インナーチャイルドの癒し方、抱きしめる|治療

複雑性トラウマ

インナーチャイルドは、傷ついた内なる子どもの存在を示し、成長の過程でトラウマを経験した人々が、痛みやトラウマに対処するために自分自身から生み出された子どものような存在です。

大人と子どもの分裂的事象

冷静さと正常性を装いながら、成長過程で遭遇する苦難に対処しようとする人格は、自身を偽りの姿に仕立て上げます。その偽りの自己は、辛い出来事や困難な状況から身を守るために感情を麻痺させ、痛みを感じないように努めます。しかし、その内面には遊び心に溢れるインナーチャイルドが存在し、肉体的および感情的な痛みを引き受けることになります。この子どものような心は、我々の潜在意識に根ざしている感情とともに、日々の生活における喜びと苦悩を共に抱えています。

痛みに区分される大人と子ども

複雑なトラウマを背負い、構造的解離を抱える人は、表面上は正常に見える人格を持ち、日常生活を過ごし、仕事や子育ての責任を果たしています。しかし、その内面は苦しみに満ち、毎日の生活がやりきれなくなり、焦燥感に苛まれているのです。彼らの疲れや痛みが限界を超えると、体に異常が現れ、解離状態となり、子ども時代の自分に置き換わってしまいます。

大人の自分と子どもの自分は、感情的、身体的な痛みによって区別されています。子ども時代の自分は、日々の苦しみに終わりが見えないため、深い悩みに囚われてしまいます。このような状況にある人々は、外見上は普通の人と変わらないように見えますが、内面では絶え間ない苦悩と向き合っているのです。

インナーチャイルドの特徴

インナーチャイルドは、深い心の中で誰かに見つけられることを切望している。その願いは強く、愛と理解を求めている。しかし、見つかりそうになると、自分が脆弱な状態でさらけ出されることに不安や恐れを感じ、心が揺れ動く。

そして、見つけようと努力してくれる人が現れると、インナーチャイルドは物陰に隠れ、息を潜めてその人を覗き見る。その人の温かなまなざしや、優しさに触れたいという気持ちと同時に、自分の心の奥底にある傷や苦しみをさらすことへの恐れが押し寄せる。

インナーチャイルドは、その葛藤の中で、いつまでも姿を現す勇気を持てずにいる。それでも、どこかで見つけて欲しいという願いは消えず、ひそかに誰かが自分を理解し、愛してくれることを夢見ている。

その矛盾した感情は、心の奥にあるインナーチャイルドが抱える脆さや不安を象徴している。見つけてほしいけれども見つかることが怖い、その繊細なバランスの中で、インナーチャイルドは愛されることを待ち続ける。そして、いつか本当に自分を受け入れてくれる人が現れることを信じて、静かにその時を待ち望む。

トラウマや解離的防衛

幼少期にPTSDや虐待を経験した人々は、過酷な状況への適応のために、無意識に痛みを切り離す解離的な防衛機制を働かせ、傷ついた自分の分身を繰り返し生み出すことがあります。この解離的防衛は、困難な状況で感じる痛みやストレスから一時的に逃れる方法として機能するものの、長期的には心の傷が癒されず、多様な問題を引き起こす可能性があります。

傷ついたインナーチャイルドは、人が抱える痛みや不安、恐怖、悲しみや怒りなどの様々な感情を表現する際に現れます。こうした過去のトラウマは、適応障害や心身症、人間関係の問題や自己肯定感の低さを引き起こすこともあります。

傷ついた子どもの隠れ家

傷ついた子どもたちの隠れ家とは、心の奥深くにある安らかな場所です。傷つき弱った子どもたちは、恐ろしい出来事が起こると、身体がこわばり、自分を縮こまらせて、暗く深い隠れ処へと逃げ込んでしまいます。彼らは人々が存在する外の世界を怖いと感じ、安全な場所にとどまりたいと願います。

外に出る際には、誰もいないことを確認し、木々に囲まれた中で自然の音色に心を安らかにします。彼らは心身共に重い傷を抱え、現実の絶え間ない刺激に敏感であるため、人目に触れぬ場所で休息を取ることが必要です。現実から逃れ続ける彼らは、生きづらさを背負いながら、現実の厳しさに耐えることが難しくなります。

体の中に凍りついた子ども

インナーチャイルドは、心の奥深くに潜んでいる私たちの内なる子どもの姿で、過酷な現実に対処することが難しい状況に直面しています。彼らは人生の意味を見出せず、不安定な心で進んでいくことになり、周りの人々に置いていかれることで焦燥感や不安が増していきます。彼らは誰かに助けを求めたいのですが、泥沼のような状況に足を取られ、行動できなくなってしまいます。

人々との関わりに過敏に反応し、見つけられない小さな隠れ場所で安らぎを探します。心の中の子どもは、涙を流し、寂しさを抱えながらも、どうしようもない状況で助けを求める声が届かず、絶望感に覆われます。誰にも信じてもらえない中で、自分自身を信じることも難しくなってしまいます。この内なる子どもは動くことを拒み、暗闇の中で孤独に泣いています。その助けを求める声が聞こえてきます。

