トラウマの治し方・克服する方法

トラウマを克服するには、安全で快適な環境を作ることが重要です。自分の力で潜在的な脅威から距離を置くことができ、サポートを受けるときに効果が出ます。トラウマ治療は、安全と快適さの感覚を確立して、安定した心理状態を維持することができるようにします。

治療では、心地良いイメージや不快なイメージを行き来し、身体に音や振動を繰り返しさらし、身を委ねながら、修復と治癒を繰り返すことにより、ストレスやトラウマ反応に対する耐性を高めます。さらに、日常生活の中で休憩を取り、リラクゼーションのテクニックを学ぶことは、リラックスした環境を作り出すのに役立ちます。時間が経つにつれて、体の凍りつきや過覚醒反応は徐々に緩和され、体がリラックスするにつれて、心から良いものが溢れ、より柔軟になり、前向きな状態に戻ります。

トラウマとは

トラウマは、人が生命を脅かす危機を感じたときに発生します。危険な場面で、誰かに助けを求めて、助けてもらう体験をすると、彼らはトラウマになることはありません。しかし、助けを求めようとしても効果的に行動できない場合、交感神経系が過活動になり、心臓は鼓動が速くなり、体全体に血液を送り出し、筋肉が闘争または逃走反応に反応します。彼らが戦うか逃げるための効果的な行動をとることができない場合、彼らはトラウマを負うことになります。繰り返し脅かされた人は、それに応じて凍りつき、筋肉が硬直し、動けなくなることがあります。

人が凍りつくと、喉が引き締まり、手足が痺れ、話すことも叫ぶこともできなくなります。彼らが抵抗できない場合、死んだふりをして、生き残ろうとします。一方、息の根を止められそうになると、筋肉が崩れて、心拍数や血圧が下がり、虚脱状態になることがあります。虚脱状態にある人は、身体感覚が麻痺して、感情との接触を失い、世界とのつながりが失われる可能性があります。

闘争や逃走、凍りつき/死んだふり、解離などのトラウマ反応は、生存状況で効果的だった過去の反応です。体は偉大で、無意識のうちに私たちが生き残るのを助けていますが、小さい頃から困難な状況を経験してきた人は、危険や脅威に対して敏感で、常に緊張状態にあり、心の視野が狭くて、注意や集中に問題が出ます。

トラウマを克服するためには、まず周囲への注意を広げることが大切です。五感をフルに活用し、身体感覚を意識した生活を心がけましょう。外界に対する注意が狭まっていると感じたら、意識的にそれを広げていくことが大切です。次に、自身の姿勢や筋肉が緊張していないかを常にチェックすることも重要です。気づいたら、リラックスする方法を使って筋肉を緩め、体を楽にして、心身ともにゆっくりと癒していきましょう。

トラウマケアでは、トラウマ体験の身体的影響と外界への注意の向け方がどのように現れて変化し続けるかに注意が払われます。過去の経験を共有し、個人的な強さを通してトラウマ的な状況をコントロールすることも、癒しのプロセスに役立ちます。あとは、体内の閉じ込められたエネルギーを癒し、解放するという自然の力に身を委ねることは、トラウマを克服する上で非常に重要です。

トラウマを克服する方法

複雑なトラウマを持つ人々は、環境の変化に応じて筋肉や内臓の緊張の高まりを経験し、脳は防御メカニズムに従事します。これらのトラウマを克服するためには、自分の体のおびえた部分と怒りを引き起こす可能性のある部分を調べて認識することにより、恐怖の根源を理解することが重要です。環境の刺激に対する身体の反応の認識を深めることで、生体の恒常性を維持する力が強まり、身体的な恐怖や感情的な痛みに直面しても、落ち着くための自己調整スキルを学ぶことができます。

自分の体をしっかり感じて、刺激に反応してどのように変化するかを観察することで、身体性を育むことができます。身体との友好関係を育むことで、心と身体の内部から悪いものが出てくる場合でも、身体的な感覚や感情に圧倒されることなく、落ち着きを保つために必要な自己調整スキルを身に付けることができます。

