ストーカーまがいの行動の心理|異常な執着・妄想・思考パターンと「安全の獲得」

  • ストーカー的な執着が「妄想」として固定化する仕組み
  • エロトマニア(妄想性障害)の特徴と誤解のパターン
  • 妄想が強まるプロセス(トラウマ・過剰警戒・視野狭窄・誤読)
  • ストーカーの防衛機制(投影同一化)と“確信が崩れない理由”
  • 被害者側が巻き込まれないための安全戦略(距離・第三者・法的措置)
  • 加害者治療のポイント(CBT/ボディセラピー/反復的な現実検討)

Table of Contents

ストーカーまがいの行動とは何か:異常な執着は「恋」ではなく“確信”の病理

激しい妄想を持つストーカーは、反対の証拠にもかかわらず、誰かに対する彼らのロマンチックな感情が往復するという強い信念を持っていることがよくあります。
これは、職場、学校、コミュニティ、または毎日の通勤中など、さまざまな状況で発生する可能性があります。

ここで問題になるのは、「好意が強い」ことそのものではありません。
相手の意思や現実よりも、内側の確信(妄想)が優先されること、そしてその確信を守るために行動が組み替えられていくことです。

この記事では、ストーカーになりやすい人の特性、心理、および思考パターンを、臨床的に整理していきます。


エロトマニア(妄想性障害):クレランボー症候群とは

「愛されていないのに、愛されていると確信する」

エロトマニアは、ストーカー加害者によって広く認識されている病的状態であり、別名クレランボー症候群とも呼ばれます。
これは妄想性障害の一種であり、恋愛対象から愛されていないにも関わらず、「相手が自分に恋愛感情を抱いている」と妄想する症状をもたらします。

ストーカーは、この信念を支える証拠がなくとも、彼らの愛する人が彼らに真剣なロマンチックな感情を抱いていると信じ続けます。
つまり、現実のやりとりではなく、確信が先に立ち、出来事があとから“証拠化”されるのです。

表情・動作・身振りの誤読が、確信を強める

人々がエロトマニアにとりつかれると、彼らは対象者の表情、動作、身振りを誤解し、「自分が愛されている」「恋愛感情を対象者からもらっている」と信じます。
しかし、これらは基本的に根拠がない妄想や虚構であり、現実には存在しません。

それでも確信が崩れない点が、この問題の中核です。
“誤解”というより、誤解を修正できない構造が残っていると考えた方が、実態に近い場合があります。

形而上的な一体感を追い続ける(ドリーン・オライオンの指摘)

その確信は崩れず、アメリカ人精神医学者ドリーン・オライオンによると、エロトマニアに悩まされた者が求め続けるものは、理想化し心から愛する相手との形而上的な一体感であると述べられています。
この一体感は肉体的ではなくロマンチックな関係であり、彼らの想像力に支配されています。

ここでは、相手が実在の他者であることよりも、相手が“自分の内側の救済装置”として働くことが優先されます。
だからこそ、現実が否定しても、妄想は自己保存的に維持されてしまいます。


妄想が強まるプロセス:トラウマ・過剰警戒・視野狭窄から「確信」へ

トラウマや発達特性が背景にあることがある

妄想を育むプロセスは複雑になる可能性があり、特徴としてトラウマや発達障害などの精神症状を示すことがあります。
発達早期にトラウマを経験し、凍りつきから虚脱の間を行き来しているような感じで、神経系の独特の発達と一般的な人とは異なる感性を持っている可能性があります。

→「トラウマの凍りつき(フリーズ)とは」
https://trauma-free.com/trauma/freeze/
→「虚脱・シャットダウン(背側迷走神経優位)の理解」
https://trauma-free.com/collapse/

過剰な警戒心と不信感が、妄想の土台になる

人々が妄想を抱くことは複雑な過程ですが、過剰な警戒心や不安な気持ちから生じます。
人の目が怖くて不信感が高まり、身体内部は危険や崩壊に対する不安から凍りつきます。これにより脳に危険信号が送られ、妄想を抱くことになります。

ここで重要なのは、妄想が「快楽」だけで形成されるのではなく、恐怖と不安の処理として生じる側面があることです。
安心を作れない神経系が、確信という形で“落ち着きどころ”を作ってしまうことがあります。

世界の見え方が歪む:薄暗さ・ぼやけ・視野の狭さ

彼らの見ている世界はどんよりして薄暗くぼやけて見えて、視野が狭くなっています。
目の見え方がおかしく感覚が狂っており、周囲の状況を正確に見ることができず、自分の進むべき方向性が分からない状態です。

