生活全般にわたる緊張とストレスは、心身が徐々に疲弊していく最大の原因と言われています。長期的にこの状態が続くと、様々な健康問題が引き起こされる可能性が高くなります。そのため、適切なストレス対処法を見つけて、心身のバランスを保つことが重要です
例えば、身体的な症状としては、頭痛やめまい、筋肉のこり、疲労感、食欲不振、胃腸の不調、自律神経の乱れなどが挙げられます。精神的な症状としては、不安やイライラ、うつ状態、集中力の低下、睡眠障害、パニック障害などがあります。ストレスが長期間続くと、心身共に疲弊し、免疫力の低下や生活習慣病の発症などのリスクが高まることも指摘されています。
ストレスが溜まっている人の特徴
ストレスが蓄積されると、身体的、精神的に大きな影響を与えます。この影響は、身体の筋肉が収縮して、血流が悪化し、冷えたり、身体のあちこちが痛んだりすることが起こります。また、血行不良により、身体各部へ十分な酸素や栄養が供給されず、様々な機能が低下していくことが懸念されます。
そして、身体の緊張状態が続き、疲れや痛み、ネガティブな感情でいっぱいになり、脳も疲れがとれず、思考が鈍くなったり、判断力が鈍くなったりすることがあります。そうなると、身体の感覚や知覚に異常が生じやすくなることがあります。その結果、知覚の誤作動が起こり、交感神経や背側迷走神経が過剰に反応してしまい、不快な身体的な症状が現れることがあります。この状態が続くと、適切でない行動や身体的な問題が起こることがあります。
交感神経過剰
交感神経が過剰に反応すると、身体が過剰に警戒し、緊張が走り、心拍数が上がり、エネルギー状態が高まり、周りが安全でないと感じる傾向があります。また、感情に圧倒されたり、怒りや攻撃的な気分になったりすることがあります。身体的には、衝動的に行動する傾向があったり、身体の反応が過剰になることがあります。
背側迷走神経過剰
背側迷走神経が過剰に反応すると、身体や感覚が鈍くなり、感情が乏しくなることがあります。身体的には、動けない感覚や麻痺した感覚があることがあります。また、エネルギーが低下し、無気力になったり、興味がなかったりすることがあります。自分自身や周りに無関心になり、自分を守るための反応が鈍くなることがあります。また、思考力や反応能力が低下するため、考えたり、行動したりすることが難しくなることがあります。
強いストレスに対するサバイバル能力
人は強いストレスを感じると、闘争または逃避の反応を示すことがあります。しかし、対処できないほどの脅威に直面すると、身体が凍りつくことがあります。この状態では、交感神経と背側迷走神経が同時に活性化し、身体が動けないという感覚が生じます。
この凍りつきが進行すると、背側迷走神経が交感神経を抑制し、虚脱性不動と呼ばれる状態に陥ることがあります。この状態では、身体が硬直して動けなくなります。力が入らなくて動けないという感覚が強くなるため、日常生活に支障をきたすこともあるかもしれません。
ストレスで起こる体の異変
ハンス・セリエのストレス学説は、私たちがストレスを感じると、身体は生化学的な反応を示すという考え方です。ストレッサー(ストレスの原因)にさらされると、身体は自らを守ろうとして、適応症候群という反応を起こします。つまり、身体がストレッサーに適応しようとする反応が起こるということです。
警告反応期
ストレスに対する警告反応期は、ストレスが生じた直後から発生する期間です。この期間では、自律神経系が反応して身体にストレス反応が現れます。
身体的症状は、心拍数や血圧が上がり、呼吸が荒くなり、息苦しさを感じる。胃腸の不調や吐き気、便秘や下痢などの消化器系の症状が現れる。瞳孔が開き、視力が鋭くなり、血中コルチゾール濃度が上がる。
精神的症状は、緊張感や不安感、警戒心が強く、不安定な気持ちがある。恐怖感やパニック発作、過剰な心配などの不安症状がある。集中力や記憶力が高まり、思考力が活性化する。
これらの反応は、身体にストレスがかかっていることを警告するために起こる生理的反応であり、一時的なものです。しかし、ストレスが継続すると、疲弊期に進んでいくことがあります。
抵抗期
ストレスに対する抵抗期は、身体がストレスに対して適応しようとする期間で、ストレスが発生してから一定時間が経過した後に生じます。この期間では、アドレナリンやノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。
ストレスホルモンの分泌により、身体の機能が活性化し、呼吸が早くなり、心拍数や血圧が上昇する。血糖値が上昇し、血液中の酸素濃度が上がり、身体の活動能力が増す。瞳孔が開き、視力が鋭くなる。
これらの反応は、身体がストレスに対して適応しようとしているために生じるものであり、ストレスホルモンが分泌されることで、身体の反応が活性化します。
ストレスに対する抵抗期は、ストレスが続く限り継続し、長期間にわたってストレスが続くと、身体の反応が鈍化することがあります。この状態は疲弊期と呼ばれ、身体や心にさまざまな症状が現れるようになります。
疲弊期(バーンアウト)
ストレスに対する疲弊期は、ストレスが継続的にかかり続けることにより、身体や心が疲弊していく状態を指します。この期間には、ストレスに対する抵抗期や警告反応期で発揮される身体的・心理的反応が鈍化し、エネルギー消耗や抑うつ的な症状が現れます。
身体的症状は、全身が疲れやすい、息切れや動悸、体が怠い、気力がわかない。肩がこる、首がこる、手足が怠い、関節の節々が痛い、頭痛がする。胃腸の不調や吐き気、下痢などの消化器系の症状。目が疲れていて、めまいがする、多汗になる。音や光、匂いに対して過敏になる。寝つきが悪い、眠りが浅い、早く目が覚める、不眠症、夢ばかり見て寝た気がしない。免疫力の低下による風邪やインフルエンザなどの病気にかかりやすい。
精神的症状は、無気力状態、やる気が起きない、自発的な行動ができない。食欲が低下し、過食や拒食の食生活の乱れ、睡眠障害が現れる。集中力や記憶力が低下し、判断力の鈍化、思考力の低下。自己否定的な自己嫌悪、抑うつ的な気分が続く。感情のコントロールが困難になり、怒りやイライラ、焦りが頻発する。
