自己愛性人格障害の口癖と態度:特権意識と支配欲を示すサイン

自己愛性人格障害(自己愛性パーソナリティ障害)は、人々の内面や外面の行動が、一般的な社会や文化の標準から大幅に外れている状態を指します。この障害に苦しんでいる人々は、継続的に同じような行動や体験を繰り返し、どんな状況にあっても変わらず、自分自身や周りの人に苦痛を与えることがあります。彼らは、自分を高く評価し、自己陶酔感に浸ることで、自分が優れた存在だと信じることができますが、根深い不安や緊張を隠しています。

ここで重要なのは、「口癖」や「態度」は、ただの言葉遣いの癖ではないという点です。自己愛性パーソナリティ障害の口癖は、しばしば特権意識・支配欲・優位性の確保のために働きます。そしてその裏側には、本人が直視しがたい脆さ、恥、自己否定、見捨てられ不安が沈んでいることが少なくありません。外から見える“誇大さ”は、内側で崩れそうな自己を支えるための、硬い外殻になっているのです。
(関連理解:自己愛の問題を体系的に整理した記事 → https://trauma-free.com/complaint/narcissism/


自己愛性パーソナリティ障害の口癖

自己愛性パーソナリティ障害の人の態度やセリフは、自分自身を過剰に肯定し、他人を軽視するような態度をとることがあるため、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。彼らは、他人との関係を重視することよりも、自分自身の欲求や目的を優先する傾向があるため、他人を軽視することで自分自身を守ろうとすることがあります。

ここから先に挙げる口癖は、単に「嫌な言い方」の例ではありません。相手の心を“自分の土俵に引きずり込む”ための言語装置として機能しやすいものです。相手が反論しにくい形で、優位性・正当性・支配権を確保していく。だからこそ、受け取る側は「話が通じない」「説明しているのに疲れ切る」「いつの間にか罪悪感を背負わされる」といった消耗を経験しやすくなります。


天上天下唯我独尊

自己愛性パーソナリティ障害を抱える人は、自分の身体や感情が劣化しているため、その補償として、彼らは自分は生まれながらにして宇宙の中で私より尊い者はいないという考えを持ち、その思いに固執することがあります。彼らは自分自身を特別な存在であると信じ、他人に比べて優れているという自負心を持つ傾向があります。

このような自己愛性パーソナリティ障害の特徴から、彼らは自分自身の評価を現実よりも高くし、自分の欠点や弱点を認めることが難しくなります。このため、自己改善が困難であることがしばしば見られます。また、自己保身を図るために自分自身の過大評価に縋り、自分の評価を維持することに強く執着します。その過程で、他人を攻撃することで自分の評価を守ろうとする行動が見られることがあります。

このタイプの言葉は、本人の中では「真理の宣言」になっていることがあります。つまり“議論”ではなく“裁定”です。相手の現実感を奪い、本人の世界観に従わせる。ここに支配の芯が入ります。
(関連理解:境界性パーソナリティ障害の「口癖」記事 →https://trauma-free.com/favorite-phrase/


誇大な自己像

「私はすべてを知っていて、賢く、有能である」という表現は、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々が自分を評価する際に頻繁に用いられる言葉です。彼らは、自分を非常に優れた存在だと信じ、自らの能力や知識に対して絶大な自信を抱いています。しかし、彼らが自己保身のために自分自身を過大評価することで、実際には自分の能力や知識に限界があることを認められなくなります。

このような思考パターンは、他人との関係に悪影響を及ぼすことがあります。自己愛性パーソナリティ障害の人は、しばしば自分を中心に据え、他人を軽視する傾向があるため、周囲からの反感を招くことがあります。

誇大な自己像は、本人の内側にある「限界の感覚(=恥や無価値感)」に触れないための壁にもなります。だから、少しの指摘でも「人格攻撃」として受け取られ、攻撃か切り捨てに転じやすい。ここが対人関係の破綻点になりやすいのです。