ジムで体を強化するだけでなく、ヨガ、瞑想、演劇、運動、人との交流などの実践を通じて調和のとれた生活を体験することが重要です。徐々に体幹を強化し、姿勢を改善しながら、しなやかでリラックスした柔軟で伸縮性のある体づくりを目指しています。穏やかな状態を達成するために、身体的なアプローチ、イメージ療法、ヨガ、瞑想、演劇、歌、ダンス、トランポリン、バランスボール、スムービーリングの組み合わせを使用して、筋肉を伸ばしてリラックスさせ、内臓を楽にし、自律神経系を安定させ、自然に平和な状態に導くことができます。

安全な空間を作る

トラウマを克服する過程において、安全な環境を整えることが非常に重要です。トラウマを抱えた人は、過去に経験した出来事が再び起こるのではないかという恐怖心に苦しんでおり、安心して治療を受けることができる環境が必要となります。

まず、自分が生活している環境が安全である必要があります。家庭環境や職場環境が安全であることが望ましいです。特に、トラウマを引き起こした出来事が自宅や職場で起こった場合には、その環境から離れることも必要となる場合があります。

また、治療を行う場所やセラピストとの関係性が安全であることも必要です。治療の場では、安全で信頼できる環境を整えることが重要です。治療の場所が安全であることに加え、セラピストとの信頼関係が築けることが望ましいです。治療において、自分自身のトラウマについて話しやすい環境を整えることが大切です。

ストレスや緊張を減らす

トラウマを抱えた人が生活全般のストレスや緊張を感じると、トラウマの影響を受けやすい状態になることがあります。このため、まずはストレスや緊張を軽減することが重要となります。具体的には、睡眠時間を確保することが望ましいです。睡眠不足は、ストレスや不安を増加させるため、十分な睡眠時間を確保することが必要です。また、バランスの良い食事をすることも大切です。栄養バランスが良い食事を摂取することで、身体の健康を維持することができ、ストレスに対する抵抗力を高めることができます。

さらに、運動をすることも有効です。運動は、身体の緊張を解きほぐし、ストレスを軽減する効果があります。運動をすることで、身体的なストレスを軽減し、トラウマからの回復を促すことができます。また、リラックスするための時間を作ることも重要です。ストレスを感じた時には、深呼吸や瞑想などのリラックス法を行うことで、心身ともにリラックスすることができます。日常生活の中で、リラックスする時間を設けることで、ストレスを軽減することができます。

カウンセリング

トラウマを克服するためには、支持的なカウンセリングが有効です。トラウマを扱う治療法は、侵襲性が高いため、本人の負担が大きくなりすぎることがあります。そのため、まずは信頼関係を構築し、生活が安定するまでは、カウンセリングを中心に行うことが重要です。

カウンセリングでは、自分の気持ちや思っていることを少しずつ話していき、カウンセラーが肯定的な関心や気持ちで受け止めてくれることが重要です。このような体験を通じて、自分自身の感情を受け入れ、理解することができ、トラウマを克服するための自信や力を得ることができます。カウンセリングは、専門家の指導のもと、安心できる空間で行われるため、トラウマに苦しむ人々にとって心理的な支援となります。

トラウマ治療への抵抗

トラウマを抱えた人が治療を受ける際には、抵抗が生じる可能性があります。治療を行うことで、自分自身に対して何かを期待することが苦しくなったり、治療するには遅すぎると感じたり、身体に刻まれた恐怖のために自分自身に直面することを避けたりすることがあります。また、複雑なトラウマを抱えている人は、仕事を続けることが大変なことが多く、お金がなくて、長期的な治療を困難にする可能性があります。

トラウマを抱えた人は、再び傷つくことを恐れることが多く、緊張や警戒心を解きたくないと思っていることがあります。しかし、トラウマ治療は、このような緊張や警戒心に働きかけ、少しずつリラクゼーションを施していきます。治療が進むにつれて、患者さんは心の状態の変化を経験し、以前の自分を手放すことにジレンマを感じることがあるかもしれません。

トラウマ治療は、患者さんが自分のトラウマを直視し、適切に処理することを促すため、しばしば苦痛を伴います。患者さんは、治療中に何度も自分が苦しい状況に直面することになりますが、専門家の指導のもとで、徐々にトラウマからの解放を実感することができます。

