本ページでは、親に縛られたまま自分の人生を生きられずにいる人々の心理状態について説明しています。親に縛られている人は、親が求める人生を生きようと努力し、そのために自分自身を抑圧し、親に合わせるようになってしまいます。しかし、このような状況下では、自分の欲求や自由な発想を抑圧してしまい、心に抑圧された感情が溜まっていきます。親は子どもに無償の愛を与えるべき存在ですが、中には適切な愛情を与えられない親もいます。
例えば、性的虐待を受けた子どもたちは、親を気持ち良くさせる付属物のように扱われることがあり、自分自身を犠牲にして親の要求に応えることが求められるようになります。これにより、自分自身を否定し、自分の感情や欲求を抑圧するようになり、自分らしさが分からなくなり、自分の生き方を見失ってしまうことがあります。
父なる神の支配
父親に縛られている人は、父親は神のような唯一無二の存在となり、無慈悲で理不尽な父なる神に支配されてしまいます。父なる神は、旧約聖書のヤハウェのような絶対的な権力者であり、その姿は勇ましく頼もしい存在ですが、いきなり何をしてくるのか分からないという恐怖も兼ね備えている存在です。そのため、このような状況下で育った子どもたちは、常に危険から身を守るために警戒心が強く、過覚醒で対応しなければならなくなることがあります。
親に期待しては裏切られる
子どもは親の優しさに期待しても裏切られてしまい、落ち込んでしまうという状況があります。これは、親との関係において、自分が思っていない想定外の結果が起きてしまい、期待していた通りにいかないことが多いためです。こういった状況下で育った人たちは、自分自身を肯定するために、親からの認められたいという欲求が強くなり、自分を偽ったり、他人に合わせたりすることがあります。また、自分自身を守るために、自分を犠牲にしてでも周りの人に合わせることがあります。その結果、自分の本来の価値観や欲求を無視してしまい、自分自身を見失ってしまうことがあります。
親に縛られている人の特徴
親に縛られている人は、幼い頃から親に叩かれたり、怒鳴られたり、両親の喧嘩を目撃したりして、常に神経を張り詰めて育ってきました。そのため、「父親は何か気に入らないことがあるとすぐに激怒する」「母親は父親に怒鳴られて、子どもはその母親を慰める役割になる」「母親から否定的な言葉ばかりを聞かされ、一日中愚痴の聞き役に徹する」「親が幸せでないから、自分も幸せになってはいけない」といった考えが一般的です。しかし、酷いことをしてきた親に対しても、反抗せずに親を可哀想に思ったり、親が抱える苦しみから解放してあげたいと思ったりすることもあります。
また、親に縛られてしまった人は、「親が自分のことを愛している」「親に嫌われてしまうことが怖い」「親に申し訳ない」「親が気持ち悪い」といった思考に陥ります。周りからは親に縛られているように見えるかもしれませんが、本人は親と関わりたいと思い、親と縁が切れてしまうと不安や恐怖を感じることがあります。
人形化の暗い影
親に縛られている人は、親から傷つけられても大丈夫なように、何も感じない人形のようになっていきます。親に対して強い忠誠心を抱き、親を喜ばせたり安定させるためだけに生きて、暗い影を背負います。自分自身の感情を持つことができず、親に対して反抗することもできず、常に自分を責めたり、罪悪感を感じたりしています。このような状況で生きている人は、自分の人生を自分で決めることができず、ただその場その場を流されるまま生きています。
感情を抑え、我慢する
親から否定されたり、期待に応えられなかったりすると、自分を責めたり、罪悪感を感じたりして、自己評価が低くなることがあります。さらに、自分自身を否定することによって、親との関係を守ろうとする傾向があります。そのため、自分自身の感情を抑え、我慢をすることで、家族の平穏を保とうとしている人が多いです。ただし、このような状況で生きていることは、誰かを愛することや、自分自身を大切にすることができなくなるため、心身の健康に悪影響を与えることがあります。
親の顔色を伺う
親に縛られている人は、いつも親の顔色を伺い、親の意向を汲もうとする良い子を演じているため、自分の本音を言えず、ネガティブな感情が残り、ますます親に縛られていきます。良い子の限界が来ると、動けなくなり、自責感や無力感に苛まれて、自分の意志がなくなり、感情が平板化し、人間らしさが失われた状態になることがあります。また、疲労や痛みのせいで麻痺して現実感が無くなり、記憶が薄れ、フワフワしながら生きることがあります。地に足がついていない感じで成長し、体だけが大きくなることがあります。その結果、生き生きとした世界が失われてしまい、自分自身が変わってしまい、本当の自分が分からなくなることがあります。
親のことを考え、囚われていく
親は自分の子供がおかしな状態にあることに気づかず、手を差し伸べることもない場合、子供はトラウマの状態から抜け出せなくなってしまいます。親に囚われて、常に過覚醒状態になり、危機的な状況でいつでも対応できるようにしている一方で、過去に囚われた状態から抜け出せず、グルグルとした思考が止まらず、新しいことに踏み出すことができなくなってしまいます。先行きが不安で、出口が見つからない絶望的な状態に陥り、全身に力が入らなくなってしまいます。このような状況にある人にとって、自分の望む未来を見つけることや前に進むことは非常に困難になります。
何が正しいのか分からない
異常な環境で育った人は、何が普通か分からなくなり、何が正しい判断なのか分からなくなってしまい、周りの人の影響を強く受けやすくなります。親が自分の辛かった気持ちを分かってくれず、これまでの人生で親が中心であったため、自分のやりたいことや生き方が見つからず、方向性を見失ってしまいます。自分の人生に意味を見出せず、周りの人たちが自分で選んで行動する中、経験を積み上げられないまま、自分のやらなければならないことだけをやっている状況に陥ることがあります。
囚われた状態からの脱却
人間とは、自分が心地よいと感じることを求めて行動する生き物です。しかし、親に縛られていると、自分の本来の感覚を無視し、親の思い通りに行動することが多くなります。このような状況は、精神的に負荷がかかり、病気を引き起こすことがあります。ですが、現実世界で自分の感覚を頼りに生きていくようになると、親に縛られることが少なくなります。
しかし、親が異常な行動を取っている場合、自分がまともに相手をしていたら、ただただ疲れるだけであることが多いです。そのため、親からの影響を受けない自分の道を歩むためには、親との対決を覚悟する必要があります。自分の感情や行動を分析し、親と向き合うことで、自分自身の存在価値を見出し、自分の歩むべき道を定めていくことが大切です。ただし、親が異常な行動をしている場合、理解されないことも多いため、周囲に理解者を求めることも必要かもしれません。
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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2022-12-29
論考 井上陽平
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