自分は特別である

「私は世界の本質を明確に理解していて、他人は愚かである」という表現は、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が自己評価する際に使われる言葉の一つです。彼らは、自らの理解力や洞察力に自信を持ち、他人よりも優れた存在であると確信しています。しかし、その一方で、他人を見下すような態度を取ることがしばしばあり、他人の能力や知識に対しても十分な価値を認めないことがあるのです。自己愛性パーソナリティ障害の人は、他人からの批判や指摘を受け入れることが難しいため、自分自身の変化や成長が妨げられることがあります。

この言葉が厄介なのは、“特別である”ことが、本人にとっては呼吸のように必要になっている場合があることです。特別でいられない瞬間=崩壊の危機。だから相手を下げてでも、特別さを維持する方向に言語が動きます。


人より優れていると信じている

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、しばしば自分自身を他人よりも上位に位置づけ、見下すような言葉を用いることがあります。例えば、「私より下の人間が何を言っても無意味だ」や「私よりも劣っている人間にはついていけない」といった発言がその典型です。彼らは、自分自身が優れた存在であると信じ、他人を軽視する傾向があります。加えて、「私は特別だから」「私は優れている」といった自己評価の高い言葉を用いることもあります。彼らは、自分自身を最も優れた存在だと考え、他人よりも優れていると確信しています。

受け手はここで、じわじわと“対等な会話権”を奪われます。会話は対等な往復ではなく、上下の宣言になる。すると関係は、親密さではなく「従属」へ傾きやすくなります。
(支配—従属が固定化していく関係の歪み → https://trauma-free.com/trauma/relationship/


過剰な賛美を求める

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、「私は誰にでも好かれる人間だ」という考えを持ち、自分自身が魅力的であると信じる傾向があります。彼らは、自分自身を中心に据え、他人から好かれる存在であると確信しています。

また、自己愛性パーソナリティ障害の人は、他人からの評価に非常に敏感であり、他人からの承認を得ることで自己肯定感を高めようと努力します。このため、彼らは自分に対する評価を過大に捉え、他人に対しても自分を優位に立たせる態度を示すことがあります。

「好かれる自分」への執着は、実は“見捨てられ”や“無価値感”の穴に触れないための儀式にもなります。賛美が途切れた瞬間に、怒り・軽蔑・冷却が起きやすいのは、この穴が覗くからです。


特権意識

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、「私には特別な人脈がある」という考えを持ち、自分自身が社交的であると信じることが多いです。彼らは、社交的な交友関係を築くことに非常に熱心であり、そのことによって自己肯定感を高めようと努力します。

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分自身を優れた存在であると考えており、そのため、多くの人々と交流することで自己肯定感を高めることができると感じています。彼らは、他人からの承認や評価を重要視する傾向があるため、社交的な交友関係を通じて、自分自身の評価を高めようとします。このような態度は、一見すると社交的であると捉えられるかもしれませんが、自己愛性パーソナリティ障害の根本的な問題は、自己評価の過大さや他人への依存があるため、適切な対処や支援が重要となります

特権意識は「私は例外である」という暗黙の宣言を含みます。ルール、配慮、相互性を“自分には適用しない”。それが関係を壊す速度を上げます。


自分を中心に据えた表現

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、「私がこのプロジェクトを率いるべきだ」といった、自分自身を中心に据えた表現が多く見られます。彼らは、自分自身を優れた存在であると考えており、そのため、自分自身がリーダーシップを取るべきだと信じています。

また、彼らは「私がいなければ、このチームは機能しない」といった発言も行うことがあります。これは、彼らが自分自身を中心に据える傾向があるためであり、自己保身のために用いることがあります。彼らのこのような態度は、チーム内での調和や協力を損なうことがあるため、注意が必要です。

このタイプの言葉は、相手の貢献や主体性を削り、関係を「私が上、あなたは補助」という形に固定しやすくなります。最初は強く見えても、周囲の士気は静かに枯れていきます。


自分の魅力をアピールする表現

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、「私は誰にでも好かれる」といった、自分自身を魅力的な存在としてアピールする表現が多く見られます。彼らは、自分自身を中心に据え、自分自身が他人から好かれる存在であると考えています。これは、彼らの自己肯定感を高めるための手段であることが多いです。

