人々は通常の生活環境で体験する解離現象を恐れます。解離は神経系が原始的に反応し、自身が身体から切り離されたり、異なる世界に引き込まれたりするような感覚を生むものです。この経験は、自己が精神的に不安定になったと感じ、自己感を深く揺さぶります。
このような感覚が日常生活に影響を与えると、死の恐怖や絶滅恐怖症につながることがあります。自我の消失の恐怖は、狂気や暴力行為へと進行する可能性があります。
解離現象に対抗しようとする人々は、自己の消失や狂気を恐れ、日々を崖っぷちで生きるような状態になります。大きな衝撃が襲うと、過去の深い傷が蘇り、狂気が心を覆います。
しかし、人が畏怖と魅力の両面を持つ別世界を知ると、狂気は恍惚感へと変わります。それは統合失調症のように思えるが、背側迷走神経の活動と過去のトラウマによる解離現象から説明が可能です。特に重大な外傷体験は、深い影響を与え、恐怖や痛みからの解離現象を引き起こす可能性があります。
トラウマと神経系:解離症状の理解
解離症状とは、人間の複雑で洗練された神経系が一時的に遮断され、原始的な神経が主導権を握ることで生じる障害の一種です。これらの症状は、個人が痛みやトラウマを経験した際に、身体がその脅威に反応する時、「戦うか逃げるか」と呼ばれる反応や、さらには「凍りつく」や「死んだふりをする」、「虚脱」の防衛反応を引き起こす結果として現れます。その時、人々は暴力的な興奮状態に陥るか、あるいは頭が真っ白になり、全身が恐怖や戦慄で固まってしまいます。
さらに、これらの反応がその人の耐性の限界を超えてしまうと、様々な身体症状が現れることがあります。視野が狭くなったり、呼吸困難になったり、身体が動かなくなったり、意識が朦朧としたり、吐き気や下痢を経験したりする人もいます。また、極端な場合には、脳が一時的にシャットダウンしたり、気を失ったりすることもあります。
解離症状は、人々の意識状態をも混乱させることがあります。一部の人々は、交感神経システムに乗っ取られ、制御不能な怒りに駆られて、手足が勝手に動くようなことがあります。また、身体が落ち着かなかったり、自分の身体を離れて自分自身を第三者視点で見る体験をしたり、心の中に隠れてしまったりすることもあります。
また、解離して人格が入れ替わる時は、頭痛、後ろから引っ張られているような感覚、押し出される感覚、眠気、感覚の鈍化、現実と夢の境目が曖昧になるなど、さまざまな感覚異常が報告されています。
夢と現実の間:交代人格と自己保護の領域
幼い頃から交代人格を持ち、異なる人格間の言葉や感覚が混ざり合い、現実の世界と異なる別の世界を行き来する経験を持つ人々は、しばしば危険で強烈な感覚を自身から分離する能力を持っています。彼らは単に現実から切り離されるだけでなく、時間がゆっくりと流れるかのような状況でも、まるで夢に誘われていくかのように感じることがあります。それは、なめらかな感触に包まれ、夢のような別世界へと導かれる経験を伴います。
例えば、この「夢の国」への門は、様々な形を取ることがあります。それは、母親の胎内を旅行しているかのように感じることから、なめらかな空気に包まれて溶けていくような酔いのような感覚まで、多種多様です。また、キラキラとした泡に包まれ、別の世界へと運ばれていくような感覚を伴うこともあります。
彼らにとって、この「あちら側」の世界は恐怖の源ではありません。それはむしろ、子どもの頃から安心して閉じこもることができる場所として存在します。ストレスがかかる場面に出会った時、彼らは身体が自動的に反応し、自分自身を心や身体の深部に閉じ込めることを選びます。これは、現実から自己を切り離し、自己保護のために内部に避難することが、便利であると感じるためです。
恐怖と無力感:解離症状と精神的混乱の探求
子どもの頃から通常の環境で生活してきた人々は、自身の体が突如として巨大化し、まるで自分自身を見下ろすような離人症を経験したり、恐怖によって息が止まり身動きが取れなくなったり、一瞬で意識が飛び自己が消失してしまうような体験を恐れます。また、彼らは突如として異なる世界に吸い込まれてしまったり、自己が身体の内部に押し込まれてしまうような現象に遭遇するのを恐れます。
これらの症状は、「解離」と呼ばれる現象の一部であり、これは人間の神経系が最も基本的で原始的なレベルで働き、強烈な感覚を引き起こし、私たちを掴んで閉じ込めようとする力のことを指します。この力は、まるで生き物のように感じられることがあります。解離と直面する人々は、しばしば自己が精神的に不安定になってしまったのではないか、あるいは「狂ってしまった」のではないかという感覚に襲われることがあります。これは、解離が引き起こす混乱と不安が、その人の認識や自己理解を深く揺さぶるからです。