ソマティックエクスペリエンス

複雑なトラウマに苦しんでいて、解離の症状を示している人にとって、カウンセラーが単に彼らの言葉を傾聴する従来のカウンセリング方法や従来の治療技術は、彼らの感情的な痛みの深さに到達できないことがあります。特に、トラウマの経験をしたことによって、感情や身体感覚が解離してしまっている人には、その傷を癒すためには、新しいアプローチが必要になるかもしれません。

そこで、身体ワークの一つであるソマティックエクスペリエンスが有効な治療法の一つとして挙げられます。ソマティックエクスペリエンスは、身体感覚に基づいた治療法であり、トラウマが身体に残す影響を解放するために、身体を使ったアプローチを取ります。

ソマティックエクスペリエンスには、様々な手法がありますが、中でも身体に焦点を当てたアプローチが一般的です。身体に貯まったストレスやトラウマを解放するため、呼吸法や筋弛緩法、瞑想などを取り入れ、身体感覚を利用して治療を行います。

このアプローチでは、身体の中のリラックスしている部分と緊張する部分に交互に意識を向けていきます。今何を感じて、何が起こっているかを感覚、感情、イメージ、場面などとの繋がりを見ていきながら、段階的により深く繋がれるようにしていきます。これには身体感覚による実感が伴っているため、クライエントはものすごく心も身体も反応して、突然涙が出てきて、悲しんだり、震えたり、良かった頃の記憶を思い出したりすることがあります。

ソマティックエクスペリエンスによって、トラウマによって解離してしまった感情や身体感覚を回復させ、自分自身と向き合う力を養うことができます。治療の過程でクライエントが不安や緊張を感じることもあるかもしれませんが、専門家の指導のもとで、徐々に自己回復力を取り戻していくことができます。

身体アプローチの重要性

うつ病、無力感、悲しみのために身体感覚を麻痺させてしまった人にとって、身体感覚を取り戻すことは、自分自身を癒すために非常に重要なことです。しかし、身体感覚を取り戻そうとすると、突然の不快感や違和感、強い感情がどっと押し寄せてくることがあります。これは、身体感覚が麻痺していたため、その感覚に対する敏感度が低下していたためです。

身体感覚を取り戻すためには、まず、現在の身体感覚を十分に認識することが必要です。不快感や違和感、強い感情が押し寄せてきたときは、その感覚を無視するのではなく、それらを受け止めて、自分の身体感覚を再度意識することが大切です。その後、身体感覚に焦点を当てたアプローチを取ることで、痛みや疲労を解放し、全身が暖かく穏やかに感じられるようになります。

身体感覚に焦点を当てたアプローチには、ソマティックエクスペリエンス以外にも、呼吸法やマインドフルネス、自律訓練法、リラクゼーション、筋弛緩法などが含まれます。これらのアプローチは、身体感覚を高めるとともに、筋肉や関節の緊張を和らげ、身体的なストレスを解放することができます。このようなアプローチによって、現在の状態が変化し、以前と同じように感じなくなり、これらのプロセスは彼らを癒しの道に導き、そして肉体的感覚を取り戻し、現在の瞬間を本当に感じることができるようになります。

身体感覚を取り戻すことは、うつ病や無力感、悲しみから立ち直るために非常に重要です。身体感覚に焦点を当てたアプローチは、患者が自分自身を癒し、心身のバランスを取り戻すための一つの手段となります。しかし、このプロセスは時間がかかることがありますので、専門家の指導のもと、じっくりと取り組むことが必要です。

身体を落ち着かせる方法

トラウマを抱える人々は、悩みを続けることをやめ、自分の身体の状態に注意を払うことから始めます。身体の状態に注意を払うことは、現在の自分自身を理解し、自分の感情と感覚について学ぶことを意味します。この瞬間の身体の状態に注目する方法として、ヨガや瞑想などの伝統的アプローチが有効とされています。これらの方法を用いることで、自分自身の感覚や身体的反応に敏感になり、身体と心を結びつけ、トラウマから回復するのに役立ちます。

ヨガ、ストレッチ、瞑想、呼吸法、マインドフルネス、フォーカシングを使って、身体の状態に気付き、どのような感覚があるのか、次に何が起こるのか、どのような変化が起こるのか、その変化に抵抗することなく観察します。また、身体に合った運動やストレッチを行い、身体の緊張を和らげます。さらに、自分自身の望む状態に向けて身体を動かし伸ばし、身体感覚をより強く感じるようにします。身体を動かすことは頑張りすぎることではなく、緊張を解放することを目的として進めます。