このような人々は人目を避けるような生活をしており、自分に光を当ててくれる人に対して好意を抱きます。
しかし自分の感情を正確に認識することができず、相手の気持ちも誤って解釈します。

→「失感情症・解離と感情認識のズレ」
https://trauma-free.com/paralysis/


ストーカーが始まるきっかけ:接点が薄いほど“妄想が育つ”

ストーキングの対象となる人は、自分の好奇心を刺激するような存在であり、相手が自分に近づいてくることや笑顔を見せることに優しさを感じて、日常生活の中で強く相手を意識するようになります。

しかし、特に親密な会話もなく、学校や職場、または電車の中ですれ違うだけであっても、相手に関して妄想が引き起こされ、そのうちに大きくなってしまいます。
妄想にとらわれ、妄想の中で生きていくようになり、相手の行動や振る舞いなどを繰り返し確認するようになります。

ここでは、現実の関係性が育っていないからこそ、空白が“解釈”で埋まります。
関係が深まるのではなく、解釈が自己増殖する方向に進む点が、危険信号になります。


ストーカーの防衛機制:投影同一化が「相手の気持ち」を作り上げる

ストーカーは、相手に対する愛情を抱く以上に、「相手が自分に対して愛情を抱いている」かのように考えます。
これは精神分析において「投影同一化」と呼ばれる原始的な防衛機構が作用している結果です。

ストーカーは自分が承認したくない感情や欲求を、相手が持っていると信じます。
彼らは「自分が好きである」よりも、「相手が自分に好意を抱いている」と信じ、その期待に応えるために努力します。

これに伴い、相手のことを考慮せずに積極的に近づき、唐突に話しかけます。
ここで起きているのは、他者理解の不足だけではなく、**自分の内側の不安定さを、相手の心に“移して固定する”**ような動きです。


被害者側に起こりやすいこと:視界に現れる、目が合う、巻き込まれ感が出る

ストーカーから狙われた人

人がストーカーから狙われた場合、ストーカーが頻繁に視界に現れるようになります。
これに伴い、目が合う機会が増えます。

目が合ったとき、自分の意図しないところからストーカーに向かって視線が向かってしまうこともあります。
そして、意図せずにストーカーを見てしまうようになる場合もあります。

ここは被害者が自責しやすいポイントです。
しかし「見てしまった」は、恐怖場面で起こる注意の固定や、危険確認の反射として生じることがあります。


特別な存在になっていく:日々の接触が“意味づけ”を強化する

ストーカーと狙われた人の交流は、日々顔を合わせたり、視線を合わせたり、近づいたりすることが多くなっていきます。
ストーカーは相手が自分を見ていると感じると、相手に対して強い望みを抱くように見えます。

視線が合ったり、笑顔を浮かべたり、近づいていたりすると、相手が自分に向き合ってほしいと願っているように見えます。
一方で、目が合わなかったり、接点がなかったり、遠ざかっていくと、ストーカーは失望し、憂鬱になります。

こうして、狙われた人はストーカーが自分に恋愛感情を持っていると信じ込み、特別な存在となって一方的な愛を持っていきます。
この段階に入ると、現実の反応は「材料」になり、確信は強化されやすくなります。


愛の世界が確固たるものに:偶然が“必然”へ置き換わる

ストーカーは、一方的な愛の世界を作り上げ、怖いことに完成した妄想は確固たるものになっていきます。
職場や学校、通勤ルートなどで、相手の発する声のトーンや行動、笑顔などを「自分といて満足している」と解釈することがあります。

たとえば、相手と偶然出会っても目的を持って出会ったと考えます。
また、相手が自分の目の前に現れたり同じ行動を取ったりすると、「自分を追いかけている」と感じ、愛情を抱くことがあります。

精神的に二人は繋がっていて、お互いを思い合っていると感じます。
ここでは、相手の意思確認よりも、内側の一体感が優先されます。


相手の反応で一喜一憂する:不安が“物語”を追加させる

ストーカーは相手に近づいて、二人の関係は何もないのに、一方的に連絡先を教えたり、話しかけたりするものの、相手が冷たい態度をとったり返事がないなど、話しかけてみた結果が不安になることもあります。

このような場合、再び声をかけるか、かけないかで迷い、相手の表情や行動、振る舞いに敏感に反応します。
そして「お互い好意があるのにうまくいかないのは相手の心に問題がある」と考え、事実でないことも想像して断片的に繋げていきます。

