トラウマのショック反応-虚脱・崩れ落ちる

複雑性トラウマ

崩れ落ちるトラウマとは、強い刺激に曝された人が、足の裏から感覚が無くなり、足元からグラグラして崩れ落ちるような体験を指します。このようなトラウマを抱える人には、息ができずに動けなくなってしまう人、意識が朦朧として気を失って倒れてしまう人など様々であり、危険な状況に陥ることもあります。

崩壊を恐れるか、既に崩壊しているか

崩れ落ちるトラウマを持つ人には、過去に脅かされ続けて、既に崩壊してしまっている人、崩れ落ちた経験があるために、過剰に警戒してしまっている人がいます。特に、崩壊してしまっている人は、この人生に絶望しており、予後が悪くなることがあります。

崩れ落ちるトラウマを抱える人は、ショックなことがあると、筋肉が極限まで収縮し、身体が凍りついて、足元からグラグラする不安定な人生を送ることがあります。このような状態に陥ると、心臓がバクバクし、呼吸が苦しくなり、動けなくなることもあります。さらに、ショックが大きく、崩れ落ちるような場面では、心臓が落ちるかのような感覚に陥り、戦慄が走って気を失うこともあります。複雑なトラウマを経験している人は、地に足がつかず、身体が凍りつき、不安定な状態で生活していることがあります。しかしながら、他人から見ると何も起こっていないように見えるため、彼らは理解されず孤独を感じることがあります。

崩れ落ちる体験

複雑なトラウマを経験している人が、崩れ落ちるようなショックを受けると、心臓が飛び出すように激しく鼓動が響き、体全体に振動が走ります。このような状態に陥ると、皮膚は下からたくさんの見えない手によって、削ぐように引っ張り落とされているような感覚に襲われます。また、体の内側は、砂の蟻地獄に吸い込まれてしまうように勢いよく崩れ落ちます。

さらに、頭の天辺から足先までジンジンビリビリ、グラグラフワフワして、足元はフワフワポワンポワンとして、地面に足がつく感覚が薄らぎ、地中に埋まって沈んで消えてしまうとか、空気中の塵となり消えてしまうような感覚になります。これらの症状によって、トラウマによって引き起こされる不安や恐怖に対処することができなくなってしまいます。

不安が強くなると、眠気に襲われたり、めまいやふらつき、意識が朦朧として、気絶する人もいます。また、崩れ落ちそうになった時には、頭(心)の中では気力で踏ん張り、「大丈夫、いつものこと。いずれ落ち着くはず。」等という気持ちで冷静に時を待つことができますが、身体は崩れ落ちそうになる不快な感覚に包囲されていくと、不安や怖さも伴いやすくなります。

慢性的に崩れ落ちている人

脅かされることが続き、何度も崩れ落ちることを繰り返している人は、自分の人生の舵を取れず、周りに圧倒されて、無力な状態に陥り、適切な行動が取れなくなります。強者に対して、屈服し、服従せざるを得ない人生になります。このような状況に陥ると、身体は棒人間で、無表情になり、生きている感覚がなく、生ける屍のようになってしまいます。さらに、外の世界の刺激に翻弄されて、無力で行き当たりばったりで、人生に行き詰まり、人生の方向性が喪失してしまうこともあります。

酷い場合には、身体が接着されていないパズルのように表面上形成されていて、少し動くだけで崩れ落ちてしまいます。このような状態に陥ると、日常生活の全てのものが嫌になり、リアルに浮かび上がってくるものに耐えられなくなります。自分自身の感情や思考が混乱し、自分がどう感じているのか、自分そのものが分からなくなることもあります。

崩れ落ちるトラウマがある人は、崩壊への不安を無意識のうちに持っており、それが反映された人生を送っています。このような人々は、自分自身が崩壊しないように力の抜き方が分からず、常に肩が上がり、眉間に力が入り、奥歯はいつも強く噛み締め、喉を締めつけられて、足はすくみ、固く凍りついた状態にロックされます。身体は慢性的に収縮しているため、血液の流れが悪く、基礎体温が下がり、追い詰められた精神状態が続き、この世界を否定的に眺めています。

まとめ

彼らは、再び恐ろしいことが起きないようにと、トラウマになりそうな場面を徹底的に避けることで、先読みする人生を送っています。このような人々は、怒りや恐れなどの情動を避けたり、トラウマを思い出さないようにしたり、空腹や低血糖、疲れや痛み、薬物や化学物質を避けようとします。そのため、日々の生活においても、慎重に行動し、周りの環境をコントロールしようとします。しかし、一方で気を抜いてしまうと、眠気やめまいなどの症状が現れ、次第に崩れ落ちてしまいます。また、過度に避けようとすることで、社会的な関係性が疎遠になってしまうこともあります。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2022-12-27
論考 井上陽平

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