複雑なトラウマを抱える人が、現在の身体に焦点を当てることが重要である理由は、彼らが過去のトラウマ体験に対する反応を今でも持ち続けているためです。セラピストが、彼らが現在の身体感覚を観察し、過去の痛みを和らげる手助けします。最初は、彼らが自分の身体を見ることを恐れたり、何も感じられなかったりするかもしれませんが、時間とともに感覚が戻ってきます。

そのため、ヨガ、瞑想、マインドフルネス、ストレッチ、呼吸法などの技術を使用して、自分の身体に意識を向け、感覚を観察することが重要です。自分の身体を意識的に動かし、感覚に注意を払い、不快な感覚や感情に巻き込まれずに、現在の安心感と安全感に注目することが重要です。これにより、身体の緊張が緩和され、防衛的な脳の働きから、より安定した状態に移行することができます。自分自身に優しく接し、自分の身体に焦点を当てることで、トラウマから回復するための一歩を踏み出すことができます。

先々の不安より好奇心に目を向ける

重度のトラウマを抱えている人にとっては、繰り返されるトラウマ体験によって体が凍ったり麻痺したりして、注意が狭まり、思考があてもなく漂う状態に陥ることがあります。これによって、過去の出来事に対する不安感が高まり、現在の問題を解決することが困難になり、重要な決定については優柔不断になる可能性があります。

このような状態に陥ってしまった場合は、先々のことへの不安や落ち着きのなさにとらわれるのではなく、外の世界に対しての好奇心を持ち、様々なことに注意を向けられるようにすることが重要です。また、解離または離人症状の発現を恐れるのではなく、自分自身の中で何が起こっているのかに興味を持ち、自己に対して好奇心を持つことが大切です。

自分自身に対する好奇心を持つことで、防御的な思考に頼ることなく、自己の内面にアクセスできます。好奇心を追求できる状態にすることで、身体的感覚を取り戻し、望ましい自己を具現化することができます。具体的には、自分自身の感情を受け止め、自分が何を感じているかに焦点を当て、五感をフルに使って、身体をアクティブに動かすことが大切です。自己の内面にアクセスすることで、自己発見と自己発展を促し、トラウマから立ち直るための力をつけることができます。

死を意識して受け入れる

死を意識することは、トラウマからの解放に役立つことがあります。死を意識することで、人生の有限性を受け入れ、大局的な視点を持つことができるようになります。この広い視野を持つことによって、トラウマに対する恐怖や痛みを相対的に捉えることができ、心の平穏を取り戻す手助けとなるのです。

死を意識することは、自分自身の価値観や人生の目的を見つめ直す機会ともなります。このような自己探求の過程で、トラウマが与える影響に対してより適切な対処方法を見つけ出すことができるでしょう。また、死を意識することで、他者とのつながりや現在の状況に感謝し、前向きな人生観を築くことが可能となります

恐怖を感じるメカニズム

同じ出来事でも、人によって恐怖の感じ方は異なります。脅威に対して有効な手段があるときは、恐怖をあまり感じません。しかし、脅威に対して有効な手段がなく身動きが取れなくなると、死ぬほどの恐怖を感じます。また、身体が凍りつきから虚脱しているときは、内臓や筋肉の神経から脳に危険信号が送られ、扁桃体が強く反応して、人は恐怖を感じます。人が恐怖を感じても、情動脳よりも理性脳が働いている場合は、恐怖を抑制できます。そして、人が凍りつき(筋肉が収縮)や虚脱(筋肉が崩壊)した状態から抜け出せるようになると、安全感に変わります。

イメージワークと身体ワーク

トラウマを克服するためには、イメージワークと身体ワークを併用することが主流です。イメージワークでは、自由連想に耽ったり、望ましい自分を演じたり、トラウマのイメージを書き換えたりすることで、自己イメージや他者イメージを逆転させ、モードを切り替えます。

