離人感や現実感がない症状は、自分が現実に存在するのか、周囲のものや人々が本当に存在するのか、現実的な感覚が薄れたような状態になります。この症状は、離人性障害や現実感喪失症と呼ばれます。
離人感とは
離人感は、自己の行動や感情が、まるで自分のものでないかのように感じられる状態を指します。日常的な動作、例えば歩くことや笑うこと、そして感情の表現すらも、自分自身に属しているとは思えなくなります。この現象は、あたかも自分が自分自身を俯瞰しているような感覚に伴います。つまり、自分の行動や反応を、外部の観察者のように見ている感じです。
この感覚は非常に困惑するものであり、自分自身との関係を混乱させることがあります。自分の行動や感情が自己のものと感じられないことは、自己同一性に疑問を持たせ、自分が自分であるという感覚を損なうことがあります。離人感を経験する人々は、この状況を受け入れ、それと共に生きる方法を見つけるのに苦労することが多いです。
現実感がない人々とは
現実感の喪失を経験する人々は、まるで自分が周囲の世界や環境から切り離されているかのように感じることがあります。この状態では、「現実感がない」という言葉で表現されるように、実際に起こっている出来事や周囲の状況に対して、感覚的に実感が湧かないか、その実感の強度が非常に低くなることが特徴です。人々は、自分が体験していることが現実であると認識しつつも、それを実際に感じることができないか、感覚が鈍い状態になります。
この現実感の喪失は、心理的な不安やストレスが強い場合によく生じます。日常生活における様々な圧力や精神的な負担がこの感覚を引き起こす原因となることが多いです。また、この状態は離人症と関連していることがあり、離人症は自分自身や自分の行動が非現実的であるかのように感じられる精神状態を指します。
離人感や現実感がない原因
離人感や現実感の喪失などの症状は、脳の神経回路が異常をきたすことで引き起こされる可能性があります。これらの症状は、脳の特定の部分、特に視床下部、扁桃体、海馬といった領域の機能障害に関連していることが知られています。これらの脳領域は、感情の処理、ストレス反応、記憶の形成などに深く関与しています。
ストレスや不安、うつ病、トラウマ、パニック障害、さらには薬物の副作用などが、これらの症状の引き金となることがあります。これらの状態は、脳のこれらの領域に影響を与え、感情や記憶、感覚の処理に異常を生じさせる可能性があります。結果として、離人感や現実感の喪失といった症状が現れることがあります。
離人感や現実感が薄れると
一般的に、離人感や現実感が薄れた状態になると、自分が浮遊している感覚や、自分が夢の中にいるかのような感覚に襲われ、周囲のものがフワフワとした感覚に包まれることがあります。また、自分が他の人物の目を通して世界を見ているような感覚を覚えることもあります。
さらに、離人感や現実感がない人は、自分自身が自分でなくなっていく恐怖を感じることがあります。自分自身をコントロールできなくなる、自分自身の感情や行動が自分自身のものでないように感じるなどの経験が、離人感や現実感の喪失を引き起こすことがあります。
このような状況下では、自分自身がコントロールできていないと感じて、現実感覚の喪失や自己同一性の喪失を引き起こすことがあり、深刻な不安や恐怖を引き起こすこともあります。自分自身が自分でなくなってしまうと、自分自身がどこにいるのか、どこに向かっているのか分からなくなってしまうことがあります。また、周囲の人たちとの関係も変化してしまうため、孤独感や孤立感を感じることがあります。
自己の分離感
離人感や現実感の喪失という症状は、自分が自分自身から分離されているという感覚を示している可能性があります。この「自己の分離感」とは、自分がもはや自分でないと感じる状態を指し、自分自身と周囲の環境との関係が不明瞭になる感覚です。この状態になると、自分自身が現実世界の一部であるかどうかさえも曖昧に感じられるようになり、周囲の環境や人々に対する感覚が変わってしまうことがあります。
このような自己の分離感を経験する人は、現実とのつながりを失っていると感じるかもしれません。彼らは自分の感情や行動が自分のものであるとは思えなくなり、自分の身体や行動が自己とは無関係であるかのように感じることがあります。この状態は、自分自身や周囲の人々、環境に対する認識や感覚を歪めることがあり、日常生活に影響を与える可能性があります。
離人感や現実感がない具体例
- 「1週間ぶりに外出してみたんだけど、なんだかふわふわして、現実感がなくて。もしかして、離人症っていうのかなあ。地に足がついてなくて、現実の感じが薄く感じられるんだよね。」
- 「ぽやぽやしてて、なんだかふわふわして気持ち悪い気がしてたんだよね。でも、これは離人感ってやつかなあって思ってるんだ。」
これらの表現は、離人感や現実感がない症状が現れていることがわかります。久しぶりの外出だったことや、緊張や不安などの感情が原因で発生することがあります。このような感覚に襲われると、不安や恐怖を感じることもあるので、専門家に相談してみるのがいいでしょう。
- 「お風呂の扉は夢の国へと続いているんだよ。そこにはふわふわと雲の中や、お母さんのおなかの中を旅することができるんだ。」
この表現は、現実感覚が薄れた状態を表現していると捉えることができます。このような表現は、クリエイティブな想像力を刺激し、芸術的な表現を生み出すことがあります。ただし、現実感が薄れすぎると、日常生活に支障をきたすことがあるので、注意が必要です。
まとめ
離人感や現実感の喪失を経験する人々は、この病状が長期間にわたって続くことがあります。その結果、慢性的な疲労や苦痛が生じ、徐々に身体的な衰弱を引き起こすことがあります。このような状態が継続している場合、日常生活や人間関係に悪影響を及ぼすだけでなく、心身の健康全体にも影響が出ることがあります。そのため、適切な診断と治療が重要となり、病状の改善や回復を促すことが求められます。
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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-03-06
論考 井上陽平
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