妄想が止まらない病気をわかりやすく解説|想像との違い

精神疾患

妄想は、DSM-5によれば、相反する証拠に照らして変更することができない、固定された誤った信念として定義されています。

妄想とはわかりやすく解説する

「妄想」とは、現実には存在しない架空の事象や虚偽の情報を信じ込むことを指します。妄想は、明白な誤りであり、常識的な判断力を欠いた状態で、自己や周囲の状況を解釈することが原因で生じることがあります。

妄想は、出来事の誤解によってしばしば強化されます。多くは、ある程度のパラノイアも伴います。例えば、妄想的な人は、この信念を裏付ける証拠がなくても、誰かが電波を介して私のすべての動きを監視して、ネット上で情報を回していると主張するかもしれません。

妄想は、本人にとって非常に現実的に感じられるため、自分の妄想を他人に理解してもらえないことがあります。また、妄想的な人は、妄想を支持する証拠を見つけようとし、そのために現実とは異なる解釈をすることもあります。さらに、妄想的な人は、他人からの意見や批判を受け入れず、自分の信念を固く信じ続ける傾向があります。

妄想を抱く人は、現実と異なる認識を持ち、自分自身や周囲の人々、状況を誤解してしまうことがあります。また、妄想は、単一のテーマに焦点を合わせることもあれば、複数のテーマにまたがって現れることもあります。

病的な妄想の人は

病的な妄想を抱える人々は、架空の事象と現実の出来事の区別がつかないことがあります。特に、妄想の病理が強い人たちは、痛みを内に秘めながら、虚無感に満ちた実感の欠ける人生を過ごしています。誇大な妄想に耽り、現実とはかけ離れた思考を頭の中で繰り広げますが、その中には実際の他者の存在はありません。

ストレス・生物学的な脆弱性

病的な妄想の人は、しばしば生物学的な脆弱性を持っていることが多く、ストレスが過剰になると、底が抜けてしまうような体験をして、酷い状態になる可能性があります。彼らはしばしば、底なしの不安や疑念を抱き、自分自身や周囲の人々の安全に関する過剰な心配が日常生活を支配しています。彼らは、妄想的な思考に囚われているため、現実を認識することができず、常に自分の妄想に翻弄され、社会的な関係や日常生活を維持することが困難になることがあります。

生物学的な脆弱性をもつ人がストレスを受ける際に、自己と他者との境界を適切に認識する能力に影響を与える可能性があります。その結果、彼らは自分と他人の区別が曖昧になり、他人が自分の内部世界に侵入してくるという感覚を経験することがあります。

異常な身体感覚

病的な妄想の人は、しばしば異常な身体感覚を経験します。彼らの神経系は誤認知し、危険や生命の危機を感じることがあり、その結果、凍りついたり、崩れ落ちるような状態に陥ることがあります。このような無意識下の反応に沿った妄想的な物語を創り出すことがあります。

これらの物語は、彼らの異常な身体感覚を合理化しようとする試みであり、現実とは異なる認識に基づいています。そのため、彼らは全身の神経ネットワークの問題から、自分が存在するこの世界に対して誤った認識を引き起こします。

心の中で体験されることが現実

妄想的な物語は、個人が自分の心で感じるままに理解しようと試みますが、現実とは異なる解釈によって生じます。これにより、彼らの感覚や認識が歪んでしまい、現実とのつながりが損なわれることがあります。

病的な妄想の人は、現実との接続が希薄で、心の中で体験されることが現実であるかのように感じる魔術的な思考に支配されています。この心理状態では、個人は自分が感じていることが現実と一致していると信じ込むことがあります。彼らは自分自身や周囲の人々、社会に対して異常な不信感を抱き、常に危険や陰謀が潜んでいると感じています。

白黒思考

病的な妄想の人は、白黒思考が強く、証拠が少ないままに思いつきを信じ込みます。現実を単純化して、自分が正しいと信じる解釈に基づいて世界を見る傾向があります。彼らは、事実に基づく情報や他人の意見を無視し、自分の信念に基づいて判断します。また、自分自身や周囲の人々を完全に善良または悪意のある存在として見る傾向があります。このような思考の歪みは、現実との接続を希薄にし、社会的な相互作用を困難にする可能性があります。