セラピストはクライエントを無意識下にアクセスしやすいように誘導し、そこで浮かんできたイメージや空想を探求します。具体的には、①安心するイメージや望ましいイメージを想像して、身体を楽にする。②身体の違和感に着目して、そこから浮かんでくるイメージや空想を使って自己を癒す。③心(頭)の中に浮かんでくるイメージや空想、考えを自由に連想していくなどがあります。身体ワークと組み合わせることで、トラウマを克服するための内的なプロセスを助けます。

トラウマを克服する方法には、イメージワークと身体ワークを組み合わせて行うものがあり、まずは現在の身体感覚に注目し、足の接地感、ふくらはぎの筋肉の感覚、手の感覚、みぞおちの状態、呼吸などに意識を向けます。そして、肩を回す、口の開け閉めを繰り返す、目を左右に動かして、頭の方に血流を促して、全身の緊張を緩和させます。その後に、安心できるイメージを持ち、部屋の中の良い気配を目にしながら、身体をリラックスさせます。

次に、脅威があるというイメージを思い浮かべ、人に傷つけられる場面を目で見て、身体が収縮している状態を確認します。その上で、トラウマを受けた時の身体の状態を再現し、凍りついたり虚脱したりしながら、自分を守るために身体的な行動を取ったり、納得のいく答えを見つけたりします。

自分自身が脅威を遠ざけたり倒したり逃げたりすることで、身体に安心感が戻ってきます。一連のトラウマ反応を追体験し、身体の反応と感情を一致させることで、トラウマを癒すことができます。このようなイメージワークと身体ワークを組み合わせることで、トラウマの後遺症から解放されることができるとされています。

トラウマを克服する方法の一つとして、イメージや空想を膨らませながら、天国のイメージ(息がしやすく、血液の流れが良くなり、至福の体)に浸り、または地獄のイメージ(手足が冷たくなり、息苦しく、気を失う)から逃げ出すことで、自分の心や身体に対する見方を変えていきます。

自分一人で取り組むのは困難なので、セラピストと共に地獄の世界に潜り、その苦痛を受け入れたり、天国と地獄の間をゆっくりと行き来することで、徐々に健康的な状態になり、本当の変容を実現することができます。地獄に対する体験が変化すると、不快な体の反応が変わり、態度や思考にも変化が生じ、ストレスへの対処方法が改善されます。

自分自身や対象を受け入れる

トラウマは、その本質から謎に包まれた未知の存在であります。この未知の要素と真摯に向き合い、果敢に闘いを挑むことが極めて重要です。その過程で、自分自身の限界に直面することもありますが、未知への恐怖を感じたり、トラウマの身体的な反応を無視したりするのではなく、そのまま受け入れて、自分自身に寄り添うことが大切です。

この受け入れのプロセスにおいて、胸がつかえるほどの不快な感情を抱えたり、足ががくがく震えるほどの恐怖や吐き気を感じたりしながらも、自分自身の身体と一体化していくことが求められます。そして、自分を脅かしてきた両親や重要な人物に対して、憎悪を抱くのではなく、愛情や思いやりを持つことで、新たな可能性への道を切り拓くことができるのです。

悲しみや傷ついた経験を持つ人たちは、自分自身の身体的な痛みやその痛みを引き起こした対象に対して、献身的な自己犠牲や、思いやりのある注意を払うことが求められます。その瞬間、自分の内を蝕んでいた悪魔や蛇が善良な存在へと変容し、内なる世界が変わり始めるのです。

この変化により、自分の内面には良いものが根付き始め、成長する可能性が広がっていきます。このように、トラウマと向き合い、それを受け入れ、そして乗り越えることが、私たちの心の成長と癒しに繋がるのです。

刺激に慣れる身体ワーク

スムービーリングとは、振動や音を用いて身体の反応を感じていくことで、自己調整能力を高めるトラウマ治療の一つです。健康な人は、この刺激が心地良く感じる傾向がありますが、トラウマを抱える人は、この刺激が強すぎて、身体内部から悪いものが溢れ出てくる場合があります。

トラウマを克服するためには、スムービーリングなどを使って、様々な刺激に触れたり、様々なことに注意を広げ、身体の反応を繰り返し感じていくことが必要となります。このように、トラウマに関する感覚や痛みを身体に染み込ませることで、身体と心の不調和を改善することができます。また、過去のトラウマに対する恐怖感を減少させ、生々しい刺激に慣れることにより、現実世界と調和が取れるようになります。