歴史的に、この種の恐怖(黒い渦に吸い込まれる感覚やそれを引き起こす不安と衝動)を外部世界に投影する人々は、夜の気配や得体の知れない影を恐れるようになることがあります。このような症状は、統合失調症(精神分裂病)と診断されることがあります。彼らは、解離という力の前に無力化され、分裂したり、捻じれたり、圧迫されたり、消滅させられたりするような恐怖を感じます。これらは、まるで死が彼らを追い詰めているかのような感覚になります。
そして、この強烈な力を感じたとき、動悸は激しくなり、身体は重くなります。恐怖によって動けなくなり、息が止まるかのように感じ、声も出せなくなります。そして、絶望や無力感に打ちのめされ、自己の存在が崩壊するかのように感じることでしょう。
ショックが引き起こす精神と身体の混乱
この強烈なショックが襲ったとき、その人の血色は一気に引き、頭の中が白くなり、意識が遠ざかるかもしれません。その結果、倒れるか、もしくは身を丸め、頭痛、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。この強大な力が働き続けると、個人の力を打ち砕き、顔色を青白く変えます。身体は凍りつくか、または崩れ落ち、パニック状態を引き起こします。
このような感覚が日々の生活に襲いかかると、人々は死が間近に迫っていると感じるようになります。絶滅させられるという恒常的な恐怖が、あらゆる形の恐怖症へと進行します。外の世界とのつながりが断たれ、夢の中で人々は邪悪な存在として現れることもあります。その人の体の中では、原始的な背側迷走神経が制御権を握ろうとしています。
このような”悪魔的な”力に取り憑かれた人々は、非常に危険な状態に置かれます。彼らは悪夢や身体的な症状に悩まされ、死神に取り憑かれたかのように感じることがあります。頭が真っ白になり、狂気や暴力行為(他人への害または自傷行為)へと進む可能性があります。
崖っぷちの精神:正常と狂気の狭間で揺れ動く自我
人が原始的な防衛システムによって閉じ込められると、自己の自立性が奪われ、自我が消滅する恐怖から身を守ろうとします。しかし、その結果、彼らは深い闇の底にある井戸に吸い込まれそうな感覚や、まるで断崖の縁に立っているかのような危険な状況に追い詰められます。そして、狂気は、僅かな隙間を見つけて人々を取り憑き、未知の境界の彼方へと導こうとします。
普通の人々は、この境界の向こう側の世界を知らないため、彼らは底なしのブラックホールに吸い込まれるかもしれない、あるいは、自分が人間でなくなるかもしれないといった恐怖を感じます。また、一度そこへ行ってしまうと二度と戻って来られないかもしれないという不安も抱きます。
このような分離感を生み出す強大な力に抗する人々は、狂気を恐れ、自我の消滅を怖がります。彼らの毎日は、まるで崖っぷちで生きるような存在になります。彼らは、正常と狂気の間を綱渡りしながら生きており、細いワイヤーの上を慎重に歩くような現実の世界は脆く、一歩間違えれば、ワイヤーから落ち、狂気の世界に引きずり込まれてしまいます。
狂気から恍惚へ:恐怖とトラウマを超えた別世界の誘惑
大きな衝撃が人々に襲いかかると、過去に受けた深い傷が蘇り、狂気がその心を覆います。その後、彼らは動けなくなり、見えない力に引き寄せられる先にある世界は、無の領域、つまり死の世界か、あるいは暖かく溶けるような感覚の空間、または穏やかな風が吹き渡る場所となります。その場所には、感じ取れるのは波動や風、そして息遣いだけで、腹の中を揺らす心地よい波に身を任せることができます。それは、言葉にできないほどの至福感と安らぎが存在する場所です。
人がこの別世界の畏怖と魅力を知ると、狂気は魔術的な恍惚感へと変わり始めます。この狂気の世界は、通常の世界に生きる人々には理解し難い現象となります。それは統合失調症のように思えるかもしれませんが、これは背側迷走神経の活動と、過去の悲痛なトラウマによる恐怖や痛みからの解離現象により、ある程度説明が可能だと考えられます。
トラウマと恐怖:過去の傷が現在を支配する心理的メカニズム
トラウマを経験した人々は、その衝撃が心と身体に深い影響を与えます。彼らは警戒心が強く、不安と恐怖が常に心を支配しています。特に重大な外傷体験は、身体的な痛みや麻痺、凍りつくような感覚、または自己が崩壊していく感覚を引き起こすことがあります。
トラウマによる恐怖は、心理学で「汎化」と呼ばれる現象を経て広がります。これは、様々な新しい刺激が過去の外傷体験と無意識的に連携し、その恐怖感、身体的な反応、感覚、無力感、さらには具体的な光景、音、臭いと結びつけられてしまう現象です。この結果、脳は現実に存在しない想像上の脅威さえも危険と判断し、その結果として身体全体にストレスホルモンが放出されます。
