対人恐怖症の人がやってはいけないこと、治し方

心理テクニック

対人恐怖症を持つ人々は、社会生活において深刻な不安を感じ、他の人たちよりも自意識が過剰であり、自分に対する自信が欠如しています。この恐怖は非常に深刻なもので、他人と一緒にいることに対する強烈な恐怖心を抱えているため、仕事や学校生活において大きな支障を引き起こすことがあります。この状況は、対人関係やコミュニケーションの機会を制限し、彼らの日常生活や人間関係の質に大きな影響を与えることがしばしばあります。

対人恐怖症の人がやってはいけないこと

過度な回避行動

対人恐怖症の人々は、人間関係で問題を回避することは、特に自分や他の関係者にとって重要な話題について話すことを避ける場合、人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。これが繰り返し行われると、問題がさらに悪化することがあるため、注意が必要です。また、対人関係からの撤退は、問題が時間の経過とともに深刻化することがあります。

対人恐怖症の人々は、人間関係を避けることで、一時的に不安や恐怖感が軽減されるため、ますます避ける傾向が強まります。しかし、このような行動が続くと、人間関係を回避する度に、次に人間関係を築こうとする際の恐怖感が増大していきます。結果として、対人恐怖が強くなり、人間関係を避け続けるようになって、生活の幅を狭め、自分自身の成長や人間関係の向上を妨げることにつながります。それゆえ、対人恐怖に対処し、人間関係を築くために努力することが重要です。

我慢し耐えること

対人恐怖症の人々が、苦手な状況に直面した際に戦うことも逃げることもできない状況に陥ると、人間の体は自己防衛のために凍りつくことや、死んだふりをするような閉じこもった状態になります。このような反応は、過去の生存戦略として役立つ行動であったことから生じています。

しかしながら、これらの困難な状況にも我慢し、耐え続けることは、持続的なストレスや過緊張状態を引き起こし、身体に痛みや疲労が蓄積することにつながります。もし長期化してしまうと、過覚醒と低覚醒の状態が交互に現れ、エネルギーが枯渇し、慢性疲労や慢性疼痛などの症状が表れる可能性が高まります。このような状況は、対人恐怖症の人々の健康や生活の質に悪影響を及ぼすため、適切な対処法や治療が求められます。

自己否定

対人恐怖症の人が自己否定を行うと、自分の価値や能力を過小評価し、自信喪失につながります。これは、対人恐怖症をさらに悪化させ、他人との関わりにおいて不安やストレスを増幅させる原因となります。自己否定的な考え方は、対人恐怖症を克服する上で障害となるため、自分の長所や達成を認め、ポジティブな自己評価を心がけることが重要です。

自意識過剰

対人恐怖症の人が自意識過剰になると、他人の視線や意見に対して過剰に敏感になり、自分の振る舞いや発言に対する不安が増大します。自意識過剰に陥ることで、他人とのコミュニケーションがさらに困難になり、緊張感や不安が悪化する可能性があります。

過度の引きこもり

対人恐怖症の人が過度の引きこもりを行うと、対人スキルの低下や孤立感の増大が起こり、恐怖症の悪化につながります。対人場面における不安を避けるために家に閉じこもることは、短期的な安心感は得られるかもしれませんが、長期的には対人恐怖症の症状を改善する機会を失い、自己効力感の低下や対人関係の悪化を招くことがあります。過度な引きこもりを避け、適度な対人コミュニケーションを維持することが、対人恐怖症の克服に繋がります。

対人恐怖症の身体症状

対人恐怖症の人々は、対人場面において恐怖感を抱くことで、身体症状が現れることがあります。これには、体が凍りつく感覚や脱力感、筋肉の硬直、顔の赤み、手足の震え、身体の揺れ、過度の発汗、喉の渇き、体温の上昇、動悸、言葉に詰まる現象や思考がまとまらない状態などが含まれます。