また、「私には特別な才能がある」といった表現も、彼らが自分自身を優れた存在であると考える傾向があるため、自己保身のために用いることがあります。彼らは、自分の才能や能力を強調することで、他人からの評価を高めようとします。しかしこのような態度は、他人との関係を損なうことがあるため、注意が必要です。

魅力の誇示が“関係の糧”ではなく“支配の燃料”になってしまうと、相手は「選ばれたはずなのに、なぜこんなに苦しいのか」という混乱へ引き込まれます。


自分が正しい/傲慢な表現

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、自分自身の意見や判断力に深い自信を抱いており、「私の意見が正しい」と強く主張することが多いです。彼らは自分自身の思考や判断を重視し、それを大切にする傾向があるため、他人の意見や考え方を十分に受け入れることが難しくなることがあります。このような態度は、彼らが他人との対話や協力を築く上で障壁となることがあるのです。

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、「私は完璧である」「私が何を言おうと、間違っていることはない」といった、自分自身を絶対的に正しいと見なす傾向があります。彼らは自分自身を優れた存在であると確信し、この信念のもとに、自分自身が無敵であり、決して間違いを犯さないという考え方に固執することがあります。

このような思考パターンは、自己愛性パーソナリティ障害の人々が他人とのコミュニケーションや協働において問題を引き起こす原因となります。彼らの絶対的な自信は、他人の意見や感情に対する共感や理解を欠いた態度を生み出し、他者との関係性が悪化することがあります。この結果、彼らは自己中心的で批判的な行動を取ることが多く、周囲からの反感を招くことがあるのです。

「正しさ」の形をした支配は、相手の感情・体験・事情を“無効化”します。議論に見えて、実際には相手の現実を奪う行為になり得る。ここが長期的な関係破綻の核になりやすいところです。


ナルシシストが恋愛関係で言いそうな言葉

自己愛性パーソナリティ障害の人は、最初は謙虚で誠実な印象を与え、恋人に尽くし、相手の幻想を最大限に肯定し、不平不満の聞き役になることがあります。しかし、時間が経つにつれ、表と裏の顔を使い分け、矛盾した言動を取るようになります。また、相手が自分の思う通りにならないと、冷酷な態度を取ったり、恋人を支配下に置き、アクセサリーのように扱ったりすることがあります。

この流れはしばしば、理想化(持ち上げ)→混乱(矛盾)→支配(圧力)→価値下げ→切り捨てへと進みます。相手は最初の甘い肯定を“真実”として握りしめるほど、後半の冷酷さから逃げにくくなります。


相手を理想化する(最初の肯定)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が、最初のうちは恋人に対して謙虚で誠実であるかのように示し、幻想を最大限に肯定する言葉は以下のようなものがあります。

「君がいなければ、僕は何もできないよ。」
「君の存在が、僕を豊かにしてくれるんだ。」
「君のおかげで、世界が輝いて見えるよ。」
「君がいると、自分自身を忘れてしまうんだ。」
「君と一緒にいると、どんなことでも乗り越えられる気がする。」
「君のことを思うと、とても幸せな気持ちになるよ。」
「君のことを愛しているから、いつも君に幸せになって欲しいんだ。」
「君は素晴らしい人だよ。僕は君に出会えて、本当に幸運だったんだ。」

しかし、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、相手をコントロールすることを目的に、幻想的な言葉を使うことがあるため、注意が必要です。また、自分自身を高く評価し、他人を見下す傾向があるため、相手を批判したり、攻撃することがあることも覚えておきましょう。


矛盾した言動をとり操作する(相手を混乱させる)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が、恋人を夢中にしたあとは、表と裏の顔を使い分けるような言動を言うようになります。矛盾した言葉は以下のようなものがあります。