ストーカーは、傷ついた相手を守る自分がヒーローのようなイメージを持ち、そのようなことが起こっているかのように想像します。
日常生活の大部分が、相手との関係妄想に費やされます。


相手が拒絶しても:拒否が“好意の証拠”に変換される

ストーカーは、純粋な気持ちを伝えることで物事はうまくいくと信じており、相手の気持ちを考慮せずにターゲットを追いかけます。
ところが期待していたような結果は得られず、待ち伏せや付きまといが続きます。

相手が「もういいですよ」と断わっても、または態度で不快を示しても、ストーカーは「本当は気があるのに、そういう素振りを見せない」と捉えます。
そして、ストーカーは相手が生きづらさを抱えている人だと感じ、守ってあげなければならないと思い、以前と同様に親しくすることを心がけます。

相手が「もうやめてほしい」とはっきり拒否する場合でも、「遠慮しないで大丈夫です」と答えます。
ストーカーは相手の言動すべてを、傷ついた人が愛情を表現するものと間違って捉えます。


ストーカーの考え方:試し行動・妨害者仮説・好き避け解釈

ストーカーは、相手が自分から遠ざかろうとすると、「僕を不安にささせて毛嫌いする行動を取って自分を試している」と捉えます。
また、相手が避けようとする行動については、第三者が妨害しているように受け止めます。

相手が冷淡な態度を取った場合には、「相手が自分を嫌がらせをすることで好き避けをしている」と考えます。
ストーカーは相手を見捨てたくないと思い、自分がどのようにして相手を助けることができるかを悩み、極端な行動をとってしまうこともあります。

一方で、愛情の見返りを求めているにも関わらず拒絶されたときには強烈な苦痛を感じ、過度の興奮から激しい反応を示すこともあります。


狂暴化するストーカーの場合:社会性の未熟さと衝動の暴走

ストーカーは相手に対して情熱的に愛情を求めています。
自分が尽力したにも関わらず、相手からの見返りが得られないと、強い憤りを感じます。

このような反応は、彼らが社会性が育っておらず、自分の行動をコントロールすることができないために起こります。
彼らは相手の批判や拒絶に憤怒し、自身の感情のままに他人を巻き込んでしまい、最終的には自滅に向かって行動する可能性があります。


ストーカーは「ストーカーしている意識がない」ことがある

ストーカーと呼ばれる人たちは、自分がストーカーをしている意識がなく、相手の気持ちに応えようとして親切心で接しています。
しかし、ターゲットや第三者から見れば、その行動は執拗な付きまといに見えます。

第三者が指摘すると、「善意でやっているのに何がいけないのか」と怒ったりします。
ストーカーする人は酷く勘違いをしている人なので、他人から冷たく扱われ、孤独になってしまいます。


妄想が強い人の心理的特徴

以下は「傾向」であり、当てはまるからといって加害を意味しません。
ただし、妄想の固定化や対人トラブルのリスクを評価するうえで重要な観点です。

  1. 共同身体性に乏しい
  2. 人生に思い悩み、思考する人
  3. 自分に都合のいい解釈をする
  4. 相手の気持ちを考えられない
  5. 人間関係があまり得意ではない
  6. 周りの様子を伺い、人の視線が怖い
  7. 人から拒絶されたり、非難されることが怖い
  8. 相手の表情を見抜けずに、話をまったく聞かない
  9. 非常に敏感な体質で傷つきやすい
  10. 凍りつきや虚脱のトラウマを持つ
  11. 自分を否定されると、感情調整がうまくいかない
  12. 緊張が強い
  13. 論理が破綻している
  14. 独特な妄想に耽る
  15. 警戒心や猜疑心が強い
  16. 目線がキョロキョロする
  17. 失感情症や無表情
  18. 人目を避けるように生きて、孤独な人

最優先は「安全の獲得」— 被害者側の安全設計

ストーカー事案で最初にやるべきことは、「相手を理解して落ち着かせる」ことではありません。
あなた自身の安全を獲得し、危険を下げる設計を先に作ることです。

安全の獲得には3層があります。
(1) 行動の安全(接触機会を減らす)、(2) 環境の安全(第三者・組織・導線)、(3) 心理の安全(恐怖反応を巻き込ませない)です。

ここで重要なのは、ストーカー側の妄想は「説明」では止まりにくいという現実です。
合理的に話して分かる相手なら、すでに止まっています。止まらないからこそ、構造で安全を作る必要があります。