これらの症状が重くなると、身体的な動きが鈍り、エネルギーが消耗して動けなくなる場合があります。このような状態に陥ると、仕事や日常生活に支障が生じ、社会生活において様々な問題を引き起こすことがあります。
ストレスが溜まったときの発散方法
ストレスを解消する方法には、以下のようなものがあります。
涙を流すこと
ストレスが溜まっているときは、涙を流すことでストレス解消に役立つかもしれません。涙を流すことで、ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンの分泌が減少し、代わりにエンドルフィンが放出されます。エンドルフィンは、気分を安定させる作用があるため、涙を流すことで気分がリフレッシュされることがあります。また、涙を流すことで、感情を表現することができ、自分自身を癒すこともできます。ストレスがたまっているときは、思いっきり泣いてみましょう。涙を流すことで、心身共にリセットされるかもしれません。
甘いものを食べる
ストレスが溜まっていると、ついつい甘いものを食べることでストレスを発散することがあります。これは、糖分が脳内のエンドルフィンの放出を促すため、気分を改善することができるためです。しかし、これは短期的な解決策であり、過剰な甘いものの摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
買い物をする
ストレスが溜まっていると、ついつい衝動買いをしたくなってしまうことがあります。ストレスが原因で心が不安定になり、自分を慰めるために買い物をしてしまいたくなるのです。しかし、衝動買いは後で後悔することが多く、経済的な負担にもなるため、できるだけ避けるようにしたいものです。
運動する
ストレスが溜まったときは、身体を動かすことでストレスを解消できるかもしれません。運動をすることで、ストレスホルモンが減少し、気分がリフレッシュされる効果があります。少しでも汗をかくことで、身体の中に溜まったストレスを出し切りましょう。また、好きな運動やスポーツをすることで、楽しみながらストレスを解消することもできます。
良質な睡眠をとる
ストレスが溜まっているときは、良質な睡眠をとることがとても大切です。しっかりと眠ることで、ストレスを解消することができます。寝るときは、自分がリラックスできるような環境を整えることが大切です。お気に入りの枕や毛布、心地よい照明などで自分がリラックスできる空間を作りましょう。睡眠時間が不足している場合は、昼寝をするのも効果的です。身体と心をリフレッシュして、ストレスから解放されましょう。
趣味や好きなことをする
ストレスが溜まっているときは、趣味や好きなことに時間を割くことで、ストレスを解消することができます。自分の好きなことに没頭すると、ストレスから少し離れることができます。例えば、読書、音楽、お菓子作り、ゲーム、DIYなど、自分が心地よく感じることに時間を使いましょう。時間が許す限り、楽しんでリラックスしてください。心から笑顔になることで、ストレスも解消されるかもしれません。
瞑想やヨガをする
ストレスが溜まっているときは、マインドフルネス瞑想やヨガがストレス解消に役立つかもしれません。マインドフルネス瞑想は、自分自身の感情や思考に気づくことで、ストレスを軽減するための効果があります。深呼吸をしながら、自分の感覚や心の状態に注意を向けてみましょう。ストレスを感じるときに、感情に流されずに冷静に自分自身と向き合うことで、ストレスから解放されることができます。瞑想は、時間をかけて少しずつ練習することで、効果が高まるとされています。
誰かと話をする
ストレスが溜まっているときは、誰かと話すことがストレス解消に役立つかもしれません。ストレスを感じるときは、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらったり、感情を共有することで、ストレスから解放されることができます。人に話を聞いてもらうことで、自分の気持ちに整理がついたり、新しい視点を得られたりするかもしれません。また、専門家に相談することも効果的です。カウンセリングや心理療法など、プロのサポートを受けることで、ストレスを解消することができます。自分自身のことを知って、適切な方法でストレスを解消しましょう。
自然に触れる
ストレスが溜まったときには、自然に触れることがストレス解消に役立つかもしれません。自然の中で、緑に囲まれた公園を散歩する、山や海に出かける、花や木々を眺めるなど、心地よい空気や風景に触れることで、心身ともにリフレッシュすることができます。自然に触れることは、ストレスホルモンの分泌を減らし、リラックス効果があるとされています。また、季節の変わり目や天気が良い日には、外出して気分転換することも有効です。自分自身が心地よく感じる方法で、自然と触れ合って、ストレスを解消しましょう。
芸術に触れる
ストレスがたまっているときには、芸術に触れることがストレス解消に役立つかもしれません。音楽を聴いたり、絵を描いたり、読書をすることで、心が豊かになり、リラックスすることができます。音楽を聴くと、脳がリズムに同調し、心拍数や血圧を下げる効果があるとされています。また、絵を描くことや読書をすることで、自分自身を表現したり、新しい世界に触れることができます。芸術に触れることは、ストレスホルモンの分泌を減らし、気分をリフレッシュする効果があるとされています。自分自身が心地よく感じる方法で、芸術に触れて、ストレスを解消しましょう。
当相談室では、ストレスが溜まることに関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。予約は以下のボタンからお進みいただけます。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-03-07
論考 井上陽平
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