません。

ただし、過去に闘争や逃走ができなかったことによって、身体の中に何らかのエネルギーが物理的に閉じ込められると説明できるわけではありません。

重要なのは、過去の恐怖と結びついた刺激に対して、現在も強い身体反応が生じる場合があることです。

そして、その反応を自分の欠点として捉えるのではなく、今の環境と過去の経験を区別しながら理解していくことです。

漠然とした不安と自律神経の関係|動悸・息苦しさ・胃の不調

漠然とした不安が続くときには、感情だけでなく身体のさまざまな部分にも変化が現れることがあります。

心臓が速く打つ。呼吸が浅くなる。手に汗をかく。胃が重くなる。肩や首がこわばり、身体を動かしても緊張が抜けない。

自律神経系は、心拍、呼吸、消化などを調整する働きに関わっています。

ストレスや不安が強いときには、これらの身体機能にも変化が生じる場合があります。

特に、慢性的な緊張や睡眠不足が続いている人では、身体の不快感がさらに不安を強めることがあります。

例えば、胸が苦しくなったとき、「何か重大な病気なのではないか」と考える。すると不安が高まり、心臓の鼓動がさらに気になる。

鼓動を確かめようと意識を向けるほど、身体の変化が大きく感じられ、ますます落ち着かなくなることがあります。

身体の反応が不安を呼び、不安が身体の反応を強める循環です。

また、強い緊張の後に急に疲労感が現れたり、何もする気力がなくなったりする場合もあります。

ただし、こうした変化は一律に交感神経が働き続けているというだけで説明できるものではありません。症状の背景には、睡眠、内分泌、循環器系、呼吸、服薬など、さまざまな要因が関わります。