「君が欲しいんだ。でも、他にも気になる人がいるんだ。」
「君が大切な人だけど、僕は自分のことも大切にしたいんだ。」
「君には自由にやってほしいけど、僕が嫉妬するのは当たり前だろ?」
「君を信じてるけど、でも、どうしても疑ってしまうんだ。」
「君を幸せにするために、僕がいるんだ。でも、君が僕にもっと尽くしてほしいと思う時もある。」
「君と一緒にいると、本当に幸せだけど、時々、一人になりたいと思うんだ。」
「君のことが好きだけど、もっと自分にもっと興味を持ってほしいんだ。」

これらの言葉には、表面的には恋人を大切に思っているように見えますが、実際には自分自身を優先する傾向があります。自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、自分自身を高く評価し、他人に期待することが多く、相手に対しても矛盾した言動をすることがあるため、注意が必要です。


圧力をかけて支配する(選択肢を奪う)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が、相手が自分の思う通りにいかないと圧力をかけ、相手の選択肢を一方的に奪う言葉としては、以下のようなものがあります。

「君は自分で考えることをやめて、僕に任せるべきだ。」
「君が自分で決めることは、僕が許可するまでやらないこと。」
「君がそう思うなら、それが正しいとは限らない。僕の考えに従うべきだ。」
「君が僕に逆らうと、厳しい制裁を受けることになる。」
「君が僕に従わないなら、関係を終わらせるしかない。」
「君は僕を裏切ることはできない。僕は君の全てを知っているから。」
「君が僕に従えば、君の人生は完璧になる。僕がいなければ、君は何もできないだろう。」

この局面で大事なのは、言葉そのものよりも、言葉が奪っているものが何かです。相手の判断、相手の現実、相手の自由。そして奪ったあとに「君のため」と装うことが多い点が、受け手を縛ります。


相手を価値下げする(自尊心を削る)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が、相手を価値下げするときの言葉としては以下のようなものがあります。

「君は何もできない。もう少し努力しても良いじゃないか。」
「君が本当に愛されていると思っているのは間違っているよ。もっと自分を磨いた方が良い。」
「君のような人には期待できない。もう少し頑張ってみると良いよ。」
「君には才能がない。自分のことを客観的に見た方が良い。」
「君は未熟だから、このままでは成長できない。自分をもっと高めることが必要だ。」
「君には何も感じられない。もっと自分を開放してみると良いよ。」

これらの言葉には、相手をこけ下すことで自分自身を優位に立たせようとする自己愛性パーソナリティ障害の特徴があります。自分の優位性を保ち、相手を卑下することで自分自身をより優れた存在と見せようとします。また、相手を挑発して反応を得ることが目的の場合もあります。


相手を捨てるとき(切り捨て)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が、相手を捨てるときの言葉としては、以下のようなものがあります。

「君にはもう用はない。もう関係は終わりだ。」
「もう君と一緒にいるのは辛い。君と別れた方が良い。」
「君にはもう興味がない。他の人に行ってもらうように。」
「君のことを考えているけど、僕たちの関係はもう終わりだと思う。」
「君が選んだ道なんだから、僕たちの関係はこれで終わりだ。」
「もう君のことを気にしないよ。どうやって生きていくかは、自分で考えてほしい。」

ここで受け手は、最初の「君がいなければ…」と最後の「もう用はない」を同じ人物が言っている現実に直面し、強烈な混乱を抱えます。だからこそ、関係の“事実”を丁寧に見直し、身体感覚と現実感を取り戻していく作業が必要になります。
(回復の道筋を整理するページ → https://trauma-free.com/treatment/recovery/


自慢話・武勇伝・権威づけで「優位性」を固める

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分自身について語ることが多く、自分自身を強くアピールする傾向があります。彼らは自分自身が優れた存在であると見なし、自分自身をアピールすることで他者からの賞賛や承認を求めることがあります。彼らが自慢話をする内容としては、以下のようなものが考えられます。

「私は常に最高のものしか手に入れない。例えば、私の車は最新式で、高級車の中でもトップクラスの性能を持っているんだ。」
「私は優れたリーダーシップスキルを持っていて、仕事ではいつもリーダーとして活躍している。私がいなければ、プロジェクトはうまく進まなかったに違いない。」
「私はいろいろなところを旅して、世界中の最高級ホテルに泊まってきたんだ。その中でも一番印象に残ったのは、あのリゾートホテルだな。もちろん、スイートルームに宿泊したよ。」

