愛着スタイル(アタッチメント)セルフチェック|親密さの“痛み”と“渇望”を理解するために

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🌿はじめに──「誰かといると苦しい」は、あなたのせいではない

人と心を通わせたいのに、近づくほど息苦しくなる。
相手が少しよそよそしくなるだけで、胸の奥がざわつき落ち着かなくなる。
優しくされれば嬉しいはずなのに、どこかそわそわと逃げ出したくなる。

こうした反応は、気まぐれでも性格の問題でもありません。
幼い頃の環境の中で、あなたが無意識のうちに身につけた “関係の守り方” なのです。

愛着スタイルは、大きく4つ。
安全型・不安型・回避型・無秩序型
これは固定された“性質”ではなく、過去に適応した「生きる技術」の痕跡です。

この記事の目的は、
あなたを分類することではなく、
“いまのあなたがどんな風に関係を結ぼうとしているのか”を、そっと照らすこと。

では、静かに自分の内側を見つめる小さな旅を始めましょう。


🧩 愛着スタイル・セルフチェック(20項目・0〜100点方式)

以下の20項目について、
「どれくらい自分に当てはまるか」を
0〜5点 で評価してください。

0=全く当てはまらない
5=非常に当てはまる

点数が高いほど、不安型 → 回避型 → 無秩序型へ近づく設計
点数が低いほど、安全型に近づく設計


【A:不安型の傾向を測る項目(5項目)】

  1. 相手の態度が少し冷たく見えるだけで不安になる
  2. 返信が遅れると「嫌われたのかも」と強く感じる
  3. 拒絶される可能性があると、頭から離れなくなる
  4. 関係が不安定に感じると感情が激しく揺れる
  5. 親密になるほど「失う怖さ」が強くなる

【B:回避型の傾向を測る項目(5項目)】

  1. 近づかれすぎると距離を取りたくなる
  2. 一人でいる方が安心できる
  3. 感情を見せることに強い抵抗がある
  4. 相手が依存してくると重く、逃げたくなる
  5. 親密さを求められると息苦しくなる

【C:無秩序型(複雑性トラウマ)の項目(5項目)】

  1. 近づきたいのに怖く、離れると不安になる両極が同時にある
  2. 相手の態度が変わると身体が強張る・思考が止まる
  3. 関係が深くなると「急に冷める/急に執着する」が起きる
  4. 怒り・不安・無力感が瞬時に切り替わる
  5. 安全な人に対しても警戒心がすぐ立ち上がる

【D:安全型に近い反応(安定性指標・5項目)】

ここは “安定しているほど点数が低くなる” ように逆採点します。
(当てはまるほど0点に近づく/当てはまらないほど高得点=不安定)

  1. 相手との距離を自然に調整できる(当てはまるほど 0点)
  2. 依存しすぎず、孤立しすぎずいられる(当てはまるほど 0点)
  3. 意見の違いがあっても関係は壊れないと感じる(当てはまるほど 0点)
  4. 自分の感情を適度に伝えられる(当てはまるほど 0点)
  5. 親密さに触れても極端な不安・恐怖がない(当てはまるほど 0点)

※これら5項目は
当てはまる → 安定 → 点を低く
当てはまらない → 不安定 → 点を高く

という逆転採点が前提。


🧮 合計点の出し方(0〜100点)

20項目 × 5点 = 最大100点

点数が高いほど、不安定・複雑性トラウマ側へ近づくように完全再設計済み。


🌈 点数別の読み解き(0〜100点方式)


🔵 0〜30点:安全型に近い(安定した愛着の基盤)

あなたの神経システムは
“つながっても大丈夫” という感覚を比較的一貫して持っています。

・距離の調整が自然にできる
・相手の変化に過度に振り回されない
・感情が急に暴走しにくい

もちろん揺れる瞬間はありますが、
あなたの土台には 信頼と落ち着き が息づいています。


🟡 31〜65点:不安型または回避型の揺れが出やすい領域

かつて「気を張り続けないと安全でいられなかった環境」で育つと、
身体はごく自然に、この揺れを学習します。

不安型に近い揺れ:
・相手の変化に敏感
・距離が縮まるほど不安

回避型に近い揺れ:
・近づかれるほど交感神経が高まる
・強い親密さが負荷になる

どちらも“弱さ”ではなく、
あなたの身体が過去に合わせて編み出した 生存の知恵 です。


🔴 66〜100点:無秩序型・複雑性トラウマの影響が色濃い領域

安全と危険が同じ人から同時に来るような環境――
その中で育った身体は、
“近づきたい” と “身を守りたい” が常に交錯します。

特徴:
・親密になるとフリーズや離人感
・感情が急激に切り替わる
・警戒心が常に立ちやすい
・自分がどう反応するか予測しにくい

これは性格ではありません。
極限状況の中で身体が生き抜くために獲得した戦略 です。


💬 愛着スタイルは固定ではない

点数は「いまの状態」を映すだけ。
安全なつながり、身体の落ち着き、
自己理解の積み重ねによって、
愛着はゆっくりと変化していきます。

神経システムとの関係(愛着が「からだ」に刻まれる理由)

あなたの愛着スタイルは、
“考え方”や“性格”だけで決まるものではありません。
そのさらに深い層――自律神経が
「何を安全と学び、何を危険と覚えたか」
その歴史が、いまの「距離の取り方」に大きく影響しています。

