幸せ恐怖症|幸せになるのが怖い、優しくされると辛い心理

心の病気

人生の旅路において、私たちは皆、幸福や温かさという安らぎを追い求めます。この追求は、人としての普遍的な願望と言えるでしょう。しかしながら、その幸福や温かさを真心から受け入れるプロセスは、必ずしも簡単ではありません。一見、それらは純粋に美しく、望むものと思えるものだけれど、心の奥深くに潜む過去の傷や恐れが、意外な形で表面化することがあります。

このような予期せぬ葛藤や不安は、多くの人々が経験するもので、それは我々の過去の経験や持って生まれた感性、そして周囲の環境や文化に影響されるからです。しかし、それらの葛藤や恐れを乗り越え、真に心からの幸福や温かさを迎え入れることができれば、その経験は人生の中で最も価値あるものとなることでしょう。

幸せ恐怖とは

幸せ恐怖症を抱える人は、しばしば幸福を得ることが危険だと感じ、また自分自身に幸せを許容できないと感じることがあります。彼らは、幸せになることが自分にとって脅威であると感じることがあり、その結果、心の中で幸せを避けるようになってしまいます。これらの感情は、彼らが幸せな人生を送ることに対する不安や恐れをもたらすことになります。

幸せ恐怖は、人間関係において特に顕著に現れる現象であり、これは人々が親密な関係を築くことや、他人からの愛情や支援を受け入れることに対して不安を抱くことが原因となっています。その結果、優しくされることから逃げてしまう傾向があります。幸せになることが怖いと感じる背後には、自分自身や大切な人との関係に対する不安や恐れが潜んでいることが多いです。

このような恐怖感は、過去の経験や心の傷が影響していることがあります。過去に経験した失敗や、大切な人との関係がうまくいかなかったことが、幸せになることに対する恐れを煽ることがあるのです。そのため、人は様々なことを考え、先読みし、最悪の結末を想像してしまいます。これは、自分を守るための心の働きであり、これ以上辛い思いをしたくないという願いが根底にあるのです。

幸せになることへの罪悪感

自分自身が幸せになることに罪悪感を感じる人々の心理は、特に毒親育ちや機能不全家庭で育った人々に多く見られます。これはいわゆる「いい子症候群」として知られており、自己犠牲や自己抑制が特徴的な状態です。これらの人々は、自分が成功を収めたり、幸せな瞬間を経験したりすると、その喜びや成果を素直に受け入れることができず、まるでそれが許されないことのように感じてしまうのです。

この罪悪感の根底には、子ども時代の家庭環境が大きく影響しています。毒親育ちの場合、親からの過度な期待や厳しい制限、否定的なフィードバックなどにより、子どもは自分の感情や欲求を抑え、親の期待に応えようとする傾向が強まります。その結果、自分自身の成功や幸せに対して、それが親や他者から許されない、あるいは愛されなくなることへの恐れとして表れるのです。

この罪悪感は、時に恐怖感へと変わり、自己表現や自己実現を大きく妨げる要因となります。自分の感情や欲求を表現することに罪悪感を感じるため、自己制限を行うようになり、これが健全な自己肯定感や自立心の発達を阻害します。結果として、これらの人々は、自分自身の幸せや成功を十分に感じることができず、人生において完全な満足感を得ることが難しくなります。

幸せになるのが怖い理由

幸せになるのが怖い理由は、多くの場合、子供の頃の経験に起因します。様々な事例が存在しますが、いくつかの典型的なものを紹介します。

  • 親からの不安定な愛情表現: 子供の頃に親から愛情を不安定に受け取っていた場合、幸せになることへの信頼感が育ちにくくなります。例えば、親が子供に対して時折愛情深く接する一方で、他の時には無関心や冷たい態度を示す場合、子供は愛情を確実なものとして信じることが困難になります。
  • トラウマ体験: 子供の頃に虐待やネグレクトなどのトラウマ体験がある場合、幸せになることへの恐怖が生じることがあります。このような過去の経験が、幸せな瞬間に不安や疑念を生じさせ、その感情を受け入れることが難しくなることがあります。
  • 親の離婚や死別: 子供の頃に親の離婚や死別を経験した場合、幸せな環境が突然崩れることを経験するため、幸せに対する不安が生じることがあります。その結果、幸せな状況を享受することに抵抗感が生じることがあります。
  • 過剰な期待とプレッシャー: 子供の頃に親や周囲から過剰な期待やプレッシャーを受けていた場合、幸せになることを恐れる理由となることがあります。成功や達成感を追い求めることで、幸せを享受することができず、その結果、幸せになること自体を恐れるようになることがあります。

優しくされると辛い心理

優しくされると辛い人は、優しさを受け入れることは、安らぎという感覚を与えてくれますが、同時に自分が崩れ去って消えてしまいそうな危険性も感じてしまう。優しくされるのが怖い人は、子どもの頃から、長い孤独な時間を過ごし、苦しみや辛さが積み重なってきた心の中で、その重荷を解放したいと切望しているかもしれません。そして、息苦しさに耐えながら進む時間の中で、自分の苦痛を癒すことを望んでいます。

