トラウマとPTSDの違いをチェック!心理的影響と治療の重要性

心の病気

トラウマとPTSD (心的外傷後ストレス障害) は、心理学用語や医学用語として使われます。トラウマとPTSDは、トラウマ体験の後に生じる精神的または身体的に影響を及ぼす疾患を指しますが、明確な違いがあります。

トラウマとは

トラウマとは、強烈なストレスや危機的状況に対する身体的、心理的、社会的な反応を指します。これは、戦争、虐待、性暴力、事故、自然災害といった危険な出来事に遭遇することで引き起こされます。トラウマを経験すると、恐怖や不安、まるで常に追われているかのような感覚が生じ、それが心理的、あるいは生理学的な障害に結びつくことがあります。

トラウマは、事件を直接経験した人だけでなく、関与していた人や目撃者にも深刻な影響を与える可能性があります。また、直接的な出来事だけでなく、関連する情報や報道を通じてトラウマを感じることもあります。こうした過去の悲惨な体験は、強烈な記憶や身体反応を引き起こし、現実に適応することが難しくなることが少なくありません。

トラウマによる影響は、深刻な不安や恐怖、抑うつ、記憶の混乱、解離、怒り、焦りなど多岐にわたり、個人の生活に大きな影響を及ぼすことがあります。このような反応は、過去の体験から学んだ身体の防衛メカニズムであり、危険から身を守るための自然な反応ともいえます。短期的な影響で終わる場合もありますが、時には長期にわたり続くこともあります。

トラウマの強さや反応は人それぞれ異なり、出来事そのものだけでなく、それに対する個々の解釈や受け止め方によっても異なります。しかし、適切な支援や治療を受けることで、トラウマを乗り越え、日常生活に復帰することは可能です。

PTSDとは

一方、PTSDは、トラウマ的な体験からの回復が困難な場合に起きるストレス性の精神疾患のことです。特に、戦争や虐待、性暴力、自然災害、事故などの強制的な出来事から来るストレスによって起こることが多いです。

PTSD に悩む人たちは、トラウマ的な体験に対する記憶やフラッシュバック、恐怖や不安、過覚醒、嫌悪感、不眠、悪夢、回避行動などの様々な症状を抱えます。彼らは、トラウマ的な体験が起こったときと同じような感覚を再現することがあり、現実から離れてしまうこともあります。

PTSD は、トラウマ体験からの回復を妨げる長期的な影響を引き起こすことがあります。治療を受けずに放置されると、時間の経過とともにトラウマが慢性化し、解離症状が出てきます。しかし、適切な治療を受ければ、PTSD からの回復は可能です。カウンセリングや心理療法、薬物療法などが有効な治療法の一つです。

トラウマとPTSDの違いとは

というわけで、トラウマとPTSDは異なる概念であり、トラウマは一度の経験か複雑な経験をしていることがあり、戦慄の衝撃によって脅かされた人の心の傷や体の反応を指します。PTSDは、トラウマに遭遇した人が 長期的に恐怖や不安を感じ続け、特定のトリガー(音、視覚的なシンボル、場所など)によって引き起こされる記憶や思い出を再体験することがあります。

トラウマは一般的な経験であり、短期的な影響を及ぼし、ときに長期に渡って影響を引き起こす可能性はありますが、すべてのトラウマ体験者がPTSDを発症するわけではありません。PTSDは、トラウマを経験した人の一部だけに起こりますが、他の人は、トラウマ体験から自然に回復するか、適応障害、愛着障害、社会不安障害、パニック障害、うつ病、解離性障害、双極性障害、パーソナリティ障害、身体疾患など別の診断名がつく可能性があります。

トラウマやPTSDは治療を必要とする問題であり、心理療法、カウンセリング、薬物療法、グループサポートなどの支援を通じて克服することができます。このような治療は、トラウマの記憶を再解釈し、引き起こされる不安を緩和することが重要です。また、トラウマやPTSDの症状が長期間続く場合、生活の質に大きな影響を与える可能性があります。