極度に過酷な環境で育ち、例えば性的虐待などがあった場合、本来の私は死の淵をさまよいながら、もの凄く深い場所へと逃げ込んでしまいます。身体に刻まれた傷が疼き、これ以上のダメージを受けることは耐えられないほどの状態のため、誰にも知られぬ秘密の隠れ家で休息を必要とします。そこは静かな闇の中で、身を潜め、傷を癒すために必要な静寂を享受します。

酷い場合は、冷たい大地の中で眠ってしまうかもしれません。心の奥にいる小さな私は、感情を抑え込み、無表情で無感情になります。外の世界では笑顔を見せている自分がいても、心の中では笑っていません。彼らは喜びも悲しみも理解できず、誰かが近づいても、何も感じることができず、何も響かないのです。

インナーチャイルドカウンセリング

私たちが生み出した傷ついたインナーチャイルドは、心の中に潜みながら愛情や理解、安心を求めています。彼らと向き合い、自分を大切にし、過去の痛みを癒すことが、インナーチャイルドとの関係を改善し、精神的な成長につながります。

癒しの過程では、自己受容や自己慈悲を重視し、心の傷に対処するためのセラピー、カウンセリング、瞑想や自己探求などの方法を活用することが効果的です。これらの手段を通じて、傷ついたインナーチャイルドたちと対話し、彼らが抱える痛みや恐れ、悲しみを解放することで、心の平和と調和を取り戻すことができます。

懐かしい風景を思い起こす

インナーチャイルドに接近する方法は、まず自分の子ども時代に住んでいた家を思い起こすことから始めます。心の中で、トラウマを抱えた子ども時代の自分がどこにいるかを探し求めてみてください。もし、家に戻ることに抵抗がある場合は、近所の公園や森を想像してみると良いでしょう。

このイマジネーションを通じて、自分の中の傷ついた子どもと繋がり、彼らが抱える感情や願望に耳を傾けることができます。そうすることで、自分自身を理解し、過去の傷を癒すための過程を歩み始めることができるのです。

身体にアプローチする

インナーチャイルドに接近する方法は、まず解離状態にある自分自身や体、感覚、感情と触れ合うことから始めます。筋肉の緊張や心臓、内臓を感じてみることで、自分の身体的・感情的な痛みと繋がることができます。

次に、何を感じているのか、何が起こっているのかを受け入れることが大切です。その過程で、段階的により深いレベルでインナーチャイルドと繋がっていくことができます。この心の旅を続けることで、自分自身とインナーチャイルドとの関係を改善し、内なる平和と癒しを見つけることができるでしょう。

内なる自分

【複雑なトラウマを経験しているAさんの内なる自分】

幼少期のトラウマや虐待の生存者は、冷たく厳しい道を生きていくしかなく、時には、自分自身に鍵を掛けてしまうことがあります。子どもの頃の自分は、周りの皆に置いて行かれ、ついていけなくなり、孤独になってしまいます。心の中の堅く閉ざされた一室の中には、ただ膝を抱えるもう一人の自分がいて、久しぶりに自分と向き合うと「寂しいよ」と自分に話しかけてくる気がした。

しかし、心苦しく思いつつも、自分には何もできなかった。ずっと居場所を求め、彷徨ってきた。居場所を見つけたとしても、恐怖からまた壁を作ってしまった。自分を受け入れてくれる、慣れない暖かさに怯えていた。失う恐怖が、以前の自分よりも強く荒れていた。

頭と胸に痛みが続く中、夢ばかり見せてくる自分に、わずかな痛みを与えて、再び「寂しい」と言った。誰よりも自分の声を聞けるのは、自分自身だからだ。そして、いつだって自分だけは、自分のそばにいてくれている。

インナーチャイルドの癒し方・抱きしめる

【複雑なトラウマを経験しているBさんのインナーチャイルド】

幼少期のトラウマや虐待の生存者のなかには、心の中に幼い子どもの自分を抱えながら生活していることがあります。幼い子どもがいる部屋の扉は堅く閉ざされ、中は暗闇で孤独です。だから、その子どもは泣き続け、「誰か助けて」「誰か見つけて」と願っています。

心の鍵を開け、出ておいで、もう何も恐れることはありません。私があなたを抱きしめ、優しく微笑んであげます。凍えるような寒さの中、一筋の光もない閉ざされた小部屋で、息苦しさにうずくまり、涙を流す子どものあなたに、私の涙も伝わります。

救いたくて、鍵を探すあなたと私。どこを探しても見つからない、砕け散った幻の鍵の残像があるだけです。それならば、新しく作りましょう。あなたの鍵と私の鍵を。また最初から作り上げ、今度は失わないように、二度と消えないようにしましょう。

扉は開かれるでしょう。あなたの手によって、私の手によって。もう大丈夫です。光を灯し、温もりを提供しましょう。だから私の胸で、泣いて泣いて、思う存分泣いてください。私の涙も流させてください。愛しています、もう離しません。

耐え抜いたあなたは、こんなにも愛おしい。こんなにも愛しています。初めて笑った子どもは言います。「助けてくれてありがとう。見つけてくれてありがとう」

涙を流しながら、子どもは言います。「ずっとずっと待ってた」だから私も、泣きながら言います。「もう二度と離さないよ」

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-04-16
論考 井上陽平

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