また、自分の利益のために他人を踏みにじることを示すセリフとしては、以下のようなものが考えられます。

「あいつらは私にとって邪魔なだけだ。どんな手を使ってでも、私が勝つことが大事なんだ。」
「この案件で利益を得るためには、あいつらの意見なんて聞く必要はない。私の判断で進めていくよ。」
「私のために尽力してくれる人は必要だけど、彼らには利益を分け与える必要はない。私が成功すれば、それでいいんだ。」

自己愛性パーソナリティ障害の人が語る武勇伝は、彼らが自分自身を特別な存在と捉えるため、自分自身の優れた面をアピールする内容が多いです。具体的には、学生時代の優秀さ、仕事の成果、過酷な経験の克服などが語られます。たとえば、
「大学の時、授業で教授から質問されたことがあったんだ。周りの生徒たちは困っていたけど、私はすぐに答えを出せたんだよ。それを見た教授からは称賛されたよ。」
「最近、プロジェクトのリーダーを任されたんだ。チームメンバーからは様々な問題が上がってきたけど、私はすべてを解決したんだ。それが評価されて、上司からはお礼の言葉をもらったよ。」
「ある時、山登り中に大雨に見舞われたんだ。周りの人たちは途中で引き返してしまったけど、私は頑張って山頂に登りついたんだ。その時の気持ちは言葉で表せないほどだったよ。」
といった形です。

さらに、権威とのつながりをアピールする例として、
「昨日は有名な○○さんと会食をしました。彼は私のことを高く評価してくれて、将来的には共同事業をする可能性があると言ってくれました。」
「私はここ最近、○○大学の教授と知り合いになったんですよ。彼は私の才能に注目してくれて、今後は彼の講演会にゲストスピーカーとして招かれる予定なんです。」
「私は政治家とも交流があります。彼らからは、私が将来的には政治の世界で活躍することを期待されているんですよ。」
といった発言が見られることがあります。

これらはすべて、「私は上位にいる」という位置取りを、言葉で固定する営みです。聞かされ続ける側は、知らぬ間に“下位役”を押し当てられ、反論しづらさと疲弊が蓄積します。


自己愛パーソナリティ障害の言動・行動パターン(関係を壊す流れ)

自己愛性パーソナリティ障害の人々は、特有の口癖や態度を通じて、周囲との関わり方において自己中心的な特徴を示すことがあります。自分を中心に据えた話し方や行動、自慢話の多さ、他者への批判性、権威的な態度、感情のコントロールの難しさ、自分の利益の最優先、優位性の確保――これらが絡み合うと、関係は「対話」ではなく「配置」になっていきます。あなたは相手の世界の中で、いつの間にか“役割”として置かれる。置かれた役割から出ようとすると、怒り・軽蔑・切り捨てで罰せられる。だから、相手に合わせ続けてしまう。ここが依存と支配の罠です。


自己愛性パーソナリティ障害との関わり方・接し方

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人との関係において、操作される側の心理も非常に複雑です。最初は相手の魅力や自信に惹かれ、特別な存在として扱われることで幸福感を感じるかもしれません。しかし、時間が経つにつれて、彼らの矛盾した言動や自己中心的な態度に疲弊し、心理的な混乱を抱えることになります。

彼らが相手を称賛するかのように振る舞う一方で、支配的な態度や批判を織り交ぜることで相手の自尊心を揺さぶります。「君がいなければ生きていけない」と言いつつも、他の人との関係や関心をちらつかせるような言動で、相手に不安を抱かせます。これにより、相手は自己愛性パーソナリティ障害の人に対する依存度を深め、ますますその支配下に置かれていくことがあります。

操作される側の人は、徐々に自己評価が低下し、「相手を満足させられない自分が悪いのではないか」と感じるようになることも少なくありません。このような状況に陥ると、相手の支配から抜け出すことが非常に難しくなります。結果的に、相手の要求に応じ続けることで、ますます自分を犠牲にし、精神的な疲労やストレスが蓄積されてしまいます。