この過剰なストレスホルモンの放出は、人々を怒りや恐怖の感情に浸漬させ、無力感を引き起こします。そして、これらの感情が一度に起こると、更なる恐怖を引き起こします。これが螺旋状に進行し、結果としてトラウマの症状はさらに深刻化します。こうした恐怖と無力感のループは、日常生活を非常に困難なものに変えてしまいます。仕事や人間関係、日々の生活習慣など、一度は当たり前だと思っていたことが急に困難なハードルとなって立ちはだかります。
トラウマ治療:ポジティブな状態への道と感情の乗り越え方
トラウマ治療には様々な手法が用いられますが、その主要な目的は、個人がネガティブな感情や体験から解放され、喜び、幸せ、リラックスといったポジティブな状態へと向かうことを助けることです。そのためには、自身の注意を喜びやリラクゼーションを生み出すものに向けるよう訓練する必要があります。
その一方で、トラウマ治療は、患者が恐怖、無力感、怒り、悲しみ、孤独といった難しい感情を経験し、それを乗り越えることも重要視します。これは、自身の内なる感情と向き合うことで、それを理解し、それによりトラウマから回復する力を得るためです。
さらに具体的な治療法として、マインドフルネスや呼吸法、身体志向アプローチ、イメージ療法が用いられます。マインドフルネスは、一瞬一瞬に集中し、自身の感情や感覚をそのまま受け入れる瞑想の一形態です。呼吸法は、深く、リズミカルに呼吸することで心と体を落ち着け、集中力を高めます。身体志向アプローチは、体の感覚に焦点を当て、心身の健康を維持することを目指します。そしてイメージ療法は、ポジティブなイメージを想像することで、現実感を取り戻し、ネガティブな感情や思考から解放することを目指します。
また、身体感覚を伴うことで、不快な感情や思考、信念を分離させるという治療もあります。これは、「凍りつき」や「不動状態」と呼ばれるトラウマの症状に対処する手法として、自分自身を積極的に苦しい状況に起きます。そして、その苦しい状態から抜け出す力を引き出すために、神々や母親に抱きしめられるような安心感を伴うイメージや、恐ろしい動物から逃げるような活力を感じるイメージ、悪役と戦うイメージなどを利用します。これにより、患者は自身の力を取り戻し、不動状態から抜け出すことができます。
不動状態とは、もはや希望もなく、まるで自分が死んでいるかのように感じる状態を指します。しかし、この状態においても、手の拳に力を集約させて、肉体感覚に対する意識を持続的に向け続けることで、全身に拡張感を覚えることができます。さらに、内臓からの安心感を引き出すことで、身体は収縮から拡張へとリズムを変え、これによってトラウマが変容し、治癒へと向かうことが可能となります。
トラウマと向き合う:イメージ療法を用いた内面の旅
イメージ療法は、特に発達の早い段階でトラウマを経験し、解離性症状を持つ人々に対して有効な手法であります。このアプローチでは、絶望や悲しみといった感情を心の中で描き出すことで、現実と内心の世界を行き来することを促します。
この治療法では、悲しみや恐怖に圧倒されると、患者は自己を空洞の中に入り込む、あるいは自己を「無」にするか、あるいは解離して抽象的な世界に逃避することがよく見られます。このような状態でも、患者は身体の中心の「何も無い世界」にいながら、呼吸のリズムに合わせて、心地よい波に漂うように感じます。
さらに、患者は熔けるような暖かさや、故郷に帰ってきたような心地良さの中で、スピリチュアルな体験や宇宙的な体験をすることも可能です。これらのイメージを用いることで、患者はトラウマを克服し、癒しを得ることができます。
しかし、このような治療は一朝一夕には成功しないものであり、患者自身が自発的にトラウマ体験に近づくことは難しいものです。恐怖に直面しながら、立ち往生してしまうこともあります。
しかしながら、時間を掛けて、一つ一つのステップを着実に踏んでいくことで、患者は身体の不動状態から抜け出し、神の愛の中で目覚めることができます。そして、その先には真の変容や覚醒が待っているのです。これがイメージ療法の目指すところであります。
当相談室では、狂気や解離に関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。予約は以下のボタンからお進みいただけます。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-07-18
論考 井上陽平
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