迷走神経反射になりやすい人の特徴と背側迷走神経の関係:原因と対策

神経科学

迷走神経反射は、迷走神経が刺激を受けた際に引き起こされる自律神経反応のことです。迷走神経は、大脳から下垂体や心臓、腸などの内臓にかかる重要な神経系で、自律神経を調節する役割を持っています。一般的に迷走神経反射は、心拍数を下げたり、呼吸を深くしたり、腸を調節する役割を持っています。

背側迷走神経は、迷走神経の別の部分で、防御反応や不安反応を引き起こす役割を持っています。この部分は、危険やストレスに対して、心臓の収縮を減少させ、呼吸を抑制するなどの防御反応を引き起こすことができます。

迷走神経反射の発作

迷走神経反射の発作は、トラウマ的なショック体験から引き起こされる自律神経の調整不全によって発生します。人々が危険を感じると、交感神経が過剰に反応し、呼吸が荒くなり、心臓の鼓動が速まって、身体を機敏に動かそうとします。一方、生命の危機を感じて、交感神経がシャットダウンし、高いトーン背側迷走神経が支配すると、心臓の働きが弱くなり、徐脈となり、血流が回りません。このため、酸欠状態のなか、息が吸えず、あくびが連発します。そして、全身の血が引いて、顔面蒼白、寒気、冷や汗、全身真っ白になり、失神して気を失う人もいます。

その一方で内臓が活発に動き出し、胃腸がじわじわと捻じれ、中にあるものを絞り出すような動きをして、腹痛や吐き気、下痢になる人もいます。このとき、体が怠くて動けなくて、居てもたってもいられずに、死にそうな恐怖を感じることが多いです、

このような反射は、ストレスや緊張、疲労、突然の痛み、恐怖などと関連する症状の一種です。生命の危機を感じるような不安や緊張する状況では、身動きが制限され、自律神経の調整が働かず、背側迷走神経が過剰に作用し、虚脱性の不動状態に陥ります。このような状態になると、交感神経に強いブレーキがかかっているため、心臓の機能が低下し、血圧が低下し、視界が曇ったり、声が聞きづらくなったり、体調不良、原因不明の身体症状、うつ、解離、昏睡、フラッシュバックなどが起こる可能性があります。

日常生活の中で誤って起こる迷走神経反射は、怒りや恐れ、嫉妬など感情、トラウマ的な記憶、ショック状態、空腹や低血糖、疲れや痛み、薬物や化学物質などがトリガーとなり、知覚の誤作動によって引き起こされます。知覚の誤作動を起こし発作になる人は、発達早期に生命の危機になるようなトラウマを負い、強いショックに曝される経験をしている可能性があります。また、神経が繊細で真面目な人は、不快な状況に対して我慢してしまう傾向があり、これが過度のストレスを引き起こし、体の不調から迷走神経反射の発作を引き起こすことがあります。

背側迷走神経が過活動になると

心臓には2つの自律神経があり、交感神経と副交感神経があります。副交感神経は、交感神経の興奮による疲れや不調和を調整し、心身を保護して回復させます。この神経は迷走神経とも呼ばれており、腹側迷走神経と背側迷走神経に分かれます。背側迷走神経は、副交感神経として内臓の制御を行い、静かで休息することで、筋肉をリラックスさせる効果があります。

しかし、危険な状況にいると、交感神経や背側迷走神経が過度に活性化し、過度の緊張や警戒状態を引き起こします。この状態では、心臓や呼吸器、胸腺に悪影響を与え、神経や内分泌や免疫などのシステムに異常を引き起こすことがあります。この状態では、めまいや吐き気、原因不明の身体症状、身体の痺れなどが現れます。筋肉は強くなるか、または脱力する場合があり、血液の流れが悪くなり、胃腸や皮膚が炎症を起こし、下痢や便秘、頭痛、腹痛、嘔吐などの体調不良を抱えながら、本人は何が起こっているのか分からないこともあります。

背側迷走神経が過剰に活性化している場合、彼らは生命の危険を感じ、社会や人間関係への不信や恐怖を抱くことがあります。このような状況では、人は周りの状況を見ながら、頭の中は思考がグルグルと回りますが、身体はガチガチに固まって動けなくなります。この状況が長期的に続くと、不安や不安定さが慢性化して、過去のことに固執することもあり、一つの失敗も細かいことまで気にして、自分を責める傾向が出てきます。

背側迷走神経が過剰になっている人は、自分の殻に閉じこもっていたいので、人と関わりたくないと思うのですが、社会生活を維持するためには仕事をするしかなく、自分の内部の歪みがますます大きくなります。一見、日常生活を正常にこなしているように見えますが、実際には疲れや痛み、ネガティブな感情がたまっています。