対人恐怖症の人々は、これらの症状によって、さらに自分に対する恐怖や自意識過剰を感じることがあります。その結果、彼らは自分の感情や反応を抑えることが難しくなり、対人関係やコミュニケーションがさらに困難になることがあります。このような身体的な症状は、対人恐怖症の人々の日常生活や人間関係に悪影響を与え、彼らが社会生活を充実させることを妨げる可能性があります。

対人恐怖症の治し方

対人恐怖において、体が凍りついたり、脱力感や赤面、震え、揺れ、発汗、熱、動悸といった反応が起こることがあります。これらの反応と恐怖を分離していくことが重要です。まず、自分の体に存在する安全な感覚に気づき、その感覚を大切に育てていくことが求められます。

体の安全基地が確立された後、対人恐怖の状況を想像してみましょう。この過程で、恐怖感による体の反応に圧倒されず、安全な身体感覚との間を行き来しながら、恐怖と体の反応を分離することを目指します。

具体的には、ソマティックエクスペリエンスやマインドフルネス、深呼吸、瞑想、イメージ、リラクセーション技法を活用して、心身をリラックスさせることが役立ちます。さらに、自分の感情や身体感覚を認識し、自分自身を受け入れることで、自分の体の安全な感覚を養うことができます。

このプロセスを繰り返すことで、対人恐怖の状況下でも、安全な身体感覚を保ちつつ、恐怖と体の反応を分離するスキルを習得できるでしょう。最終的には、怖れていた対象との和解を経験することで、人間関係への恐怖と上手く付き合う能力が育まれます。この成長を通じて、自信を身につけ、人間関係に対して積極的に、そして自信を持って取り組むことが可能となります。

恐怖と戦うためのざまざまな方法

対人恐怖が強い人が心理的安全を構築し、恐怖と戦う方法は以下の通りです。

  1. 自己受容: 自分の恐怖や不安を受け入れ、自分を否定せずに優しく向き合ってください。対人恐怖を持っていることを認めることが第一歩です。
  2. 小さな一歩を踏み出す: 急に大勢の人と関わることは難しいかもしれませんが、まずは身近な人や少人数のグループとコミュニケーションを取ることから始めましょう。
  3. 呼吸法やリラクセーション技法を学ぶ: 深呼吸や瞑想、漸進的筋弛緩法など、リラクセーション技法を習得することで、緊張を和らげることができます。
  4. 自己効力感を高める: 自分に自信を持ち、自分ができることを意識することで、対人恐怖を克服する勇気が湧いてきます。成功体験を積み重ねることが大切です。
  5. エクスポージャー療法: 恐怖の対象である人間関係に徐々に慣れていくことで、恐怖感を軽減することができます。段階的に、恐怖を感じる状況に慣れることが大切です。
  6. サポートを求める: 信頼できる友人や家族、カウンセラーや専門家に相談し、恐怖感を共有しましょう。サポートを受けることで、恐怖と向き合う力がつきます。
  7. 認知行動療法を試す: 認知行動療法は、恐怖や不安の根本原因である思考パターンを変えることで、対人恐怖を克服する効果的な方法です。専門家と一緒に取り組むことが望ましいです。
  8. 継続的な自己改善: 対人恐怖を克服するためには、継続的な努力が必要です。自分のペースで進めながら、コツコツと自己改善に取り組みましょう。
  9. 成長の機会と捉える: 対人恐怖を克服する過程は、自己理解を深め、人間関係のスキルを向上させる貴重な機会です。恐怖と向き合うことで、自分が成長できると捉えましょう。
  10. 趣味や関心を共有するグループに参加: 共通の趣味や関心を持つ人とのコミュニケーションは、自然と心が開くことが多いです。趣味や関心を共有するグループに参加して、対人恐怖を克服するきっかけをつかみましょう。

最後に、対人恐怖が強い人が心理的安全を構築し、その恐怖と戦う方法は、一度にすべてを実践する必要はありません。自分にとって最も適切で効果的な方法を見つけて、継続的に取り組むことが大切です。自分を信じ、努力を続けることで、対人恐怖を克服し、心理的安全を築くことができるでしょう。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-04-13
論考 井上陽平

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