好意をもたれると気持ち悪くなる男女の心理:ストレスによる拒絶感、苦手な感覚

心の病気

人々の中には、他者からの好意や親しみを受け入れるのが困難で、それに対して不快感や恐怖を感じる者がいます。このような人々の背後には、深いトラウマや過去の経験、あるいは持って生まれた性格的な要素が影響していることが考えられます。彼らの感情は、単なる人間関係の複雑さを超えて、人との関わりそのものに対する深刻なアレルギーのように、時に極端な反応を示すことがあります。

この感じ方は、社会的なイベントや他者との日常的な交流の中で、一瞬の出来事として突如として生まれるものではなく、長い時間の中で形成された感じ方や反応のパターンを持っている場合が多いです。その原因は、子供時代のいじめ、家庭内の摩擦、あるいは深刻な人間関係の断裂など、多岐にわたります。

親に抱きしめられることに抵抗感がある

幼い頃から、親の温かい抱擁を十分に受けられなかった子どもたちは、複雑で矛盾した感情を抱えることがあります。彼らは内心深く、愛情に満ちた親の抱擁を強く望んでいます。しかし、一方で、日常生活で親からの抱擁が欠けているため、その状況が彼らにとって「普通」のものとして受け入れられてしまいます。このような特殊な環境下では、たまに親に抱きしめられると、「なぜ今なのだろう?」と混乱や戸惑いを感じてしまうのです。本来ならば喜びや愛情、安心感をもたらすはずの抱擁が、逆に心を乱す原因になるのです。

さらに、抱擁の経験が少ない子どもたちは、親子間のスキンシップ全般に対しても苦手意識を持ちがちです。親が優しく頭を撫でたり、握手を交わしたり、体を支える接触をしたりする行為は、一般的には愛情の表現とされます。しかし、これらの身体的な交流が彼らにとっては不快感や恐怖を引き起こすことがあります。

このような抵抗感は、親に限らず、他の人々との身体的接触に対しても同様に表れます。つまり、これらの子どもたちは、親や他人に対して一般的な身体的な交流に包括的な抵抗感を示すことがあるのです。

幼少期の親子関係のストレス

親子間での十分なスキンシップが不足していると、子どもは他人を信頼し、深い人間関係を築くことに障害を持つ可能性があります。これらの子どもたちは、社交的な行動をある程度まで発揮し、他人との基本的な交流を楽しむことはできますが、より深い関係性の構築に対しては恐れを感じる傾向にあります。彼らは自分が快適と感じる程度の距離感を保つことを重視し、それを通じて友人関係を維持しようと努めます。このように、自分にとって心地良い範囲内での人間関係を保つことに焦点を当てることで、ストレスや不安から自己を守ろうとするのです。

さらに、親子間のコミュニケーションが不足していたり、親からの愛情を示す言葉が少なかったり、あるいは全くなかったりする場合、子どもは愛情表現を含む言葉の受け止め方や反応の仕方を理解するのが難しくなります。その結果、教師や友人からの愛情や賞賛を含む言葉を受けても、それらを喜びとして受け入れることが困難になります。これらの子どもたちは、「なぜ彼はそんなことを言うのだろう?」「恥ずかしい」「どう反応すればいいのかわからない」「私を困らせないで」といった不快な感情に苛まれることになります。これは、親子間で愛情を表す言葉や行動が不足していることに起因する、深刻な問題です。

思春期の困難

思春期は、個々の青少年が身体的および精神的な変化を経験する重要な時期です。この段階では、男性性や女性性の特徴が鮮明になり、異性への意識や関心が自然に高まります。しかし、これらの変化は個人によって大きく異なり、異性に対する興味や感情の発達には個人差が存在します。

この時期の意識の変化は、家庭環境や学校での性教育など、様々な要因によって影響を受けます。性教育を通じて、多くの青少年は自己の身体的変化や性に関する知識を深めることができますが、同時に異性の身体的特徴を知ることに対して戸惑ったり、恥じらいを感じたりすることもあります。

この成長過程では、友人関係においても大きな変化が見られます。これまで単なる友人として接していた異性から突然好意を示されると、その感情をどのように理解し、反応するかについて混乱することがあります。さらに、好意を寄せる側も自己の感情が理解されず、受け入れられないと感じることがあり、相互の誤解や不安が生じることがあります。

また、周囲の友人たちが恋愛関係を築き始める中で、自分自身が異性からの好意をどのように受け止め、反応すべきかについての理解が追いつかない場合もあります。これにより、異性からの好意が不純だと感じたり、嫌悪感を抱いたりすることもあります。

思春期には、親しいと思っていた友人からの好意が不快感を引き起こし、その人を不純な対象として誤解することもあります。これは思春期の困難な側面であり、成長と自己理解の過程の一環として理解することが重要です。青少年は、これらの挑戦を通じて自己の感情や人間関係についての理解を深め、成熟する機会を得るのです。

性被害による影響

性被害は、被害者にとって深刻な心的外傷を与える非常に悲惨な出来事です。この体験は被害者の記憶に深く刻まれ、消えることはありません。時として、さまざまな感覚が連動してフラッシュバックを引き起こすことがあり、このような瞬間は被害者にとって非常に苦痛なものとなります。肌の触れ合い、視覚的な接近、嗅覚的な感覚など、日常的な出来事が、突然、悲惨な過去の記憶を呼び戻すきっかけになることがあります。