背側迷走神経が過剰な状態が長い間続くと、身体の感覚が麻痺し、自分の中心が空っぽになります。人と関わっても心が動かず、イメージも湧いてこなくて、現実世界の出来事をただ眺めるようになります。このような状況では、自己の感覚が分からなくなり、相手のことも分からなくなって、人との距離感を掴めなくなります。生き生きとした現実感がなくなり、時間や空間の感覚もなくなり、自分の身体や感情も分からなくなります。心が成長を止め、時間が流れなくなり、目が虚ろで思い悩むと一点だけを見つめます。

人は交感神経が弱く、背側迷走神経が過剰に活発化している場合、使えるエネルギーが少なく、行動することが億劫になり、何もできない自分にイライラします。外の世界が怖くなり、一枚壁を隔てて、隠れながら生活することが唯一の選択肢になります。細かいことでも不安が募り、不安な気持ちが身体に悪影響を与えるため、猫背で、腕や足が弱っています。また、背側迷走神経の作用は、心臓の働きにブレーキをかけるため、心拍数が低くなり、血流が悪化し、一年中手足が冷たくなることもあります。

ストレスが高まると、身体の不調が悪化し、蕁麻疹や微熱が出たり、腸に痛みを感じたり、意識を失って倒れることもあります。子どもの場合は、呼吸が困難になったり、喘息が起こることもあります。また、寝ようとしても身体の力を抜くことができず、気絶したように眠ってしまって、悪夢に見舞われます。身体の節々が痛み、血の流れが悪くなり、神経が通っていないこともあります。

交感神経が弱く、背側迷走神経が過剰になっている人が、自分の人生を振り返ってみると、敗北に満ちた人生だったかもしれません。長い間、八方塞がりな状況に囲まれていたため、ストレスと戦いきれず、力がなくなっています。元気がなく、表情がなくなり、息が苦しく、頭が眠っているような状態が続くと、体に意識を向けても集中できなくなり、眠くなってしまいます。体を起こそうとするとめんどくさくなり、抜け殻のような状態になって、やる気も意欲もなくなっています。体が動けないのに無理して動こうとすると、めまいやふらつきが出たり、目の前が真っ暗になったりすることもあります。生きているという実感がなく、人生が虚無であり、いつもボーッとして、憂鬱な状態で過ごしています。

治療・回復していく過程

背側迷走神経が過剰に活動している人々は、体を休めることが非常に難しいと感じることが多いです。彼らは、体の中に慢性的な疲労を抱えているにもかかわらず、無理を重ねることでさらなる疲労を引き起こし、最終的には動けなくなってしまいます。このような状態にある人々は、休むべきタイミングでも体を止めて休むことが苦手で、心身が緊張し続けてしまうのです。休息を取ろうと試みても、頭の中で考えすぎてしまったり、体が焦って心臓がバクバクするために、心からリラックスできないという問題を抱えています。

まず大切なのは、休むことを意識的に習慣化することです。疲労が蓄積しすぎる前に、短い時間でも構わないので、意識的に体を休めることから始めましょう。特に、休憩を取るタイミングを忘れがちな人は、休む時間を決め、定期的に体と心を休めるよう意識すると良いです。これにより、体がリカバリーする機会が増え、疲労の蓄積を防ぐことができます。

慢性的な疲労やストレスを予防するためには、リラックス法を学び、望ましい環境を整えることが大切です。具体的には、瞑想、深呼吸、軽いストレッチ、ヨガなどのリラクゼーションテクニックを日常に取り入れると良いでしょう。これらの方法は、心身をリラックスさせ、副交感神経の働きを促進するために役立ちます。

さらに、適切な生活習慣の維持が重要です。不快な相手との関わりを避け、自分の気持ちや要求を適切に伝えられるようになることは、ストレスを減らす大きなポイントです。また、アルコールやタバコの使用はできるだけ控え、バランスの取れた食事を心がけることが必要です。特に、空腹や低血糖にならないように規則正しく食事をとり、体に痛みや疲労を溜めない生活習慣を築くことが大切です。

注意すべき点は、自分を管理しすぎることが逆にストレスとなり、疲労を増幅させる可能性があるということです。自然体で生活し、無理をせず、自分のペースで管理することを心がけましょう。

セラピーでのリラックスと回復

複雑なトラウマを経験した人々は、特にじっとしていることが苦手です。そのため、セラピーセッションでは、彼らがリラックスできる環境が整えられています。セラピストと話しながら、ソファ(寝椅子)に横になり、深い物思いに耽ることで、彼らは少しずつ体を休めることを学びます。

このプロセスでは、意識レベルを徐々に夢のようなリラックスした状態に下げていくことが目標です。そうすることで、身体と心が安定し、体が再び本来の機能を取り戻す手助けをします。セラピーの中では、まず静的な状態で心身をしっかり休ませ、その後、徐々に交感神経が働く動的な状態に移行させていく段階が大切です。

トラウマケア専門こころのえ相談室
公開 2023-01-18
論考 井上陽平

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