夢の中にいるような感覚の病気:解離・離人感・現実感消失症の症状と対策

複雑性PTSD

多くの人々が、日常の営みの中で現実と向き合って生きている中、一部の人々は非常に異質な体験をしています。彼らは現実に触れているように感じられず、まるで霧の中を歩いているか、夢のような状態に囚われている感覚に悩まされます。この状態は、解離性障害、離人感、現実感消失症、統合失調症といった精神的な疾患に起因することがあれば、薬物の使用や過去の外傷、過度なストレスや疲労など、生活環境や身体的な要因によっても引き起こされることがあります。

このような感覚は、ただ「変な感じ」として片付けられるものではありません。彼らは文字通り、目を開けた覚醒状態でありながら、まるで夢の中にいるか、あるいは自分が外から自分を見ているかのような違和感を感じることがあります。日常の小さな出来事から、人間関係、職場での責任まで、その全てが彼らにとっては遠く感じられることもあります。

現実味がない感覚

「現実味がない」という感覚は、人々が時折直面する不可解で不思議な状態を指す言葉として使われます。この感覚は、周囲の事物や状況、時には自己に対する認識が曖昧になり、まるで夢の中を歩んでいるか、あるいは別の次元に足を踏み入れているかのような感覚を呼び起こします。

この現実味の欠如感は、日常生活の中で何気なく経験する瞬間の一つである場合もあれば、深い精神的な悩みや心の叫びとして現れる場合もあります。この感覚は、たとえば美しい夕焼けや壮大な自然の景色を前にしたとき、その美しさや壮大さが現実のものとは思えないほどである場合や、深い悲しみや衝撃的な出来事の後、自らが現実の中にいるのか夢の中なのかを見分けることが難しくなる状況など、様々な背景を持って生じることがあります。

一方、長期にわたり「現実味がない」状態にとどまることは、心の健康にとって大きな負担となることがあります。このような状況は、夢や幻覚と関連付けられることも多く、人の心や精神に深く関わる問題として捉えられることが多いです。

現実感がない原因

幼少期から複雑なトラウマを抱える子供たちは、自分の居場所が見つからず、家庭や学校での生活が絶えず脅威に晒されていると感じる日々を送ります。彼らは、現実の脅威にさらされ続ける中で、心身が次第に凍りつくような状態に陥り、周囲の環境の変化に対応する力が失われていきます。その結果、解離性障害や離人感・現実感消失症の傾向が高まることがあります。

これらの症状は、彼らが感じる痛みや疲労、ネガティブな感情が蓄積し、肉体そのものを感じられなくなることが起こります。とても苦しく、辛い毎日を過ごす方策として、自分の心の中に好きな世界を創り上げる術を身につけます。

例えば、ある少年がいます。彼は幼い頃から家庭内の暴力にさらされており、学校でもいじめに遭っていました。この少年は、心の中で自分だけの平和な世界を創り出し、現実の痛みをシャットアウトする方法を学びました。彼はその想像の世界で、自分の好きなキャラクターや友人たちと冒険を繰り広げ、楽しいひと時を過ごすことができました。

例えば、ある女性がいます。彼女は長年、ストレスの影響で解離性障害に苦しんでいました。彼女はしばしば、自分が自分でないかのような感覚に悩まされ、現実と夢の境界が曖昧になることがありました。彼女の日常生活は、周囲の人々とのコミュニケーションが困難になるほど、現実感が薄れていきました。

解離性障害/離人感・現実感消失症

解離性障害や離人感・現実感消失症を抱える人々は、人生の道筋が分からなくなり、不安定な状態に陥ることがあります。この症状は、自分自身や身体、感情、感覚、そして周囲の世界とのつながりが断絶されたかのような感覚を生み出すことが一般的です。

ただし、解離性障害にはさまざまな種類が存在し、微妙な違いが見られます。離人症は、自分自身からの切り離しが伴います。それはまるで心の中に存在する自分自身と身体が分離したかのような感覚で、自己とは何か、自分自身とは何かという核心的な問いが生じ、その答えを見つけることができず、自我の根源が遠く漂うように感じられます。

この感覚は、現実感の喪失と密接に連動しています。周囲の世界が霧に包まれたようにぼんやりと見え、全てが遠く、曖昧であり、現実と夢の境界が曖昧になります。まるで一歩引いた視点から世界を見ているかのように、すべてが視覚的に歪んで見え、距離感や大きさが不自然に感じられます。その結果、自身が周囲の世界から断絶しているという感覚が強まります。

あたかも自己と世界が浮き立つような透明なヴェールで隔てられているかのような感覚は、現実と自我との間に不可透な壁が形成されているように感じさせます。この壁は視覚的には見えないかもしれませんが、その存在感は否応なく感じられ、自己と現実との間に深い断絶をもたらします。

現実感消失症という状態では、自身が世界から孤立した島のように感じることがあります。この深淵の症状は、ある女性の例を通して具体的に描かれます。彼女は常に、まるで霧に包まれた朝霧の中を彷徨っているかのような感覚を持つことが多く、現実の世界との接点を失い、孤独と切ない不安感に襲われる日々を送っていました。