ヨガでトラウマから自由になる

ヨガは、身体の反応が鈍くなっている人がその感度を上げるために行われるとされています。現代の生活はストレスや緊張が多く、それが原因で身体が緊張してしまうことがあります。また、普段の生活で同じようなことしかしていないため、身体をうまく使えていない状態に陥ることがあります。そこで、ヨガでは身体の眠っているところを目覚めさせ、身体をより活性化させることが目的とされています。

ヨガでは、呼吸法を使い、身体の内部を活性化します。普段から浅い呼吸しかしない人は、肺を大きくして、呼吸を深くすることで、身体に十分な酸素を供給し、代謝を促進します。また、身体の縮まっているところをストレッチして伸ばしていくことで、血液の循環が良くなり、内臓が活性化して、身体が快適になります。ヨガのポーズや呼吸法を繰り返すことで、身体の調子を整えることができ、ストレスや緊張を解消し、心にも良い影響を与えます。

ヨガは身体だけでなく、心と精神にも効果があります。ヨガのポーズをとることで、身体と心のつながりを深め、自分の内側を見つめることができます。また、ヨガの呼吸法や瞑想を行うことで、心を静め、自分の内側に集中することができます。その結果、ストレスや不安感が減り、心の平穏を取り戻すことができます。

トラウマのエネルギーの解放

複雑なトラウマを抱える人は、過去に繰り返し脅かされるような出来事に直面し、自分自身を守るために必要な反応である「闘争・逃走反応」が上手く機能しなくなっていることがあります。このため、身体が凍りついて動かなくなっている部分があることが特徴的です。

トラウマ治療では、患者が自発的に恐怖や苦痛に向き合い、身体が凍りついていくのを感じる状況を作り出します。そして、身体の不快感や不動状態に対する見方を変え、自分に降りかかる圧力を跳ね返すことをイメージしながら、筋肉や神経に溜まっているエネルギーを震わせ、ビリビリと感じながら身体の中から解放することで、生き生きとした自分を取り戻すことができます。

トラウマによって凍りついた身体を解放することで、感覚や目の見え方が改善され、現実世界との接点が生まれます。また、身体の状態が正常に戻ることで、自己や他者、そして世界と向き合うことができるようになります。

トラウマを克服するためには、暗い経験に向き合い、トラウマに対する理解や態度を変えるための継続的なエクササイズが必要となります。身体を使って自己理解を深めることで、自己イメージや他者イメージ、認知の歪み、思考パターン、安心感などに変化が出て、人生の方向性が見えてくるようになります。このように、トラウマ治療では身体的な反応を重視し、身体と心の関係性を深めることで、トラウマからの回復を促していきます。

トラウマ専門のセラピストの姿勢は

トラウマ治療において、セラピストはクライエントに対して、安心・安全な場所を提供し、自由に思ったことを話せるような態度を取ることが重要です。セラピストは、クライエントに無条件の肯定的配慮と共感的理解を示せるよう、自己一致(純粋性)を高める訓練が必要です。

セラピストは職業としているため、精神科医のように営利を求めて、効率性や生産性を重視している場合があります。しかし、その利己的な段階に留まっている限り、トラウマに苦しんでいる人を助けることはできません。トラウマを扱うセラピストは、自分や組織の利益よりも、クライエントの利益を最大限にするために努め、人間的な思いやりや愛情を持って関わり、心に寄り添うことが重要になります。

精神分析家のウィルフレッド・ビオンの理論において、セラピストはある特殊な役割を果たすべきだとされています。新生児を思いやりと愛で見守る母親のように、セラピストはクライエントに対しても同様の感情を持つべきでしょう。これは、新たにこの世に出てきたばかりの小さな生命を優しく抱きしめる母親の無条件の愛情と受容を象徴しています。

また、セラピストは「目覚めていて夢見ているような心の在り方」を持つことが求められます。これは現実と夢、意識と無意識が交錯する境界線上で働くことを意味します。セラピストは、クライエントの内的体験とその象徴的な表現を理解し、解釈するために、この夢見がちな状態に身を置くことが重要です。

