毒親育ちの長女は病みやすい|家族の犠牲で性格が歪む

親子・家族

毒親という概念が広く認知され始めた現代において、特に焦点を当てるべきなのは長女に対する影響です。長女は親の期待と不安が集約される媒介となることが多く、その結果、不健全な関係が形成されやすいのです。

妊娠と毒親:未解決のトラウマが家庭内に与える影響

毒親の一つの傾向としては、初めて妊娠したとき、突如として自分の身体に強く意識が向くようになります。そのことで、以前から持っていたトラウマ反応が出やすくなり、夫に対しても冷たく当たってしまうことが増えます。妊娠期間中、そして長女が生まれてからも、常にイライラしたり、落ち込んだりするようになります。

長女に対する期待と神経質な態度

特に一人目の子どもを育てる際、多くの毒母は神経質になり、感情的な接し方をしてしまうことが多いです。その頃の母は、「ご近所さんに迷惑をかけてはいけない」と、泣くことすら許されないといった、不健全な思考に囚われがちで、極度に気を遣っている状態です。これは、一人目の子育てに不慣れな母が、「自分がしている育児が正しいのか、それとも何か他に方法はないのか」という不安から来るものです。

二人目以降とのギャップ

対照的に、二人目以降の子どもたちに対しては、母は以前よりも落ち着き、大らかな態度で接することが多いです。この態度の変化が、長女に与える影響は非常に大きくなります。

長女としての誤解と心の傷

しかし、この変化が長女に与える影響は深刻です。なぜなら、長女は「もしかして自分には何らかの問題があるのではないか」と感じ、それが原因で母が神経質になっていたのだと誤解してしまう可能性が高いからです。このような誤解は、自己評価の低さや自己効力感の喪失として、長期的な心の傷となって表れることが多いです。

毒母の連鎖:何世代にも渡る家族の暗い遺産

長女は毒母によって心に傷を負いながらも、何とかその重荷を背負い、生きていくようになります。このような毒母の行動は、実は母自身が子供時代に感じた孤独や不安を、意識せずに長女に向けてしまっているのかもしれません。母が自分自身の問題や過去の傷を解決できずにいるため、その感情が長女に影響を与えていると言えます。

さらに、このような問題は母から母へと継がれる可能性があり、毒母の母親もまた、同じような行動パターンを持っていたかもしれません。つまり、この毒母という問題は、一世代限りの問題ではなく、何世代にもわたって続いている可能性があるのです。

家族の中の不平等:毒親との心の闘い

毒親に育てられて、長女が病んでしまうパターンの多くは、親の態度が妹と私で大きく異なることです。妹は親から特別扱いを受けており、明らかに「お気に入り」です。一方で、私は常に厳しく評価され、何をしても認められる瞬間がほとんどありませんでした。このような環境は、私に深刻なストレスと身体的な負担を与えました。結果として、家族と一緒にいるだけで体調を崩すことがよく起きます。

しかし、そのことを親に言っても、反応は「お前の心は脆すぎる!」というものでした。親は私の感情や体調を理解しようとするどころか、逆に私を責めました。その結果、鬱症状が出始め、喜怒哀楽の表現が出来なくなり、意欲や気力、集中力が低くなって興味や関心を失いました。

この体験は、親子関係や家庭環境が個々の心理状態に与える影響の深刻さを物語っています。また、心の健康に関する理解が浅いと、症状を単なる身体の弱さと誤解し、真の問題を見過ごす可能性もあります。私が体調を崩した背景には、単なる身体の弱さではなく、家庭内での不平等や心のストレスが大きく影響していたのです。

日本を含む多くの文化では、家族というものは疑いようのない「安全な場所」とされがちですが、それが必ずしも真実でないケースも多々あります。家庭内での偏見や差別、愛情の不均衡は、心の健康を大きく左右する要素となり得ます。

毒親に育てられた心の葛藤

毒母に育てられた長女のパターンとしては、子供の頃から母は、私に対して過度に批判的であり、感情的な虐待が日常でした。何をしても認められることは少なく、代わりに常に非難と批評が降り注がれました。長女であることに加え、家族の中で「しっかり者」でいることが求められる日本の文化において、その罪悪感はより一層増していきました。

家を出て独立すると決意したのは、この母との距離を置く唯一の逃げ道と考えたからです。しかし、それが容易な選択ではなかったことは明白で、内心では「長女として、親を見捨てるなんて」という罪悪感に苛まれました。友達や親戚、そしてテレビやSNSで見かける理想的な家族を端から眺める度、親不孝である自分を責め続けました。

成人してすぐに実家を出ましたが、物理的な距離を置いたところで、心の中の母という「枷」からは逃れられませんでした。自分が失敗するたび、過去の母の言葉が頭に浮かび、その批評と非難が今でも私を縛り付けています。

心の底では、毒母に育てられたことが、私が抱えるコンプレックスや自己否定にどれだけ影響を与えているのか理解しています。しかし、その理解があっても変わるわけではありません。もしも時間を巻き戻せるのなら、私はその母とは別の道を歩む選択をしたいとさえ思います。

結論:変化と認識の必要性

長女が毒親から受ける影響は深刻ですが、認識と改善のプロセスを通じて、より健全な親子関係を築くことが可能です。親が自らの行動について深く考察し、子供に誠実に謝罪と説明をすること、そして改善することで、新たな一歩を踏み出せるでしょう。もちろん、過去は変えられませんが、これからの関係性は改善することができます。この問題に対する理解と自己認識は、毒母という厳しいレッテルを超えて、新しい関係性を築く第一歩となるでしょう。

毒親による育成環境の影響を受け、精神的に苦しんでいる人々にとって、問題に対する深い理解と具体的な対策が不可欠です。しかし、その一歩目として最も重要なのは、自分自身を過度に責めることをやめることかもしれません。過去の出来事が現在や未来を絶対に決定するわけではないと理解し、自分をその状況から解放する必要があります。

その上で、私たちはこの問題が社会全体にどのような影響を与えているのか深く考察するべきです。そして、状況を改善するためにどのような手段が存在するのかを探し出し、実行に移すことが次のステップとなります。母や親に象徴されるような「枷」から自由になるためには、まずは自分自身を解放する場所と時間を作ることが大切です。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-09-05
論考 井上陽平

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