周囲に対して過敏

病的な妄想の人は、しばしば他人の噂や会話に対して過敏に反応します。彼らは、自分に関する情報が周囲の人々や社会全体で広まっていると感じることがあります。このような感覚は、妄想的思考の一種であり、現実とは異なる認識を持っていることが原因です。彼らは、自分が特別視されていると感じたり、他人が自分の行動や思考に関心を持っていると考えたりすることがあります。このような妄想的な認識は、不安やストレスを引き起こし、対人関係や自己評価に悪影響を与えることがあります。

劣等感に対して過敏

病的な妄想の人は、自分自身に対して否定的な評価を持つことが多い傾向があります。このような評価は、自己劣等感や低い自尊心から生じる場合があります。そのため、妄想が強い人は、自分の劣等感に過敏に反応してしまうことがあります。たとえば、他人からの批判や否定的なコメントを受けた場合、自分自身を否定されたと感じてしまい、妄想を強めてしまうことがあります。

また、自分が他人よりも優れていると妄想することもあります。しかし、実際には自分自身に対して否定的な評価を持っているため、自分の妄想が現実に反映されないと、失望や挫折感を感じることがあります。

悪い妄想が止まらない人の病気

妄想が強い人は、さまざまな精神疾患や心理的状態と関連していることがあります。以下に、妄想を伴う可能性のあるいくつかの病気を説明します。

  1. 統合失調症(Schizophrenia):統合失調症は、幻覚や妄想を含む精神病症状が特徴の精神疾患です。妄想性統合失調症は、特に妄想が中心的な症状であるタイプです。
  2. 双極性障害(Bipolar Disorder):双極性障害は、極度の気分の変動(躁病状態とうつ病状態)が特徴的な精神疾患です。躁病状態では、過剰な自信や大袈裟な思考が妄想につながることがあります。
  3. 強迫性障害(強迫性障害、OCD):強迫性障害は、不合理な思考や恐れ(強迫観念)とそれに対処するための反復的な行動(強迫行為)が特徴的な病気です。一部の患者は、妄想的な思考が強迫観念として現れることがあります。
  4. 妄想性障害:妄想性障害は、特定の妄想が主な症状であり、他の精神病症状がほとんどない状態です。患者は、自分に関する誤った信念に固執し、現実とは異なる状況を受け入れることができません。
  5. 不安障害:不安障害の中には、過剰な不安や恐れが妄想的な思考につながることがあるものもあります。特に、健康不安障害(疾患恐怖症)では、自分が重篤な病気にかかっているという妄想が症状として現れることがあります。
  6. PTSD(心的外傷後ストレス障害):過去のトラウマを経験した人が、現在の状況に対して過剰に反応し、妄想的な恐れや不安を持つことがあります。フラッシュバックや悪夢、過度の警戒心などの症状が特徴です。
  7. 境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder, BPD):境界性パーソナリティ障害は、感情の不安定さ、自己イメージの問題、対人関係の困難が特徴のパーソナリティ障害です。妄想は主要な症状ではありませんが、一部の患者は、他人の意図や行動に対して誤った解釈をし、過剰に反応することがあります。これは、誤った信念や妄想的な思考につながることがあります。

これらの病気は、妄想が関連する精神疾患や心理的状態の一部です。それぞれの病気は異なる原因や症状、治療法を持ちますが、妄想的な思考は患者の日常生活に影響を与え、対人関係や仕事、学業などの機能を低下させることがあります。適切な診断と治療により、多くの患者は症状の改善や管理が可能です。

妄想と想像の違い

「妄想」とは、現実とは異なる不合理な信念を持つことを指します。これは、認知の歪みや現実とのかかわりが不適切な形である場合に起こります。妄想は、その性質上、主に精神障害や心の問題と関連しています。妄想的な考えは、その信念が現実の証拠に反していても、個人が強く信じていることが特徴です。妄想は、現実との認識のズレがあるため、通常は否定的な影響をもたらすことが多いです。

「想像」とは、私たちが考えたり、物事を理解するための基本的な能力です。想像力を使って、実際には存在しないシチュエーションやアイデアを心の中で組み立てます。これは創造力や問題解決能力の発展に役立ちます。想像は、作家が物語を創作したり、画家が絵を描いたり、科学者が新しいアイデアを開発したりする際に使用されます。想像力は一般的にポジティブな力として認識されており、私たちが新しいことを学んだり、創造的なアウトプットを生み出すために使用されます。

要するに、想像は創造的なプロセスで、現実とは異なるアイデアやシチュエーションを考えることができる一方、妄想は現実とのかかわりが不適切な形であることから、不合理な信念を持つ状態です。両者はその目的や性質において異なります。

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トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-03-19
論考 井上陽平

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