愛着障害の子供と大人の特徴|恋愛・恋人関係

愛着障害は、愛着理論に基づいて定義された概念で、乳幼児が人と目を合わせず、養育者に対して通常では見られない不安定で複雑な行動を示す状況を指します。愛着は、親と親密な関係を築こうとする正常な反応であり、赤ちゃんは親に対して愛情や優しさ、ケアを求めます。この母親に対する親和性の経験は、赤ちゃんが自己感を獲得し、安心感を得るための重要なステップとなり、自意識の成長を促進します。

しかし、愛着障害を持つ子どもは、幼少期から親子関係がこじれ、緊張やストレス状態にあります。その結果、本来なら自分を保護するはずの両親が、自分を脅かす存在と感じられるようになります。このような脅威が繰り返されると、子どもは戦うか逃げるか、凍りつくか死んだふりでやり過ごすしかなく、トラウマが植え付けられます。それでも子どもは、安全でない世界で生き延びるために、さまざまな戦略を駆使して生活していきます。

愛着スタイルの4分類

愛着スタイルは、一般的にA型(回避型)、B型(安定型)、C型(アンビヴァレント型)、そして1990年代に認識されるようになったD型(無秩序・無方向型)の4つに分類されます。

A型(回避型)の子どもたちは、養育者との分離時に混乱を示しますが、同時に養育者との間に距離を置く特徴があります。B型(安定型)の子どもたちは、分離時に混乱を示す一方で、再会時には容易に落ち着く傾向があります。C型(アンビヴァレント型)の子どもたちは、分離時に苦痛を示し、再会後もネガティブな情緒状態を保つことが多いです。

D型(無秩序・無方向型)の子どもたちは、一見すると親に近づくことも退くこともできないように見えます。彼らは不自然でぎこちない動きをしたり、場違いな行動をしたり、突然すくんだり、うつろな表情で動きを止めたりすることがあります。このようなパータンの子どもは、子どもが自由に遊ぶことを阻害し、その結果として健全な成長を妨げてしまう可能性があります。

愛着障害の理解は、子どもたちが自己や他者、そして世界とどのように関わるかを理解する上で非常に重要な要素であり、それぞれの愛着スタイルが子どもたちの心理的発達と精神健康にどのように影響を与えるかを理解することは、適切な支援と介入を提供するために不可欠です。

愛着障害を持つ子どもの特徴

愛着障害を抱える子どもたちは、親に対して世話を求める行動や懲罰的な態度など、多様な行動パターンを示すことがあります。彼らは親からの愛情やケアを切望しながらも、同時に親の怒りや拒絶を恐れるという相反する感情を内に秘めています。

子どもたちが親に対して愛情や信頼、許しの感情を持ち合わせていても、親が恐怖を引き起こす存在となる場合、子どもたちは感情の嵐に巻き込まれ、自らの感情や行動を制御できなくなることがあります。結果として、自分を責めることで抑うつ状態に陥り、悲しいサイクルが繰り返されることがあるのです。

愛着障害を抱える子どもたちは、親の要求を優先し、自分の感情を抑制することで、不安定で傷つきやすい心の状態になっています。このような状況下では、他の子どもたちが無邪気に遊んでいる一方で、彼らは親との関係に緊張感を抱え、心配事が絶えず、落ち着きを失ってしまいます。

追い詰められた状況では、彼らは身体の不調を訴えたり、混乱し、パニックに陥ることがあります。このような状況下では、彼らは自分が何をすべきか分からなくなり、物事が思うように運ばず、失敗を重ねるたびに罪悪感を覚え、自己責任感が増してしまいます。

赤ちゃんの頃からトラウマを経験した人々は、警戒心が強まり、絶えず緊張状態にあります。これが長期間続くと、その疲労感は彼らを疲れ果てさせ、動けなくなるまでに至ることがあります。このような状態は、彼らが生活への希望を失い、目立たないように、自己の存在を隠すようにする傾向があります。

このような状況では、彼らの真の自己、すなわち本質的な自我は、周囲から見過ごされる可能性が高くなります。他者からの視線を避けるために自己を隠す行為は、彼らが孤独感や寂しさといった感情に圧倒され、それらが彼らの本質的な自己を押し潰してしまう可能性があります。

愛着障害にさせる親の特徴

子どもが愛着障害を発展させる背後には、しばしば親の特定の特徴や要因が存在します。親が抑うつ傾向にある、精神的に不安定である、あるいは虐待の危険な兆候がある場合、これらはすべて子どもの愛着障害の発生に寄与します。特に、被虐待児の研究では、Dタイプを示す子どもが82%に達し、親のネグレクトが疑われる発育不全児でもDタイプが多いと報告されています。

Dタイプの親は、過去のトラウマティックな記憶やショックに曝された状態に支配され、自身が恐怖と混乱に陥ります。その結果、彼らは子どもにとっての安全な基地とはならず、むしろ子どもに危機や恐怖を与える存在になります。親がトラウマに囚われ、世界に対して恐怖を感じている場合、子どもに安心や安全感を提供することができません。

その結果、子どもたちは親の顔色を伺い、感情の波に合わせて生きるようになり、正しい行動を探求することに注力します。これにより、自分自身の感情や願望は深く抑制され、その存在感を失い始めます。人生を通じて、息が詰まるような感覚を抱えながらも、親に対する微細な緊張状態を保ち続けます。

