子供の時代の未成熟な頃に、不運にも破壊的なトラウマを受けてしまった子どもは、無形の傷を背負います。それは肉体的な傷とは異なり、目に見えないけれど、心や身体の奥深くに深く刻まれるために、その後の人生において、あまりにも容易に傷ついてしまうことになります。
この傷つきやすさは、自己という存在を一つにまとめ上げ、実体化する過程で、強固な防衛的な側面を組織化する糧となります。それは、生き残りを確保するための原初的なエネルギーを持つ、個人の根源的な力です。それはまるで、ユング派の臨床家ドナルド・カルシェッドが提唱したセルフケアシステムのようなものを、私たちの心の中に構築していくかのようです。
このシステムは、困難な状況から守り、内的な痛みや混乱から安全を確保するための防衛メカニズムを築きます。そして、心の中に残る無垢さと繊細さを保持し、保護する道筋となります。それらは良い方に向かえば、内的な世界を調和させ、絶えず成長し続けるための、心の中の指導者のような存在となり、自己成長を達成するためのエネルギー源となります。
しかしながら、時が経つにつれてその鎧は厚く硬くなりすぎることがあります。その結果、私たちの感情や体験を適切に処理し、感じる能力を遮断してしまうこともあります。
個人の精神の無垢な部分
心が加害者によって破壊され、痛みに塗れていても、かつての無邪気で何も知らなかった幼い日々の自分が、まだ私の心の深いところで静かに息づいています。その一部分は、純粋無垢な私、そして奇跡を生み出す可能性を秘めた子どもそのものです。彼女は天の呼び声を聞く特別な存在であり、その声に耳を傾けることができるのです。
その存在は、厚く重い沈黙のヴェールを通してでも、かすかな声を聴く能力を持っています。その声は、天と地をつなぐ神秘的な架け橋、天と地の間を行き来する仲介者のような存在です。それは私たちが本質的に持つ、天と地を繋げる力の一部なのです。
そう、心の中に潜むこの幼い私は、私たちの内なる神聖な声を聞く能力を持つ存在なのです。破壊と苦痛の中でも、彼女は静かに耳を傾け、天からの呼び声を聞き続けます。そして、その呼び声は、私たちが真の自己を見つけ、痛みを超えて前へ進む力となるのです。
幼い私は、決して希望を捨てず、生きる力を絶やさない不屈の存在です。私が見ている、感じている景色は、一見偽りのようにも見えるが、実はこの世界には美しいものが溢れていることを教えてくれている。その教えが私に希望を与え、生きる力を維持させています。
この幼い私、その存在こそが、私の生命体の中核、私自身の本質であるかもしれません。彼女は無邪気な純粋さを保ち続け、希望に満ちた視点で世界を見つめます。それは、私たちが困難に立ち向かい、自己成長を遂げる力の源泉です。彼女は、美しきものを見つけ出し、希望を持ち続ける原動力となる存在であることを示しています。
それゆえ、その幼い私を大切にすることは、私たち自身が未来に向けて進む力を保つために不可欠です。彼女の純粋さと希望に満ちた視点は、私たちが困難を乗り越え、自己成長を続けるための、力強さになります。だからこそ、私たちはその幼い私を、深く大切にし、彼女の声を聴くことを決して忘れてはなりません。
個人の精神の保護的な部分
傷心した自分の中で生きている生命の核は、明かりを灯し続け、希望を与え、生きる活力を絶えず供給し続けてくれるような存在です。そこには揺るぎない生命力があり、時折見え隠れする暗雲を払いのけて、道を照らし続けてくれます。
その生命の核は、目には見えませんが、その存在感は確かに感じることができます。それは私たち自身がまだ胎児だった時、温かく、安全に包み込んでくれた母胎のようなものです。それは肉体的な保護だけでなく、精神的な支えとなる存在でもあります。
この核は私たちが誰であるか、何を持っているかを知っています。内側に存在する生命の核は、内的な母性の象徴でもあります。それは、時には慈母のように優しく、時には知恵深い導き手のように、私を支え、指導し、心の安寧を与えてくれます。自己が自己を愛すること、自己を理解すること、自己を肯定すること――これらはすべて、母性の深遠なる優しさと寛容性が表れています。
それは母親のように、無条件の愛と寛大さで、我々自身を見つめ、受け入れ、そして成長させてくれます。私が疲れ果ててしまったとき、失望と絶望に打ちのめされたとき、または自己を見失いそうになったとき、いつもそこにあり、私に力を与えてくれます。それはまさに心の中の拠り所であり、倒れそうな時でも私たちを支え、立ち上がらせてくれます。
その労わりは、ふんわりとした暖かさで私を包み、心地よい風が私を優しく撫でるように、私の心と魂を癒します。そして、その励ましは、一日の終わりに見る夕日のように、私の心に平和と希望を与え、新たな一日に向けての力を与えてくれます。
当相談室では、心の内側にいる幼い子どもに関するカウンセリングや心理療法を希望される方に対し、ご予約いただけるようになっております。予約は以下のボタンからお進みいただけます。
トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-05-12
論考 井上陽平
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