このため、被害者は他人との身体的接触や、突然の近接に対して極度の不安や恐怖を感じることがあります。特に、加害者から受けた「好き」や「愛している」といった言葉が、他者からの同様の言葉によって痛ましい過去の記憶を呼び戻すことがあります。これらの言葉が聞こえるだけで、背筋が凍るような恐怖を感じることも珍しくありません。

さらに、被害者が他者に対して好意を抱いていても、その感情の表現に対して深刻な恐怖を感じることがあります。物理的な距離だけでなく、心の距離が急激に縮まることに対しても恐れを抱くことがあります。このような状況は、被害者が他人との関係を築くことに大きな障壁を感じることにつながり、感情や関係性に対する感覚が深く影響を受けます。

好意をもたれると逃げたくなる

他人からの好意を受け入れることに苦手意識を持つ人々は、その好意が自分の感情との間にある温度差や距離を急激に縮めようとすることに、混乱や不快感を感じます。この感覚は恋愛関係に限らず、友情や職場の人間関係など、さまざまな人間関係においても見られる現象です。

しかし、このような不快感を引き起こす原因を相手に説明するのは難しい場合が多く、そのため相手が納得しないこともしばしばあります。この不快感の根底には、口に出しにくい、あるいは語りにくい理由が存在することが多いのです。

たとえば、広範囲にわたるが浅いレベルの交流では関係が良好である場合でも、相手が自分に対して強い好意(恋愛感情、同情、親交を深めたいという願望など)を持ち始めると、その行動が積極的になり、急速に距離を縮めようとします。この急激な距離の縮め方は、時に過剰に感じられ、不快感や恐怖を引き起こし、逃げ出したいと感じさせることがあります。

結果として、警戒心が高まり、相手との距離を置きたくなることもあります。これまで良好だった関係性が崩れることもあるのです。この現象は、自分と他者の感情との間に存在する温度差や距離感に対する敏感さ、そしてその変化に対応する適応力が、人間関係を深めるプロセスに大きな影響を与えることを示しています。

過去の傷がもたらす拒絶反応と不安の連鎖

このような好意に対する拒絶反応は、相手からの感情的な圧力と感じられることが多く、自己防衛のために発生するものです。好意や親しみの表現が、相手にとって自然なものであっても、受け取る側にはその意図や行動が強烈すぎると感じられることがあります。特に過去に他者との関わりで傷ついた経験がある人にとっては、好意そのものが圧力や支配的な感覚を引き起こすことがあります。

この場合、受け手は「相手に合わせなければならない」「期待に応えなければならない」と感じ、心理的な負担を強く抱えることになります。無意識のうちに、こうした負担感がストレスとなり、結果的に相手から距離を取ろうとする防御的な行動が表れるのです。

また、好意を示されると、その期待に応えなければならないというプレッシャーが強くなり、特に完璧主義的な傾向を持つ人や、過去のトラウマにより自己価値を低く感じている人は、さらに強い不安を抱くことがあります。「自分はその好意にふさわしくない」「自分には応える力がない」と感じることで、好意が苦痛に変わってしまうのです。

こうした状況では、相手の好意が純粋なものであったとしても、受け手は「見返りを求められているのではないか」「裏があるのではないか」と疑心暗鬼になり、感情的なバリアを築くようになります。その結果、受け手は関係そのものを回避しようとし、相手との距離を広げることで安心感を得ようとするのです。

他者からの好意を受け入れるための心理的アプローチ

他者からの好意を受けることに対して、不快感を覚える人がこの感覚を克服するためには、いくつかの段階を踏むことが必要です。まず最初に取り組むべきは、自己受容自己理解を深めることです。自分自身の感情や反応の背景を探り、特定の言葉や行動がなぜ自分にとって不快なのか、その原因を明らかにすることが大切です。これは、幼少期の愛情不足、過去のトラウマ、または性被害といった経験が、どのように現在の感情や行動に影響を及ぼしているかを掘り下げて理解する作業を伴います。この内面的な探求は、自己の心理的な癖や心の防衛反応を認識し、無意識に反応している部分を意識化するための第一歩です。

次に、専門家との対話を通じて、自分が抱える不安や不快感に対処する具体的な方法を学ぶことが効果的です。心理療法士やカウンセラーとのセッションでは、否定的な感情を和らげ、より健全な反応パターンを築くための支援が得られます。例えば、認知行動療法(CBT)を通じて、ネガティブな思考パターンを特定し、それを建設的なものに置き換えることができるでしょう。また、感情を調節するための技術やリラクゼーション法を身につけることも、ストレスや不安を軽減し、他者との関わりを少しずつ心地よいものに変えていく助けとなります。

加えて、日常生活での小さなステップを積み重ねることも重要です。まずは信頼できる友人や家族との関係性を少しずつ深めることから始め、焦らず自分のペースで進むことを心がけましょう。他者の好意に対して無理に反応するのではなく、自分の感情に素直になり、相手との距離感を自分で調整することが大切です。急激な変化を避け、ゆっくりと関係性を築くことで、不安を軽減しながら好意を受け入れる準備を整えます。

最後に、自己肯定感を高めることが、好意を受け入れるプロセスを支える重要な要素です。自分の強みや成功体験を認識し、自分自身に価値を見出すことで、他者からの好意を適切に受け止めやすくなります。自己肯定感が高まると、好意に対する不安や疑念が薄れ、相手の気持ちをより素直に受け入れられるようになるでしょう。自分を大切にすることが、最終的には他者との関係性を豊かにし、心地よい交流を育む礎となるのです。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-05-15
論考 井上陽平

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