パニック障害の人に言ってはいけない言葉

心の病気

パニック障害を抱える人に対してどのような言葉を言ってはいけないのかについて載せています。

パニック発作とは何か?

パニック発作は、顕在的/潜在的な脅威や危険を感じる状況に置かれた人が、その場から逃げ出したいのに動けなくなり、自律神経が調整不全に陥ることによって起こります。トラウマの病歴や家族関係のストレスなど、精神的な負担が継続的にかかる状況にいる人に多く見られます。

自律神経は、身体の自然な機能を調整する重要な役割を担っています。しかし、ストレスや不安などの要因によって嫌悪刺激を受けると、交感神経が過剰に活性化し、副交感神経とのバランスが崩れてしまいます。そのため、心拍数が上昇したり、息苦しくなったり、めまいや吐き気がするなどの症状が現れ、パニック発作を引き起こすことがあります。

そのため、パニック発作を抱える人は、過去のトラウマや家族関係のストレスなど、脅かされ続けるような状況によって、自律神経の調整機能が破綻してしまっている可能性があります。

パニック障害の人に言ってはいけない言葉

言葉は、受け手の状況によって、大きな影響力を持つものであり、人によって解釈が異なるため、笑い話にもなれば強力な武器になることがあります。パニック障害の人は、感受性が高く、繊細な神経を持っているため、相手の言動によっては深く傷ついたり、苦しくなったりして、パニック発作やフラッシュバック、驚愕反応、虚脱などを引き起こすことがあります。また、言葉1つで自殺に至ることもあり、言葉が人を殺すことができる危険なものになる可能性があります。

そのため、人の価値観や経験によって、言葉の受け取り方は異なってくるため、自分が相手にどのような言葉を投げかけるかを考えることが重要です。相手を傷つけるような言葉を使わず、相手を理解し、受け止めることが大切です。相手の立場や感情に配慮し、言葉を選ぶことで、相手との関係を構築し、信頼関係を深めることができます。このように、言葉は非常に強力な武器であるため、適切な使い方を心がけることが重要です。

パニック障害を抱えている人に対しては、以下のような言葉は避けるべきです。

相手に圧力をかける言葉

相手に圧力をかける言葉は、相手に自分と同じように考えることを強いたり、行動することを強制させるような言葉のことです。例えば、「なんでそんなことで落ち込むの?」や「もっと強くなればいいじゃない」といった言葉は、相手の感情や経験を無視し、自分の価値観を押し付けることになります。また、「はっきり言いなさい」や「時間がかかりすぎなんだよ」という言葉は、相手に対して無理な要求をし、ストレスを与えることになります。

パニック障害の方にとっては、これらの言葉は非常に苦しい状況に陥る可能性があります。たとえば、仕事でプレッシャーを感じているパニック障害の友人がいるとします。彼が「最近、仕事が辛くて…」と話している際に、「もっと強くなればいいじゃない」と言うのではなく、「大変だね。君の気持ちを理解できるよ。何か手伝えることがあれば言ってね」と共感を示すことが大切です。

また、パニック障害の方が「人前で話すのが怖い」と打ち明けた場合、「はっきり言いなさい」と無理を強いるのではなく、「人前で話すのは緊張するよね。一緒に練習しようか?それとも、別の方法でサポートできることがあるかな?」と提案し、サポートを申し出ることが重要です。

このように、相手の気持ちや状況に寄り添い、共感することで、パニック障害の方が安心感を感じることができます。また、無理な要求や自分の価値観を押し付けるのではなく、相手のペースやニーズを尊重することで、より良い関係を築くことができるでしょう。

相手を批判する言葉

相手を批判する言葉とは、相手に対して非難や責任を負わせるような、否定的な言葉のことです。例えば、「あなたはまったく役に立たない」、「あなたは愚かだ」、「あなたは間違っている」といった言葉は、相手を傷つけたり、自尊心を傷つけたり、自己効力感を下げたりする可能性があります。

たとえば、部下がプロジェクトでミスを犯した場合、上司が「あなたはまったく役に立たない」と言ってしまうと、部下は自分の価値を見失い、自信を喪失してしまうかもしれません。このような状況では、「ミスは誰にでも起こりうる。一緒に原因を見つけて、改善しよう」と前向きな言葉を選ぶべきです。

また、友人が悩みを打ち明けた際に、「あなたは愚かだ」と言ってしまうと、友人はさらに悩みを深め、あなたに対する信頼を失うでしょう。その代わりに、「悩みは誰にでもあるよ。一緒に解決策を考えてみよう」と励ます言葉を使うことが重要です。

さらに、パートナーと意見が合わなかった場合、「あなたは間違っている」と一方的に否定するのではなく、「お互いの意見を尊重し合い、共通の解決策を見つけよう」と協力的な態度を示すべきです。

これらの言葉は、相手が抱える問題や課題に対して無理解であることを示し、相手をさらに追い詰める可能性があります。そのため、相手を批判するような言葉は避け、代わりに理解や共感を示す言葉を使うことで、相手との関係を良好に保ち、問題解決に繋がるでしょう。