トラウマとPTSDの共通点

  • 心理的・身体的影響:トラウマもPTSDも、強烈なストレスや脅威に対する身体的、心理的な反応を引き起こします。両者は、個人が過去に体験した衝撃的な出来事に関連して発症し、感情、思考、行動、身体反応に影響を及ぼす点で共通しています。
  • 発生する原因:どちらも、戦争、虐待、性的暴行、事故、自然災害など、生命や身体に危険が及ぶ状況で発生することが多いです。
  • 精神的苦痛:トラウマもPTSDも、強い恐怖感や無力感、フラッシュバックや悪夢などの苦痛を伴うことがあります。

トラウマとPTSDの違い

  • 持続時間と影響の深さ:トラウマは一般的に一時的な反応として生じ、時間とともに軽減することがありますが、PTSDはトラウマの影響が長期化し、日常生活に大きな影響を与える障害です。PTSDでは、トラウマ体験が繰り返し蘇るフラッシュバックや強烈な不安感が続きます。
  • 発症率:トラウマ体験をしたすべての人がPTSDを発症するわけではなく、トラウマ体験者の一部のみがPTSDを発症します。多くの人は自然に回復するか、適応障害やうつ病など別の形で症状が現れることがあります。
  • 再体験の有無:PTSDでは、トラウマ体験のフラッシュバックや再現が顕著であり、特定のトリガー(音や場所など)によって過去の出来事が突然蘇ることが特徴的です。トラウマはこのような再体験がなくとも強い感情的な反応を引き起こすことがあります。

回復への道

トラウマやPTSDを経験した人々にとって、回復は一つの大きな挑戦ですが、それは可能です。最初のステップは、自己認識を深め、現在の自分の状態を受け入れることです。トラウマの影響に苦しんでいることを認識し、支援を求める勇気が重要です。回復には、個々の状況に応じた複数のアプローチがあり、治療を通じて時間をかけて進むプロセスとなります。

安全な空間の構築

まず、トラウマを体験した個人にとって、安全な空間を築くことが重要です。これには物理的な安全性だけでなく、感情的な安全性も含まれます。家族や友人、または支援者のネットワークを築き、安心して感情を表現できる環境が回復を助けます。セラピストと信頼関係を築くことも、自己開示を促進し、トラウマについて話しやすくなります。

マインドフルネスとセルフケア

マインドフルネスやセルフケアの技法は、トラウマやPTSDの症状緩和に効果的です。呼吸法、瞑想、ヨガなどは、心身のリラックスを促し、フラッシュバックや過覚醒を和らげる助けになります。定期的にこれらを行うことで、感情のコントロールや自律神経の調整が促進されます。

適切な治療法の選択

治療には様々なアプローチがあります。認知行動療法(CBT)や眼球運動による脱感作と再処理(EMDR)などは、トラウマに関連する記憶や感情に取り組み、再体験することなく乗り越える手法として有効です。また、薬物療法も、過度な不安やうつ症状を抑えるために使用されることがあります。

他者とのつながりを取り戻す

トラウマやPTSDの影響で孤立感を感じている人々にとって、他者とのつながりを再構築することが重要です。グループセラピーやサポートグループに参加することで、自分だけがこの苦しみを抱えているわけではないと感じることができ、共感と理解を得ることができます。

自己肯定感の回復

トラウマやPTSDは自己価値感の低下を招くことがありますが、少しずつ自己肯定感を取り戻すプロセスも重要です。小さな成功体験を重ね、自分を肯定し、過去の出来事が自分の価値を定義するものではないことを理解することが回復の鍵となります。

次の段階: 回復のその先

時間とともに、トラウマやPTSDから回復した人々は、新たな視点で人生を見つめ直すことができるようになります。過去の経験が傷として残ることはあっても、それを乗り越える強さやレジリエンス(回復力)を持っていることを自覚することができるでしょう。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-2-2
論考 井上陽平

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