トラウマを持つ人々は、その影響で心の平安を失ったり、突然の虚無感を感じたり、心の崩壊を恐れることがあります。このような感情や不安を緩和し、自分自身を守るための逃避手段として、アルコール、薬物、ギャンブル、食事、恋愛、ショッピングなどのさまざまなものに依存することがあります。これは、彼らが心の内での葛藤や痛みから逃れるための方法として取り入れてしまうことが多いのです。
居場所の探求:空虚感と純粋な渇望の間で
子どもの頃から、居場所を求めて彷徨ってきた人は、深い空虚感を内に秘めて生きてきた。その感じ取れる寂しさは、時として何かで埋めようという欲求に変わり、過度な行為や物質へと手を伸ばしてしまう。その行動の背後には、純粋な愛や安定した「場所」への深い渇望が隠れている。しかし、その切実な想いは、多くの場合、他者には伝わりにくく、彼らは孤独を感じ、自分が正しくないのではないかと自問自答の日々を送る。
幼少期のトラウマと大人における依存症の関連性
幼い頃からトラウマを経験した人、特にそのような不安や脅威を何度も繰り返し経験した人は、大人になった時に依存症を発症するリスクが高くなると言われています。これは、そのような痛みや恐怖、不安を緩和するための手段として、アルコール、薬物、食事、恋愛などに依存してしまう可能性が高まるからです。
例えば、幼い頃、親との複雑な関係やその中でのトラウマ体験が原因となり、自律神経が乱れることが起きます。その結果、さまざまな身体的、精神的な症状が現れるようになります。突然の不安感から体が震える、あるいは過度の恐れを感じて心臓が高鳴る。また、体が極度に冷えて一日中動けなくなることもあれば、心が落ち着かずにザワザワと不安定になったり、その他の日常の作業が手につかないほど辛くなることも。これらの症状は日常生活に大きな支障をもたらしています。
その痛みや不安を緩和するための手段として、食べ物、アルコール、薬物、あるいは性に対する過度な依存が見られるようになります。特に過食に関しては、一度食べ始めると止められない状態が続き、自分の行動をコントロールすることが非常に難しくなってしまいます。
トラウマのトリガーと短期の安堵がもたらす依存症
トラウマのトリガーが近くに存在する環境では、人は非常に繊細な状態になりがちです。具体的には、覚醒度や気分が安定しないで急激に変動することが多いです。たとえば、一瞬の出来事や特定の言葉、音、匂いなどがトラウマを引き起こすトリガーとなり、それによって突然、不安や恐怖が高まることがあります。
このような状態が続くと、人は何らかの方法でその不快な感情や緊張を軽減しようとします。その結果、依存症に陥る可能性が高くなるのです。アルコールや薬物、ギャンブル、食事、または他の何らかの行動に対して過度に依存するようになり、その依存行動自体が新たな問題を引き起こすこともあります。
依存症は、その瞬間の痛みを和らげる一時的な解決策に過ぎないため、根本的な問題解決にはなりません。むしろ、依存症が進行すると、トラウマの原因となる状況や感情に対処する能力がさらに低下してしまいます。短期的な安堵感を求める行動が、長期的には自分自身をより脆弱な状態にしてしまうという悪循環に陥りやすいのです
薬物依存の特徴と後遺症
薬物依存の人々は、周囲の世界や周囲の人々との一体感を求めて薬を使用することが多いです。この薬の効果が一時的に体に現れた後、効果が切れると体調が悪化し、心は不安定になります。この状態が非常に不快であり、再び安定した気分になるためには薬が必要だと感じるようになります。その結果、「今すぐ薬を使わなければならない」という恐怖に駆られるようになります。一人で静かにいるのは耐え難く、その不快な感覚から逃れるために薬物への依存が深まってしまいます。やがて、その人は日常的に、またほとんど休みなく薬を使用するようになります。
アルコール依存症の症状や特徴
トラウマを経験した人々は、その痛みや不安を緩和する方法としてアルコールに頼ることが多くなり、これがアルコール依存症のリスクを増大させる要因となります。特に、トラウマを持つ人は、普通の人よりもアルコールを摂取することが多い傾向があり、また、より高い濃度のアルコールを好むことがしばしば観察されます。これは、アルコールがもたらす「科学的解離」という状態を通じて、トラウマから来る心の痛みや苦しみを一時的に和らげる効果があるためです。科学的解離とは、現実からの一時的な切り離しや自我の分離を意味するもので、この状態になることで、トラウマの影響を一時的に忘れることができるのです。
ギャンブルや性依存の原因を幼少期から
トラウマを経験した人は、現実の生活さえ、恐怖がつきまとう感覚があることがあります。その根源は、幼少期に経験した恐ろしい出来事や強烈な憎しみ、そしてそれらの経験から自分を否定し、自らを過度に責め続ける感情にあるかもしれません。これらの心の苦しみから逃れるため、強烈な刺激や一時的な快感を求めて行動することがあります。例えば、ギャンブルに手を出すこと。その危険性や問題点を理解しているにもかかわらず、ギャンブルに深入りしてしまいます。さらに、深い寂しさや空虚感を感じると、その感情を紛らわせるために、特定の関係を築かないまま、多くの人々と性的な関係を持ってしまうこともあります。これは、短期的な慰めや安堵を求める結果として現れる行動です。
共依存者の行動パターン
孤独を感じるとき、その感じ方やその気持ちとどう向き合うかは、人それぞれで大きく異なります。特に、過去のトラウマが原因で心が不安定になっている人や、自分の本当に望むものが何なのか理解できない人は、孤独感を特に強く感じることがあります。このような状態のとき、一人で家にいるのは非常に困難で、その感覚から逃れるために人との交流を求めて常に誰かと接触を持ちたがります。具体的には、すぐに知人に連絡をとったり、特に目的がなくても外を出歩いたり、他の人と会って会話を楽しむことで気を紛らわせようとすることが多いです。この行動の背後には、心の不安や孤独感を少しでも和らげたいという強い願望があります。そして、何か外部のものや活動に頼ることで、自らの精神的な不安定さを落ち着かせようとする試みが見られるのです。
共依存者の恋愛と承認欲求
人間関係や恋愛において、常に不安や生きづらさを感じることがあります。この感覚は、自分の中に深い空虚感や「自分には何もない」という思いが根底にあるかもしれません。その結果、他人の愛情や評価に依存してしまうことが多く、自分の価値を他人の視点でしか確認できないと感じます。だからこそ、誰かに自分の価値を認めてもらいたい、という強い欲求が生まれ、そのために一生懸命努力を重ねることがあります。その努力は、自分自身を他人に認めてもらうためのものとなり、それが自分の存在意義や価値を感じる源となることもあります。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-08-26
論考 井上陽平
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