初めて強い動悸や息苦しさが現れた場合、胸痛や失神、著しいめまいを伴う場合には、心理的な問題と決めつけず、速やかに医療機関で評価を受けることが大切です。

音や視線に敏感になる|感覚過敏と不安のつながり

身体の警戒が強いときには、日常の刺激が普段より気になりやすくなることがあります。

食器のぶつかる音、突然閉まるドア、人の足音、電話の着信音。

以前なら気にならなかった刺激にも身体が反応し、心臓が速く打ったり、肩に力が入ったりすることがあります。

人混みでは、周囲の動きや話し声が一度に入ってきて、落ち着かなくなる場合もあります。

特に、強いストレスやトラウマを経験している人では、過去の危険を思わせる刺激が、不安や緊張を呼び起こすことがあります。

一方、感覚の過敏さには、発達特性や身体の状態などが関係する場合もあります。

そのため、音や光に敏感だからといって、必ずトラウマの影響だと判断することはできません。

本人がどのような刺激を苦手とし、どのような環境では落ち着いて過ごせるのかを確認することが重要です。

感覚過敏症とは|音・光・触覚に疲れやすい人の原因と対処法では、刺激への敏感さが日常生活の疲労や不安とどのように関わるのかを詳しく扱っています。

何もしないと不安になる|休息に入れない心と身体

漠然とした不安が強い人の中には、忙しくしているときより、何もしていないときの方が苦しくなる人もいます。

仕事中は目の前のことに集中しているため、何とか過ごせる。人と会っている間も、会話や相手の反応に注意が向いている。

ところが、一人になって静かに過ごそうとすると、急に胸のざわつきや落ち着かなさが現れる。

そのため、部屋を片づけたり、スマートフォンを見続けたり、次の予定を考えたりして、何かをし続けようとする場合があります。

幼少期から緊張を強いられてきた人にとっては、動いていることや周囲へ注意を向けていることが、安心を保つための方法だったのかもしれません。

親が不機嫌にならないように家事をする。怒られないように先回りして行動する。何かをしていれば、責められる可能性を減らせる。

そのような経験が続くと、大人になってからも、何もしていない時間に強い不安や罪悪感が生じる場合があります。

身体は疲れているのに、休もうとすると焦りが出てくる。落ち着くために休んでいるはずなのに、休むこと自体が苦しくなってしまうのです。

何もしないと不安になる理由|機能不全家庭と慢性的過覚醒の心理構造では、休息が不安を呼び起こす背景にある家庭環境や警戒の習慣について詳しく扱っています。

漠然とした不安を落ち着かせる方法|身体の緊張と警戒を調整する

漠然とした不安が強いときには、その理由をすぐに突き止めようとしても、なかなか答えが見つからない場合があります。

何が怖いのか。なぜ不安なのか。過去に何か原因があるのではないか。

そうして考え続けるうちに、ますます身体が緊張してしまうこともあります。

そのようなときには、不安の原因を探すことと、今の身体の負担を減らすことを分けて考えることが大切です。

1.不安が強くなる場面を整理する

まず、不安がいつ強くなるのかを確かめます。

朝起きた直後なのか。人と会った後なのか。仕事を終えて一人になった時間なのか。眠る前なのか。

その前に何が起きていたのかも、簡単に振り返ってみます。

誰かの言葉が気になっていた。予定が急に変更された。人混みで疲れた。睡眠不足が続いていた。

不安が生じた場面を整理することで、自分がどのような状況で緊張しやすいのかを理解できる場合があります。

ただし、不安の原因を毎回正確に見つけなければならないと考える必要はありません。

不安が強いときには、分析を一度やめて、休息や環境調整を優先することも大切です。

2.周囲の環境へ注意を戻す

不安が強まると、注意が自分の身体や不安な考えへ集中しやすくなります。

そのようなときには、周囲にある物へ目を向けてみます。

部屋の壁の色、窓の形、机の上に置かれた物、外の景色。

目に入るものを一つずつ確かめることで、不安な考えだけに向いていた注意を、現在の環境へ広げられる場合があります。

足裏が床に触れる感覚や、椅子が身体を支えている感覚を確かめる方法もあります。