無神経な言葉

無神経な言葉とは、相手の感情や状況を無視し、冷たい態度で接するような、不適切な言葉のことです。例えば、「そんなことで悩んで何がしたいんだ」や「どうせ無理だからやめたほうがいい」といった言葉は、相手を不快にさせたり、傷つけたりする可能性があります。

具体的な事例として、友人が就職活動に失敗し、落ち込んでいるときに、「そんなことで悩んで何がしたいんだ」と言ってしまうと、友人は自分の悩みや苦しみを認められず、孤立感を感じることがあるでしょう。そのような状況では、「大変だろうけど、次のチャンスを探そう。一緒に頑張ろう」と励ます言葉を使うことが重要です。

また、子供が新しいスポーツに挑戦しようとしているときに、「どうせ無理だからやめたほうがいい」と言ってしまうと、子供は挑戦する勇気を失い、自信を喪失してしまうかもしれません。この場合、「新しいことに挑戦するのは素晴らしい。最初は難しいかもしれないけど、一緒に練習しよう」と前向きな言葉を選ぶべきです。

これらの言葉は、相手の感情や状況に対して無理解であることを示し、相手をさらに追い詰める可能性があります。そのため、相手の立場や感情に配慮し、無神経な言葉は避け、代わりに理解や共感を示す言葉を使うことで、相手との関係を良好に保ち、問題解決に繋がるでしょう。

嘘をつくこと

嘘が含まれる言葉とは、真実と異なる内容を含んでいる言葉のことです。これらの言葉は、相手を欺いたり、誤解を招いたりする可能性があります。

例えば、あるチームメンバーが「私はその仕事を終えた」と言いながら、実際にはその仕事をしていない場合、他のチームメンバーは彼が完了したと信じて、そのタスクに対して無関心になるかもしれません。結果として、プロジェクトが遅れたり、他のメンバーが余分な負担を負うことになるでしょう。

また、パートナーに対して「私はあなたを信頼している」と言いつつ、実際には信頼していない場合、パートナーは自分が信頼されていると思い込んで、安心して行動するかもしれません。しかし、後で真実が明らかになった時、パートナーは裏切られたと感じ、関係が破綻する可能性があります。

さらに、「それは昨日のニュースで報じられた」と言いつつ、実際には報じられていない場合、他の人がその情報に基づいて誤った判断を下すことがあります。その結果、不必要な混乱や問題が生じることがあるでしょう。

これらの嘘が含まれる言葉は、相手の信頼を失い、相手との関係を損ねる可能性があります。そのため、嘘が含まれるような言葉は避け、代わりに誠実で透明性のあるコミュニケーションを心掛けることが重要です。これにより、相手との信頼関係を築き、良好な関係を維持することができるでしょう。

相手を拒絶する言葉

相手を拒絶する言葉とは、相手との関係を断ち切るような、否定的な言葉のことです。これらの言葉は、相手を傷つけたり、孤立させたりする可能性があります。

例えば、ある友人が悩みを打ち明けてきた時に、「あなたとはもう付き合えない」と言ってしまうと、その友人は深く傷つき、自分の価値を疑ってしまうかもしれません。これにより、友人関係が壊れ、お互いに対する信頼が失われることになります。

また、職場で上司や同僚と意見が食い違った際に、「あなたとは話したくない」と言ってしまうと、相手は自分の意見が全く受け入れられないと感じ、コミュニケーションが困難になるでしょう。その結果、チームワークが損なわれ、仕事の効率や成果にも影響が出る可能性があります。

相手を拒絶するような言葉は、極力避けるべきです。代わりに、相手の意見や感情を尊重し、対話を通じて理解し合うことが大切です。また、問題や意見の食い違いがあった場合でも、建設的な方法で解決策を見つけ、相互理解を深めることが、良好な関係を築くために重要です。

相手を脅かす言葉

相手を脅かす言葉とは、相手に対して脅迫や暴力をほのめかすような、不適切な言葉のことです。これらの言葉は、相手を不安や恐怖に陥れ、心理的な負担を与える可能性があります。

例えば、ある学生が宿題を忘れたとして、先生が「もし言うことを聞かなかったら、何が起こるかわかるな」と脅しのような言葉を使った場合、その学生は恐怖心を抱き、学習へのモチベーションを失うかもしれません。また、その先生との信頼関係も失われ、学習環境が悪化する可能性があります。

また、職場で同僚が競争相手に対して「お前を潰してやる」と発言すると、その同僚は怯え、職場での人間関係が悪化するでしょう。これは、職場の雰囲気を悪化させ、チームワークや生産性に悪影響を与える可能性があります。

相手を脅かすような言葉は、絶対に避けるべきです。代わりに、相手に対して理解や共感を示し、相手の立場を尊重する言葉を選ぶことが重要です。また、問題がある場合は、建設的な方法で解決策を探し、コミュニケーションを通じて相互理解を深めることが、良好な関係を築くために大切です。

逃げ場のない状況に追い込む言葉

逃げ場のない状況に追い込む言葉とは、相手を追い詰めたり、窮地に追い込んだりするような、不適切な言葉のことです。これらの言葉は、相手を不安やストレスに陥れ、心理的な負担を与える可能性があります。