このようにセラピストが新生児の母親のような愛情深く、また夢見がちな心を持つことで、クライエントが母胎や乳児の時期の感覚に戻れるようにするという点にあります。このビオンの理論は、人間の精神的な癒しと成長を助ける深い洞察を提供しています。

日常生活のセルフケア

複雑なトラウマがある人は、日常生活が非常に辛く苦しいものであることがあります。しかし、そんな中でも、自分の身体に着目し、身体を落ち着かせることで、辛さを軽減することができます。たとえ今とても辛い状況にあっても、薬を飲まずに身体を落ち着かせる方法を学ぶことで、自分の感情をうまく調節することができるようになります。たとえば、交感神経が刺激され、焦りを感じている場合でも、自分の身体を落ち着かせる方法を実践することができれば、感情の調整がうまくいくようになるでしょう。

日常生活においては、セルフケアを行うことで、落ち着いて過ごす時間を増やしていくことが重要です。また、自分のペースでトラウマケアのワークやセルフモニタリングを繰り返すことが大切です。時間が経つにつれて、セルフケアが身についていけば、数か月前とは比べ物にならないくらい体調が良くなっていくでしょう。何年にもわたって繰り返し続けることで、徐々に自己回復能力が高まり、辛さを乗り越えることができます。

身体感覚の麻痺を解く

トラウマや発達障害を持つ人は、神経発達の問題により、身体内部から悪いものが出て、毎日がしんどくなり、感覚が麻痺していきます。普段の生活では、違和感などを感じないようにして過ごしていることがあります。しかし、身体感覚の麻痺を解くことは、トラウマから回復するために必要なことの1つです。瞑想やマインドフルネス、ヨガ、ジャンプ、ダンス、トランポリン、身体に振動を与える、身体を軽く叩く、ヴーと声を出して腹から息を吐く、体の揺れや震え、スムービーリング、楽しく全身運動などを行うことで、身体感覚を取り戻し、ボディイメージを改善することができます。

手足をダイナミックに動かしたり、芝居がかったような演技をしたり、感情の赴くまま踊ったり、ヴーと声を出して腹の中から息を吐くことが、身体感覚を改善するための有効な方法の1つです。また、お腹から脳に、下から上にエネルギーが流れる感覚を意識することが重要です。自分自身の身体の感覚を失わずに、不快感もありがたいものとして受け止め、身体感覚を取り戻していきましょう。身体の感覚が分かるようになると、自分自身の疲れを知ることができ、自分自身が嫌なことから逃げ出すことができるようになります。

身体の凍りつきをケアする

身体の麻痺が解けていくと、痛みや凝りが表面化することがあります。そのため、みぞおちが苦しい、首や喉、胸、鼻が詰まる、全身が詰まったように感じることがあります。身体が凍りついている場合は、筋肉が縮まっているところを伸ばす必要があります。そのためには、ヨガ、ストレッチ、マッサージ、歌、演劇、ダンス、ペットと触れ合う、愛する人と話をするなどが有効です。また、トラウマに焦点を当てた身体からのセルフケアも有効です。

人は寝ているときに身体が凍りついていくため、目が覚めたら朝食をとって、ヨガで筋肉を伸ばすか、体の声に従って自由に動かし、体が汗ばむくらいの運動をして、温めることが大切です。日中は、自分自身がこわばり、凍りつき反応が出ていると感じたときは、自分の好きな場所に行くか、好きなことを頭の中で空想しながら、自分の身体を感じていくことで、凍りつきが緩和されます。夜寝る前には、ストレッチで筋肉を伸ばしてあげることが効果的です。

身体に良い体験を刻む

トラウマがある人は、家や学校、職場、社会など、生活の中でさまざまな圧力を感じているかもしれません。しかし、そのような圧力に我慢したり、抗ったりするのではなく、自分自身がしたいことをしたり、見たい景色のある場所に行ったりするなど、五感をしっかり使い、心や体が望むままに動くことが大切です。

トラウマの状態から抜け出すには、安心・安全な感覚を体に刻む必要があります。神社仏閣巡りや自然暮らし、快適な生活、人との交流を重ねる、愛する人とのセックス、ペットとの触れ合いなど、良い経験を積んでいくことで、心と身体の変化が現れます。自分が安心できる環境を作り、自分自身を解放し、心身の緊張を和らげることが大切です。

