アダルトチルドレンは、その生活において様々な困難に直面することがしばしばあります。多くの場合、彼らが子どもの頃から経験してきた無力感や悩みが源にあります。子どもの時に、親の機嫌が悪くなることが一因となり、自分の本音や不満を表現することが難しくなって、親の期待に応えるために、正解を探したり、丁寧に接することを学びました。
彼らはまた、親の態度に恐怖を感じることがあり、明確な理由がなくとも、不安を抱え続けることがあるのです。このような感情は彼らの日常生活にも影響を与え、自分の意志が通らない状況が度重なることで、ますます苦悩することになります。
アダルトチルドレンが抱える生きづらさは、親の機嫌の良し悪しに左右されることが多く、自分の感情やニーズに対して敏感になり、時には過剰に反応してしまうこともあります。その結果、彼らは親との関係において慎重になり、自己犠牲を払ってでも親の期待に応えようと努力するのです。このように、アダルトチルドレンは、幼少期から親との複雑な関係を抱え、成長してもその影響が続くことが多いのです。
家族への幻想が消えて絶望する
アダルトチルドレンや機能不全家庭で育った人々は、自分たちの家庭が一般的な「普通」の家庭だと信じて長い間過ごしてきます。しかし、ある瞬間に、自分の置かれていた状況が実は普通ではなかったことに気づくことがあります。その瞬間は、彼らにとって衝撃的なトラウマ体験になり、それまでの自分の中の常識が一変することになります。
彼らは世間一般的な普通や常識を学び直し、認知の歪みを修正しながら、良し悪しの区別を見直すことが求められます。自分の置かれていた状況を把握し、ショックを受けたり、落ち込んだりすることがあります。彼らは「もっと早く気づけばよかった」と自分を責め、悲しみや後悔にさいなまれることがあります。
気づく前までは、理不尽な思いを抱えながらも、両親を尊敬し、疑わずに過ごしていたため、気づいた瞬間には家族の絆が崩れるかのような心境に陥ります。両親の厳しさを愛情だと信じていた彼らは、自分の気づいたことが両親のこれまでの教育を否定することになるため、気づかないままでいたかったと感じることがあります。
親子関係からくる歪み
アダルトチルドレンは、幼少期から親に怒られないように過ごすことが生活の基本となることがあります。その結果、親の考えが物事の基準となり、彼ら自身の感情や意見が後回しにされる傾向があります。彼らは常に親に怒られないかと不安に思い、緊張感に満ちた日常を送ります。
また、アダルトチルドレンは親に対して本音や真の感情を伝えることに躊躇し、どう思われるかを気にするあまり、優等生の態度や献身的な行動を取ることが多いです。このような態度は、成長して大人になっても続くことがあり、過度の考慮から疲れやストレスが蓄積し、性格や人格が歪んでしまう可能性があります。
疑心暗鬼になる
アダルトチルドレンが抱える生きづらさは、他人からの言葉や感情、行動を素直に受け入れられず、疑心暗鬼になってしまうことが挙げられます。他人とのコミュニケーションでは、一度言われたことを横に置いてから、細かく分析し、半信半疑の態度を取りがちです。このような行動は、自分自身を守ろうとする無意識の防衛反応であり、その結果、人間関係のストレスが増大し、より一層生きづらさが深まることに繋がってしまうのです。
甘えられず大人らしい態度
アダルトチルドレンは、幼少期の頃に両親や他の人に対して無邪気に甘えたいと願っていました。しかし、成長する過程で、彼らは早く大人にならねばならないと感じ、しっかり者になってしまいました。現在は大人であり、過去の子ども時代をやり直すことはできません。心の奥底では、今でも誰かに甘えたいという願望がありますが、実際には他人に甘えることよりも甘えられる立場になるほうが対処しやすく感じてしまいます。
子どもの頃から大人びた態度で過ごしてきたため、彼らは後戻りが難しく、自分自身で抱え込んでしまう癖がついています。そのため、アダルトチルドレンは自分の感情をうまく表現できず、孤独感やストレスが溜まってしまうことがあります。
他人優先の自己犠牲
アダルトチルドレンの生きづらさの一つに、他人軸でしか生きられないことがあります。彼らは親孝行を重んじ、親に恥をかかせず、困らせず、親の役に立とうとする姿勢を持っています。これは、親や社会から受けた教育や価値観の影響であり、他人を思いやり、自己犠牲を尊ぶ人間性が求められていたことが背景にあります。また、両親からも同様の教えを受け、学校教育とも共通する内容だったため、彼らは自然と他人優先の生き方を身につけてしまいました。
現在でも、自分自身を優先する生き方に対して違和感を感じることがありますが、アダルトチルドレンは自分の幸せや自己実現のために、意識的に自分を大切にする生活スタイルを取り入れるよう努力しています。
警戒心を持ち続けて自分を守る
アダルトチルドレンが抱える生きづらさは、機能不全家庭での育ち方が大きく影響しています。そのような家庭環境では、家の中に常にピリピリとした緊張感が漂い、子どもたちは背中を丸めておどおどとした態度で過ごすことが多いです。
このような環境で育つ子どもたちは、失敗すれば厳しい目に遭うことを身にしみて理解しているため、警戒心を持ち続けながら生活するようになります。彼らは自分の安全を確保するために、自然と周囲に気を配り、周囲の人間関係や状況に対して過剰に神経を使うことが常態化してしまうのです。
このような子ども時代の経験は、大人になっても彼らの心に深く根ざし、アダルトチルドレンとしての生きづらさを生み出します。過剰な警戒心や緊張感が解消されず、彼らはリラックスできる瞬間が少なく、心身の健康に影響を及ぼすことがあります。
