PTSDの過覚醒の対処法|副交感神経を優位にする方法

心理テクニック

過覚醒とは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関連する主要な症状で、それはトラウマを経験した人々の身体が、突然緊張状態に移行し、強い興奮状態に陥るような現象を指します。この状態は、身体が外部からの危険を予測し、その結果、外傷の体験後に持続的なトラウマ反応を誘発するという機序により引き起こされます。

過覚醒が表す具体的な症状群は多岐にわたります。まず、睡眠障害がその一つで、これは不規則な睡眠パターン、頻繁な目覚め、或いは一晩中ぐっすり眠れないという状態を指します。集中力の低下もまた、過覚醒の症状の一つで、これは日常的なタスクに集中する能力が損なわれることを示します。

さらに、過度のイライラ感や怒りも過覚醒の特徴的な症状で、些細な出来事でも大きな怒りを感じる、或いは一般的な状況でも不適切なほどに怒りや憤りを抱くような状態を示します。パニック状態もまた、この症状に含まれ、急激な不安感や恐怖感に襲われる経験を指します。

また、不安定感や焦燥感も過覚醒の一部で、これは感情が不安定になったり、内心で急ぎ足で何かを終わらせる必要性を感じる状態を指します。そして、突然の驚愕反応、これは大きな音や予期せぬ出来事に対する過度な反応という形で現れます。これらすべてが、過覚醒という症状が示す可能性のある反応として挙げられます。

過覚醒: 自己を落ち着かせリラックスさせるテクニック

複雑なトラウマを抱えている人々は、過覚醒の状態に陥ることがあります。これは、過度に興奮したり緊張したり、逆に完全に凍りついてしまうといった状態を指します。これらの人々には、自分自身を落ち着かせ、リラックスさせるテクニックが必要となります。

そのための一つの方法として、過覚醒により、興奮して落ち着かないときは、まず自分がいる部屋を静かに見渡してみましょう。目の前の風景をじっくりと観察することで、外界に注意を向け、自己の内面的な興奮状態から少し距離を置くことができます。

次に、自分の興味を持つものに意識を向けてみてください。それは本、音楽、写真、飾り物など、何でも構いません。それに集中することで、心の安定を取り戻し、興奮状態を落ち着けることができます。

また、現在の瞬間に集中することも大切です。身の回りの物や状況に意識を向け、その存在につながりを感じることで、安心感を得ることができます。

身体感覚に注意を向けるのも効果的な方法です。自分の身体がどのように動いているか、足が地面にしっかりと接触している感覚に意識を向けることで、自分が現在、安全な状態にあることを確認できます。

そして、ゆっくりと深呼吸を行うことも重要です。深呼吸は副交感神経を活性化させ、過度に活動している交感神経を鎮める効果があります。

これらの方法を組み合わせることで、過覚醒の状態を抑制し、自分自身を落ち着かせ、リラックスさせることが可能になります。それぞれのテクニックは個々の状況や好みに合わせてカスタマイズすることができるため、最も効果的な方法を見つけることが重要です。

覚醒管理:心身の平穏を取り戻すためのテクニック

複雑なトラウマを経験した人々は、時折、自分自身の生理的興奮状態を調整することに挑戦する必要があります。その状態を適切に管理し、自分自身を落ち着かせ、リラックスさせる能力は、人々をより健康的で安定した対人関係に導き、心と身体の平穏な状態をもたらすための重要なステップです。

感情と覚醒の調整は、個々のトラウマが引き起こす高い覚醒状態を理解し、それに適応し、激しい感情に耐える能力を育むという必要性から始まります。この能力は、自己調整の基本的なスキルであり、トラウマの影響を受けている人々が自分自身と他人との健康的な関係を維持するためには不可欠です。

そして、闘争や逃走の反応を制御するための具体的なテクニックも役立ちます。マインドフルネスやフォーカシングなどの技法を用い、体性感覚や固有感覚への意識を高めること、つまり自分の身体がどのように感じているかに注意を払うことは、一つの有効な方法です。例えば、自分の心拍数が速くなっていることに気づいたり、手汗が出ていることに気づくと、これらの身体的な反応を認識し、それに対処するためのステップを踏むことができます。

ヨガやダンス、ウォーキング、武道、有酸素運動、漸進的筋弛緩法などは筋肉を使うことになり、それによりストレスへの対抗力が向上します。運動は一時的には覚醒度を高めますが、最終的にはリラクゼーションに役立つことを覚えておいてください。つまり、運動が終わった後の落ち着いた状態を目指すということです。

また、呼吸法は、リラクゼーションを手助けする強力なツールです。深くリズムよく呼吸をすることで、興奮状態を落ち着かせることができます。特に、「ヴー」と声を出して、気道を振動させながらゆっくりと息を吐くことで、体の交感神経のバランスを整えるのに有効です。このような呼吸法は、身体と心をリラックスさせ、過度の興奮を抑え、自分自身のコントロールを支援する助けとなります。

さらに、グラウンディングという技術も有効です。これは、身体の感覚を地面や身の回りの物に向けて意識を集中させることで、過度の覚醒や不安を軽減する方法です。それは、過度の興奮状態から現在の瞬間に意識を引き戻し、身体と心を平穏な状態に戻すのに役立つ方法です。例えば、足が地面に接触している感覚に意識を集中したり、手をテーブルの上に置き、その冷たさや硬さを感じることで、過度な興奮状態から現実に引き戻すことができます。

以上のようなさまざまなテクニックを通じて、トラウマを経験した人々は、自己の生理的覚醒をコントロールし、対人関係における安定と心身の平穏を得ることが可能となります。これらの方法はすぐには効果を発揮しないかもしれませんが、継続的に実践することで、徐々に自己調整のスキルが向上し、自分自身を安定させ、そして他人との健康的な関係を維持する力を育むことができます。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-06-18
論考 井上陽平

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