トラウマ回復の難しさ:一進一退する現実の辛さと課題

複雑性トラウマ

トラウマを抱えると、かつて安全や安心と感じていたこと、あるいは長年にわたって学んできた生き方が、時に自分を縛りつけ、苦しめる要因と変わってしまうことがあります。この背景には、過去の辛い体験や出来事が、新しい環境や異なる状況への適応能力を阻害することが挙げられます。つまり、以前に身につけた反応や対処法が、現在の状況で役立たなくなってしまうのです。特に、家庭での経験や学んだ価値観を無意識に繰り返すことで、人は挫折感や無気力を感じやすくなる傾向があります。

また、複雑なトラウマを持つ人は、多層的な痛みや記憶が相互に結びついていることが多く、治療の過程で一つの問題点を解消したとしても、新たなトラウマや心の傷が表面に出てくることがあります。これは、トラウマが複雑に絡み合った網のような構造をしており、その解明や解決が難易度の高いものとなっているためです。

しかしながら、深い理解と真心の共感のもとで、治療を繊細にかつ確実に進めることは、真の回復への道を切り開く鍵となります。トラウマを抱える人々の内面の深さと複雑さを尊重しつつ、それぞれの痛みをじっくりと、そして慎重に解きほぐしていくことが、真の癒しと向き合うための大切なステップとなります。

トラウマの影響: 心の深層からの闘いと回復への道

トラウマとは、心の深い隅に刻まれた強烈な痛みを持つものであり、それは簡単に消え去るものではありません。治療を受けて表面上は回復したかのように見えても、日常生活の中の些細なプレッシャーやストレスに触れるだけで、頭の中の思考や感情は休むことなく駆動し続けます。この絶え間ない内的な動きのせいで、心は常に不安や緊張でいっぱいとなり、体と心の両方が迅速に疲労してしまいます。

想像してみてください。何か恐ろしい出来事や場面に直面すると、トラウマを持つ人々の身体は瞬時に凍りつき、その強烈な反応により足が動けなくなることすらあるのです。さらに、その心は無感覚になり、情熱や活力、そして生き生きとした光を失ってしまいます。それはまるで、命の煌めきがわずかにしか残っていないような、薄暗い状態です。

このような状態が継続すると、心の重荷は増していき、疲れが体中に蓄積されることで、日常生活のシンプルなタスクすらも困難となります。それは、泥沼に足を取られ、抜け出せないような状態と似ています。トラウマを抱えて生きる人々の日常は、想像を超えるほどの困難に満ちています。だからこそ、彼らの闘いを深く理解し、真心から共感することが、彼らをサポートし、癒しの一歩へと導く重要な鍵となるのです。

トラウマの回復の旅: 起伏を乗り越えて真の癒しを目指して

トラウマを持つ人々の回復の旅は、まるで起伏に富んだ山道のように、時折直進せず、一歩進んだかと思えば二歩も後退することがあるものです。一時的に順調に進展しているように見えても、突如として何かの出来事やトリガーにより、過去の痛みや記憶が蘇り、治療の疲れからか一時的に途方に暮れることも珍しくありません。また、セラピーやカウンセリングを受けた後の安堵感が、次の瞬間には別のきっかけで揺らぐことも確かにあります。しかしながら、このような波のような上下も、真の回復への道のりの中での必要な過程と言えるでしょう。

ここで特に心に留めておくべきは、この回復の過程を「失敗」として捉え込むのではなく、自分自身のペースやリズムを大切にすることです。そして、たとえ一時的な後退や停滞を経験したとしても、それを自己否定や失望の源泉とするのではなく、自分の成長や回復の道の一環として受け入れる視点を持つことが重要となります。

確かに、自分の心の深層部と直接向き合い、その痛みや葛藤を解きほぐしていく作業は容易ではありません。しかし、それぞれの人が自らのペースで前に進む勇気、そして、そのプロセスを温かく見守る周囲の共感とサポートが、トラウマからの回復をより確固たるものとするのです。

トラウマ療法:複雑性PTSDと解離性障害の深い課題

トラウマ療法は、その核心に触れることで患者さんに解放感をもたらすと期待されることが多い。実際、多くの患者さんはトラウマの暴露を通じて大きな進展を見せることがあります。しかし、特に複雑性PTSDの患者さんや解離性障害を持つ方々にとって、治療過程はしばしば予測外の深刻な反応をもたらすことがある。過去の傷つきや心の痛みに直面することで、身体は警戒や緊張の状態を呈し、「凍りつく」ような反応を示すことがある。この反応は、患者さんの思考や感情、さらには日常的な活動への意欲までを低下させる可能性がある。

さらに、解離性障害を抱える方々は、突如としてトラウマの記憶がフラッシュバックとして蘇ることが多々あります。このフラッシュバックの中で、過去の感覚や感情が一時的に復活することがあるものの、日常の中での恐怖や不安が引き起こす防御反応、すなわち「解離のシステム」が優越することで、新しく得られた感覚や記憶が再び霞んでしまうことがよくある。このような波のような状態の繰り返しは、患者さんを深い解離の渦中へと引き戻してしまう可能性があり、その結果、心と身体の均衡が大きく乱れ、安定した状態を保つことが困難となることが珍しくありません。

トラウマ治療の中で出てくる困難や不安には、治療者やサポーターが優しく理解し、心からの共感が求められます。患者さん一人一人の独自の問題や背景を大切に思いながら、最良の治療とサポートを行うことで、本当の回復や癒しを助けることができると思います。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-09-27
論考 井上陽平

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