幼いころ、安心できる大人に抱かれた瞬間、
身体はゆっくり緩み、呼吸が深くなり、心臓の鼓動が整います。
これは腹側迷走神経が “つながっていても大丈夫” と感じた証です。

反対に、関わりの中に恐怖・混乱・予測不能さがあれば、
身体はまったく別の学習をします。

「近づくと危険かもしれない」
「拒絶されるかもしれない」
「つながりたいのに、同時に身を守らなければならない」

この“身体に刻まれた警戒”こそが、
不安型・回避型・無秩序型の根底に流れているものです。
愛着は“思考の癖”ではなく、
神経システムが長い時間をかけて身につけた適応のパターンなのです。

不安が強い人は、
安全を探し続けるために神経が敏感になり、
「つながりを失う不安」が絶えず揺れを起こします。

回避が強い人は、
誰かが近づくほど交感神経が高まり、
距離を置くことでようやく落ち着きを取り戻します。

無秩序型の人は、
“近づきたい身体”と“守ろうとする身体”が同時に作動し、
胸・喉・みぞおちが一瞬で固まったり、
感情が急に切り替わったりします。

どれも「性格」の問題ではありません。
かつての環境を生き抜くために、
身体が最も合理的な方法で適応した結果です。

そして何より大切なのは――
神経システムは再学習できる ということ。

ほんの少し安全な経験が積み重なるだけで、
呼吸が変わり、身体の反応が柔らかくなり、
やがて「人との距離の取り方」そのものが変化していきます。

愛着は固定ではありません。
いまのあなたの身体がどんな状態にあるかによって、
ゆっくりと書き換わっていくものなのです。

愛着トラウマの基本について
愛着障害の4つのタイプとは?大人と子どもの特徴
回避型のパーソナリティ障害について
回避性パーソナリティ障害のチェックリストと向いている仕事、原因
無秩序型と解離性障害について
解離性障害の症状・チェックリスト:日常生活に現れるサイン

今できる身体ワーク(3〜5種類)

愛着の揺れは、
意志よりも“身体の反応”が先に走ります。
まずは、あなたの神経システムに「大丈夫だよ」と思い出させる練習を。

すべて 1分以内 でできます。


◎ ① オリエンティング(視線の安全を取り戻す)

ゆっくりと目を動かし、
部屋の中に“安心を感じるもの”を3つ見つける。

柔らかい色、光、布、植物……
身体は視線の動きから「今ここに危険はない」と理解する。


◎ ② ロング・エクスヘイル(吐く息で神経をゆるめる)

4秒吸って、8秒かけて吐く。
“吐く長さ”がポイント。
迷走神経がゆっくり立ち上がり、
胸の緊張がほどけていく。


◎ ③ ハミング(喉の振動で腹側迷走神経を刺激)

鼻歌でも、声にならない響きでもいい。
胸と喉が細かく震えると、
身体は“つながりの感覚”を自然に思い出す。


◎ ④ 境界のジェスチャー

自分の胸の前に、そっと手のひらを置き
「ここが私の領域」と、内側に向かって静かに感じる。
押し返す必要はない。
ただ、自分の輪郭を取り戻すための小さな動作。


◎ ⑤ 自分に触れない“遠隔セルフタッチ”

触れるのが苦しい人は、
手のひらを身体から10cm離したところで止めてみる。
“触れない触れ方”でも、
身体は境界を感じて緊張を緩めていく。


回復の順番(安全 → 自覚 → 表現)

愛着スタイルの癒しは、
いきなり“正しい関係を築こう”とすると失敗します。

まずは、順番が大切。


① 安全の再構築(まず身体から)

・刺激を減らす
・静かな場所をつくる
・距離を取っていいという許可
・誰と会うか、どれくらい会うかを選ぶ勇気

安全が作られなければ、心は動き出せない。


② 自覚(自分の反応を“責めずに”観察する)

「今、不安が強い」
「近づくのが怖い」
「本当はつながりたい」
どれも責める必要はない。

感情は、あなたの味方だ。
ただ、長い間黙っていただけ。


③ 表現(ほんの小さな声からでいい)

・一言だけ本音を言ってみる
・断る代わりに「今日は難しい」と伝える
・苦しさよりもまず“事実”だけ口にする

関係は、
完璧な言葉より、小さな正直さの積み重ねで変わっていく。

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【執筆者 / 監修者】

井上陽平(公認心理師・臨床心理学修士)

【保有資格】

  • 公認心理師(国家資格)
  • 臨床心理学修士(甲子園大学大学院)

【臨床経験】

  • カウンセリング歴:10年/臨床経験:10年
  • 児童養護施設でのボランティア
  • 情緒障害児短期治療施設での生活支援
  • 精神科クリニック・医療機関での心理検査および治療介入
  • 複雑性トラウマ、解離、PTSD、愛着障害、発達障害との併存症の臨床
  • 家族システム・対人関係・境界線の問題の心理支援
  • 身体症状(フリーズ・過覚醒・離人感・身体化)の心理介入

【専門領域】

  • 複雑性トラウマのメカニズム
  • 解離と自律神経・身体反応
  • 愛着スタイルと対人パターン
  • 慢性ストレスによる脳・心身反応
  • トラウマ後のセルフケアと回復過程
  • 境界線と心理的支配の構造

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