緊張し続けてエネルギーが枯渇する
アダルトチルドレンが抱える生きづらさは、幼少期に親から頻繁に怒られる経験や厳しい対応を受けることが多く生じるようになり、これが彼らの心身に深い影響を与えます。その結果、子どもたちは些細なことでも恐れを感じ、人の顔色を伺い、ビクビクした態度を取るようになります。彼らは、おかしいことや嫌なことにも我慢を強いられ、自分の本音や感情を抑え込むようになっていく。
このような状況下で育った彼らは、徐々に相談や助けを求めることすらできなくなり、誰かに素直に甘えたり、弱音を吐いたりすることができません。親から受けた過酷な仕打ちの影響で、身体が緊張し続け、エネルギーが枯渇してしまうのです。
感情を抑圧し続けて茫然とする
アダルトチルドレンは、幼少期に親から受けた言葉や行為が、深い心の傷として残り、生きづらさを感じることが多々あります。これらの記憶が蘇ると、胸が苦しくなることがあり、自分自身の感情や他人の感情に対処する能力が低下する傾向があります。その結果、彼らは茫然とした状態で日常生活を送ることが多くなります。
また、アダルトチルドレンは、悲しみや怒りなどのネガティブな感情を適切に外に向けることが難しいため、自分の感情を抑圧し続けることになります。その一方で、喜びや幸せを感じる能力も低下しており、感情のバランスが乱れた状態で生活していることが多いのです。
解決策が見つからず諦める
アダルトチルドレンは、幼少期から親に脅かされる経験をしていることが多く、強い圧力のもとで我慢を重ね、自分の真の要求や望むことが分からなくなることがあります。このような子どもたちは、夢や目標に向かって努力するものの、親の不適切な言動によって人生が狂ってしまいます。その結果、成功は望めないという思い込みを持つようになり、自尊心が欠落した大人へと成長する可能性が高まります。
彼らは諦めることが容易であり、特に理不尽な目に遭わされるときには、どんな言葉も無意味で、解決策が見つからないと感じることがあります。また、怒りが収まらず、過去に受けた傷や言われたことがフラッシュバックすることも多く、心に深い傷を抱え続けることになります。
自分のことがよく分からない
アダルトチルドレンの生きづらさは、親から繰り返し否定される経験が大きな要因となっています。その結果、彼らは失敗を恐れるあまり、何も挑戦できない臆病な性格に育ってしまうことがあります。自分の感情やニーズについても理解が難しく、多くの思考や感情が入り混じってしまい、自分が何を望んでいるのかがわからなくなります。
さらに、彼らは何事にも過剰に考え込む傾向があり、自分の本心を見つけ出すことが難しくなります。このような複雑な感情の渦の中で、アダルトチルドレンは自分の真の意志や感情を見失いがちです。
人間関係がうまくいかない
アダルトチルドレンが抱える生きづらさは、厳しい親や暴力的な家庭環境で育った子どもたちが、心を閉ざし、家庭や社会から自己防衛のためにシャットアウトしようとすることがあります。彼らは親や社会に反発し、怒りを抱えながら生きることが避けられない状況に置かれています。このような態度は、自分を守る手段として無意識に取り入れられているものであることが多いです。
アダルトチルドレンは、自分自身に失望し、内面にある怒りが他者との建設的な関係を築くことを妨げてしまいます。彼らにとって、傷つけ合わない関係という概念が理解できず、自分を守るためにすべての人間関係を断ち切る以外に良い解決策が見つからないと感じることがあります。
精神疾患のリスクが高まる
アダルトチルドレンが抱える生きづらさは、親の期待に応えることに焦点を当てて育ち、親の望むように振る舞うことが求められる環境で育つことが大きな要因となることがあります。その結果、彼らは大人になっても親の期待に応えようとするプレッシャーに苦しみ続け、精神的な問題に悩まされることが多くなります。
このような背景から、アダルトチルドレンは強迫性障害やうつ病、摂食障害、適応障害などの精神的な問題を患うことがあります。彼らは、自分が完璧でなければ価値がないと考えがちで、自分に厳しい基準を課し続けるため、心身の健康が維持できなくなることがあります。
歪みが治らない、変化しない
アダルトチルドレンが抱える問題の解決は、容易にはいかないものです。彼らは自分自身がおかしくなってしまったことを治そうとするものの、そういった変化はすぐには実現しません。その結果、彼らの特異な言動が周囲から遠ざけられたり、軽蔑されたりすることで、状況がさらに悪化することがあります。それでも、彼らは立ち直ろうと努力し続けますが、報われないことが多く、やがて努力すること自体の無駄や無意味さに気づくことがあります。
まとめ
アダルトチルドレンの生きづらさは、自分の育った環境に対する認識の変化や家族の絆への影響、さらには自分自身への後悔や悲しみが絡み合う複雑な心境によるものです。彼らにとって、自分の過去を受け入れ、適切なサポートやセラピーを通して自己理解や自己改善を図ることが重要であり、それによって彼らはより充実した人生を送ることができるでしょう。
当相談室では、アダルトチルドレンに関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。予約は以下のボタンからお進みいただけます。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-03-31
論考 井上陽平
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