幼少期からトラウマを持つ人は

幼少期からトラウマの歴史を持つ人の心の奥底には、しこりのような塊が潜んでおり、気分が落ち込んで、希望の光を失ってしまいます。この塊は自身の感情や願望を内側に押し込んできた結果生じたものです。心の世界は、子どものような純粋さを持ちつつも空想に溢れ、一方で、不安で心細くて、寂しくて、切なさに浸っています。

これらの人々は感受性が豊かである一方で、その敏感さが原因となり、積み重なったトラウマに苦しみを抱えてきました。発達の早い段階から、精神的な自立を迫られ、母親との親密さを求め、抱きしめられたいという原初的な切望がトラウマと化してしまいました。

成長過程で親との関係を断ち切り、自己を保護するための空想の世界を作り上げました。しかしながら、適切な自己表現できず、表向きの強さやプライドを維持しながら、秘めた依存性をひそかに保持していました。

愛着トラウマの影響

人が愛着トラウマを持つとは、その深深に刻まれた傷が、幼い頃に自分を育てた者たちから受けた痛みから生じるものです。その人々は、親からの手を振るう暴力、無視され続けるネグレクト、あるいは性的な虐待を、絶えず体験するという壮絶な状況の中で育ちました。それでも彼らは、親への愛情を捨て去ることなく、逆に死にもの狂いで親を愛し続けました。

一方で、彼らの愛情は親からは無価値なものとして扱われ、自分の欲求を持つことすら恥ずかしいと感じさせられました。それは、親からの無視や不在を経験し、その結果として怒りが内部に蓄積されていくという痛みでした。その結果、日常生活全体が辛いものとなり、彼らは常に窮地に立たされる存在となりました。

そして、大人になり、親とは異なる親密な人々との繋がりを求めるとき、その道を阻む力が内的世界に存在します。自分の感情を解放し、他人と触れ合おうとする試みに対し、この力は攻撃的に反応します。それは、かつて親から受けた痛みと同じように、自分を守るための反射的な行動であると同時に、新たな関係性への恐怖を表しています。

脱抑制型と抑制型愛着障害

愛着障害という心の病は、大きく二つの類型に分類されます。一つは脱抑制型と称され、このタイプの人々は周囲の全員から好意を持ってもらいたいという欲求が強く、無秩序な人間関係を形成しやすい特徴を持ちます。もう一つは抑制型と呼ばれ、自分自身を孤独に包み込み、他者との関わりを避ける傾向があります。これらの心性は、人々がどのように安全を感じ、どのように自分自身を保護し、そしてどのように世界を体験するかに影響を与えます。

愛着障害を抱える子どもたちは、自身の心身に深く刻まれたトラウマから、彼らが存在する空間や他者に対して潜在的な危険を感じてしまいます。これは愛着対象となる人々や周囲の環境に対する不安や警戒心を生む原因となります。

脱抑制型の愛着障害を持つ人々は、周囲の環境が危険を孕んでいるという感覚を持ち、愛する対象との間で一瞬たりとも切れることのない絆を求めます。彼らは、他者からの注目を求め、周囲の期待に対して自らを適応させようと努力します。彼らはただ周りに好かれるだけでなく、安定感や信頼感を提供してくれる他者に熱心に依存し、空間の不確定性や恐怖から安全を得ようとします。

一方、抑制型の愛着障害を持つ人々は、他者(対象)が危険な存在であるとの認識と、他者の存在しない空間に安心感を求めます。彼らは、他者が危険をはらんでいると感じるため、無意味な緊張を引き起こしながら、人目を避ける生活となり、回避型の愛着スタイルを生み出す可能性があります。彼らは他者からの批判や拒絶を恐れ、これらの状況に遭遇するとすぐに自己を閉じ込めてしまいます。

年齢とともに、愛着障害を持つ子どもたちは、ただ空間に危険を感じるだけでなく、他者に対しても同様に危険を感じるようになります。この結果、脱抑制型の人々はしだいに抑制型へと変化する傾向があり、この遷移は愛着障害を持つ子どもたちの中に多く見られる現象と言われています。このように、愛着障害の人々は、さまざまな愛着スタイルを形成しており、彼らが感じる不安や恐怖に対処しようとする独自の戦術を反映しています。

回避型の愛着スタイルの恋愛

抑制型の愛着障害を持つ人々は、親子関係における愛着の欠如が、その後の人間関係においても繰り返し失敗を招くことが多いです。重要な人々との関係が深まろうとする瞬間に、心は混乱し、相手を傷つける行動を取ったり、自身が落ち込むことがしばしばあります。

彼ら自身が持てる感情的な容量が小さく、異性との親密な関係を築くことが難しくなります。また、他者を受け入れる能力が不足しているため、人間関係の構築が困難となることがあります。

彼らは、大切な人との間に喜びという境地を築くことを諦め、孤独な場所で一人で生きることを望むことがあります。自分自身を守るための防衛策として、他者から距離を置くことを選び、対人関係の緊張や不安から逃れることを試みます。

当相談室では、愛着障害に関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。予約は以下のボタンからお進みいただけます。

STORES 予約 から予約する

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-05-16
論考 井上陽平