例えば、友人同士で意見が対立した際に、「逃げられないような場所に閉じ込める」と言って、相手を無理に説得しようとすると、相手は恐怖や圧迫感を感じ、友情に亀裂が入る可能性があります。

また、議論の最中に相手の話を聞かず、「話を聞かないで、自分の意見だけを押し付ける」態度を取ると、相手は無視されたり、無力感を感じるかもしれません。これは、お互いの信頼関係を損ない、コミュニケーションが困難になることがあります。

さらに、「恫喝する」や「自分の行動に責任を押し付ける」ような言動は、相手を弱い立場に置き、自尊心を傷つけることがあります。これらの言葉は、相手に対して否定的な印象を与え、関係の悪化につながることがあります。

このような逃げ場のない状況に追い込む言葉は避けるべきです。相手の立場や感情に配慮し、対話を通じてお互いの意見を尊重し合うことが重要です。また、問題が生じた場合は、建設的な方法で解決策を模索し、相互理解を深め、良好な関係を築くことが大切です。

言ってはいけない言葉の例

パニック障害に言ってはいけない言葉は様々ありますが、例えば、「お前が弱いから、精神的にしっかりしていない、気合が足りない、ガッツがない、やる気がない」といった言葉は、その人を傷つける可能性があります。

  1. 「落ち着け」と言ってしまうと、相手はますます緊張感が高まるかもしれません。
  2. 「そんなことでパニックになるなんて、弱いね」と非難することで、相手の自己評価が下がる恐れがあります。
  3. 「ただの気分の落ち込みだろう」と軽視することで、相手の症状を適切に理解していないと感じさせてしまうかもしれません。
  4. 「パニック障害って何?」「治るの?」と無神経に質問することで、相手を傷つけることがあります。
  5. 「大丈夫だよ、気にしなくていいよ」と過剰に気遣いすぎると、相手が自分の症状を過小評価されていると感じることがあります。
  6. 「あなたがいないと困るから、もう絶対に辞められないよ」と逃げ場のない言葉を言うことで、相手にプレッシャーをかけることになります。
  7. 「私について来い」と無理やり相手を連れ出そうとする行為は、相手の不安感を増幅させる可能性があります。
  8. 「もう少し頑張れば治るよ」と過剰な期待をかけると、相手に無理を強いることになるかもしれません。
  9. 「今すぐ立ち直れよ」「怖がらなくていいのに」と無神経に言うことで、相手が自分の感情を否定されていると感じる恐れがあります。
  10. 「そんなに心配しなくてもいいでしょう」と相手を脅かすような言葉は、相手の不安や恐れを無視することになります。
  11. 「あなたのせいで私たちの予定が台無しになった」と相手を批判する言葉は、相手に罪悪感を与えることがあります。
  12. 「あなたは輪に加わらないで」と相手を拒絶する言葉は、孤立感を与えることになります。
  13. 「あなたは弱い人間だ」と相手を貶める言葉は、相手の自尊心を傷つけることがあります。
  14. 「それってただの甘えだよ」と相手の気持ちを軽視する言葉は、相手が自分の症状を認められていないと感じさせることがあります。
  15. 「そんなことでどうするの?」「自分で何とかしなさい」と責める言葉は、相手に無理を強いたり、自己否定を促すことがあります。

これらの言葉は、パニック障害を抱える人を追い詰めたり、不快にさせたりする可能性があるため、避けることが重要です。代わりに、相手の気持ちに寄り添い、適切なサポートや理解を示すことで、彼らの苦しみを軽減することができます。

パニック障害への理解と支援: コミュニケーションの力

パニック障害を抱える人々は、時として突如として強い不安や恐怖に襲われることがあります。このような体験は非常に辛く、外部からの理解やサポートが欠かせません。特に、言葉によるコミュニケーションはその人の気持ちをより穏やかにする鍵となることが多いのです。

パニック障害に人に寄り添う言葉:

  1. 仕事のストレスや日常の悩みを打ち明けられた際は「大変だね。君の気持ちを理解できるよ。何か手伝えることがあれば言ってね」と共感の言葉を。
  2. 人前での発言や行動に関する恐怖を打ち明けられた時、「人前で話すのは緊張するよね。一緒に練習しようか?それとも、別の方法でサポートできることがあるかな?」とサポートの意志を示す。

相手の気持ちや状況を理解し、共感を持って接することが、パニック障害の方とのコミュニケーションの鍵です。言葉は強力であり、相手を安心させるものであるべきです。適切なサポートと共に、相手のペースやニーズを尊重することで、安心感を与え、信頼関係を築く手助けとなります。

適切な治療やサポートを受けることで、自律神経のバランスを回復させ、パニック発作を改善することができる場合があります。そのため、医療専門家やカウンセラーと連携し、適切な治療プログラムを受けることが望ましいです。また、家族や友人との緊密なサポートも、回復に向けた大きな助けとなるでしょう。

パニック障害を克服するためには、周囲の理解と支援が不可欠です。患者に寄り添い、適切なサポートを提供することで、その人が日常生活をより円滑に送ることができるよう助け合いましょう。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-02-20
論考 井上陽平

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