トラウマによって引き起こされる2つの反応

複雑性トラウマ

このページでは、トラウマが引き起こす影響によって、危険な状況に遭遇すると、人々は二つの反応を示すことがあります。一つは、闘争・逃走反応によってアクセルを踏んでしまう人であり、もう一つは、危険な状況でブレーキがかかってしまい、凍りついたり麻痺してしまう人です。このような反応は、トラウマが過去に経験されたことによって引き起こされることがあり、適切な治療やケアが必要です。

危機的状況に対する二つの反応

心身の成長にとって重要な時期に、家庭内虐待や学校でのいじめなどを経験した子どもは、慢性的に緊張するようになることがあります。危険を察知する場面では、闘ったり逃げたりする交感神経が覚醒しますが、幼少期から脅かされ続けている子どもは、自分の不快な感情を表現すると、予期せぬ恐ろしい目に遭った経験から、全力で自分の感情にブレーキをかけて自分を守ろうとします。

戦ったり逃げたりする能動的な反応

トラウマによって引き起こされる反応は、大きく分けると二つのタイプがあります。一つ目は、少しの刺激でも感情が溢れてしまい、危険や生命の危機を感じて、体のアクセルを全力で踏んで闘ったり逃げたりする能動的な反応を示す人です。この反応は、交感神経が優位になるため、呼吸や心拍数が上がり、身体が緊張状態になります。

凍りつく麻痺する受動的な反応

二つ目は、背側迷走神経が同時に覚醒し、ブレーキをかけて、凍りついたり/麻痺したり、シャットダウンしたりする受動的な反応を示す人です。この反応は、交感神経とは逆に副交感神経が優位になるため、呼吸や心拍数が低下し、身体が萎縮状態になります。

複雑なトラウマを経験している人は

複雑なトラウマを経験している人は、同じ経験を二度としたくないため、あらゆる事態を想定し、次の危機に備えることで警戒心が過剰になる傾向があります。また、現実世界の刺激が強すぎて、気が気でない状況が続くと、アクセルを踏みっぱなしの状態に陥ることがあります。しかし、アクセルを踏み続けると、体に過剰な負荷がかかり、ストレスの増大や過度の体力消耗を誘発しやすくなります。

さらに、ストレスが原因となり、凍りつきや警戒心過剰な状態が続き、筋肉が硬直して心拍数が上昇し、息苦しさや麻痺などの身体症状が現れることがあります。これらの身体症状は、心身一体であるため、トラウマの影響を受けた精神状態に密接に関連しています。

複雑なトラウマを経験している人は、気楽に生きることができないことがあります。何度も嫌がらせを受けた経験から、自分と外の世界を明確に区別し、自分を守ろうとする傾向があります。また、警戒心が高まり、過剰に考え込んでしまい、心身が疲れてしまうことがあります。

嫌な出来事を経験するたびに、人としての尊厳が破壊され、憤り、怒り、憎しみなどの感情が生まれることがあります。さらに、自分自身が傷ついてきたため、新たに傷つく人を作りたくないと思い、自分のためにも他人のためにも戦い続けようとすることがあります。

自分の不快な感情を出した時に、それが仇となり、かえって危険な目に遭ってきた人は、自分の感情を抑えるようになります。感情を抑えすぎると、自分に価値がないと思い、自分自身を見失ってしまうことがあります。また、感情を抑えることが習慣化してしまうと、感情を表現することが難しくなり、自分の感情がどこにあるのかわからなくなってしまうことがあります。

感情を抑え続けることで、鈍痛や慢性的な疲労、息苦しさ、苦痛を伴う人生になることがあります。ストレスが増えると、身体的な症状が現れることがあり、体が動かなくなってしまうこともあります。子どもの頃から逃げ場がなく、脅かされることが繰り返されると、トラウマが複雑化し、その後一生にわたって影響を与えることがあります。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-01-02
論考 井上陽平

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