境界性パーソナリティ障害の人との接し方|家族・恋人・友人

人格障害

境界性パーソナリティ障害(Borderline personality disorder)は、感情、行動、人間関係の不安定さ、衝動をうまく制御することができないことが特徴のパーソナリティ障害の一種です。この障害のある人は、自己イメージ、感情、行動のコントロールが難しく、しばしば自分自身や他人に対して過度に批判的であり、自己評価が極端に低い場合もあります。BPDのある人は、異常な不安感や抑うつ感、気分の急激な変化、自己像の不安定さ、自傷行為、慢性的な空虚感、妄想的念慮、重篤な解離症状などの特徴的な症状を示すことがあります。

BPDは、早期の精神的虐待や過剰な期待、反応性の高い神経系、遺伝など、多くの要因によって引き起こされる可能性があります。治療には、トラウマ治療、認知行動療法、精神療法、薬物療法など、様々なアプローチがありますが、個人の症状や状況に応じた統合的アプローチが推奨されています。

境界性パーソナリティ障害の状態を簡単に

境界性パーソナリティ障害の人は、過去に脅かされた経験から、些細なことでも原始的な防衛反応が繰り返し起こる状態にあります。そのため、心や身体の内部から悪いものが現れ、一人で部屋にいるだけでも寂しく感じたり、虚しくなったり、落ち着かなくなったり、居てもたっても居られずイライラしたりすることがあります。絶えず危険に備えた生き方をしているため、注意の向け方が独特になり、物事を客観的に見ることが難しくて、心で思っていることが現実かのように感じます。

また、BDPの人は、嫌悪することや不快な状況、予測不可能な出来事に対して、神経が繊細に反応しすぎて、恐れおののいたり、胸がざわついたり、体の中が凍りついたり、発作が起きたり、動けなくなったりすることがあります。さらに、悪いことばかりが頭の中に浮かび、体調が悪くなることもあります。このような状況が続くと、交感神経や背側迷走神経の働きが高度に活性化し、身体の感覚、感情、思考、覚醒度が変わり、常に不安定な状態に置かれます。

長期にわたって脅かされる状況が続いているため、非常に強いネガティブな感情を持ち、不安、不安定な自己イメージ、孤独、怒り、絶望感、不信感などを引き起こします。一方、苦痛な感情を切り離すと、自己感覚が失われ、自分が自分で無くなるような不安定な状態に陥り、慢性的な虚無感に苛まれることがあります。このような状態では、心や精神も複雑に組織化された防衛反応の中に完全に染まってしまっています。

境界性パーソナリティ障害との接し方

境界性パーソナリティ障害の方が持つ痛みや感情の揺れ動きは、その方自身にとっても非常につらいものです。そのため、その方に対して適切なサポートを提供することが大切です。以下は、BPDの方に対して接する際の一般的なアドバイスです。

焦らないでゆっくりと接する

境界性パーソナリティ障害の人は、過去のトラウマや現在の状況によって身体が痛み、感情が大きく揺れ動くことがあります。そのため、焦って急かすことや、感情に過剰に反応することは避けるようにしましょう。ゆっくりと静かに話を聞いて、相手のペースに合わせて接することが大切です。

穏やかなトーンで話す

境界性パーソナリティ障害の人は、感情が高ぶっている時には、些細なことでも攻撃的になることがあります。そのため、ゆったりと落ち着いた姿勢でいて穏やかなトーンで話すことが大切です。相手の怒りに反応して、自分も感情的になることは避けましょう。

注意深く聞くこと

彼らは、自分の話を聞いてもらえることや、自分の気持ちを分かってもらうことを求めています。彼らの話を注意深く聞き、共感や肯定してあげることが大切です。また、彼らの話を打ち切ったり、無視したりしないように注意してください。

感情や行動を理解する

境界性パーソナリティ障害の人は、自分自身の感情に対しても苦手意識を持っていることがあります。そのため、相手の感情に寄り添い、受け入れることが大切です。しかし、相手が不適切な行動を起こした場合は、その行動の背景には、過去のトラウマによるダメージによって発生する過覚醒反応かもしれないという可能性を考え、性格の問題とは区別したほうがいいかもしれません。

安心感を与える

境界性パーソナリティ障害の人は、トラウマの影響のために生じているかもしれない不穏な行動や不安・緊張、不安定な感情状態にあるため、常に安心感を求めています。そのため、日常生活の中で穏やかな時間を繰り返し獲得できるように、相手の気持ちや要求を察して、適切な言葉をかけたり、相手を支えることが必要です。

