感情のコントロールができない病気の対処方法

心理テクニック

複雑なトラウマを抱えた経験から、多くの人はその深い傷を隠して、日常生活を通じて感情を内にしまい込んで生きてきます。しかし、時にその感情のたまったプレッシャーは、怒りの沸点を超えると一気に噴出することがあります。このような瞬間には、長い間築いてきた自己制御の壁が一瞬で崩れ去り、感情が強烈に、そして制御不可能に溢れ出してきます。

その感情はあまりにも強烈で、自分の行動や言葉をコントロールすることが非常に難しくなるのです。そして、この瞬間的な感情の洪水の中で、取り返しのつかないことをしてしまうのではないかという深い不安が心を掴みます。その結果、状況に応じて、無意識的に声をあげてしまったり、想定外の行動を取ってしまうことも。これは、内に溜め込んだ感情が一気に解放される結果としての自然な反応であり、多くの人が経験することです。

感情のエネルギー:怒りと転換の心理学

感情が制御できないという状況は、まるで自然界の無秩序さ、特に火山の噴火を思わせるほどの力強さと破壊力を持っています。この比喩は単なる言葉遊びではなく、人間の心の奥底で渦巻いているエネルギーの矛盾と複雑さを象徴しています。独特の困難や過酷な人間関係、未達成の夢や自己に対する失望が、精神の底に積もるマグマのように急速に高まる。そして、それが一瞬の出来事で噴火し、怒りや悲しみ、焦燥感といった感情が爆発する。

社会はこの爆発をしばしば「自制心の欠如」とレッテルを貼り、一方的に非難することが多いです。しかし、このような評価は短絡的であると言えます。その「負のエネルギー」がどこから来たのか、その源を考えることは極めて重要です。それは、ある種の社会的、文化的、心理的なプレッシャーの結果ともいえるでしょう。

この問題に真剣に向き合うためには、負のエネルギーを生み出した元凶や出来事を明らかにし、その根本原因を理解する作業が必要です。それによって、私たちは自分自身の内面をより深く探求できるようになり、感情の制御も容易になります。

事実、怒りや悲しみといった感情は、人間の基本的な感情であり、そのエネルギーは無尽蔵です。このエネルギーを「負」から「プラス」に変換することができれば、そのエネルギーは高度に有用なものとなりえます。たとえば、突然の怒りを感じた瞬間にそのエネルギーをスポーツや創造的な活動、あるいは社会的な正義のために注ぐことができれば、その怒りは構築的な形で発露され、負のエネルギーからプラスのエネルギーへと転化することができます。

このような変換を促す手法は多くあります。メディテーションやヨガ、アートセラピーや心理カウンセリングなど、人それぞれに合った方法が見つかるでしょう。その中から自分に適したものを選び、実践することで、感情の制御がより行いやすくなるはずです。

私たちが忘れてはいけないのは、感情そのものが問題ではないということです。問題なのは、その感情をどう処理し、どう表現するかです。感情は、人間の存在を豊かにする多面的なエネルギーであり、それをうまく制御し、適切に方向付けることで、より充実した人生を送ることが可能です。だからこそ、感情の「爆発」を単純に非難するのではなく、その背後にある複雑な人間性と向き合うことが必要なのです。

怒りとの向き合い方:人間の複雑な感情に共感と理解をもって接する方法

「怒り」は一般に「自制心の欠如」や「非合理的な行動」とみなされがちですが、その怒り自体には、さまざまな人間的な背景や感情が織り交ぜられています。以下は、怒りを効果的に制御するための多角的な方法論を、より深い人間理解と共感に基づいて説明したものです。