ただし、身体の内側へ注意を向けることで不安が強まる場合には、無理に続けず、視覚や周囲の音など、比較的負担の少ない感覚を使います。

3.身体を少し動かし、緊張を調整する

じっとしていることが苦しいときには、無理に静かに座り続けるより、身体を少し動かす方が楽になる場合があります。

部屋の中を歩く。肩をゆっくり動かす。手を開いたり閉じたりする。窓を開けて外の景色を見る。

こうした動きを通して、身体の状態を確かめながら、緊張を調整していきます。

ゆっくり息を吐くことが心地よい場合には、呼吸法も選択肢になります。

一方、深呼吸によって息苦しさやめまい、不安が強まる人もいます。その場合は呼吸を無理に変えず、歩く、音楽を聴く、手を温めるなど、別の方法を選びます。

4.確認し続ける行動を見直す

不安なとき、人は何度も確認することで安心を得ようとすることがあります。

戸締まりを確かめる。相手の返信を何度も見る。予定を繰り返し確認する。自分の身体に異常がないか調べ続ける。

こうした確認は、必要な安全確認として役立つ場合もあります。

しかし、確認した直後には安心できても、すぐに不安が戻り、さらに確認したくなる場合があります。

そのようなときには、現実的に必要な確認と、不安を鎮めるために繰り返している確認を整理することが役立ちます。

不安が強く、確認をやめようとすると生活に支障が生じる場合には、強迫症などの可能性も含めて専門家へ相談することが大切です。

5.睡眠と日常の刺激を調整する

睡眠不足や慢性的な疲労が続くと、不安や緊張が強まりやすくなる場合があります。

人と会う予定が続いているときや、職場で強いストレスを受けているときには、身体が落ち着くまでに時間がかかることもあります。

そのような場合には、予定を詰め込みすぎないこと、疲れた後に休息できる時間を確保することが重要です。

また、カフェインの摂りすぎや飲酒による睡眠の乱れなどが、不安の持続に関わる場合もあります。

生活のすべてを一度に変えようとするより、不安や疲労を強めている条件を一つずつ調整していくことが現実的です。

6.安心できる人との関係を持つ

幼少期から人の機嫌を読み続けてきた人は、誰かと一緒にいるだけで緊張することがあります。

そのような場合には、人との関わりを増やすことより、自分が比較的落ち着いて過ごせる相手を見つけることが重要です。

疲れたと言っても責められない。無理に話さなくてもよい。相手の機嫌を直すために、自分が何かをし続けなくてもよい。

そうした関係の中では、常に警戒していなくても過ごせる経験を積める場合があります。

一人で不安を抱え続けるより、信頼できる相手に今の状態を話せることが、心理的な負担を軽くする助けになる場合もあります。

7.過去のトラウマを無理に掘り返さない

漠然とした不安の背景にトラウマが関わっている可能性を考えたとき、過去の出来事を詳しく思い出そうとすることがあります。

しかし、記憶を無理に掘り下げることで、かえって不安や身体の緊張が強まる場合もあります。

まずは、現在の生活の中で何が負担になっているのかを整理し、安心できる時間や環境を確保することが大切です。

トラウマに関連する症状が強い場合には、専門家と相談しながら、本人の状態に合った心理療法や医療的支援を検討します。

漠然とした不安が続くとき、病院やカウンセリングへ相談する目安

理由の分からない不安が一時的に生じることは、多くの人にあります。

しかし、不安が長期間続き、睡眠や仕事、人間関係、外出などへ影響している場合には、専門的な支援が役立つことがあります。

特に、不安によって次のような状態が続いている場合には、医療機関への相談を検討することが大切です。

  • 不安や緊張が続き、眠れない日が多い
  • 動悸や息苦しさ、めまいなどが繰り返し生じる
  • 不安のために仕事や学校、外出が難しくなっている
  • 何度も確認しないと落ち着かず、生活に支障が出ている
  • 過去の出来事を思い出して強い恐怖や身体反応が生じる
  • 不安を紛らわせるために、飲酒や薬の使用が増えている

漠然とした不安には、全般不安症、パニック症、PTSDなどが関わる場合があります。また、甲状腺疾患や不整脈、貧血、薬剤の影響など、身体的な原因が存在する場合もあります。

