パニック発作とは、具体的な危険が存在しない状況下でも、突如として現れる一連の身体的、心理的な反応を指します。その発生は予期せず、その瞬間、自分の体や心が自分のコントロールから逸脱する感覚に苛まれます。その経験は非常に恐ろしく、一部の人々は死が迫っているようにさえ感じることがあります。
パニック発作自体は一生の間に一度か二度起こることがあると言われていますが、これが繰り返し起こる場合、それはパニック障害と呼ばれる症状です。パニック障害を抱える人々は、特定の状況下で何度もパニック発作を体験します。更に、発作が再び起こることへの恐怖から、それを避けるために日常生活を大きく制限することさえあります。それは長期間にわたって続くことが多く、これがその人の生活の質を大きく低下させる可能性があります。
パニック障害の症状のチェック項目
パニック障害のチェック項目は以下のように詳細に分類されています。
- 突然に恐怖や不快感が襲い、それが数分間続くという経験。
- 動悸、つまり、心臓が激しく高鳴る感じがある。
- 手足が震えるほどに汗をかく体験。
- 息切れや息苦しさを感じる状況。
- 胸の痛みや圧迫感が存在する。
- 吐き気や腹痛が頻繁に起こる。
- 血の気が引いたり、眩暈やふらつきを感じる状態。
- 寒気が走り、鳥肌が立つような感覚。
- 手足にしびれやチクチクする感じがある。
- 自分が気が狂ったのではないか、自分でなくなるという恐怖。
- 自分が周囲の環境から切り離されたり、自分の身体から離れているような感覚。
- 死が間近に迫っているという恐怖感。
- 特定の状況や場所に対する深い恐怖を抱く。
- トラウマがある、つまり過去の苦痛を伴う経験。
- 生活全般にわたるストレスと緊張感がある。
- 過度な心配性を持つ。
- 原因不明の身体症状が出現する。
これらの項目を経験した場合、パニック障害を抱えている可能性があります。ただし、これらのチェックリストはあくまで参考であり、自己診断のためのものではないことを念頭に置いてください。症状が見られた場合は、専門家の意見を求めることが重要です。
パニック障害:その背後にある原因
パニック障害は、発達障害や虐待、性的被害など複雑なトラウマを抱える人、日常生活がストレスや緊張でいっぱいの人に多く見られます。これは、これらの状況が神経系の発達に影響を与え、パニック障害を引き起こしやすくするからです。
さらに、子どもの成長と発達に重要な時期、つまり妊娠、出産、そして幼児期にトラウマを経験すると、神経系の発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。これが結果として、パニック障害を引き起こす脆弱性を高める可能性があります。
パニック障害の特徴としては、体が常に緊張状態にあり、首や肩が硬くなり、脳が常に危険信号を受け取っている状態です。これにより、日常生活で常に不安や焦りを感じ、小さなことでも恐怖を感じやすくなります。結果として、筋肉が硬くなり、頭、顔、喉、胸、背中が窮屈に感じられ、ちょっとショックで息苦しさが引き起こされます。
パニック障害になりやすい性格的な特徴としては、元々恐怖心が強く、高い責任感を持つ人や、完璧主義者、細かいことに気をつける几帳面な性格の人が挙げられます。これらの性格特性は、パニック障害の発症を促す可能性があります。
自律神経のバランス:ストレス状況下での心身の過敏反応
パニック障害と自律神経のバランスが崩れている人は、特定の状況で体と心が過敏に反応することがあります。強いストレス、緊張が高まる時、避けられない危険が迫った時など、心身の活動が活発化し、身体がアラート状態になる事象がこれに該当します。
このような時に危険や脅威を感じると、交感神経が過度に活性化します。その結果、心拍数が増加し、呼吸は速く浅くなります。さらに、歯を強く噛み締めたり、顔が熱くなって赤くなったりすることがあります。同時に、思考の速度も速くなり、汗をかくこともあります。これらの反応は、体が過度に反応し、覚醒状態になっていることを示しています。
子供の頃に度々危険に晒されてきた人たちは、交感神経(体を活性化させる「アクセル」のような役割)が活発になると同時に、背側迷走神経(体を落ち着かせる「ブレーキ」のような役割)も強く作動します。パニック発作が起こると、これら二つの神経が共に過敏に反応し、競い合う状態が起こります。この結果、社会的交流を調整する身体の部位、例えば、顔、喉、気管支などが固まる感じがします。これは痛みや息苦しさを伴い、さらに、身体的な混乱や感情の爆発を起こすことがあります。
パニック障害の症状:体と心への影響
パニック障害の症状は多様で、それらは身体と心に大きな影響を及ぼします。主な症状には、心臓が高速に鼓動する感覚や呼吸が難しくなるなどがあります。これに伴い、心臓が止まるかもしれないという怖さを感じることもあります。その他の症状としては、胸の痛み、頭がぼーっとする感じ、顔が熱くなる感覚などがあります。