①怒りの元から離れる

  • 距離を取る、逃げる、移動する

怒りの源に対して物理的な距離を取ることで、直感的にその情熱を冷ませる効果があります。場合によっては、その場を去ることが最も効果的な解決策となることもあります。

②意識を他に向けて気をそらす

  • 怒りの元を見ないようにする
  • 別の景色を見る
  • 水を飲む

怒りの瞬間は、しばしばトンネルビジョンに陥りがちです。そこで意識的に視点を変えることで、状況を客観的に捉え直すスペースが生まれます。

③ストレス発散をする

  • 運動する
  • 趣味を楽しむ

怒りはエネルギーです。そのエネルギーを他の健全な活動に向けることで、心地よい疲れとともに平穏な心を取り戻すことが可能です。

④社会的な不公平に対して行動を起こす

怒りはしばしば社会的な不平等や不公平に対する感情としても現れます。その怒りを行動に移すことで、問題に対処し、積極的な変化をもたらすことができます。

⑤自分の中にある「怒りスイッチ」のサインを把握して、作動時は即対応する

  • 拳を握りしめている
  • 目がつり上がっている(睨んでいる)
  • 肩に力が入り震え上がっている … など

自己認識は感情制御の第一歩です。怒りの前触れに気づくことで、そのエネルギーを前もって適切に処理する時間を確保することができます。

怒りスイッチの作動に気づいたら

  • 頭(心)の中で6つ数を数えながら、ゆっくり呼吸を整える

即座に自分をセンタリングすることで、暴発を防ぐスキルを磨きます。

⑥心が落ち着く言葉や前向きになれる言葉を考えたり思い出して、ポジティブ思考に変換していく

言葉には力があります。自分にとって意味のある言葉を思い出すことで、怒りのエネルギーを積極的なものに変えることができます。

⑦自分の好きな事や楽しい事をイメージしたり取り入れて心を喜ばせ気分を上げていく

好きなことや楽しいことに思いをはせることで、心の中のバランスを取り戻します。

⑧ため込んでいる感情を放出する

  • 紙に書き出す
  • 自ら自分の心の良き理解者になる

感情は抑圧するほど強くなるもの。それを形にして外に出すことで、その圧力を和らげることができます。

怒りを効果的に制御するには、自分自身を深く理解し、感情の各要素に対して誠実に対処する姿勢が不可欠です。このリストは、そのための具体的な行動指針を提供しますが、何よりも大切なのは、自分自身と向き合う勇気と、他人との共感です。

日常のストレスと負の感情:人として成熟するための感情管理の探求

人生は紛れもなく複雑で、ストレス、怒り、悲しみなど、負のエネルギーが渦巻く状況に時折立ち向かわなければならないものです。そのような状況は、ある意味で人間の成長と深化に貢献する場面でもあります。しかし、日常生活でこれらの感情に圧倒され、その重荷に耐えきれなくなると、他の重要な事柄に集中する能力が失われてしまいます。

そのような心の状態では、緊急時や重大な局面で最良の判断を下すことが困難になり、自分だけでなく他人にも影響を及ぼす可能性が高まります。特に怒りや悲しみといった感情は、油断すると大きな力を持って拡大し、あらゆる関係性を破壊する危険性を持ちます。

このエネルギーがどこから来たのか、その原因やきっかけを明確に理解することが、感情のコントロールに繋がる第一歩です。いつもよりテンションが高い、不安に感じる、或いは自分自身や周囲に対して極端に批判的であると感じたとき、それは感情が高ぶっているサインかもしれません。そのような瞬間に、自らを少しずつ抑制し、そのエネルギーをより健全な方向にリダイレクトする能力が必要です。

何よりも重要なのは、この過程が容易ではないという事実を受け入れることです。人それぞれが持つ感情や反応は、独自のバックグラウンド、価値観、さまざまなストレス要因によって形成されています。これを理解することで、自己コントロールの難しさや他人との対人関係の微妙さに対する共感が生まれ、効果的な対処方法が見えてくるでしょう。

感情と真剣に向き合い、そのエネルギーの流れを自在にコントロールできるようになると、これまで「感情のコントロールが難しい」とされていた人々も、その力を社会的な営みや人間関係においてプラスの方向に活用することができます。最終的には、このような感情の管理スキルが、人々が互いに理解と共感を持って接する社会を形成する重要な一環となるのです。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-09-16
論考 井上陽平

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