しかし、辛い人生から逃れようとするとき、未来の姿が見えなくなり、未知への恐怖によって踏み出す力を失ってしまいます。彼らは、人と関わる際に、警戒心が強くなり、優しさを最も求めているにもかかわらず、それが怖くて仕方がないと感じます。一歩引いた距離で優しさを受け入れることで、初めてそれを手にすることができますが、その距離があるため、優しさの真の暖かさを実感することはできません。

優しくされるのが怖い人は、素直でないと誤解され、理解を得られない感覚が残るかもしれません。それでも、優しさは怖くて堪らないものであると感じます。心の奥底では、その優しさを受け止め、自分を癒すことができる日を待ち望んでいます。そして、いつかその温もりを感じられる時が来ることを信じて、恐れながらも前進し続けます。

幸せになるのが怖い心理

幸せになるのが怖い人は、人生において幸せを強く求める一方で、同時にそれを信じられないと感じます。心の深層では、幸せを追い求める気持ちがあるものの、過去の経験や恐れからくる不安が、感情に対する信頼を築くことを困難にしています。

このような心の中で、幸せを願いつつも信じられない複雑な状態は、矛盾と葛藤を絶えず抱えて生きることになります。そして時折、他人からの愛情や支援に目を向けることが難しくなり、自身の幸福を見失ってしまうことがあるのです。

幸せになるのが怖い人は、幸せな瞬間の際、人生が輝きに満ちているかのように感じられるものですが、その幸せが失われたとき、心の色彩が失われ、生きる力まで奪われかけることがあります。幸せを味わった後にそれを失うと、かつての喜びが二度と戻らないことに深い悲しみを感じます。この重い悲しみは、十字架のような重荷となり、生きる意欲を抑圧し、幸せな記憶と現実の苦悩が追い詰めるかのように感じられることがあります。

幸せ恐怖症に苦しむ人は、幸せと不幸の両方を持つ自分から逃れようと試みますが、どれだけ努力しても自分と向き合わざるを得ない状況に陥ります。息苦しさに苦しみながらも、生き地獄のような道しか残されていない現実に対処しなければなりません。

幸せ恐怖症の人の体験談

私は彼と過ごす時間が心地よく、深い愛情を感じることができました。例えば、彼が私の髪を撫でてくれたり、励ましの言葉をかけてくれたりした瞬間、私は安心感に包まれました。しかしながら、その愛情に触れる度に、私は同時に心が崩れ落ちるような経験も何度も繰り返しました。そのような日々の中で、私の気持ちは揺れ動き、涙を流しながら眠りにつくこともありました。しかし、彼は私が彼の愛情を感じて安らかに眠っていると解釈していました。

ところが、彼の優しさに触れるたびに、私の不安や恐怖心は増していきました。ある日、彼が私を抱きしめてくれた時、私は耐えられないほどの恐怖に襲われ、震えながら意識が遠ざかる状態に陥りました。このような経験は何度も繰り返されました。喜び、悲しみ、苦しみ、不快感、逃げ出したい衝動、そして自分の情けなさに叫びたい気持ちが交錯し、まるでガラスにヒビが入り、細胞が破裂するような感覚に苛まれました。私はその感覚から解放されたいと切望し、混乱する心の中で彷徨っていました。

幸せ恐怖症を克服するには

幸せ恐怖症は、人々が幸せになることや他人との関係を築くことに対する恐れから、自己防衛のために逃げる傾向がある現象です。幸せ恐怖に打ち勝つためには、幸せを求めつつも、それを信じられない心が、自己防衛の本能から生じることを理解することから始まります。

まず自分の感情や恐れを受け入れ、向き合うことが大切です。自分の心に優しく寄り添い、過去の経験や現在の不安から解放されるための方法を見つけます。また、信頼できる人とのコミュケーションを通じて、自分の不安や恐れを共有し、支え合うことが助けとなり、心の平和と喜びを取り戻すことができます。

このように他者からの優しさに触れる度に、徐々に信じることの勇気や希望を見つけることができます。その過程で、優しさと信頼が次第に交差し、心の傷を癒す力へと変化していくことがあります。

具体的な方法としては、カウンセリングやセラピーを通じて自分の感情や恐れに向き合うことが有効です。また、信頼できる友人や家族との対話や、自己啓発の書籍やセミナーを活用することで、自分自身を理解し、成長する機会を得られます。心のバランスを整えるために、瞑想やリラクセーション法を取り入れることも助けとなります。

最後に、自分に対する優しさや受容を大切にし、自己愛を育むことが、幸せ恐怖症の克服に繋がります。自分を大切にし、信じる力を育んでいくことで、人生における幸せや優しさを真に受け入れ、享受することができるようになるでしょう。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-04-17
論考 井上陽平

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