限界を設けることが大切

境界性パーソナリティ障害の人は、自分でネガティブな感情を処理できず、問題行動を起こすことがあるため、周囲の人々は適切な限界を設けることが必要です。限界を設けることで、彼ら自身が安定した人間関係を築く上でも役立ちます。ただし、限界を設ける際には、相手の感情や状況にも十分に配慮し、傷つけたり孤立させたりしないように気をつけることが大切です。

常に安定した関係を築く

境界性パーソナリティ障害の人は、心と身体が不安定な状態にあるため、安定した関係を築くことが必要です。相手との信頼関係や、一定のルールを守ることが、相手の不安を軽減することにつながります。また、定期的なコミュニケーションや、約束を守ることが大切です。

トリガーを避ける

境界性パーソナリティ障害の人は、特定のトリガーに反応して、過覚醒から強い感情を示すことがあります。そのため、トリガーとなることや状況を避けることが望ましいです。また、トリガーとなることが避けられない場合は、彼らの感情や状況に配慮した上で接することが求められます。

できることとできないことを明確にする

境界性パーソナリティ障害の人と関わる際には、彼らの状況や問題に対して理解を示し、安定した環境を提供することが重要です。しかし、彼らの問題行動に対して、自分自身を犠牲にしたり、責任を負わなければならないわけではありません。彼らの問題行動は、彼ら自身が責任を負う必要があります。そのため、できることとできないことを明確にすることで、適切なサポートが提供できるようになります。

見捨てられ不安への対応

境界性パーソナリティ障害の人は、過去に裏切りや見捨てられた経験が多く、信頼関係を築くことが非常に難しいところがあります。彼らにとっては信頼関係を築くことが非常に重要であり、見捨てられることを非常に怖がります。そのため、彼らに対して、あなたが彼らを見捨てたり、裏切ったりしないことを示すことが重要です。例えば、定期的に会う約束をすることで、彼らの安心感を高めることができます。また、彼らとの関係で、あなたができることを伝え、できないことについても率直に伝えることで、彼らが信頼し、安心できる環境を提供することができます。

嘘をついたりしないこと

境界性パーソナリティ障害の人は、嘘をつかれたり騙されたりすることを非常に嫌います。そのため、彼らと関わる人は、できるだけ正直に自分の考えや感情を伝え、約束したことは必ず守るように努めることが重要です。また、過去の経験から、さまざまなことに不安や心配してしまうため、適切なコミュニケーションをとることが非常に重要です。

ネガティブな感情に共感する

境界性パーソナリティ障害の人は、非常に強いネガティブな感情を持つ傾向があります。彼らの感情に共感し、聞き手として受け止めることが大切です。その上で、自分自身の感情を制御し、穏やかなトーンで話すことが望ましいです。

自己中心的な行動を理解する

境界性パーソナリティ障害の人は、自己中心的な行動を取ることがあります。そのため、自分自身が不快な思いをしないように注意する必要があります。また、彼らが自己中心的な行動を取る理由を理解することで、彼らの立場や気持ちを理解しやすくなります。

批判・拒絶的な言葉を避ける

境界性パーソナリティ障害の人は、批判的・拒絶的なな言葉に過剰に反応することがあります。そのため、彼らに対して批判的な言葉を避け、肯定的な言葉を使うように心がけることが大切です。また、感情的にならず、冷静に対応することも重要です。

好奇心・興味を大切にする

境界性パーソナリティ障害の人は、過去のトラウマや過ちにとらわれ、自分を責めたり、自分を否定したりする傾向があります。彼らに関わる人は、彼らの好奇心を大切にすることが重要です。また、彼らが自分自身を発見し、自己肯定感を高めるためには、自分がやりたいことに取り組んでいくことが大切です。彼らの興味や関心を尊重し、彼らがやりたいことに取り組むことを励ますようにします。

体調を気遣う

境界性パーソナリティ障害の人は、現実世界の刺激に翻弄されて疲れやすく、過覚醒から、身体の力が抜けなくて、体調が悪化しやすい傾向があります。そのため、彼らに関わる人は、自分自身がリラックスしていることを確認し、相手も同じようにリラックスできるように気を配りましょう。また、相手が疲れていないかを確認し、必要に応じて、休憩を取るとか、疲労や痛みが蓄積される前に早めに切り上げるほうがいいかもしれません。

専門家の助けを求めよう

境界性パーソナリティ障害は複雑で重度の精神障害であり、治療が難しい場合が多いです。パートナー、家族、友人は、専門家の助けを求めることが重要です。適切な治療を受けることで、彼らの生活の質を改善することができます。

以上が、境界性パーソナリティ障害の方に対して接する際の一般的なアドバイスです。ただし、個々の状況によって異なります。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-02-21
論考 井上陽平

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