自己犠牲が強い人の育ち:相手のことばかり優先する心理チェック

心の病気

自己犠牲の精神が強く根付いている人は、他者からの暴力や攻撃を経験しているため、その痛みや心の苦しみを深く理解しています。その経験から、たとえどれほど相手が悪意を持って近づいてきたとしても、反撃や仕返しの行動を取らないことを選びます。なぜなら、自分が経験したその痛みや傷は、決して他の誰かが体験することを望んでいないからです。仕返しや反撃の代わりに、相手の攻撃的な手を優しく握り返し、暖かさや理解を伝えたいと思うのです。

親の期待と自分を見失う過程

子供のころからの環境や体験は、大人になった今の私たちの感じ方や考え方に大きく影響を与えています。特に、愛情や承認を得られなかった人は、その欠如感をどこかで感じ続けることが多いのです。私たちが求める愛情や承認を得るためには、親の期待に応え、親を満足させる行動を取ることが求められることが多かったのかもしれません。その結果、自分の本当の気持ちやニーズを後回しにし、親の望む「良い子」の役割を果たそうと努力するようになります。

このような環境の中で育った人は、自分をありのまま、素直な状態でいることが許されないと感じてしまいます。それゆえ、自分の本来の感情や欲求を抑え、都度都度、自分の存在を消して、まるで白紙のようになることで、新しい状況や人々に対応しようとする姿勢が身についてしまいます。この繰り返しの中で、自分の真の感情や欲求、価値観を見失うことがあり、それが自分自身を追い詰める原因となることがあるのです。

親の期待に応えることと私たちの心理

子供の頃から、私たちは自分の行動や選択に対する親の反応を密に観察してきました。その親の顔の表情、態度、言葉から、「これは喜ばれる行動だ」とか「これは期待に応えられた瞬間だ」という基準が自然と身に付いてしまうものです。その結果、親の示す反応が「正解」や「合格」として、私たちの内部の価値基準として刷り込まれてしまうのです。

このような背景には、子供時代の経験や、親から受け継がれる家族の価値観、さらには社会の期待など、多岐にわたる要因が絡み合っています。親の期待に応えることは、多くの人にとっては自己肯定感を得るための一つの手段となることが多いですが、それが自分自身の内側からの真の幸福や成長を阻害する場合もあります。私たちがどのような背景から、何を基準にして「正解」と判断しているのかを理解し、自分自身の心の中に真の答えを見つけ出すことが大切だと思います。

否定的な反応と心の形成

人は時として、自らの感情や欲望を優先する行動が他人に迷惑や不利益をもたらすのではないかと感じるものです。特に、子供のころに親や周囲の人々から頻繁に否定的な反応を受け取ってきた人は、その経験が心に深く刻まれ、大人になってもその影響が色濃く残ってしまいます。

親や大切な人々の顔の表情、態度、言葉から「これは良くないことだ」とか「これは期待に応えられなかった瞬間だ」というメッセージを感じ取ることがあります。このような経験を重ねるうちに、自分の感情や欲望に従うことが「不正解」や「不合格」として心の中に固定されてしまうのです。

このような心の背後には、多くのケースで愛されるため、認められるための必死な努力が隠れています。子供の頃、愛情や認知を求めて行動しても、それが周囲の期待とは合わなかった場合、自分の感情や欲望が「誤り」と感じられ、それを抑えることが「正しい」という価値観が形成されることがあります。

私たちの意思決定と価値観形成における親子関係の繋がり

人生における重要な意思決定や価値観の形成の中心には、私たちがどのように育てられたか、親との関係性が深く影響を及ぼしています。子供の頃から、私たちは無意識のうちに「もし私の親がこの状況にいたら、どんな反応をするだろうか?」や「親ならこの問題にどのような答えを出すだろうか?」と考え、その観点から物事を評価・判断することが多くなります。

私たちの心の奥底には、親の顔の表情、態度、言葉が刻まれていて、それが私たちの意思決定の基準となっているのです。このような背景には、子供時代に親から受け取った愛情や、親の期待に応えようとする心情、そして親の価値観や信念に対する深い尊敬やリスペクトが絡み合っています。私たちは、親の反応や判断を基準に、自らの行動や選択を無意識のうちに調整しているのです。この過程で、自分自身の本当の感情や考えを見失うこともあるかもしれませんが、それは私たちが親との関係性の中で成長してきた結果であり、その影響を理解し、自分自身をより深く知る鍵となるでしょう。

他人のニーズに敏感、自分の感情に鈍感

人々の感情やニーズに対する感受性は、それぞれの過去の経験や現在の環境に大きく影響を受けます。特に、過去のトラウマや持続的なストレス状態がある場合、これらの経験は人の感受性を鈍化させることがあります。たとえば、深刻な家庭内の問題などのトラウマ体験を持つ人々は、自分の感情を適切に処理するのが難しくなることがあります。これは、心が過度な痛みやストレスから自己を守るために発動する無意識の防衛機制として機能しているためです。