さらに、汗をかいたり、頭痛がしたり、顔色が青ざめたりすることもあります。また、目まい、お腹の痛み、下痢、吐き気、体が硬直する、寒気を感じる、震えるなどの症状も見られます。声が出なくなったり、耳が遠くなったり、身体が動かなくなったり、力が抜けて倒れそうになるといった症状も現れることがあります。
これらの症状は、制御不能な強い感情や身体反応によって引き起こされます。パニック発作が起きると、胸が圧迫され、息が吸えなくなる感覚を伴います。さらに、頭が真っ白になり、まるで自分が死んでしまうかもしれないという極度の恐怖感が生じることもあります。
パニック障害とその影響:再発の恐怖
一度パニック発作を経験すると、その人は外部環境や自身の体感に対して敏感になります。また、再度発作が起こることを強く恐れ、以前発作を引き起こした状況や出来事を避けようとする傾向があります。例えば、閉鎖的な空間や自分の自由が制限される場所にいるとき、心臓の動悸が始まり、不安感が高まります。過去の外傷体験に伴う身体反応や感情、思考、記憶、行動が再び表面化します。
不安が頂点に達すると、身体が硬直し、顔から首、肩までがガチガチに凍りつくように感じられます。息ができなくなり、冷汗が出る。そして再びパニック発作が襲ってきて、その場に倒れ込んでしまい、動けなくなることもあります。このように、パニック障害は体全体に深刻な影響を及ぼし、日常生活に大きな困難を引き起こします。
パニック障害: 睡眠、強迫観念、広場・対人恐怖
パニック障害を抱える人々は、特定の症状を経験し、これがしばしば睡眠の質を悪化させることがあります。寝つきが悪くなったり、悪夢に悩まされることが頻繁にあると、これにより疲れが溜まり、その結果としてさらに悪夢が増える、という負のスパイラルに陥ることもあります。
彼らはまた、否定的な思考に対して敏感に反応しやすくなり、周囲に対する警戒心が強まります。それは強迫観念や行動に圧倒されることが多くなる一方、日常のストレスや緊張が続けば、自律神経のバランスが乱れます。これにより、大勢の人がいる場所や他人が怖くなり、パニック発作が起きやすくなります。
特に、パニック障害の人々は、疲れているときや気分が低下しているとき、自分が苦手とするものや人に出くわすと、不快感が強くなる傾向があります。その結果、不安や焦りが増え、その場にいられなくなることすらあるのです。
さらに、公共の場所や人間関係のストレスにより、身体的な不調を感じやすくなります。心臓の鼓動が速くなったり、呼吸が苦しくなったり、胸が痛むなど、多様な身体的な不快感を感じます。これにより、身体に対する不安が増し、将来に対する不安が引き起こされます。
このような状況下では、身体は過剰反応し、感情も揺さぶられます。行動を起こすべきという強い衝動と共に、イライラが増します。全身が緊張し、力が入る感じがします。心臓が激しく動いたり、喉や胸が締め付けられるような感じがし、呼吸が不規則になることもあります。これらの症状は、日常生活における不安とともに、パニック障害をさらに深刻化させる可能性があります。
パニック障害の治し方と予防
パニック障害の克服と予防について語るとき、自己認識と生活の改善が重要なテーマとなります。
まず、パニック障害の克服には、自分の身体と心の認識が必要です。自分が何を感じ、どのように反応するかを理解することで、身体の変化や新たな気づきを深めることができます。例えば、パニック発作が起こりそうな状況や感情、身体的な反応について深く理解し、その理解をもとに対策を練ることができます。
次に、恐怖に向かって進む練習が求められます。これは、パニック障害が引き起こす恐怖や不安から逃げるのではなく、それに対峙し、徐々に耐性をつけるという意味です。これは簡単なことではありませんが、長期的には克服への道を開くことにつながります。
さらに、不安が消え始めたら、自分の周囲に注意を広げ、以前楽しんでいた活動を再開することが重要です。これにより、自分の生活が再び正常な軌道に戻ることを実感でき、自信とリラクゼーションを再び取り戻すことが可能になります。
一方、パニック障害の予防については、日常生活のストレスや緊張に着目し、それらを改善していくことが重要です。この過程では、過度な働きすぎ、不規則な生活習慣、不健康な食生活、運動不足など、ストレスや緊張を引き起こす可能性のある生活スタイルを見直し、改善することが求められます。これらを取り組むことで、パニック障害の発症を予防し、健康な生活を維持することが可能となります。
トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-07-28
論考 井上陽平
コメント