だからこそ、「相手を変える」より先に、「自分の境界線を回復する」ことが必要になります。相手の言葉が現実をねじ曲げてくるとき、こちらの現実感を守る技術が要ります。境界線の引き直しは、根性論ではなく、反復的な練習と支援によって育ちます。


人間関係に与える影響(恋愛だけではない)

自己愛性パーソナリティ障害の人が持つ特有の言動パターンは、恋愛関係に限らず、職場や友人関係、家族関係にも深刻な影響を及ぼします。彼らの自己中心的な行動は、一時的には良好に見える関係を作れても、長期的には破綻しやすいという特徴があります。

職場では、表面的には有能に見える一方で、他者の意見を無視したり、他人を軽視する態度が見られ、同僚や部下からの信頼を失い、チームの結束が崩れることがあります。家庭内では、自己愛的な親やパートナーが子どもや配偶者に対して過度な期待を押し付け、相手を傷つけることがあります。こうして「関係の中で安心できない」状態が続くと、受け手は慢性的な緊張、睡眠問題、無力感へと追い込まれます。


自己愛性パーソナリティ障害との付き合い方(守るための現実的な方針)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人との関係は非常に難しいものですが、まず特徴や行動パターンを理解することが重要です。彼らが自己中心的である理由や、感情的なコントロールが難しい背景を知ることで、冷静に対処できるようになります。

次に、自分自身の限界を設定し、相手の要求に過度に応じないようにすることが大切です。自己愛性パーソナリティ障害の人は、他者の境界を侵食しがちですが、しっかりと自分の意志を伝え、断る勇気を持つことで、自分の心を守ることができます。

そして必要に応じて、専門的なサポートを受けることも検討しましょう。言葉の支配を受け続けた人は、自分の感覚そのものが揺らいでいます。精神力動的な理解(なぜその関係に巻き込まれたのか/なぜ抜けられないのか)を扱うことが助けになる場合があります。
(精神分析的アプローチの整理 → https://trauma-free.com/treatment/psychoanalysis/


自己改善の可能性(変わるのは難しいが不可能ではない)

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が変わるのは難しいとされていますが、必ずしも不可能ではありません。彼らが自分自身の問題を認識し、改善したいという意思を持てば、カウンセリングや心理療法を通じて自己理解を深めることができます。

認知行動療法(CBT)や精神力動療法といったアプローチは、自己愛的な思考パターンを見直し、他者との関係を健全に構築するために有効とされています。感情のコントロールや他者との共感能力を養うためのトレーニングを行うことで、少しずつではありますが、ポジティブな変化を遂げることができる場合もあります。


終わりに(相談・支援の導線)

自己愛性パーソナリティ障害は、周囲との関係に大きな影響を与える厄介な症状です。しかし、彼ら自身も孤立感や不安、低い自己肯定感に苦しんでいることが多いため、適切なサポートや治療があれば、健全な関係を築くことも不可能ではありません。大切なのは、自己愛的な行動パターンを理解し、自己を守りながらも、必要に応じて支援の手を差し伸べることです。

当相談室では、自己愛性パーソナリティ障害に関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。

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【執筆者 / 監修者】

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)

【保有資格】

  • 公認心理師(国家資格)
  • 臨床心理学修士(甲子園大学大学院)

【臨床経験】

  • カウンセリング歴:10年/臨床経験:10年
  • 児童養護施設でのボランティア
  • 情緒障害児短期治療施設での生活支援
  • 精神科クリニック・医療機関での心理検査および治療介入
  • 複雑性トラウマ、解離、PTSD、愛着障害、発達障害との併存症の臨床
  • 家族システム・対人関係・境界線の問題の心理支援
  • 身体症状(フリーズ・過覚醒・離人感・身体化)の心理介入

【専門領域】

  • 複雑性トラウマのメカニズム
  • 解離と自律神経・身体反応
  • 愛着スタイルと対人パターン
  • 慢性ストレスによる脳・心身反応
  • トラウマ後のセルフケアと回復過程
  • 境界線と心理的支配の構造

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