解離していくもう一つの世界の夢

複雑性トラウマ

戦争、暴力、レイプ、誘拐、監禁、人質、拷問など、もの凄い衝撃を受けた人は、もともとの私(解離する前の私)が自分の中に閉じ込められて、トラウマを負う前の時間を記憶の中で再現して生き続けることがあります。例えば、小さい時に、生命を脅かす衝撃に曝された人は、子どもの頃から時間が止まってしまい、夢の中でいつまでも学校に通い続けて、夢の中の虚構を生き続けます。

もともとの私が居る場所は、もう一つの世界(夢の世界)であり、肉体を無くすことで行ける場所です。もう一つの世界とは、外敵が一切入ってこない場所になり、心地よい空間に癒やされ、安心しながらゆっくりした時間を過ごしています。できることなら、このままでいたいと思うくらいに、そこは快適な場所です。

もう一つの世界で、ゆっくり過ごして、穏やかな心を取り戻した頃に、ふと現実世界のことを思い出し、再び現実世界に戻ろうとします。現実世界に戻ろうとすると、現実世界での戦慄体験が記憶として蘇り、恐怖のあまり再び体が凍りついてしまいます。足元から全身にかけて徐々に脱力し、麻痺したように皮膚の感覚が薄れ、眠気が強くなり、ふわふわとした居心地のよい空間に引き戻されていきます。そして、現実世界に再び戻りたくないと思ってしまいます。

現実世界で外傷体験を負って、これ以上の辛さに耐えることも立ち向かう力も失くしてしまい、絶望したり、途方にくれたりします。そんな中で辿り着いたもう一つの世界は、今までの悩み事や辛さから解放され、安息の地となり、ずっと夢の中の世界に居たいと思ってしまいます。

トラウマのショックに曝されて、最悪の状態になってしまうと、現実の生活のことを覚えられなくなることもあります。解離症状が酷くなると、現実の出来事に主体的に関わりたくても、現実世界に接触できず、自分自身に戻れなくなるため、別人格が日常生活を代行します。もともとの私は、現実ではないもう一つの世界で時間が止まり、毎日成長することなく、若い時のまま夢の中を生きます。その時にしていた仕事や学校の状況のままで、夢の中で生活を続けます。

現実世界の日常生活は私ではない別人(解離した後の私)が行うことになり、もともとの私(解離する前の私)は、どこかに存在していますが、誰も近づけません。もともとの私は、夢の世界の住人になり、天の川の湖の畔で生活しているかもしれません。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2022-12-31
論考 井上陽平

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