そのため、症状が続いているときには、身体面と心理面の両方から確認することが重要です。

トラウマとの関連が考えられる場合には、過去の経験だけでなく、現在の生活環境や睡眠、対人関係、身体症状などを含めて整理することが、適切な支援につながります。

漠然とした不安から回復するために|小さな安心を積み重ねる

トラウマや慢性的なストレスに関連する不安は、考え方を一度変えただけで収まるとは限りません。

長い間、周囲の変化へ敏感になり、危険を先回りして避けようとしてきた人にとって、警戒することは生活の中に深く入り込んだ習慣になっている場合があります。

そのため、落ち着こうとしても落ち着けない自分を、さらに責めてしまうことがあります。

今日は何も問題がなかったのだから、安心できるはずだ。もう過去のことなのだから、気にしなければよい。もっと前向きに考えなければならない。

そう思うほど、自分の身体が思い通りにならないことに焦りを感じ、不安が強くなる場合もあります。

回復では、今ある不安をすぐに消そうとすることより、不安が生じたときに自分の状態を理解し、対応できる方法を増やしていくことが大切です。

例えば、以前は人から連絡が来るたびに身構えていた人が、少し時間を置いてから内容を確認できるようになる。

仕事中に誰かの口調が強くなっても、その後の身体の緊張に気づき、休憩を取れるようになる。

一人になると不安で落ち着かなかった人が、短い時間でも好きな音楽を聴いたり、食事を楽しんだりできるようになる。

こうした小さな変化によって、不安が生じても生活のすべてを奪われずに済む時間が増えていく場合があります。

また、安心できる関係の中で、自分の気持ちを表現できるようになることも大切です。

これまで、相手の機嫌を損ねないことばかり考えてきた人が、自分の疲れや希望を伝えられるようになる。無理な頼みごとを断っても、関係が壊れない経験を重ねる。

そうした日常の変化が、身体の警戒を減らすことにつながる場合があります。

おわりに|理由の分からない不安の奥にある、身体の警戒を理解する

漠然とした不安が続くとき、本人は何を怖がっているのか分からず、混乱することがあります。

目の前に大きな問題はない。生活が急に崩れたわけでもない。それでも胸が落ち着かず、何か悪いことが起きそうな感覚が消えない。

そうした不安には、現在のストレスや体調、生活環境に加えて、過去の経験が関わっている場合があります。

子どもの頃から親の機嫌を読み、怒られないように行動してきた人は、大人になってからも、誰かの表情や声の調子に敏感になることがあります。

危険に備えることが必要だった環境から離れた後も、身体は何かを警戒し続け、不安や緊張が生じやすくなる場合があるのです。

また、過去の出来事を思い出していなくても、似た音や匂い、人との距離感などをきっかけに、身体が反応することがあります。

そのとき、本人は身体の緊張を感じながら、今、何が危険なのかを探し始めるかもしれません。

不安の理由が見つからないこと自体が、さらに不安を強めてしまう場合もあります。

だからこそ、漠然とした不安を理解するときには、頭の中で何を考えているのかだけでなく、身体がどのような状態にあり、どのような場面で警戒が高まるのかを見ることが重要です。

そして、不安が生じたときに、すぐにその原因を探し続けるより、現在の環境を確かめ、身体の負担を減らし、必要な支援を利用することも大切です。

過去のトラウマが関わっている場合には、現在の安全な経験を積み重ねながら、過去の危険と今の生活を少しずつ区別できるようになることが、回復の一つの方向になります。

漠然とした不安からの回復とは、二度と不安を感じなくなることではなく、不安が生じても、その感覚に生活のすべてを支配されずに過ごせるようになることです。

何かを確認し続けなくても過ごせる時間。人の機嫌を読まずに話せる関係。身体が緊張したときに、自分で休息や距離を選べること。

そうした経験が増えていくにつれて、これまで危険を探すことに使われていた注意を、現在の生活や、自分が本当に大切にしたいことへ向けられるようになる場合があります。


参考文献

  1. Olstad, K., Sørensen, T., Lien, L., & Danbolt, L. J. (2023). Adolescents with developmental traumas in therapy in a child and adolescent mental health service, outpatient unit: Experiences of daily living and expectations for therapy – a qualitative study. Frontiers in Psychology, 14, 946394.
    https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.946394
  2. Wong, E. C., Kennedy, D., Marshall, G. N., & Gaillot, S. (2011). Making Sense of Posttraumatic Stress Disorder: Illness Perceptions Among Traumatic Injury Survivors. Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy, 3(1), 67–76.
    https://doi.org/10.1037/a0020587
  3. National Institute of Mental Health. (2025). Generalized Anxiety Disorder: What You Need to Know.
    https://www.nimh.nih.gov/health/publications/generalized-anxiety-disorder-gad

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井上 陽平

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)。
トラウマ・解離・PTSD・愛着障害を専門とする心理カウンセラー。
児童養護施設、情緒障害児施設、精神科クリニックでの臨床経験を積み、
心身反応(フリーズ・過覚醒・離人感)への介入や、
複雑性トラウマ、対人関係、境界線の問題に重点的に取り組む。

研究テーマは「複雑性トラウマの身体反応」「解離と自己構造」「愛着スタイル」「虐待と対人関係のパターン」。現在は「こころのえ相談室」にてトラウマ専門のカウンセリングを提供。書籍の企画・執筆に関するご依頼も承っております。

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