重度のトラウマからくる解離・シャットダウンによる眠気

複雑性トラウマ

複雑なトラウマがある人は、過剰な警戒心から、神経が張りつめていて、過覚醒で生活している時がありますが、その分だけエネルギーが切れてしまうことがあります。このページでは、過覚醒の状態から、解離やシャットダウンが起きて、気を失うような強い眠気に襲われたり、茫然とした状態になることについて説明します。自律神経の反応で言えば、体が生命の危機を感じているために、反射的に無意識下で、背側迷走神経が過剰に働いて、解離・シャットダウンが起きてしまいます。背側迷走神経が過剰になっている人は、呼吸は浅く、血圧は低く、筋肉は極度に弛緩し、不動的防衛機能が働いています。

解離やシャットダウンの強い眠気の後の行き着く先は、あちら側の世界です。別の言い方では、極楽浄土のようなものです。解離してあちら側の世界に行くとき、安息の地が近づいている予感がする一方で、踏み込んだら現実世界には戻れないかもしれないという恐怖を抱きます。あちら側の世界は、この世の辛さに負け、生き抜く力を失いかけた時に出現し、ふわっとした優しい霧の中に連れて行かれます。

解離による生体を保護しようとする力は、辛い、不安、怖いなどといったネガティブな感情がきっかけとなり、誰にも助けを求める事ができず、でも助けを求めずにはいられない状況に陥った時に、優しく導くように、戦おうとする力をゆっくりと抜き取り、私を保護しようとしてくれるのです。眠らせてくれる、あちら側の世界は、窮地にいる私を苦しみや辛さから解放してくれるように、優しくゆっくり眠りにつかせ、意識を飛ばしてくれます。

解離の生体を保護する力は、トラウマを経験して、一生懸命に生きている人に、もう頑張らなくていい、無力でいい、泣いていい、何も考えなくていいと諭してくれます。そして、もう頑張れなくなった人が、生命力がないまま無垢な状態にリセットされる怖さと安心感の中に溺れ、涙が溢れ出し、深い眠りに襲われ、徐々に意識を失います。

実際の感覚としては眠ってはいますが、身体は重く沈む感覚が残っていて、まぶたも重く開きません。ですが、眠っているあちら側の世界は、体が無重力のように軽く、ただ漂っているように感じるかもしれません。解離の生体を保護する力は、身体を自由に動かせず、もう頑張ることが難しくなっている私に対して、現実の世界に戻らずに、このまま楽でいれば良いと諭します。

複雑なトラウマを経験してきた人が、疲れ果てた状態の時に優しく誘導されて、頑張らなくても良い世界は、まるで極楽浄土のように感じます。最初は安心できる居心地のよさを感じますが、前向きに頑張ろうとする自分もいて、現実世界に戻ろうとします。現実世界に戻ろうという意識が鮮明になってくると、夢から覚めるようにポンっと現実世界に戻されますが、夢心地の世界から現実世界に戻ると、再び現実と向き合う事となり、身体はすぐに硬直した状態に戻るかもしれません。

複雑な経験している人は、この現実世界の刺激が強すぎて、何度も眠気や崩れ落ちと格闘しているかもしれません。そして、辛い時ほど、その見えない、聞こえない例えようのない誘いのような囁きに吸い込まれそうになります。次第にぼんやりとして、眠気が出てきて、体はぐらつき、足元から崩れ落ちるような感覚のなかで、夢に似たあちら側の世界に行くことが可能になります。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2022-12-22
論考 井上陽平

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