考えすぎを止める習慣や生活環境

心の平和を維持するための生活環境を作り出すことが重要です。それは過度な思考から逃れ、存在の本質を感じることを可能にする環境です。過度な思考に頭が満たされているとき、現実と向き合うことは難しくなります。そんなときこそ、意識を今、この瞬間に向けることが必要です。

感覚を呼び覚まし、外界との接触を深めていきましょう。風の優しい撫でるような感触、自然から放たれるさまざまな香り、目に映る風景の細部まで…これらは全て今、ここにいるという実感を呼び起こします。目を閉じて、風が皮膚に触れる瞬間を感じてみてください。そこには、あなたと世界との境界が曖昧になる特別な一瞬があります。

そして、感じたことを言葉に表現することが大切です。無形の感覚を形にすることで、思考の束縛から自由になれます。体験したこと、感じたことを言葉で捉えると、心の深部が軽くなり、広大な世界とのつながりが明らかになります。それぞれの感覚を詳細に描き出すことは、思考の迷路から抜け出し、現実と直接対話する道を開く鍵となります。そして、その一瞬一瞬が積み重なることで、より豊かで満足のいく生活を創り出すことができます。

毎日続けることで身体が変わる

日常生活の中で、ソファーやリクライニングチェアでくつろぎながら、急がずに身体の声に従って、呼吸がしやすい状態や快適な状態を意識して保つようにしてください。自分自身のペースで、トラウマの身体ワークやイメージワーク、ヨガ、瞑想、リラクゼーション、演劇、運動などを毎日行い、縮んだ身体を伸ばして、心地よい状態を作ることが大切です。このようにすることで、血液の循環が良くなり、手足の末端まで血液が循環し、基礎体温が上がります。また、胸が楽になり、呼吸がしやすく、頭がクリアになります。

健康度が上がることで、自律神経系や免疫力、ホルモンバランスなどが整い、風邪を引きにくく、不眠やうつ、PMS、過呼吸、体調不良などが緩和され、外の世界に対して肯定的な感情が芽生えます。身体や心の健康状態を維持することで、トラウマによる影響を減らすことができます。定期的な運動や呼吸法、瞑想などを取り入れることで、身体と心の健康を保ち、トラウマからの回復を促進することができます。

健康な状態とは

トラウマとは、嫌な記憶や感情、感覚が引き起こされる苦痛的な状態のことであり、その状態にある人は、思い出すだけで苦しくなったり、勝手に考えが浮かんでしんどくなったりします。さらに、周りの人の感情に気を使って、自分のことをどう思われているかを気にして考え込んでしまうこともあります。

しかし、トラウマが小さくなると、過去の出来事に引きずられることが減ります。自分の状態が変化し、今まで苦手だった人や苦手なことに対して、どうでもいいと思えるようになります。一時期悩んでいたことについても、グダグダと悩み続けることがなくなります。

トラウマの影響を受けていない状態は、外の世界に対する警戒心が弱まり、身体が固まっている状態でもなく、伸び切っている状態でもなく、落ち着かない状態でもありません。健康な状態では、自分の鎧を取り去り、脳の防衛的な働きが弱まり、肉体感覚や思考に変化が現れ、社会の中で他者と交流する前向きな姿勢になります。

現在、地に足がついて、腹が据わり、安心感や安全感を感じ、無防備でありながらも恐怖心がなく、物事に動じない状態にあります。頭はクリアで、視界ははっきりしており、手足は温かく、みぞおちは柔らかい状態です。自分でネガティブな感情を処理でき、感情の波も減り、自分で自分を調整できる状態です。幸福を感じるときは、全身が温かく、身体を感じ取ることができ、手先からつま先までバランスが取れています。

例えば、日常生活では、椅子にリラックスした態度でゆったり座っています。就寝前には、大の字で仰向けになり、頭がすっきりしており、目や顎に力が入らず、肩や首が楽で、手足の力も抜けています。みぞおちもつかえておらず、体重をマットに預けて、ぐっすりと眠ります。朝になっても身体が軽く、思い悩むことが減り、元気な状態を保てているといいです。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2021-02-23
論考 井上陽平

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