親しい友人たちとの会話さえも難しく、彼女は常に自身が実際の世界から遠く離れた場所にいるかのように感じていました。彼女の存在はまるで幽霊のようで、あたかも自分がその場に物理的に存在していないかのような感覚に時折苦しめられるのです。全てが遠く、自分が世界と繋がっている実感がなく、彼女は自身の存在そのものに疑問を抱くことさえありました。

現実から遠ざかる心

現実と夢の区別がつかなくなる状態に陥る人々は、日常生活において深い混乱や孤独感に苦しむことが多いです。現実がぼやけ、まるで夢の中に迷い込んでいるかのような感覚が続くため、彼らにとっては現実自体が不確かで、つかみどころのないものに感じられます。

この状態は、他者との対話や人間関係を築くことを非常に困難にします。例えば、会話の最中でも、自分がその場にいる感覚が希薄で、周囲の声や音が遠くから響いているかのように感じることがしばしばです。こうした現実感の欠如は、社会生活や職場での活動にも大きな影響を及ぼします。仕事の会議やプレゼンテーションの場面では、自分がそこに存在していないかのような感覚に襲われ、集中力を欠いてしまうため、重要な局面でのパフォーマンスが低下してしまうことも少なくありません。

さらに、この症状は人間関係にも悪影響を与えることが多く、友人や家族と一緒に過ごしていても、感情的なつながりを感じにくくなり、次第に孤独感が深まります。「自分は誰とも本当に繋がっていない」「ここに存在しているのだろうか」という感覚が強まり、周囲の人々に対する信頼や愛情が薄れていきます。結果的に、彼らは心の中に閉じこもり、現実の世界との接触を避け、ますます孤立していくことになります。

夢と現実の狭間で生きる人の特徴

夢の中にいるかのような感覚を持つ人々は、現実と呼ばれる世界からの繋がりを失ってしまいます。彼らにとって、かつて現実だと信じていた世界は遠くなり、夢の世界が身近に感じられるようになるのです。この状況において、彼らは夢の世界こそが本当の世界だと感じることがあります。

夢の世界では、彼らは形を持たないまま漂い、やわらかく溶けるような感覚に包まれます。甘美なその世界では、心地よい安らぎを感じ、幸福なひと時を過ごすことができるのです。夢の中で、彼らは現実世界の苦しみや悩みから解放され、自由に心を巡らせることができます。

夢の世界は、現実世界にはない自由さや非現実的な美しさが広がっており、彼らを魅了する力を持っています。現実の世界から離れて夢の中に没頭することで、彼らは現実の悩みや苦しみから逃れることができるのです。しかし、その感覚はしばしば現実世界とのギャップに悩まされる原因ともなることがあります。

夢と現実が交差する感覚を持つことにより、現実の世界と夢の世界の狭間で日々を送っています。彼らの心は、世界の境界線を漂いながら、現実と夢の両方を同時に体験することがあります。強いストレスがかかると、現実世界からのつながりを途切れさせ、夢の世界に完全に飲み込まれてしまうことがあるのです。

夢の世界にいるにもかかわらず、現実の光景も目に映るため、どちらが真実の世界であるのか確信が持てず、時には途方に暮れることもあります。現実と夢の区別がつかない状態では、どちらも本当の世界のように感じてしまうのです。このように、夢と現実の境界線上で生活する人々は、自分自身と向き合いながら、現実と夢のどちらに立つべきかという選択肢に悩むことがあります。

現実とのつながりを取り戻すために

彼らが現実とのつながりを再構築するためには、周囲の理解と支援も非常に重要です。家族や友人、職場の同僚が彼らの状態に対して共感を示し、無理に現実に引き戻そうとするのではなく、そっと寄り添いながら彼らのペースに合わせることが求められます。強引な介入や、「そんなことはありえない」といった否定的な言葉は、さらに彼らを孤立させる要因になりかねません。

また、彼らが少しずつ現実感を取り戻すためには、安全で安心できる環境作りも不可欠です。心が安定するまでの間、できる限りストレスの少ない生活を送り、身体的にも精神的にもリラックスできるような習慣を取り入れることが大切です。例えば、自然の中を散歩したり、深い呼吸を意識したり、日記をつけるなどして、自分自身との対話を深める方法があります。

さらに、日常生活の中で、現実との接点を意識的に持つことも助けになるでしょう。彼らが日々感じている世界の中で、小さな「現実」を見つけ、五感を通じてそれに意識を集中させる練習を繰り返すことで、徐々に現実世界との結びつきを取り戻すことが期待されます。たとえば、朝のコーヒーの香りを楽しんだり、手触りの良い物に触れることで、少しずつ現実の感覚が戻ってくるかもしれません。

この過程は決して簡単なものではなく、時間がかかる場合もありますが、忍耐強く支援を続けることで、彼らが現実の世界と再びしっかりと向き合う力を取り戻せる日が来るでしょう。それは決して孤独な旅ではなく、周囲の支援を受けながら、少しずつ進んでいく道なのです。

最終的には、彼らが夢と現実の間で苦しむことなく、穏やかな気持ちで両方に対処できるようになることが目標です。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-04-24
論考 井上陽平

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