解離していくもう一つの世界の夢

複雑性トラウマ

戦争、暴力、レイプ、誘拐、監禁、人質、拷問などの強い衝撃を受けた人は、もともとの私(解離する前の私)が、トラウマによって自分の中に閉じ込められてしまうことがあります。そして、トラウマを負う前の時間を記憶の中で再現して、その中を生き続けることがあるため、現実から逃避することがあります。

例えば、小さい時に、生命を脅かす強い衝撃を受けた人は、子どもの頃から時間が止まってしまい、夢の中でいつまでも学校に通い続けたり、夢の中の虚構を生き続けることがあります。このような状態にある人は、現実の出来事から逃げることができるため、自分自身を守ることができるというメリットもあります。

解離性障害の人のもう一つの世界

解離性障害を抱える人は、トラウマ体験などのストレスが原因で、人格が二つ以上に分裂してしまう状態になることがあります。もともとの私がいる場所は、もう一つの世界(夢の世界)であり、肉体を失うことで行ける場所です。この場所は、過去の苦しい出来事から逃れることができて、外敵が一切入ってこない場所であり、心地よい空間に癒やされ、安心して過ごすことができます。しかし、これが長期間続くと、社会的な生活や人間関係が困難になることがあります。

解離性障害を抱える人が現実の生々しい刺激に触れると、体がこわばり、身動きが取れなくなり、恐怖や不安が襲ってきます。また、足元から脱力して、皮膚の感覚が鈍くなり、眠気が強くなります。そして、もう一つの世界に引き戻されると、現実の悩みや辛さから解放され、安息の地になります。そのため、夢の中の世界に長く留まりたくなり、現実世界に戻りたくないという感情が生じます。このような解離性障害の症状は、複雑なトラウマを抱える人々の間で広く見られます。

夢の中で生き続ける人

トラウマのショックがあまりに大きいと、打ちのめされた状態になってしまい、現実の生活のことを覚えられなくなることもあります。解離症状が酷くなると、現実の出来事に主体的に関わりたくても、現実世界に接触できず、自分自身に戻れなくなります。

このようなトラウマを受けることで、現実の世界から避けるために、別人格が登場することがあります。このような状態では、元の自分は、もう一つの世界で止まったままの状態になります。夢の中で生活を続けているため、成長しないで若いままであり、仕事や学校の状況も変わっていない状態が続きます。現実と夢の中での自分の状態が明確に分かれ、それぞれの世界で生きているような感覚を抱くことがあります。

トラウマによって現実世界での日常生活を別人格が代行しているために、もともとの私(解離する前の私)はどこかに存在していますが、誰も近づけないという状況に置かれています。もともとの私は、夢の世界にいる可能性もあり、その場所は天の川の湖畔かもしれません。解離症状が酷い場合、自分自身に戻ることができず、現実世界に接触することができなくなります。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2022-12-31
論考 井上陽平

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