このような感受性の鈍化が進行すると、他人の感情や状態を感じ取ることは比較的容易であっても、自分自身の感情やニーズを深く理解することは難しくなります。例えば、感情的なトラウマを経験した人は、他人の苦痛や喜びを理解する能力を保持しながら、自分の内面の感情を認識しにくくなることがあります。これは、自己の感情やニーズに対する無意識の遮断が原因です。この状況は、自己の内面に対する注意と理解を深めることの重要性を強調します。

人間関係と自己評価の複雑な繋がり

人は時として、自らの存在や行動に対する自信を失うことがあります。その背景には、過去の経験や、受け取った批判、あるいは自己の期待とのギャップなど、さまざまな要因が考えられます。「自分に何が起きてもいい」という心の叫びは、内面の葛藤や不安、そして自分への無意識の自己否定が絡み合った結果かもしれません。

特に、他人との関係性に対する過度な心配や疑念は、自分の考えや選択に自信を持てなくさせる要因となることが多い。全ての選択や行動が間違いであるかのように感じ、その結果、自己否定の深淵へと落ち込んでしまうことも。このような感情は、自分自身の価値や能力を疑問視し、不安を増幅させる原因となります。

その結果、自分の感じる重圧や重苦しさから逃れるために、他人の意見や気持ちに無意識に合わせてしまう傾向が強まる。これは一種の自己保護のメカニズムとも言えますが、実はそれ自体がさらなるストレスや負担を生み出すことがある。一方で、責任を他者に押し付けることで、短期的には自らの心の負担を軽減しようとする心情も理解できます。しかし、その行動が長期的には自己の成長を阻害する可能性もあることを自覚することが大切です。

自分という存在が希薄になる感覚

私たちの身体は、多くの情報や感情を伝えるためのサインを常に発しています。これらのサインは、疲れやストレス、さまざまな感情や欲求など、私たちが日常的に経験する内面の変化を示すものです。しかし、日々の忙しさや周囲との関わりに完全に意識を向けてしまうと、これらの身体からの重要なサインを見落とすことがある。

他人や周囲の出来事に極度に集中したり、労力を費やすあまり、自分自身の心や体の状態に気を配る余裕を失ってしまうことがあります。このような状態になると、自分という存在に対する興味や関心が薄れ、まるで自分自身を外部からのオブジェクトとして捉えるようになります。その結果、自分の実際の感情や状態、欲求やニーズに気づかないまま、日々を過ごすことが増えるかもしれません。

このような状態は、まるで「透明人間」や「抜け殻」のような感覚に似ています。自分が存在することすら忘れ、周囲の風景や出来事の中で、自分という存在が消え失せてしまったかのように感じることもあるでしょう。この「仮の姿」とも言える状態は、長期間続くと心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

感情の溜まりと日常生活の積み重ねられる不調の連鎖

私たちの内側には、日々の経験や感情が積み重なっていきます。時にそれらの感情は、容れ物としての心の容量を超え、突如として爆発することがあります。その結果、生活の中での生きづらさや感情の乱れが顕著になり、日常活動においても様々な悪影響を及ぼすことが考えられます。

感情の乱れは、生活リズムの崩れや体調の不調に繋がるだけでなく、精神的な健康や人間関係にも影響を及ぼします。たとえば、計画した日常の流れが狂ったりすると、その破綻から絶望感が増大し、次第に心の中に闇が広がっていくかのように感じることがあります。

このような状態が続くと、自らを破壊する行動や考えに走りやすくなったり、一時的な解放として自己放棄に走ることも。さらには、他者に対する不満や怨念が生まれ、その感情によって日常生活の中でのトラブルを引き起こすリスクが高まります。また、自分自身がマイナスの方向へと進行していることを、一種の陶酔として感じ取るようになることも。

自己犠牲をしない人になる:辞める方法とは

人は時折、自己犠牲をして他者や環境に適応することを選ぶことがあります。その背後には、過去の経験や他者からの評価・承認を求める気持ちが強く影響しています。しかし、この自己犠牲の繰り返しは、自分自身の感情やニーズを疎かにすることとなり、その結果、心の健康や日常生活の質に悪影響を及ぼす可能性が高まります。

自己犠牲を止め、真に自分らしい人生を歩むためには、まず自己犠牲の原因や背景を深く理解することが必要です。それは、自分自身の過去の経験や、他者からの期待や評価に基づく自己価値の捉え方を見直すプロセスとなります。この理解を深めることで、自分の真の感情やニーズに気づき、それを大切にし、守ることの重要性を再認識することができるでしょう。

さらに、自分自身の存在や価値を再確認し、自分の身体や心のサインに耳を傾けることは、心身のバランスを取り戻す上で欠かせないステップです。日々の忙しさや周囲の騒音に翻弄されることなく、自分の中の静寂な瞬間を持ち、自分自身と向き合うことの大切さを感じ取ることが、真に充実した人生を送るための鍵となるでしょう。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-09-21
論考 井上陽平

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