感情がなくなる人の特徴・原因・病気・ストレス

心の病気

感情がなくなる病気には、うつ病、統合失調症、失感情症(アレキシサイミア)、離人感・現実感消失症が含まれます。本ページでは、これらの病気について詳しく説明します。

極限のストレス下で“無”になりたいと願うメカニズム

人生の厳しさに疲れ切っている人々は、しばしば「感情なんていらない」と内心で叫びたくなることがあります。この考えは、表面上は感情がただの余計な荷物、つまり生き抜く上での障害にしか見えないからです。感情の重さは、時には我慢できないほど圧倒的で、全てを手放してしまいたくなるくらいに感じられる場合もあります。

しかし、この「何も感じない状態、つまり“無”になりたい」という願望が浮かんでくる背後には、自分自身を何とか守りたいという本能的な反応が働いている可能性が高いです。感情と向き合うことで生じる心の痛みやストレスから逃れ、一時的でも平穏な状態を手に入れたいとそう願うのは、極度に困難な状況下での自然な心の動きかもしれません。

失感情症-無感情になった人

感情がない人は、しばしば「失感情症」と呼ばれる状態に陥っている可能性があります。失感情症は、感情を理解することができない、感情を表現することができない、あるいは感情が鈍いといった症状を示すことがあります。具体的には、自分自身の感情を表現できないため、人間関係の構築が困難になったり、相手の感情を理解できないため、他者とのコミュニケーションに問題が生じることがあります。

失感情症は、複雑なトラウマが原因となっていることがあります。例えば、過去に暴力や虐待、性的虐待、心理的虐待、またはその他の精神的ストレスに晒された人は、失感情症になる可能性が高くなります。

これは、複雑なトラウマを抱える過程で、強烈な感情が脳の奥深くで生み出され、身体的感覚の源泉から絶えず攻撃を受けているにもかかわらず、その源から意識の上で切り離されてしまっているためです。たとえば、過去に虐待を受けた人は、その瞬間に感じた痛みや恐怖を、現在の状況でも感じてしまうことがありますが、その感情を意識の上で認識できなくなってしまいます。このような状況下では、感情を抑圧することが、自己防衛的な反応として現れることがあります。

トラウマから脳と心の働き

感情がない人は、トラウマや恐怖に対処する中で、特定の脳領域の機能を停止することを学んだ結果、感情が鈍くなってしまいます。これは、トラウマ自体への反応や、長期的な恐怖に対処するための生存戦略として起こります。

彼らは、恐怖や怒り、痛みなどの強い感情を遮断することで、日常生活をやりくりしようとします。この適応は、なんとも悲しいもので、感情を抑えることで、人間らしい感覚や生きていると感じる能力まで弱めてしまいます。

具体的には、脳の前頭葉や扁桃体などの部位が影響を受けることがあります。前頭葉は、感情や判断、行動などをコントロールする役割を持っており、扁桃体は恐怖や不安などの感情を処理するために重要な役割を果たしています。

しかし、トラウマや恐怖が強い場合には、これらの部位が過剰に活性化してしまうため、感情を遮断することで、これらの部位の活性化を抑えることができるとされています。このような状態は、適応的な反応である一方で、感情を理解することや、自分自身や周囲の人々との関係性を築くことに支障をきたすことがあります。

感情がなくなる人の特徴

感情がない人は、過去のトラウマやストレス、緊張が蓄積されていることが原因で、自分自身を保護するために感情を封じ込め、無感情な状態になってしまいます。性格的には真面目で我慢強く、素直で、物静かな人が多い傾向があります。また、怖がりなところがあり、人の目につくことが苦手で、人に良く思われようと相手に合わせることが多いです。

幼少期のトラウマや親子関係

幼少期にトラウマを経験することで、子どもたちは強い感情を抱くようになります。しかし、親からの虐待や不適切な養育、不安定な環境で育った場合に、その感情を周りに表現することができず、内側に閉じ込めることになります。

このような人は、怒ったり泣いたりすると余計に大変な目に遭うため、感情や感覚を無視して行動することが多いです。自分の感覚を麻痺させ、頭で考えて正確に行動するようにします。しかし、感情を無視し続けることで、感情や感覚が鈍くなり、無表情・無感情になることがあります。具体的には、怒りや恐怖、喜び、幸せなどの感情が感じにくくなり、人間らしさを失っていきます。

PTSDになるような強いショック

感情がなくなる症状は、強いストレスやトラウマによって引き起こされることが多く、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一部としても知られています。現実感や自己感覚が消失することで、現実の出来事に対する適切な反応をとることができなくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。

人が戦慄の恐怖に曝されると、感情や感覚が麻痺することがあります。この状態は離人感・現実感消失症や失感情症と呼ばれ、感情がなくなることで、自分自身や周りの出来事に対する関心が薄れ、何をやっても味気ない、空虚な状態になることがあります。また、恐怖心が強すぎると、自分の身体や周りの環境が自分自身とは切り離されたもののように感じられます。長年に渡って、酷い環境にいると、自分の身体がマネキンや人形、ゴムのようなものになってしまっているかのような感覚に陥り、神経が通っていない、血液が通っていないような感覚を覚えます。