ストーカー行為への対処法

1. 接触を避け、冷静な対応を心がける

ストーカーからの接触を受けた場合、直接対決せずに距離を保つことが最優先です。
被害者は感情的に反応せず、冷静に対処することが重要です。

また、周囲のサポートを受けるために警察や専門機関に相談し、身の安全を確保することも重要です。
「相談するほどではない」と思う段階ほど、第三者を入れることが後の被害拡大を止めます。

2. 一人で行動しない

ストーカー行為は、被害者が一人で行動する際にエスカレートすることが多いです。
可能な限り誰かと一緒に行動し、ストーカーが近づきにくい環境を整えましょう。

職場や学校などでは、上司や管理者に状況を報告し、周囲からのサポートを得ることが大切です。
「個人間トラブル」に落とし込まず、組織対応として扱ってもらうことが、安全の獲得に直結します。

3. 法的措置の検討

ストーカー行為が続く場合は、接近禁止命令や保護命令を申請することも考慮するべきです。
法律の力を借りて安全を確保し、執拗な接触を防ぐ手段として法的対応を検討することが重要です。


ストーカー加害者の治療

加害者は自分の行動に問題があることを認識していないことが多いため、治療には専門的アプローチが必要です。
ポイントは「説得」ではなく、妄想と現実の境界を回復させるための訓練を、反復して行うことです。

1. カウンセリングと精神療法(CBT)

セラピストは、加害者の歪んだ認知や感情を受容しつつ、現実との区別をつける手助けをします。
特に認知行動療法(CBT)を通じて、妄想や誤解を修正し、より現実的な認識を形成するサポートが行われます。

ここでは「相手はこう思っているはずだ」という推測を、事実検討に戻していく反復が中核になります。
妄想の確信が強いほど、短期での変化を目標にせず、逸脱を繰り返し修正する設計が必要です。

2. ボディセラピーによる治療(凍りつき・虚脱への介入)

ストーカー加害者の中には、トラウマの凍りつき、虚脱反応が原因となっている場合が多いです。
そのため、トラウマを解消するためのボディセラピーや感情調整療法が有効です。

これにより、加害者は自分の内面に存在する未解決の感情や恐怖と向き合い、他者への執着を減らすことができます。
妄想の“燃料”が恐怖と緊張である場合、身体から下ろす介入は、机上の説得より実効性を持つことがあります。

3. 反復的な現実検討(事実と妄想の区別を訓練する)

ストーカー行為に至るまでの過程では、加害者は相手の行動を自分に有利に解釈しがちです。
セラピーを通じて現実検討を促し、実際の事実と妄想を区別する訓練を行います。

繰り返し現実と向き合うことで妄想的思考を減らし、健全な対人関係の構築を目指します。
ここは「一度理解したら終わり」ではなく、生活場面での再発を前提に、再訓練する領域です。


まとめ:ストーカー行為は妄想とトラウマ反応が絡む深刻な問題。鍵は安全と現実検討

ストーカー行為は、妄想性障害や未解決のトラウマに根ざした深刻な問題であり、加害者と被害者の双方に多大な影響を及ぼします。
被害者は感情的に巻き込まれず、冷静な対処とサポートを得ることが重要です。

また、加害者の治療には、トラウマ治療や感情調整を含む多角的なアプローチが求められます。
現実検討の能力を養うことで、ストーカー行為の改善が期待できます。

そして実務上の最優先は、常に「安全の獲得」です。
理解は重要ですが、安全が確保されていない理解は、結果として巻き込まれを強めることがあります。

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【執筆者 / 監修者】

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)

【保有資格】

  • 公認心理師(国家資格)
  • 臨床心理学修士(甲子園大学大学院)

【臨床経験】

  • カウンセリング歴:10年/臨床経験:10年
  • 児童養護施設でのボランティア
  • 情緒障害児短期治療施設での生活支援
  • 精神科クリニック・医療機関での心理検査および治療介入
  • 複雑性トラウマ、解離、PTSD、愛着障害、発達障害との併存症の臨床
  • 家族システム・対人関係・境界線の問題の心理支援
  • 身体症状(フリーズ・過覚醒・離人感・身体化)の心理介入

【専門領域】

  • 複雑性トラウマのメカニズム
  • 解離と自律神経・身体反応
  • 愛着スタイルと対人パターン
  • 慢性ストレスによる脳・心身反応
  • トラウマ後のセルフケアと回復過程
  • 境界線と心理的支配の構造
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