感情がなくなる人の症状

感情が鈍ることで、様々な症状が現れます。例えば、何も感じないようになるために、興味を持つことや楽しむことができなくなることがあります。また、自分の感情が分からないため、自分自身や他人に対する共感力が低下し、社交性が乏しくなることもあります。さらに、身体的な反応も鈍り、表情や身体の動きが少なくなり、味覚や嗅覚、触覚などの感覚が鈍くなることがあります。

感情がなくなる人は、自分自身の感情を抑圧してしまい、人前で泣いたりすることができなくなっています。そのため、生きているレベルの感情や感覚が低下し、体の感度や感受性、想像力も極端に低下します。辛い気持ちをただ我慢することに疲れ果て、全ての感度が鈍ってしまうのです。その結果、世の中を見る目が悲しみの色に染まり、元気がなく、興味や関心がなくなってしまいます。また、複雑な感情を理解することができなくなるため、自分自身や周囲の人々との関係性に支障をきたすことがあります。

感情がなくなる病気

生活全般のストレスと緊張が、感情を鈍らせる原因の一つです。ストレスや緊張が長期化すると、精神的な疲れやストレス反応が蓄積され、感情の起伏が少なくなり、興味や関心が薄れてしまうことがあります。また、ストレスによって不眠症や食欲不振などの身体的な症状が現れ、それが感情の低下を引き起こすこともあります。感情がなくなる病気としては、主に以下の4つがあります。

うつ病

感情がなくなる病気には、うつ病があります。うつ病は、悲しみや無力感、希望の喪失などの感情の鈍磨を特徴として、生きることに対する興味や関心がなくなってしまう病気です。何をするにもやる気が出ず、何も楽しめなくなり、人との関係も希薄になるため、日常生活に支障をきたすようになります。うつ病は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスの乱れや、トラウマやストレス、遺伝的な要因、身体的な疾患などが原因となります。生きることに対する興味や関心がなくなってしまう病気です。

統合失調症

統合失調症は、幻覚や妄想、混乱などの症状が現れる精神病の一種です。しかし、一部の患者には感情が鈍くなるという症状も見られます。この症状は、脳の前頭葉や辺縁系といった部位の機能障害が原因とされています。

失感情症(アレキシサイミア)

失感情症とは、感情を認識・表現することが困難になる状態のことを指します。具体的には、喜怒哀楽などの感情をほとんど感じなくなるため、周囲の人々とのコミュニケーションが困難になったり、人間関係に悩んだりすることがあります。また、自分自身の感情に対しても鈍感になるため、自分自身がどのように感じているかを認識することが難しくなります。

失感情症は、精神疾患の一つであり、うつ病、統合失調症、自閉症スペクトラム障害、心身症、脳病変など、様々な疾患と関連があることが知られています。一方で、トラウマやストレス、薬物の副作用などが原因となる場合もあります。

離人感・現実感消失症

離人感・現実感消失症とは、自分自身が現実との接触を失い、現実感を失う症状です。自分自身が別の次元に存在しているかのように感じたり、夢を見ているような感覚を持ったりすることがあります

具体的には、身体や感情、思考が自分のものであるかのように感じられなくなることが特徴です。例えば、手足の動きが自分自身のものではなく、別の存在が動かしているように感じられたり、周りの人々がロボットや仮面をかぶったように見えたりします。現実との距離感が変わっているように感じ、自分自身が現実に存在しているかどうか不安になることがあります。

この症状は、精神疾患の一種であり、主にストレスやトラウマ、薬物乱用、睡眠不足などが原因とされています。また、パニック障害や社交不安障害などの他の精神疾患とも関連している場合があります。

無感情になった人の治療

感情がなくなる症状は、人によっては一時的なものであり、自然に改善することもありますが、それでも症状が継続する場合は、治療が必要となります。治療は、感情がなくなる原因や病気によって異なりますが、一般的には、カウンセリングや心理療法、トラウマ治療、認知行動療法、薬物療法が行われます。

心理療法は、失感情症の原因を理解し、感情の表現や認識に焦点を当てたものです。治療の中で、患者は感情について話したり、感情を認識する練習をすることがあります。また、抑圧された感情に直面し、それらを認めたり、受け入れたりすることも必要になる場合があります。

さらに、このような症状に陥っている人が自分自身で対処するために、リラックスした環境での呼吸法や瞑想、身体運動などのリラクゼーション法が有効です。自分自身で行うことができるので、気軽に実践することができます。一方、統合失調症など症状が重たい場合は、抗精神病薬や精神療法などが使用されます。また、生活習慣の改善やストレス管理なども重要な治療要素となります。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-03-04
論考 井上陽平

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